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発明の名称 回転ノズル装置およびその設計方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平7−31575
公開日 平成7年(1995)2月3日
出願番号 特願平5−181137
出願日 平成5年(1993)7月22日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小鍜治 明 (外2名)
発明者 合原 一幸 / 野村 博義 / 若見 昇
要約 目的
均一な水の散布が可能な回転ノズル装置を提供する。

構成
複数のリンクから構成されたノズルを用い,噴射口の水の噴射角度などを適当な値に設定することにより,ノズルをカオス状態にすることができる。カオスは,軌道不安定性という特徴を持つため,カオス状態にあるノズルは,2度と同じ軌道を通らない。したがって,従来のノズルと比べてより均一な水の散布が可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により,中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、前記リンクの形状・重さ・重心の位置と前記噴射口の流体噴射角度を調整することにより、前記ノズルを構成する少なくともひとつの中空リンクの動きをカオス状態にすることを特徴とする回転ノズル装置。
【請求項2】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により、中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、前記ノズルを構成する少なくともひとつの中空リンクの回転中心が前記中空リンクの重心から離れていることを特徴としたノズル装置。
【請求項3】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により、中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、前記中空リンクの接続部の少なくともひとつに遊びを設けることにより、流体の流れの強さにしたがって各中空リンクの回転中心または重心位置が変化するようにした回転ノズル装置。
【請求項4】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により、中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、前記ポンプの加圧力を所定のパターンにしたがって変化させる加圧力制御回路を備えたことを特徴とする回転ノズル装置。
【請求項5】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により、中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、カオス信号を発生するカオス信号発生部と前記カオス信号発生部の信号に応じて前記ポンプの加圧力を変化させる加圧力制御回路を備えた回転ノズル装置。
【請求項6】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により、中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、前記中空リンクにおける流体の流れを制限する水流抑制手段を前記中空リンクの少なくともひとつに設け、流体の流れの強さが各中空リンクの回転位置に応じて変化するようにした回転ノズル装置。
【請求項7】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により、中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、前記ノズルの回転運動特性を検出するセンサーと、前記センサーから検出されたデータからカオス特徴量を計算するカオス特徴量計算回路と、前記カオス特徴量計算部で計算した特徴量からノズルの動作状態を判断しノズルがカオス状態でない場合に、前記ポンプの加圧力を変化させる加圧制御回路を備え,ノズルの動作を常時カオス状態に保つ回転ノズル装置。
【請求項8】請求項1から7のいづれかの回転ノズル装置を備えた洗浄機。
