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発明の名称 筒体溶接用固定治具
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平7−214380
公開日 平成7年(1995)8月15日
出願番号 特願平6−11105
出願日 平成6年(1994)2月2日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 精孝
発明者 古谷 淳一
要約 目的
溶接時における各筒体の位置ずれを確実に防止することのできる筒体溶接用固定治具を提供する。

構成
可動部3によって圧接部4を各筒体A,Bの軸方向に移動させることにより、各筒体A,B内に挿入したとき圧接部4が各筒体A,Bの突き合わせ部分に位置するよう調整される。次に、圧接部4を各筒体A,B内に挿入して一方の筒体Aの挿入端を位置決め部1のフランジ1aに当接させて位置決めした後、ハンドル5bを回してテーパ状部材5を先端方向に移動させ、圧接部4の各圧接子4aを各筒体A,Bの径方向外側に向かって移動させることにより、圧接部4の外周面が拡大し、圧接部4が各筒体A,Bの突き合わせ部分を間にして各筒体A,Bの内面に圧接する。これにより、各筒体A,Bが互いに一端を突き合わせた状態で確実に保持される。
特許請求の範囲
【請求項1】 同一内径の筒体同士を溶接する際、これらの一端を互いに突き合わせた状態で保持する筒体溶接用固定治具において、各筒体内に挿入される圧接部と、一方の筒体の挿入端に当接する位置決め部と、圧接部を位置決め部に対して各筒体の軸方向に移動可能な可動部とを備え、前記圧接部を各筒体の突き合わせ部分を間にして各筒体の内面に圧接し得るよう各筒体の径方向に拡大及び縮小可能に設けたことを特徴とする筒体溶接用固定治具。
【請求項2】 前記圧接部を各筒体の円周方向に配置された多数の圧接子によって形成し、各圧接子の中心に配置されたテーパ状部材を各筒体の軸方向に移動させることにより各圧接子を各筒体の径方向に移動させるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の筒体溶接用固定治具。
【請求項3】 前記各筒体の溶接部分を各筒体の内側から覆う不活性ガス流通路を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の筒体溶接用固定治具。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば円形ダクト等のような筒体同士を溶接する際、これらの一端を互いに突き合わせた状態で保持するための筒体溶接用固定治具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、同一内径の筒体同士を接合する場合には各筒体の一端を突き合わせた状態で保持し、その突き合わせ部分を各筒体の外側から周方向に溶接している。また、TIG溶接等、不活性ガス雰囲気中で溶接する場合は、各円筒体内にも不活性ガスを充満させ、溶接ビードの裏側の酸化を防ぐようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述のような筒体同士の溶接においては、各筒体の突き合わせ部分が溶接歪み等により位置ずれを起こした状態で溶接される、いわゆるミスマッチが発生する場合がある。このようなミスマッチは溶接部分の寿命に影響を与えるため、溶接肉盛等によって形状を平坦に整えるなどの面倒な後処理が必要になる上に、ミスマッチ量が大きい場合には製品を廃却せざるを得なかった。
【0004】本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶接時における各筒体の位置ずれを確実に防止することのできる筒体溶接用固定治具を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、請求項1では、同一内径の筒体同士を溶接する際、これらの一端を互いに突き合わせた状態で保持する筒体溶接用固定治具において、各筒体内に挿入される圧接部と、一方の筒体の挿入端に当接する位置決め部と、圧接部を位置決め部に対して各筒体の軸方向に移動可能な可動部とを備え、前記圧接部を各筒体の突き合わせ部分を間にして各筒体の内面に圧接し得るよう各筒体の径方向に拡大及び縮小可能に設けている。
【0006】また、請求項2では、請求項1記載の筒体溶接用固定治具において、前記圧接部を各筒体の円周方向に配置された多数の圧接子によって形成し、各圧接子の中心に配置されたテーパ状部材を各筒体の軸方向に移動させることにより各圧接子を各筒体の径方向に移動させるよう構成している。
