| 発明の名称 |
プレス成形性、スポット溶接性および塗料密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 |
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| 発行国 |
日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 |
公開特許公報(A) |
| 公開番号 |
特開平7−18400 |
| 公開日 |
平成7年(1995)1月20日 |
| 出願番号 |
特願平5−191776 |
| 出願日 |
平成5年(1993)7月5日 |
| 代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】潮谷 奈津夫
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| 発明者 |
平谷 晃 / 阿部 雅樹 / 渡辺 豊文 |
| 要約 |
目的
構成 鋼板を、溶融亜鉛めっき浴中を通過させてその表面上に溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで、溶融亜鉛めっき層の形成された鋼板を、高周波誘導加熱炉により加熱して、溶融亜鉛めっき層と鋼板とを合金化させ、鋼板の表面上に合金化溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで、合金化溶融亜鉛めっき層の表面に、金属換算で、鋼板片面当り5〜500 mg/m2 の量の金属酸化物被膜を形成する。 |
特許請求の範囲
【請求項1】 鋼板を、溶融亜鉛めっき浴中を通過させて、前記鋼板の少なくとも1つの表面上に溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで、溶融亜鉛めっき層の形成された前記鋼板を加熱して、溶融亜鉛めっき層と鋼板の表面部分とを合金化させ、前記鋼板の少なくとも1つの表面上に合金化溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで、合金化溶融亜鉛めっき層の形成された前記鋼板の、前記合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に金属酸化物被膜を形成する、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記合金化溶融亜鉛めっき層の形成のための、溶融亜鉛めっき層の形成された前記鋼板に対する加熱を、高周波誘導加熱によって行い、次いで、このような、高周波誘導加熱によって合金化溶融亜鉛めっき層が形成された鋼板の前記合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に、金属換算で、鋼板片面当り5〜500 mg/m2 の範囲内の量の金属酸化物被膜を形成することを特徴とする、プレス成形性、スポット溶接性および塗料密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 【請求項2】 溶融亜鉛めっき層の形成された前記鋼板に対する、前記高周波誘導加熱を、酸素濃度が5%以下の雰囲気の高周波誘導加熱炉によって行う、請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記高周波誘導加熱によって形成された前記合金化溶融亜鉛めっき層が、ζ相を主体とする合金相である、請求項1記載の方法。 【請求項4】 溶融亜鉛めっき層の形成された前記鋼板に対する、前記高周波誘導加熱を、酸素濃度が5%以下の雰囲気の高周波誘導加熱炉によって行い、そして、このような高周波誘導加熱によって形成された前記合金化溶融亜鉛めっき層の結晶構造が、ζ相を主体とする合金相である、請求項1記載の方法。 【請求項5】 前記金属酸化物被膜の形成を、前記合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に、金属イオンを含有する溶液を噴霧し、次いで、加熱、乾燥することにより行う、請求項1から4の何れか1つに記載の方法。 【請求項6】 前記金属酸化物被膜の形成を、前記合金化溶融亜鉛めっき層の形成された鋼板を、金属イオンおよび酸化剤を含有する溶液と接触させるか、または、前記溶液中で、前記鋼板を陰極として電解処理を施すことによって行う、請求項1から4の何れか1つに記載の方法。 【請求項7】 前記金属イオンが、ニッケル、マンガン、チタン、コバルト、カルシウム、バナジウム、タングステン、錫、鉄、およびモリブデンからなる群から選んだ少なくとも1つの金属のイオンである、請求項5または6に記載の方法。
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発明の詳細な説明