【請求項9】請求項1から7のいづれかの回転ノズル装置を備えた食器洗い機。
【請求項10】請求項1から6のいづれかの回転ノズル装置を備えた散水機。
【請求項11】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により、中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、前記ノズルの回転運動特性を検出し、検出されたデータから最大リアプノフ数を計算して、前記最大リアプノフ数が正となるように、前記リンクの少なくとも一つのリンクの形状・重さ・重心位置および噴射口の流体噴出角度を決定する回転ノズル装置設計方法。
【請求項12】流体を加圧するポンプと、相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルと、前記ノズルの少なくともひとつの中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち、前記ポンプにより加圧された流体の力により、中空リンクを回転させながら流体を前記噴射口から噴射する回転ノズル装置において、前記ノズルの回転運動特性を検出し、検出されたデータからフラクタル次元を計算し、前記フラクタル次元が非整数値になるように、前記リンクの少なくともひとつのリンクの形状・重さ・重心位置および噴射口の流体噴出角度を決定する回転ノズル装置設計方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,回転しながら流体を噴射する回転ノズル装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】回転ノズル装置の応用のひとつとして,食器洗い機が知られている。
【0003】ここでは,食器洗い機を例として回転ノズル装置の従来技術を説明する。図14に従来の食器洗い機を示す。101は食器洗い機のボディ,102は食器を食器洗い機内部に入れるためのふた,103は水を食器洗い機内に取り入れるための給水ホース,104は給水ホース103からの水を加圧しノズルを回転させかつ水を噴射させるためのノズル駆動ポンプ,105は回転ノズル,106は内部にたまった水を排水させるための排水ポンプ,107は排水を食器洗い機外へ導く排水ホース,108はノズル駆動ポンプ104と排水ポンプ106の動作タイミングを制御する制御回路である。以上のように構成された従来の食器洗い機では,給水ホース103から供給される水をノズル駆動ポンプ104が加圧し回転ノズル105に供給する。
【0004】回転ノズル105の従来例を図15に示す。図15は回転ノズル105を上方向からみたもので,水の噴射口が4つ(A,B,C,D)ついている。各噴射口における水の噴射方向は,Aがノズルの回転平面に対して水平方向に設定され,B,C,D はノズルの回転平面に対して垂直方向に設定されている。噴射口Aからの水の噴射の反作用によりノズルは回転し,他の噴射口(B, C, D)からの水の噴射により食器が洗浄される。したがって,ノズルは回転しながら水を食器に噴射することができる。
【0005】なお,食器にかけられた水は排水ポンプ106に集められ,加圧された後,排水ホース107を通って外部に排出される。また,ノズル駆動ポンプ104と排水ポンプ106は制御回路108でコントロールされており,食器の洗浄,ためすすぎ,すすぎなどの洗浄プロセスに応じて適切な動作タイミングで制御される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記した回転ノズル105の噴射口の回転軌跡を図16に示す。図16からわかるように,ノズルは単純な回転しかしておらず,噴射口の軌跡は完全な円となる。したがって,回転ノズル105から噴射された水は食器の限られた場所にしかかからないため,食器の配置の仕方によっては十分な洗浄効果が得られないとか,食器の細かなすき間にまで水が行き渡らないとかいう課題があった。
【0007】本発明は、かかる点に鑑み、カオス技術を用いて回転ノズルの駆動を行ない,これにより水を対象に対して均一に噴射することのできる回転ノズル装置を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】流体を加圧するポンプと,相互に連通した回転可能な複数の中空リンクから構成されたノズルで,中空リンクに少なくとも1つの流体の噴射口を持ち,ポンプにより加圧された流体の力により,中空リンクを回転させながら流体を噴射口から噴射する回転ノズル装置において,リンクの形状・重さ・重心位置,噴射口の流体噴射角度,ポンプの加圧パターンなどを調整することにより,ノズルの動きをカオス状態にする。
