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発明の名称 超電導磁石
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−251936
公開日 平成6年(1994)9月9日
出願番号 特願平5−35684
出願日 平成5年(1993)2月24日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】秋本 正実
発明者 古川 陽子 / 吉田 史 / 福本 英士 / 吉岡 健 / 滝沢 照広 / 園部 正 / 鈴木 史男
要約 目的
磁場変動や外乱によって生じる渦電流発熱が原因のクエンチを抑制し、かつ励磁/消磁速度を損なわずに、励磁/消磁時の発熱も抑制可能な超電導磁石を提供する。

構成
超電導コイル収納容器を低抵抗材で一様に被覆する。低抵抗材は、その比抵抗が1×10~11から1×10~9Ωmの範囲とする。これにより、外部からの磁場変動を受けて生じる渦電流が均一になり、一様なシールド効果が得られる。また、変動磁場による超電導コイルの局所的な渦電流発熱が防止される。更に、外乱によって磁石が振動して生じる渦電流が均一になり、低抵抗材に流れる渦電流と超電導コイルの作る磁場から生じる電磁力を均一にでき、電磁力の不均一から生じる局所的振動が防止される。また、比抵抗を制限することで、励磁/消磁速度を損なわず、励磁/消磁時の発熱も抑制可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】 超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する収納容器と、輻射熱シールドと、真空断熱容器と、前記収納容器の全表面を覆う低抵抗材とを備える超電導磁石において、前記低抵抗材として、液体ヘリウム温度で比抵抗が1×10~11から1×10~9Ωmの範囲にある純アルミニウム展伸材または純銅を用いたことを特徴とする超電導磁石。
【請求項2】 超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する収納容器と、輻射熱シールドと、真空断熱容器と、前記収納容器の全表面を覆う低抵抗材とを備える超電導磁石において、前記低抵抗材として、純度が99.0%〜99.99%の範囲の純アルミニウム展伸材または純銅を用いたことを特徴とする超電導磁石。
【請求項3】 超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する収納容器と、輻射熱シールドと、真空断熱容器と、前記収納容器の全表面を覆う低抵抗材とを備える超電導磁石において、前記低抵抗材として、JIS規格の1N00、1200、1100、1N30、1230、1050、1060、1070、1080、1085のいずれかの純アルミニウム展伸材を用いたことを特徴とする超電導磁石。
【請求項4】 超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する収納容器と、輻射熱シールドと、真空断熱容器と、前記収納容器の全表面を覆う低抵抗材とを備える超電導磁石において、前記低抵抗材として、JIS規格のC1020,C1100,C1201,C1220,C1221,C1401のいずれかの銅を用いたことを特徴とする超電導磁石。
【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれかにおいて、前記低抵抗材の厚さを【数1】

で示される表皮深さδの1/2〜2倍の範囲内としたことを特徴とする超電導磁石。
【請求項6】 超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する収納容器と、輻射熱シールドと、真空断熱容器と、前記収納容器の全表面を覆う低抵抗材とを備える超電導磁石において、前記低抵抗材の比抵抗を制限して前記超電導コイルの励磁/消磁の速度を保証し、励磁/消磁時の発熱を抑制したことを特徴とする超電導磁石。
【請求項7】 超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する収納容器と、輻射熱シールドと、真空断熱容器と、前記収納容器の全表面を覆う低抵抗材とを備え超電導磁石において、前記低抵抗材として用いるアルミニウム材または銅としての純度が99.99%以上のものを用いないことを特徴とする超電導磁石。
【請求項8】 超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する収納容器と、輻射熱シールドと、真空断熱容器と、前記収納容器の全表面を覆う低抵抗材とを備え超電導磁石において、前記低抵抗材として用いるアルミニウム材または銅としての純度が99.99%以下のものを用い且つ励磁/消磁を1A/s以上の速度で行うことを特徴とする超電導磁石。