【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、プレス成形性、スポット溶接性および塗料密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】鋼板の少なくとも1つの表面上に、合金化溶融亜鉛めっき層が形成された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、耐食性その他種々の優れた特性を有していることから、自動車用鋼板、家庭電器用鋼板等、各種の防錆鋼板として、広く使用されている。自動車用鋼板として使用される合金化溶融亜鉛めっき鋼板には、耐食性のほかに、車体の製造工程において必要な、プレス成形性、スポット溶接性および塗料密着性に優れていることが、強く要求されている。 【0003】合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性は、一般に冷延鋼板に比べて劣っている。その原因は、プレス成形時における、プレス用金型に対する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の摺動抵抗が、冷延鋼板に比較して高いためである。このようにプレス用金型に対する摺動抵抗が高いと、鋼板に破断が生じやすくなる。 【0004】そこで、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性を向上させるために、合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に、高粘度の潤滑油を塗布することが一般に行われている。しかしながら、このような潤滑油を塗布する方法は、その後に、めっき鋼板上からの脱油工程が必要となるために製造工程が煩雑になり且つコスト高となる上、塗油作業のために、作業環境を悪化させる。このようなことから、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性の向上が強く要求されている。 【0005】更に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、冷延鋼板に比べて、スポット溶接性が劣る問題を有している。即ち、互いに重ね合わされた2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、銅製の1対の電極によってスポット溶接する際に、溶接時に生ずる溶接熱によって溶接部の合金化溶融亜鉛めっき層が溶融し、溶融した亜鉛が、電極の銅と反応して、電極に脆いZn−Cu合金層が生成する。その結果、銅電極の損耗が激しく、従って、電極の寿命が短く、且つ、その導電性が阻害される等、スポット溶接性が低下する。このようなことから、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のスポット溶接性の向上が強く要求されている。 【0006】上述した問題を解決する、プレス成形性に優れた亜鉛めっき鋼板の製造方法として、特開平2-190483号公報には、電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理または加熱処理により、合金化溶融亜鉛めっき層、溶融亜鉛めっき層または電気亜鉛めっき層の表面上に金属酸化物被膜を形成することからなる方法(以下、先行技術1という)が開示されている。 【0007】また、スポット溶接性に優れた亜鉛めっき鋼板として、特開昭55−110783号公報には、合金化溶融亜鉛めっき層、溶融亜鉛めっき層または電気亜鉛めっき層の表面上に金属酸化物被膜が形成された亜鉛めっき鋼板(以下、先行技術2という)が開示されている。 【0008】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、一般に、次のようにして製造される。即ち、鋼板を溶融亜鉛めっき浴中を通過させて、鋼板の表面上に溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで、溶融亜鉛めっき層の形成された鋼板を、ガス燃焼式の加熱炉により加熱して、溶融亜鉛めっき層と鋼板の表面部分とを合金化させ、溶融亜鉛めっき層を、溶融鉄−亜鉛合金めっき層に変える。かくして、鋼板の表面上に、合金化溶融亜鉛めっき層が形成される。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】上述した先行技術1および2には、次のような問題がある。即ち、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合における、合金化溶融亜鉛めっき層の形成のための鋼板に対する加熱は、上述したように、従来、ガス燃焼式の加熱炉によって行われているので、加熱に際して、溶融亜鉛めっき層の表面温度が極めて高くなり、且つ、加熱が均一に行われない。