【0009】
【作用】カオスは軌道不安定性という特徴を持つため,カオス状態にあるノズルは,2度と同じ軌道を通らない。したがって,カオス状態のノズルは従来のノズルと比べてより均一な水の散布が可能となる。
【0010】
【実施例】図1(a)は本発明の第1の実施例における回転ノズル装置の構成図を示すものである。1は供給される水を加圧するノズル駆動ポンプ,2はノズル駆動ポンプ1によって加圧された水の力により回転し水を噴射する2リンク回転ノズルである。
【0011】2リンク回転ノズル2の詳細な構成を図1(b)に示す。図1(b)の上段は,2リンク回転ノズル2の上面図,下段は側面図を示す。図1(b)のように2リンク回転ノズル2は2つのリンク(第1リンク2-1,第2リンク2-2)から構成されている。各リンクは複数の噴射口をもっており,図1(b)では,A〜Fの記号で表されている。なお,各噴射口が水を吹き出す方向は噴射口ごとに異なっている。
【0012】各リンクやリンクの接続部は中空であり,第1リンクの下の水取り入れ口に供給された水は,中空のリンク内部を通り第1リンクや第2リンクの噴射口にまで達することができる。なお,図の2つのリンクは中心02で結合されており,中心02で第2リンク2-2は自由に回転できる構造となっている。また,第1リンクの水取入れ口は対象とする機器に接続されるが,第1リンク2-1は中心01で自由に回転することができる。
【0013】このように構成された回転ノズル装置の動作を以下説明する。まず,水はノズル駆動ポンプ1で加圧され,2リンク回転ノズル2の水取り入れ口に供給される。供給された水は第1リンクと第2リンクの内部を通り,噴射口A〜Fから噴射される。各噴射口の水の噴射方向は,B,C,D,Eがノズルの回転平面に対して上方向,A,Fが横方向である。
【0014】図1(b)に,各噴射口における水の噴射方向を矢印で示す。噴射口B,C,D,Eは,水をノズルの回転平面に対して垂直な方向に吹き出すため,ノズルを回転させる力を生むことができない。しかし,噴射口A,Fは,水をノズルの回転平面と並行に吹き出すため,吹き出した水の反作用によりノズルを回転させることができる。
【0015】このように,いくつかの噴射口の水の吹きだし方向をリンクの回転可能な方向に傾けることにより,リンクに回転の力を与えることができ,ノズルは回転しながら水を噴射することができる。
【0016】図15に示した従来の回転ノズル装置でも,リンクの回転平面に対して並行に水を噴射するため,回転しながら水を噴射する。しかし,従来の回転ノズル装置では,リンクが1つしかないため噴射口の軌跡は単純な円となる。
【0017】一方,本実施例の場合,ノズルは2個のリンクにより構成されているため,第2リンクの上についた噴射口の回転軌跡は従来の円軌道よりも複雑になる。
【0018】図15の従来の回転ノズル装置における噴射口Dの回転軌跡のシミュレーション結果を図2(a)に示し,2リンク回転ノズル2の第2リンク2-2上の噴射口Cの回転軌跡のシミュレーション結果を図2(b)に示す。ただし,図2(b)は第1リンク2-1の回転数と第2リンク2-2の回転数の比を 2:5 に設定した時の計算結果である。
【0019】図2より,従来の回転ノズル装置の噴射口は1つの円周上を動いているのに対して,本実施例ではノズルがより複雑な動きをしていることがわかる。しかし,図2(b)の場合も回転は周期的であり,どんなに時間が経過しても図2(b)に示した軌道以外を噴射口が通過することはない。
【0020】しかし,2リンク回転ノズル2は,リンクや噴射口の設計を変更することにより図2(b)以上の複雑さでの駆動を可能とすることができる。
【0021】軌跡がさらに複雑になった状態としてカオス状態が知られている。ここでのカオスとは決定論的カオスを意味し,完全な運動方程式が記述されているにもかかわらず,非常に不安定でランダムな動きをする状態を示す。
【0022】2リンク回転ノズル2のような,複数のリンクをもつ装置の運動はカオス状態に変化させることが可能であり,例えば,2リンク以上のマニピュレータや二重振子などがカオス状態に遷移できることが知られている(培風館 カオス入門 長島・馬場共著 参照)。