【請求項9】 周長3m(半径0.5m)程度,断面周長300mm程度の規模の超電導コイルと、該超電導コイルを液体Heで冷却し所定位置に固定する収納容器と、輻射熱シールドと、真空断熱容器と、前記収納容器の全表面を覆う低抵抗材とを備える超電導磁石において、前記低抵抗材を、前記超電導コイルの励磁または消磁を速度1A/s以上で行ったときの発熱で前記液体Heの蒸発量が5リットル以下となる比抵抗を持つ良導体で構成したことを特徴とする超電導磁石。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は励磁/消磁が頻繁に繰り返され振動や磁場変動などの動的外乱が加わる超電導磁石に係り、特に、超電導破壊(以下、クエンチという。)を防ぐのに好適な超電導磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の超電導磁石を図6に示す。図6において、1は超電導コイル、2は超電導コイル収納容器(以下、収納容器という。)、3は輻射熱シールド、4は真空断熱容器、5は支持部材である。収納容器2は、その内部に超電導コイル1と液体ヘリウムを納め、超電導コイル1と共に4.2K程度の極低温に冷却されている。通常、超電導コイル1は定常電流を保持して、強磁場を発生させており、この強磁場によって生じるフープ力等の電磁力は主に収納容器2が支持する。このため、収納容器2には、強度や剛性が高いことが求められ、一般にステンレス鋼が用いられる。
【0003】輻射シールド3は、常温の真空断熱容器4と、極低温の収納容器2の間の輻射熱を抑制するために設けられ、液体窒素で80K程度に冷却されている。輻射熱シールド材には、輻射率が低く、熱伝導率がよく、かつ軽量なためアルミニウムが用いられる。真空断熱容器4は、その内部を真空に保つことにより、外部からの熱侵入を防ぐ。このため、真空力に耐えうる剛性、強度を持つステンレス鋼のような高剛性材料や、厚肉材料が用いられる。支持部材5は真空断熱容器4の中に、超電導コイル1及び収納容器2、輻射熱シールド3を懸架支持するもので、伝導による熱侵入を抑制するため、断熱性の材料を用いる。
【0004】超電導磁石は、超電導コイル1を形成する超電導線材の臨界温度を越えるとクエンチを生じ、超電導状態を維持できなくなる。このため、熱侵入を極力低減し、液体ヘリウムによる冷却で、超電導コイル1及び収納容器2の温度を臨界温度以下に保ち、超電導状態を維持することが重要な課題である。これに対して、超電導磁石への熱侵入の要因は、静的なものと動的なものに分けることができる。静的要因による熱侵入とは、輻射や伝導、熱伝達により、超電導磁石の置かれている常温から、液体ヘリウムで冷却されている極低温への熱の流入である。これらについては、真空断熱容器や輻射シールドを設けたり、また支持材に断熱材を用いる等の対策が従来からなされてきた。
【0005】一方、動的要因による熱侵入とは、外乱によって、超電導コイル1と輻射熱シールド3や真空断熱容器4との間に相対振動が生じた場合、または外部からの磁場の変動を受けた場合等に、誘起される渦電流による発熱である。この発熱対策としては、特開昭60-217610号公報、特開平3-52203号公報、特開平2−211123号公報記載のように、超電導コイル収納容器表面に低抵抗材を設け、抵抗を低くすることによって、渦電流が流れても発熱を抑制できる対策が講じられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来技術の様に、単に超電導コイル収納容器表面に、低抵抗材を設置し、渦電流発熱を低減しても、超電導磁石としての性能を向上できたとはいえない。これは、前述の静的要因や動的要因による発熱のほかに、超電導磁石として避けられない発熱である励磁時,消磁時のリバース電流による発熱を考慮しなければならないからである。リバース電流とは、励磁または消磁によって起こる超電導コイルの磁束の変化を妨げようとして、超電導コイル収納容器や輻射熱シールドに流れる電流のことである。超電導コイル収納容器に生じたリバース電流は、発熱して液体ヘリウムの蒸発に関与する。
【0007】このリバース電流の電流値は、励磁/消磁速度によって異なり、その発熱量も励磁/消磁速度によって変化する。励磁/消磁速度を速めると、リバース電流の値は大きくなり、発熱が増加する。一方、励磁/消磁速度を遅くすると、励磁/消磁に要する所要時間が増加するするため、ヘリウムの総蒸発量が増加するのが普通である。従って、励磁/消磁速度と励磁/消磁の所要時間との兼ね合いで、発熱量を最小にする励磁/消磁速度が存在するが、この値は、超電導コイル収納容器等の誘導電流の流れる構成部材部の電気回路の回路抵抗値に左右される。一般に回路抵抗値が低くなると、同じ励磁/消磁速度でも発生するリバース電流の値は大きくなる。