その結果、合金化時に、溶融亜鉛めっき層の表面が酸化され、しかも、その酸化が不均一になる。 【0010】その結果、合金化溶融亜鉛めっき層の上に形成された金属酸化物被膜の、合金化溶融亜鉛めっき層に対する密着性が劣化するために、塗料密着性が劣化し、且つ、生成した金属酸化物被膜も不均一になるために、プレス成形性およびスポット溶接性を安定して改善することができない。 【0011】従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、プレス成形性、スポット溶接性および塗料密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するための方法を提供することにある。 【0012】【課題を解決するための手段〕本発明者等は、上述した問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、次の知見を得た。即ち、合金化溶融亜鉛めっき層の形成のための溶融亜鉛めっき鋼板に対する加熱を高周波誘導加熱によって行えば、加熱時に生ずる溶融亜鉛めっき層表面の酸化が少なく、しかも、均一な温度上昇によって加熱されるので、酸化被膜が生成しても、その膜厚は均一になる。その結果、次工程で、合金化溶融亜鉛めっき層の上に形成された金属酸化物被膜の、合金化溶融亜鉛めっき層に対する密着性が良好になる。従って、プレス成形性、スポット溶接性および塗料密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。 【0013】この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、この発明は、鋼板を、溶融亜鉛めっき浴中を通過させて、前記鋼板の少なくとも1つの表面上に溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで、溶融亜鉛めっき層の形成された前記鋼板を加熱して、溶融亜鉛めっき層と鋼板の表面部分とを合金化させ、前記鋼板の少なくとも1つの表面上に合金化溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで、合金化溶融亜鉛めっき層の形成された前記鋼板の、前記合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に金属酸化物被膜を形成する、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記合金化溶融亜鉛めっき層の形成のための、溶融亜鉛めっき層の形成された前記鋼板に対する加熱を高周波誘導加熱によって行い、次いで、このような、高周波誘導加熱によって合金化溶融亜鉛めっき層が形成された鋼板の前記合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に、金属換算で、鋼板片面当り5〜500 mg/m2 の範囲内の量の金属酸化物被膜を形成することに特徴を有するものである。 【0014】 【作用】この発明において、合金化溶融亜鉛めっき層の形成のための溶融亜鉛めっき鋼板に対する加熱は、高周波誘導加熱炉において高周波誘導加熱により行われる。従って、従来のガス燃焼式加熱炉による加熱の場合と異なり、鋼板自体の発熱によって溶融亜鉛めっき層と鋼板の表面部分とが合金化される。その結果、合金化溶融亜鉛めっき層表面の酸化が少なく、しかも、均一な温度上昇によって加熱されるので、酸化被膜が生成してもその膜厚は均一になる。従って、次工程で、合金化溶融亜鉛めっき層の上に形成された金属酸化物被膜の、合金化溶融亜鉛めっき層に対する密着性が良好になる。 【0015】上述した高周波誘導加熱は、5%以下の酸素濃度の雰囲気の高周波誘導加熱炉内において行うことが好ましい。このように、5%以下の酸素濃度の雰囲気の高周波誘導加熱炉において溶融亜鉛めっき鋼板を加熱すれば、めっき層表面の酸化は殆ど生ぜず、酸化被膜が生成した場合でも、その量は極めて少なく且つ均一な被膜になる。従って、次工程で、合金化溶融亜鉛めっき層の上に形成された金属酸化物被膜の、合金化溶融亜鉛めっき層に対する密着性は、一段と良好になる。 【0016】高周波誘導加熱炉内を、5%以下の酸素濃度の雰囲気にする手段としては、高周波誘導加熱炉の鋼板の入口および出口を、外気が侵入しないように充分にシールするか、または、高周波誘導加熱炉内に不活性ガスを吹込み炉内を不活性ガス雰囲気にすればよい。 【0017】高周波誘導加熱炉内での、溶融亜鉛めっき層の形成された鋼板に対する好ましい加熱条件は、次の通りである。 加熱温度:450 〜600 ℃、加熱時間: 1 〜 20 秒。 【0018】上述した高周波誘導加熱によって形成される合金化溶融亜鉛めっき層の結晶構造は、ζ相を主体とする合金相であることが好ましい。このように、合金化溶融亜鉛めっき層の結晶構造を、ζ相を主体とする合金相とすることにより、プレス成形時におけるめっき層の剥離(パウダリング)を少なくすることができ、耐パウダリング性を向上させることができる。 