【0023】カオス状態は軌道不安定性という特徴を持ち,同じ軌道を2度と通過することがない。したがって,2リンク回転ノズルをカオス状態にすることにより,さらに均一に水を噴射することができる。
【0024】カオス状態であることを示す指標として,フラクタル次元やリアプノフ数等のカオス特徴量がある。これらの値が適当な値になるように,噴射口の水の噴射方向やリンクの重心や形状・重さを変えることにより2リンク回転ノズルをカオス状態にすることができる。
【0025】ここでは,例として最大リアプノフ数を用いて,噴射口の水の吹きだし方向やリンクの形状・重心位置を決める方法を示す。
【0026】リアプノフ数とは,軌跡が初期値に対してどの程度敏感であるかを示す数値であり,特にリアプノフ数の最大値が正の値をとるとき,そのデータはカオス的な挙動をとることが知られている。リアプノフ数を計算する具体的な方法は,学会等ですでにいくつか提案されている。ここでは,佐藤らにより提案された方法によりデータの最大リアプノフ指数を計算する(長島,永井,荻原,土屋 : 時系列データとカオス,計測と制御,Vol. 29, No. 9, pp. 53--60,1990 参照)。
【0027】今,図3のように2リンク回転ノズル2に角度センサーを取りつけ,第1リンクと第2リンクの各々の回転角度を検出できるようにする。検出された回転角度から第2リンク先端の位置が計算でき,その位置を(x(i),y(i))と表す。ただし,iは時間を表す。次に,ノズルの先端位置 x(i) から,時系列ベクトル X(i) = {x(i), x(i+T),x(i+2T),...., x(i+(d-1)×T) }を作りアトラクタを構成する。ただし,d は時系列ベクトルの次元を示し,T は時間おくれ量を示す。d,T は適当な値に設定する。このとき,d次元の空間内に適当な超平面を選び,この超平面を横切るベクトル X(i)-X(i+1)を求める。超平面上の交点の座標を X(i) とX(i+1) の内分点として求め。平面上の点の集合 { Xp1, Xp2,... ,Xpk,....}をつくる。この集合のなかで,距離が所定のしきい値 E 以下のペアをすべて選び,その中の2点を Xpk, Xpk' と表す。このとき,最大リアプノフ指数 L は次式によって計算できる。
【0028】
【数1】

【0029】ただし,Np は距離がしきい値 E 以下のデータペアの総数を示す。(数1)において tau の値を増やすと L(tau) は収束することが知られている。 収束した時の L(tau) が最大リアプノフ指数である。なお,最大リアプノフ数の計算方法は他にも提案されている。(T.S.Parker, L.O.Chua : PracticalNumerical Algorithm for Chaotic System, Springer-Verlag, 1989 参照)他の方法を用いて計算しても本実施例と同じ効果が得られる。
【0030】第2ノズル上の噴射口の角度やリンクの重心等を変えながら,このような最大リアプノフ指数を求める計算を繰り返すことにより,最大リアプノフ数が0でない正の値を取る時を見つけることができる。
【0031】最大リアプノフ数が正になったときの噴射口やリンクの設計にしたがえば,ノズルはカオス状態の駆動ができることになる。
【0032】カオス状態になった時の2リンク回転ノズルの噴射口Cの軌跡を図4に示す。図4は数値計算によって求めたものではなく,2リンク回転ノズル2の実機をカオス状態にした時の第2リンク上の噴射口Dの軌跡を実験によってもとめたものである。
【0033】図4より明らかなように,図2の(a)(b)よりもノズルの通過する領域が増えており,水を均一に撒くことができるようになっていることがわかる。
【0034】なお,図3のような角度センサをつけるのはノズルの設計段階のみであり,出荷する製品および通常の運転時には必要がなく,回転ノズル装置は図1のような構成となる。
【0035】以上説明したように,本実施例によれば,多リンクのノズルを用い,そのノズルの水の噴出方向やリンクの重心の位置や重さ・形状を適切に設定することにより,ノズルの動作をカオス状態にすることができる。カオス状態になったノズルは,軌道が不安定であり,同じ状態軌道を2度と通らない。したがって,均一な水の散布が可能となる。また,リアプノフ数等のカオス特徴量を調べることにより,ノズルを適切なカオス状態に設定することができる。