【0007】また、請求項3では、請求項1または2記載の筒体溶接用固定治具において、前記各筒体の溶接部分を各筒体の内側から覆う不活性ガス流通路を備えている。
【0008】
【作用】請求項1の筒体溶接用固定治具によれば、可動部によって圧接部を各筒体の軸方向に移動させることより、各筒体内に挿入したとき圧接部が各筒体の突き合わせ部分に位置するよう調整される。次に、圧接部を各筒体内に挿入して一方の筒体の挿入端を位置決め部に当接させて位置決めした後、圧接部を各筒体の径方向に拡大させることにより、圧接部が各筒体の突き合わせ部分を間にして各筒体の内面に圧接し、各筒体が互いに一端を突き合わせた状態で確実に保持される。
【0009】また、請求項2の筒体溶接用固定治具によれば、請求項1の作用に加え、前記圧接部は各筒体の円周方向に配置された多数の圧接子が各圧接子の中央に配置されたテーパ状部材を各筒体の軸方向に移動することにより各筒体の径方向に移動するよう構成されていることから、圧接部の拡大及び縮小が容易に行われるとともに、圧接部が各筒体の内面に均一に圧接する。
【0010】また、請求項3の筒体溶接用固定治具によれば、請求項1または2の作用に加え、各筒体の溶接部分の内側が不活性ガス流通路によって覆われ、その溶接ビードの裏側が不活性ガス流通路内を流通する不活性ガスによって保護されることから、各筒体の内側に供給される不活性ガスの量が必要最小限になり、不活性ガスを無駄に消費することがない。
【0011】
【実施例】図1乃至図3は本発明の一実施例を示すもので、図1は筒体溶接用固定治具の側面断面図、図2はその要部正面図である。この筒体溶接用固定治具は、互いに溶接される各筒体A,Bのうち一方の挿入端に当接する位置決め部1と、位置決め部1の一端を閉塞する円板2と、位置決め部1に各筒体A,Bの軸方向に移動可能に取付けられた可動部3と、可動部3の先端に取付けられた圧接部4と、圧接部4を各筒体A,Bの径方向に拡大及び縮小させるテーパ状部材5とから構成されている。
【0012】位置決め部1は各筒体A,Bの内径よりも若干小さい外径の筒状に形成され、その一端には各筒体A,Bのうち一方の挿入端に当接するフランジ1aが設けられている。
【0013】円板2は位置決め部1のフランジ1a側に取付けられ、その中央には後記するシャフト5aと螺合する螺合部2aが設けられている。
【0014】可動部3は位置決め部1の内面に螺合しており、可動部3を各筒体A,Bの軸回りに回転させると可動部3が軸方向に移動するようになっている。
【0015】圧接部4は各筒体A,Bの円周方向に等間隔で配置された多数の圧接子4aからなり、各圧接子4aは図2に示すように扇形に形成されている。各圧接子4aには各筒体A,Bの径方向に延びる長孔4bが設けられ、各長孔4bにはそれぞれボルト4cが遊挿されている。また、各圧接子4aは可動部3の先端面と中央に貫通孔を有する固定板4dとの間に摺動自在に介装され、可動部3と固定板4dは各ボルト4cによって互いに連結されている。これにより、各圧接子4aはボルト4cに案内されながら長孔4bに沿って各筒体A,Bの径方向に移動可能であり、各圧接子4aを外側に向かって移動させれば圧接部4の外周面が拡大し、各圧接子4aを内側に向かって移動させれば圧接部4の外周面が縮小するようになっている。また、各圧接子4aの外周面の厚さ方向中央には周方向に延びる溝4eが設けられ、圧接子4aの外周面が溝4eを間にして各筒体A,Bの内面にそれぞれ接触するようになっている。
【0016】テーパ状部材5は先端に向かって外径が徐々に小さくなっており、その周面を各圧接子4aの一端に接触させた状態で各圧接子4aの中央に配置されている。テーパ状部材5は各筒体A,Bの軸上に延びるシャフト5aの一端に取付けられ、シャフト5aの他端側は円板2の螺合部2aを貫通して円板2の外部まで延びている。シャフト5aの周面には円板2の螺合部2aと螺合する螺旋条が形成され、シャフト5aを回転させるとシャフト5aの螺進退に伴ってテーパ状部材5が各筒体A,Bの軸方向に移動するようになっている。尚、シャフト5aの回転にはシャフト5aの他端に取付けられたハンドル5bが用いられる。