【0019】結晶構造を、ζ相を主体とする合金相とするためには、合金化のための加熱温度および加熱時間を、480 〜510 ℃, 1 〜5 秒となるように制御することが必要であり、高周波誘導加熱によればこのような制御を容易に行うことができる。従来のガス加熱によっては、このような制御は困難であり、ガス加熱によって形成された合金化溶融亜鉛めっき層の結晶構造は、主としてδ1 相を主体とする合金相になる。従って、ガス加熱によって合金化溶融亜鉛めっき層を形成した場合のめっき鋼板の耐パウダリング性は、高周波誘導加熱によって合金化溶融亜鉛めっき層を形成した場合に比べて劣化する。 【0020】合金化溶融亜鉛めっき層の表面上への金属酸化物被膜の形成は、合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に、金属イオンを含有する溶液を噴霧し、次いで、加熱、乾燥するか、合金化溶融亜鉛めっき層の形成された鋼板を、金属イオンおよび酸化剤を含有する溶液と接触させるか、または、金属イオンおよび酸化剤を含有する溶液中で鋼板を陰極として、電解処理を施すことによって行うことができる。 【0021】金属イオンとしては、その金属の酸化物の融点が約1,000 ℃以上であって、めっき層の融点よりも高く、且つ、硬質であることが必要であり、例えば、ニッケル、マンガン、チタン、コバルト、カルシウム、バナジウム、タングステン、錫、鉄およびモリブデンからなる群から選んだ少なくとも1つの金属のイオンが使用される。 【0022】金属酸化物被膜の付着量は、金属換算で鋼板片面当り5〜500mg/m2の範囲内に限定すべきである。金属酸化物被膜の付着量が鋼板片面当り5mg/m2 未満では、プレス成形性およびスポット溶接性の向上効果が得られない。一方、金属酸化物被膜の付着量が鋼板片面当り500mg/m2を超えると、上記効果が飽和するばかりでなく、多量の酸化物被膜によって、スポット溶接時の電気抵抗が高くなり過ぎる結果、スパーク放電が発生し、逆に銅電極が損耗する。 【0023】この発明においては、前述したように、金属酸化物被膜が形成される合金化溶融亜鉛めっき層表面の酸化が少なく、且つ、酸化被膜が生成してもその膜厚は均一であるから、合金化溶融亜鉛めっき層の上に形成された金属酸化物被膜の、合金化溶融亜鉛めっき層に対する密着性が良好になる。従って、プレス成形時における、めっき表面とプレス用金型との摺動抵抗が低下し、プレス成形性が向上する。 【0024】更に、上述のようにして形成された金属酸化物被膜の電気抵抗は大きく且つその融点が高いので、スポット溶接時に、銅電極に亜鉛と銅との反応による脆い亜鉛−銅合金層の生成することが殆どなく、従って、銅電極の損耗が抑制され、スポット溶接性が向上する。また、合金化溶融亜鉛めっき層の結晶構造が、ζ相を主体とする合金相の場合には、合金相の融点が低いために、摺動抵抗(摩擦係数)が高くなる問題があるが、その上に形成された金属酸化物被膜によって、上記問題は解決される。 【0025】金属酸化物被膜の付着量を、金属換算で鋼板片面当り5〜500 mg/m2 の範囲内とするための条件は、次の通りである。 (1) 金属イオンを含有する溶液を噴霧する場合溶液の噴霧量:片面当たり 5〜1000 ml/m2、加熱温度: 100 〜350 ℃、加熱時間: 2 〜 50 秒。 (2) 金属イオンおよび酸化剤を含有する溶液と接触させる場合酸化剤含有量: 1 〜100 g/l 、溶液との接触時間:0.1 〜60秒。 (3) 金属イオンおよび酸化剤を含有する溶液中で陰極電解する場合酸化剤含有量: 1 〜100 g/l 、電解時間: 0.1 〜10秒、電解電流密度:0.1 〜100A/dm2。 【0026】 【実施例】次ぎに、この発明を、実施例により、比較例と対比しながら説明する。板厚0.8mm の冷延鋼板の両表面上に、下記条件により、合金化溶融亜鉛めっき層(Fe:10wt.%、残り: Zn) を形成した。 溶融亜鉛めっき浴の成分組成: Al:0.14 wt.%, 残り:Zn 、めっき浴温度: 460 ℃、加熱炉 :高周波誘導加熱炉、加熱温度:480 〜500 ℃、加熱時間:3 〜5 秒。 【0027】次いで、合金化溶融亜鉛めっき層の上に、以下に述べる方法により、金属酸化物被膜を形成した。 A:その表面上に合金化溶融亜鉛めっき層が形成された直後の、温度が250 ℃以上の鋼板の合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に、下記条件によって、金属イオンを含有する溶液を噴霧し、次いで、加熱、乾燥する。 溶液の成分組成:塩酸塩、硝塩または水酸化物塩水溶液、溶液中の金属イオン含有量:0.1 〜10 g/l、溶液の噴霧量:所定の付着量が得られるように調整、加熱温度: 300℃、加熱時間: 10秒。 