【0036】なお,この実施例では,変化させるノズルのパラメータとして噴出口の水の吹き出し角度やリンクの重心位置や重さなどを用いた。したがって,図5のような,(a)第2リンクの重心位置を変えたもの,(b)第2リンクの一方におもりをつけ重心位置を変えたもの,さらに (c)2リンクではなく多リンクにしたもの,(d)第1リンクと第2リンクとの接続部の遊び量を多くしリンクの回転中心や重心が水の流れにより変化するようにしたものなどを用いても同様の効果が得られる。
【0037】また,本実施例では,カオス状態を判別する方法として最大リアプノフ数を用いたが,フラクタル次元やリアプノフ次元などの他の特徴量を用いても良い。特に,フラクタル次元はカオス状態を判別する方法として優れている。フラクタル次元は,得られたデータの自己相似性を示すもので,カオスであれば非整数の次元を有する。フラクタル次元としては,情報次元,容量次元,相関次元などがいくつか提案されている。これらの次元の中では,その計算の容易さから相関次元がよく用いられている。
【0038】相関次元とは,Grassberger と Procaccia が 1983年に提案したもので,相関積分(Correlation Integral)を利用して求められる。相関積分C(r)は次式で求める。
【0039】
【数2】

【0040】ただし,X(i) は上で定義した時系列ベクトルであり,H は階段関数を示す。Nは時系列ベクトルの総数である。
【0041】相関積分 C(r) がつぎのような関係を持つ時,D を相関次元と呼ぶ。
【0042】
【数3】

【0043】相関次元を求めるためには,まず,log C(r) と r を最小二乗法にかけ 比例定数 D を求める。求めた D は,次元数 d の値を大きくしていくにしたがい収束する。十分に収束した時の D が最終的な相関次元の計算結果となる。したがって,2リンク回転ノズル2の設計項目である噴射口の水の噴出角度やリンクの重心の位置等を変えながら,相関次元を求める計算を繰り返すことにより,相関次元が適当な値(非整数)を取る時を見つけることができる。この時の状況に2リンク回転ノズル2を設定すれば,カオス状態の駆動ができることになる。
【0044】上述したようにフラクタル次元には,相関次元以外にも容量次元,情報次元など様々な次元や計算法が提案されている。他の方法を使って求めても本実施例と同様の効果である均一な水の散布能力が得られる。
【0045】図6は本発明の第2の実施例における回転ノズル装置の構成図を示すものである。1は供給される水を加圧するノズル駆動ポンプ,2はノズル駆動ポンプ1によって加圧された水の力により回転し水を噴射する2リンク回転ノズルであり,これらは第1の実施例の構成と同様である。第1の実施例と異なるのは,ノズル駆動ポンプ1の加圧力を制御する加圧力制御回路10を設けた点である。このように構成された回転ノズル装置の動作を以下説明する。
【0046】第1の実施例では,2リンク回転ノズルは噴射口の水の噴射角やリンクの重心等の設計を適当に行なうとカオス状態になることを説明した。カオス状態のノズルは,軌道不安定性を持つため軌道が絶えず変化し2度と同じ軌跡を通らない。したがって,周期的運動をしているノズルと比較して,より均一な水の散布が可能となる。
【0047】しかし,第1の実施例では,ノズルをカオス状態にするためには,上記したようなカオス特徴量の計算と試行錯誤による実験が必要である。
【0048】カオス状態は,対象とするシステムの自由度が高いほど発生しやすいことが知られている。本実施例では,カオス状態をより容易に実現できるノズルとして,ノズル駆動ポンプ1の加圧力を加圧力制御回路3により変化させ,システムの自由度を増加させた回転ノズル装置を説明する。
【0049】ノズル駆動ポンプ1の出力を加圧力制御回路10により図7のように変化させると,回転ノズル装置全体の自由度は増加し,ノズルはカオス状態へと容易に遷移する。図7では,横軸が時間,縦軸がノズル駆動ポンプ1の加圧力を示しており,(a),(b),(c) の3種類の 加圧力の変化パターンの例を示している。図7(a)は,ON,OFFの繰り返し,(b)は三角関数状の変化,(c)は鋸歯状波のような変化を示している。
【0050】このなかの,いずれの加圧パターンを用いても2リンク回転ノズルはカオス状態に遷移する。このように,加圧力制御回路10を用いてノズル駆動ポンプ1の加圧力を時間に対して変化させることにより,ノズルをカオス状態に遷移させることができる。