【0017】以上のように構成された筒体溶接用固定治具は、各筒体A,Bを溶接する際に用いられる。即ち、筒体溶接用固定治具においては、まず可動部3を位置決め部1に対して回転し、位置決め部1のフランジ1aに対する圧接部4の位置を調整する。その際、各筒体A,Bのうち一方(この場合、筒体A)の挿入端が位置決め部1のフランジ1aに当接したとき圧接部4が各筒体A,Bの突き合わせ部分に位置するようにしておく。次に、図3に(a) 示すように圧接部4を各筒体A,B内に挿入し、一方の筒体Aの挿入端を位置決め部1のフランジ1aに当接させて位置決めした後、図3に(b) 示すようにハンドル5bを回してテーパ状部材5を先端方向に移動させ、各圧接子4aを各筒体A,Bの径方向外側に向かって移動させる。これにより、圧接部4の外周面が拡大し、圧接部4が各筒体A,Bの突き合わせ部分を間にして各筒体A,Bの内面に圧接する。この圧接により各筒体A,Bが互いに一端を突き合わせた状態で確実に保持され、各筒体A,Bを溶接する際、各筒体A,Bが互いに位置ずれを起こすことなく接合される。溶接が完了したならばハンドル5bを前述の反対方向に回して圧接部4の外周面を縮小させ、筒体溶接用固定治具を各筒体A,Bから取外せばよい。
【0018】このように、本実施例の筒体溶接用固定治具によれば、各筒体A,Bの径方向に拡大及び縮小可能な圧接部4を各筒体A,B内に挿入し、圧接部4を拡大させて各筒体A,Bの内面に圧接させるようにしたので、各筒体A,Bを互いに一端を突き合わせた状態で確実に保持することができ、溶接時における各筒体A,Bの位置ずれを確実に防止することができる。また、本実施例では圧接部4を多数の圧接子4aによって形成し、各圧接子4aの中央に配置されたテーパ状部材5によって各圧接子4aを各筒体A,Bの径方向に移動させるようにしたので、圧接部4の拡大及び縮小を容易に行えるとともに、圧接部4を各筒体A,Bの内面に均一に圧接させることができ、実用に際して極めて有利である。尚、圧接部4の構造は前記実施例に限ることはなく、例えばエアシリンダや油圧シリンダ等の流体圧機構を用いて各圧接子4aを駆動するようにしてもよい。
【0019】図4及び図5は本発明の他の実施例を示すもので、前記実施例の筒体溶接用固定治具に不活性ガス流通路を設けたものである。
【0020】本実施例に示す不活性ガス流通路6は断面コ字状に形成された多数の通路部材6aからなり、各通路部材6aは図4に示すように環状に配列され、図5に示すように前記各圧接子4aの溝4e内に収容されている。各通路部材6aは隣合うもの同士の端部が摺動自在に重なり合っており、各圧接子4aの径方向への移動に追従できるようになっている。また、所定の通路部材6aにはガス吸入口6b及びガス排出口6cが設けられ、ガス吸入口6bは図示しない不活性ガス供給手段に接続されている。
【0021】即ち、各筒体A,Bの溶接をTIG溶接等のように不活性ガス雰囲気中で行う場合、まず前記実施例で示したように各筒体A,Bを筒体溶接用固定治具によって固定した後、不活性ガス流通路6にアルゴン、ヘリウム、その他溶接用ガスシールドに用いられる不活性ガスを供給し、図6に示すように各筒体A,Bの突き合わせ部分を溶接する。その際、溶接部分に形成される溶接ビードCの表側は溶接機の先端7から噴出される不活性ガスGによって保護される。また、溶接部分の内側は不活性ガス流通路6によって覆われるため、溶接ビードCの裏側は不活性ガス流通路6内を流通する不活性ガスGによって保護される。
【0022】このように、本実施例の筒体溶接用固定治具によれば、各圧接子4aの溝4e内に各筒体A,Bの溶接部分を内側から覆う不活性ガス流通路6を設け、溶接ビードCの裏側を不活性ガス流通路6内を流通する不活性ガスGによって保護するようにしたので、各筒体A,Bの内側に供給する不活性ガスGの量を必要最小限にすることができ、高価な不活性ガスGを無駄に消費することがなく、溶接コストの低減を図ることができる。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の筒体溶接用固定治具によれば、互いに溶接される筒体同士を一端を突き合わせた状態で確実に保持することができるので、溶接時における各筒体の位置ずれを確実に防止することができる。
【0024】また、請求項2の筒体溶接用固定治具によれば、請求項1の効果を達成し得るとともに、圧接部の拡大及び縮小を容易に行うことができ、しかも各筒体の内面に均一に圧接することができるので、実用に際して極めて有利である。
【0025】また、請求項3の筒体溶接用固定治具によれば、請求項1または2の効果を達成し得るとともに、各筒体の内側に供給する不活性ガスの量を必要最小限にすることができるので、不活性ガスを無駄に消費することがなく、溶接コストの低減を図ることができる。


 

 


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