【0028】B:その表面上に合金化溶融亜鉛めっき層が形成された鋼板を陰極として、金属イオンおよび酸化剤を含有する電解液中で、下記条件により電解処理を施す。 電解液の組成:塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩または金属酸塩 (NH4MoOX 等) 、電解液中の金属イオン含有量:5 〜200 g/l 、電解液中の酸化剤含有量: 5 〜100 g/l 、電解電流密度: 2〜10 A/dm2、電解時間: 所定の付着量が得られるように調整。 【0029】かくして、合金化溶融亜鉛めっき層の表面上に金属酸化物被膜を有する、この発明の範囲内の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の供試体(以下、「本発明供試体」という)No.1〜18を調製した。 【0030】比較のために、合金化のための加熱を、従来のガス燃焼式加熱炉により行って合金化溶融亜鉛めっき層を形成し、または、高周波誘導加熱により合金化溶融亜鉛めっき層を形成しても、その上に形成された金属酸化物被膜の量がこの発明の範囲外である合金化溶融亜鉛めっき鋼板の供試体(以下、「比較用供試体」という)No. 1〜8を調製した。 【0031】表1に、本発明供試体No.1〜18の各々における、合金化溶融亜鉛めっき層のめっき量、合金化加熱炉、めっき層の結晶構造、加熱炉内雰囲気の酸素量、および、金属酸化物被膜の形成方法、その組成ならびに付着量を示し、そして、表2に、比較用供試体No. 1〜8の各々における、合金化溶融亜鉛めっき層のめっき量、合金化加熱炉、めっき層の結晶構造、加熱炉内雰囲気の酸素量、および、金属酸化物被膜の形成方法、その組成ならびに付着量を示す。なお、表1および2の合金化加熱炉の欄において、「IH」は高周波誘導加熱炉を示し、そして、「Gas」はガス燃焼式加熱炉を示す。 【0032】 【表1】
【0033】 【表2】 【0034】上述した本発明供試体No.1〜18および比較用供試体No.1〜8の各々について、プレス成形性、スポット溶接性、化成処理性および塗料密着性を、以下に述べる性能試験によって評価した。本発明供試体の評価結果を表3に示し、そして、比較用供試体の評価結果を表4に示す。 【0035】 【表3】 【0036】 【表4】 【0037】(1) プレス成形性:(a) 摩擦係数:各供試体の摩擦係数を、以下に述べる装置により測定した。図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。摩擦係数測定装置は、図1に示すように、その上に供試体1が載置される、図示しない駆動機構によって水平移動可能なスライドテーブル2と、スライドテーブル2上の供試体1をその上方から押さえるビード3と、スライドテーブル2の下方における、ビード3と対称位置に設けられた、スライドテーブル2の下面に接触するローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5と、スライドテーブル支持台5に取り付けられた、スライドテーブル支持台5による押し付け荷重Nを測定するための第1ロードセル6と、スライドテーブル2の水平移動方向の端部に取り付けられた、スライドテーブル3による摺動抵抗Fを測定するための第2ロードセル7と、レール8とからなっている。ビード3は、図2に斜視図で示すように、12×10mmの長方形の上面3aと、供試体1との接触部の幅が3mmでその両側に4.5Rの湾曲部を有する下面3bとからなっている。 【0038】図示しない駆動機構により、スライドテーブル支持台5を上方に押し上げて、スライドテーブル2上に載置された供試体1を、ビード3に矢印で示すように、押し付け荷重Nで接触させるとともに、図示しない別の駆動機構により、スライドテーブル2を、供試体1と共に、矢印で示す摺動抵抗力Fで、水平移動させる。この水平移動時における押し付け荷重Nと摺動抵抗力Fとの比(F/N)とから、摩擦係数μを算出した。なお、この供試体の測定においては、押し付け荷重Nを400Kgfとし、そして、スライドテーブル2の引き抜き速度を100cm/min とした。 【0039】(b) めっき剥離量:各供試体を、図3 に示したドロービード試験機を使用してしごいて、供試体の金属酸化物被膜および合金化溶融亜鉛めっき層の単位面積あたりの剥離量を以下に述べる方法により測定した。即ち、図3 に示した概略断面図に示すような、所定の長さの水平な突条を有する雄ダイス9 と、雄ダイス9 と向き合った所定の長さの溝を有する雌ダイス10との間に供試体1 を垂直に挿入し、雄ダイス9 と雌ダイス10とを500kgfの圧力で押しつけ、上方に引き抜いてしごいた。このようにしてしごかれた供試体に接着テ−プを貼り、次いでこれを剥がして金属酸化物皮膜および合金化溶融亜鉛めっき層の剥離量を測定した。なお、雄ダイス9 の突条の先端は0.5 mmR 、雌ダイス10の肩は1 mmR、そして、雄ダイス9 および雌ダイス10の溝の幅は40mm、供試体の幅は30mmであった。 【0040】(2) スポット溶接性:供試体の各2枚に対し、1対の電極によってスポット溶接を連続的に施した。スポット溶接性の評価は、各2枚の供試体の接合部に、下記に示す試験条件により、所定の直径以上の適切なナゲットを形成し得る、前記1対の電極の溶接回数(連続打点数)を調べ、その結果によって行った。 電極 :先端径6mm、ドーム型加圧力 :250 Kg溶接時間:12サイクル溶接電流:11.0KA溶接速度:1点/sec電極寿命:ナゲット径が数1(t:板厚)を下回った溶接回数(連続打点数)を電極の寿命とした。 【0041】 【数1】