【0051】以上説明したように,本実施例によれば,2リンク回転ノズルを用い,そのノズルに供給する水を加圧するノズル駆動ポンプ1の加圧力を加圧力制御回路10により変化させることにより,ノズルの挙動をカオス状態にさせることができる。カオス状態になったノズルは,軌道が不安定であり,同じ状態軌道を2度と通らない。したがって,均一な水の散布が可能となる。また,第1の実施例に示した方法と結合し,リアプノフ数等のカオス特徴量を調べながら,ノズル駆動ポンプ1の加圧パターンを変化させたり,噴射口の水の噴出方向やリンクの重心位置など変えたりして,ノズルを適切なカオス状態に設定することもできる。この場合は,リアプノフ数等の特徴量が検出されるため,カオスの度合を適当に設定することができ,食器洗い機などに応用した場合は,洗浄速度などの点でさらなる効果が生まれる。
【0052】また,加圧力制御回路10の持つ加圧パターンの例を図7に示したが,図7以外のパターンでも良い。特に,カオス信号を直接出力するような関数により生成された加圧パターンでも良い。この例として,カオス信号としてよく知られたロジスティック関数による加圧パターンの例を示す。
【0053】いま,時間を t とし,ノズル駆動ポンプ1の加圧力をpとし,ポンプの最大加圧力をPとすると,次のような関数が加圧パターンとして考えられる。
【0054】
【数4】

【0055】これは,ロジスティック関数の計算結果をそのまま加圧力としたものであり,この(数4)を使って,ノズル駆動ポンプ1の加圧力を制御すると,ノズル挙動はカオス状態になる。なお,ロジスティック関数以外の,テント関数や間欠カオスなど,カオス信号を出力する他の関数を用いてノズル駆動ポンプ1の加圧力を制御しても,本実施例と同様の効果が得られる。
【0056】図8は本発明の第3の実施例における回転ノズル装置の構成図を示すものである。図中の1は供給される水を加圧するノズル駆動ポンプ,これは第1の実施例の構成と同様なものである。第1の実施例と異なるのは,2リンク回転ノズル2を水流抑制型2リンク回転ノズル20に変更した点である。このように構成された回転ノズル装置の動作を以下説明する。
【0057】カオス状態は,対象とするシステムの自由度が高いほど発生しやすい。第3の実施例では,ノズル駆動ポンプ1の出力を変化させることによりノズル駆動装置全体の自由度を増し,カオス状態をつくりだした。この方法以外にシステムの自由度をあげる方法として, 各リンクの接続部分の構造を変化させる方法がある。
【0058】本実施例では,リンクの接続部分の構造を変化させ,回転ノズル装置をカオス状態にした例について説明する。
【0059】第1の実施例で示した回転ノズル装置のリンクの接続部分の構造は図9のようになっている。
【0060】図9(1)は,2リンク回転ノズル2の第1リンク2-1と第2リンク2-2の接続部の構造を示している。通常は,円で囲んだ接続部の上に第2リンク2-2をはめ込み,第2リンク2-2が第1リンクから離れないようにナットで固定する。ただし,第2リンク2-2は自由に回転できるようになっている。
【0061】図9(a),(b)は,図9(1)の第1リンク2-1の円で囲んだ部分(接続部)を拡大して示したもので,図9の(a)は側面図,(b)は上面図を示している。図9に示した接続部では,第1リンクから第2リンクへスムーズに水がながれるようにするために,接続部には大きな穴が4つあいており,少ない抵抗で水を第1リンクから第2リンクへ導くことができる。
【0062】これに対して,第4の実施例では図10のような構造の接続部を持った水流抑制型2リンク回転ノズル20を有している。図10から明らかなように,この水流抑制型2リンク回転ノズル20は,第1の実施例と比較して,接続部の穴の数が少なく,接続部の水の流れがほぼ1方向に限定される。
【0063】図9のような接続部の構成では,穴の総面積が大きいため,第1リンクと第2リンクのなす角度がいかなる値であろうとも,接続部での水の抵抗値はほとんど変化しない。ところが,この水流抑制型2リンク回転ノズル20では,図10に示したように接続部での水の流れがほぼ1方向に限定されるため,各リンクの位置に依存して水の噴出力が変化することになる。
【0064】水流抑制型2リンク回転ノズルにおける,各リンクの相対位置に応じた水の噴出力の変化を図11を用いて説明する。
【0065】図11の(a)は,第2リンク20-2が第1リンク20-1とほぼ同方向に位置した時である。この場合の噴射口Fまでの水の流れは,図中の点線のようになる。第1リンクの接続部は図10のような構成になっているため,噴射口Fまでの水の流れに対する抵抗は少なく,水は勢い良く噴射口Fから噴射される。
【0066】図12(b)の場合は,第2リンク20-2と第1リンク20-1のなす角度が約90度の場合である。この場合の噴射口Fまでの水の流れは,点線のように折れ曲がる。この場合,第1リンクの接続部は図10のような構成になっているため,水流が必要以上に折れ曲がる部分が発生する。この折れ曲がる部分は,(a)の場合と比べて水の通り道が狭くなっており,水流に対する抵抗が増加する。したがって,結果的には噴射口Fから噴射される水の勢いは低下し,逆に相対的に水が通りやすくなる第1リンクの噴射口からの水の勢いが増加する。
【0067】このように,接続部の構成を変えた水流抑制型2リンク回転ノズル20を用いることにより,リンクの相対的な位置に応じて,各噴射口の水の噴出力は変化する。したがって,第1の実施例と比較してノズルの挙動に対する自由度は増加したことになり,カオス状態に遷移しやすくなる。
【0068】以上説明したように,本実施例によれば,多リンクのノズルを用い,ノズルの中や接続部を流れる水流を一部抑制することにより,各リンクの位置関係にしたがって噴射口からでる水の勢いを変化させることができる。このことはノズル駆動装置全体の自由度を増加させることになり,ノズルの挙動をカオス状態にさせることができる。カオス状態になったノズルは,軌道が不安定であり,同じ状態軌道を2度と通らない。したがって,均一な水の散布が可能となる。
【0069】また,第1の実施例に示した方法と結合し,リアプノフ数等のカオス特徴量を調べながら,接続部の設計を変更させたり,噴射口の水の噴出方向やリンクの重心位置など変えたりして,ノズルを適切なカオス状態に設定することもできる。この場合は,リアプノフ数等の特徴量が検出されるため,カオスの度合を適当に設定することができ,洗浄速度などの点でさらなる効果が生まれる。
【0070】図12は本発明の第4の実施例における回転ノズル装置の構成図を示すものである。1は供給される水を加圧するノズル駆動ポンプ,2はノズル駆動ポンプ1によって加圧された水の力により回転し水を噴射する2リンク回転ノズル,10はノズル駆動ポンプの加圧量を制御する加圧力制御回路であり,以上は第3の実施例と同様な構成である。
【0071】第3の実施例と異なるのは,2リンク回転ノズルの動きを検出するセンサー30と,センサー30から検出されたノズルの動きに関する観測量からカオスの特徴量を計算するカオス特徴量計算回路を備えた点である。このように構成された回転ノズル装置の動作を以下説明する。
【0072】第1から第3までの実施例では,カオス状態で動作するノズル駆動装置について説明してきた。食器洗い機などでは,均一な水の噴射が求められるため,常時ノズルをカオス状態で動作させることが望ましい。
【0073】しかし,ノズルに外乱が加わりシステムの動特性が変化するような場合には,第1の実施例から第3の実施例で説明した方法では常時カオス状態を保つことができない。このことを防ぐために本実施例では,リアルタイムにノズルの動きを検出し,常時安定したカオス駆動が可能な装置を提供する。
【0074】センサー30は,ノズルの動きを検出するものであり,図3に示したような複数の角度センサーでも良いし,また,ビデオカメラのような画像処理技術を用いたものでも良い。ここでは,図3の角度センサーを使った例で発明を説明する。
【0075】センサー30で検出された各リンクの角度は,カオス特徴量計算回路31に入力され,第1の実施例で説明したカオス特徴量のひとつである最大リアプノフ数が計算される。カオス特徴量計算回路31での最大リアプノフ数の計算方法は第1の実施例で述べた方法でもよいし,学会等で提案されている他の方法でも良い。
【0076】最大リアプノフ数が正の値の場合は,ノズルがカオス状態であることを示すが,0の場合は周期的あるいは準周期的な動作であることを示す。
【0077】したがって,カオス特徴量計算回路31は,計算した最大リアプノフ数から,最大リアプノフ数が0近傍あるいは負ならば,加圧パターンを変えるように加圧力制御回路10に指令を送り,最大リアプノフ数が0近傍でない正の値ならば,そのままの駆動を行なうように加圧力制御回路10に信号を送る。