【0042】(3) 化成処理性:各供試体に対し、燐酸塩処理液 PBL3080(日本パーカライジング社製)中において、通常の処理条件において燐酸塩処理を施して、各供試体の表面上に燐酸塩被膜を形成した。このようにして形成された燐酸塩被膜の結晶状態を、走査型電子顕微鏡(SEM) を使用して調べ、次の基準によって評価した。 ○:燐酸塩結晶が均一に形成されている、×:燐酸塩結晶が形成されていないか、または、燐酸塩結晶の形成が不均一で亜鉛系めっき層の露出している部分がある。 【0043】(4) 塗料密着性:各供試体に対して、通常の化成処理によってその表面上に燐酸塩被膜を形成し、次いで、カチオン電着塗装処理を施して、燐酸塩被膜の上に塗膜を形成した。このようにして得られた塗膜を有する供試体を、40℃の温水に200 時間浸漬した後、1mm間隔で100 個の碁盤目状の刻み目を入れた。次いで、碁盤目状の刻み目を有する塗膜の表面上に接着テープを貼り次いでこれを剥がした。そのときに、接着テープと共に剥離した塗膜の面積を調べ、次の基準によって評価した。 ◎: 塗膜の剥離量が全面積の5%未満、○:塗膜の剥離量が全面積の5%以上10%未満、×:塗膜の剥離量が全面積の10%以上。 【0044】各供試体の金属酸化物被膜の付着量(金属換算)の測定は、各供試体の金属酸化物を亜鉛系めっき層と共に1Nの塩酸中で溶解した上、ICP発光分光分析法により金属イオンを定量することにより行った。なお、金属酸化物が塩酸に不溶の場合には、塩酸溶解後に不溶性残渣を濾過し、次いで、混合融剤で融解した後に塩酸で溶液化した上、ICP発光分光分析法により金属イオンを定量した。 【0045】めっき層の結晶構造は、X線回折パターンによって、それぞれの結晶に帰属されるピークの強度を算出し、下記に示す比率(Z/D)が20以上のものを、ζ相を主体とする合金相と判断し、それ以外のものを、δ1 相を主体とする合金相と判断した。 Z/D=Int.ζ/Int.δ1 ×100【0046】表2および4から明らかなように、合金化溶融亜鉛めっき層の形成のための溶融亜鉛めっき鋼板に対する加熱を、ガス燃焼式加熱炉によって行った比較用供試体No. 1および2は、合金化溶融亜鉛めっき層の上に金属酸化物被膜が形成されていても、プレス成形性およびスポット溶接性が悪く、そして、塗料密着性が劣っていた。溶融亜鉛めっき鋼板に対する加熱をガス燃焼式加熱炉によって行い、且つ、合金化溶融亜鉛めっき層の上に金属酸化物被膜を有しない比較用供試体No. 3および4は、プレス成形性およびスポット溶接性が極めて悪かった。 【0047】合金化溶融亜鉛めっき層の形成のための溶融亜鉛めっき鋼板に対する加熱を、高周波誘導加熱炉によって行っても、合金化溶融亜鉛めっき層の上に形成された金属酸化物被膜の量が、本発明の範囲よりも少ない比較用供試体No. 5は、摩擦係数が高くそしてスポット溶接性が悪かった。 【0048】溶融亜鉛めっき鋼板に対する加熱を、高周波誘導加熱炉によって行っても、合金化溶融亜鉛めっき層の上に形成された金属酸化物被膜の量が、本発明の範囲を超えて多い比較用供試体No. 6、7は化成処理性およびスポット溶接性が悪かった。そして、溶融亜鉛めっき鋼板に対する加熱を、高周波誘導加熱炉によって行っても、合金化溶融亜鉛めっき層の上に金属酸化物被膜を有しない比較用供試体No. 8、9は、摩擦係数が高く、スポット溶接性が極めて悪かった。 【0049】これに対して、表1および3から明らかなように、本発明供試体No. 1〜18は、プレス成形性、スポット溶接性、化成処理性、塗料密着性および耐パウダリング性の総てにおいて優れており、特に、合金化溶融亜鉛めっき層の結晶構造がζ相を主体とする合金相からなる本発明供試体No. 1〜13は、めっき剥離量が少なく、そして、加熱炉の炉内雰囲気の酸素量が5%以下の条件で調製した本発明供試体No. 1〜5およびNo. 14〜18は、塗料密着性が一段と優れていた。 【0050】 【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、プレス成形性、スポット溶接性、化成処理性および塗料密着性に優れた、特に自動車用鋼板として好適な亜鉛系めっき鋼板が得られる、工業上有用な効果が発揮される。
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