【0078】加圧力制御回路10は,カオス特徴量計算回路31の信号にしたがって,加圧パターンを変化させる。変化の方法は,図8(a)のようなパターンで加圧している場合は 図8(a)のオン時間Tonやオフ時間Toffを変化させ,図8(b)のようなパターンで加圧している場合は,サインカーブの周期を変える。
【0079】以上説明したように,本実施例によれば,センサによりノズルの動きを観測し,観測結果からカオス特徴量を検出することにより,ノズルの駆動状態を知ることができる。さらに,その情報を加圧力の制御に用いることにより,常に最適なカオス状態でノズルを駆動することができる。カオス状態になったノズルは,軌道が不安定であり同じ状態軌道を2度と通らない性質を持つ。したがって,常にカオス状態を保つことにより,均一な水の散布が可能となる。
【0080】なお,本発明ではセンサー30を付加したことにより,カオス状態でない周期的あるいは準周期的な動作も検出可能である。したがって,カオス状態を保つだけではなく,カオス状態と周期的な状態をノズルの使用目的や使用状況に応じて切替えて使うことも可能である。また,この実施例では,カオス特徴量計算回路31においては最大リアプノフ数の計算を行なうと述べたが,相関次元,容量次元,情報次元などのフラクタル次元やリアプノフ次元等の他のカオス特徴量を用いても同様の効果が得られる。
【0081】本発明の第5の実施例として回転ノズル装置を食器洗い機に応用した例を説明する。図13は本実施例における食器洗い機の構成を示した図であり,101は食器洗い機のボディ,102はふた,103は水を食器洗い機内に取り入れるための給水ホース,104は給水ホース103からの水を加圧しノズルを回転させかつ水を噴射させるためのノズル駆動ポンプ,106は食器にかかった水を排水させるための排水ポンプ,107は排水を食器洗い機外へ導く排水ホース,108はノズル駆動ポンプ104と排水ポンプ106を制御する制御回路である。以上は,図14の従来例と共通の部分である。従来例と異なるのは,1リンクの回転ノズルの代わりに第1の実施例で説明した2リンク回転ノズル2を用いている点である。
【0082】第1の実施例で説明したように,2リンク回転ノズルはカオス状態にすることが可能である。カオス状態の2リンク回転ノズル2を用いることにより,ノズルは図4のような軌跡で動くことになり,図2の従来例の動作軌跡よりもいろいろな方向で食器に水を噴射でき,均一に水を散布することができるようになる。
【0083】したがって,2リンク回転ノズルを用いた食器洗い機では,従来例と比較して,食器のすみずみにまで水を噴射することができ,食器の汚れをより十分に落すことができる。また,従来例ではノズルの軌跡が一定の円周だったため,汚れを落すためには,食器の置き方を十分に考慮しなければならなかったが,この実施例では,ノズルの軌跡が絶えず変化しているため食器の置き方の工夫をしなくても十分な洗浄効果が得られる。
【0084】以上説明したように,複数のリンクで構成された回転ノズルをカオス状態で用いることにより,従来よりも,食器に水をむらなく均一に噴射することができ,食器洗い機の洗浄効率を向上させることができる。なお,本実施例では,第1の実施例で説明した2リンク回転ノズルを食器洗い機に応用した例を説明したが,第2から第4までの実施例で述べた回転ノズル装置を用いても良い。また,本実施例では,回転ノズル装置を食器洗い機に応用した例を説明をしたが,食器だけでなく自動車や半導体デバイスなど他の物を洗浄する洗浄機に応用することも可能であり,同様な洗浄効率の向上が期待できる。また,スプリンクラーやスプレー塗装機など均一に液体を散布する必要がある散水機への応用も可能である。
【0085】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,複数の中空リンクから構成されたノズルを用い。その噴射口の水の噴射角度や,各リンクの長さや重さや重心の位置などを,リアプノフ数やフラクタル数などを用いて適切に設定することにより,ノズルをカオス状態にすることができる。
【0086】カオスは軌道不安定性を持つため,カオス状態にあるノズルは2度と同じ軌道を通らず,噴射口は絶えず異なった軌道を動くことになり,結果的に従来と比べてより均一に水を散布することができる。




 

 


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