【0008】従って、励磁/消磁時の発熱は大きくなるため、超電導コイル収納容器の低抵抗化は、不利に働く。また、励磁/消磁速度が速くなればなるほど、発生するリバース電流の値は大きくなる。低抵抗化によって、リバース電流が大きくなった場合、ヘリウム蒸発量を低く押さえるためには、励磁/消磁速度を制限しなければならないといった問題が生じる。ここで問題となるのは、励磁/消磁時の液体ヘリウム蒸発の許容量と、励磁/消磁にかかる時間の2つである。超電導コイル冷却用の液体ヘリウムは、通常超電導磁石とは分離された容器に貯蔵され、配管系で超電導磁石にヘリウムを供給する。液体ヘリウム貯蔵容器にヘリウムを供給する時には、超電導コイルは一度消磁し、供給が終わってから再び励磁しなければならない。
【0009】従って、液体ヘリウム容器へのヘリウム供給回数は少ない方が望ましく、この回数を減らすためには、超電導コイルの励磁/消磁で消費する液体ヘリウムの蒸発量を極力押さえねばならない。加えて、液体ヘリウムは高価なため、大きな装置でも励磁/消磁時の蒸発量としては2〜3リットルを上限として見込むのが普通である。また、励磁/消磁を繰り返して使用される超電導コイルの場合、励磁/消磁に時間がかかっていたのでは、実使用時間が短くなってしまう。従って、いかに短時間で、ヘリウム蒸発量を増やさず、超電導コイルを励磁/消磁できるかが、超電導コイル収納容器を低抵抗化した場合の問題になって来る。
【0010】この問題に対して、特開平4-294503号(特願平3-59958号)公報記載の従来技術では、超電導コイル収納容器を低抵抗部と高抵抗部から構成し、励磁/消磁に対しては、周抵抗を稼いで、励磁速度を速める方法が提案されている。しかし、低抵抗部と高抵抗部を設けた場合、低抵抗部には高抵抗部より大きな電流が流れるため、外部からの磁場変動を超電導コイルに対してシールドするという意味では、シールドの不均一を生じ、超電導コイルの一部で他より発熱が大きくなるという問題が生じる。また、外乱によって生じた渦電流が、超電導コイルの持つ磁場との作用で電磁力を生じる場合においても、電磁力が不均一となり、局所的な振動を生じやすくなるという問題が生じる。更に、製作性からも、2種類以上の材料を接合して、超電導コイルに設置するというのは手間がかかる。また、全ての装置に共通して、小型軽量化という課題がある。
【0011】本発明の目的は、外部からの磁場変動や、外乱による超電導コイル収納容器の渦電流発熱を均一に低減してクエンチを抑制すると共に、励磁/消磁速度を犠牲にすることなく、励磁/消磁時の発熱も抑制でき、しかも軽量化、製作工程低減にも有効な超電導磁石を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的は、超電導コイル収納容器の全表面に、一様に低抵抗材を設置し、しかも、低抵抗材として、純アルミニウムまたは銅で、液体ヘリウム温度の4.2Kにおいて、その比抵抗が1×10~11〜1×10~9Ωmの範囲とすることによって達成される。
【0013】また、上記目的は、低抵抗材として、純アルミニウムまたは銅で、その純度が99.0%〜99.95%の範囲のものを使用することでも、達成される。
【0014】また、上記目的は、低抵抗材の厚さを、前記の数式1で示される表皮深さ(δ)の1/2〜2倍の範囲内とすることによって、達成される。
【0015】
【作用】磁場変動や、外乱による渦電流発熱を低減する方法としては、超電導コイル収納容器に低抵抗材料を設置する方法を用いる。ここで、低抵抗材を超電導コイル収納容器の全表面に一様に設置することによって、外部からの磁場変動を受けて生じる渦電流を均一にすることができる。この渦電流により、超電導コイルが外部から受ける変動磁場を均一にシールドすることができる。従って、変動磁場による超電導コイルの局所的な渦電流発熱を防ぐという効果を持つ。同様に、外乱によって磁石が振動し、渦電流が生じた場合でも、渦電流を均一にすることができる。従って、低抵抗材に流れる渦電流と超電導コイルの作る磁場から生じる電磁力を均一にできるので、電磁力の不均一から生じる局所的振動を防ぐという効果を持つ。
【0016】超電導コイル収納容器に設置する低抵抗材の厚さは、装置の小型軽量化の観点から、薄い方が望ましい。そこで、その厚さは前記の数式1で表される表皮深さ(δ)の1/2〜2倍の範囲内とする。表皮深さは、周波数によって異なるが、ここで用いる表皮深さは、外乱の周波数または、磁場の変動の周波数の最小値に対する値を取る。これは、最低限、表皮深さ相当の厚さがあれば、磁場シールド効果を充分に持たせられるからである。また、外乱の最低周波数と、最も長時間加わる外乱周波数が異なり、最低周波数に対しての渦電流発熱がある程度許容できる場合、低抵抗材料の厚さは、表皮深さの1/2までの範囲で設定する。これによって、必要最低限の厚さを設定して、磁石の軽量化を図れる。また、表皮深さは、外部からの侵入磁場が1/2になる、磁場の侵み込み深さである。そこで、特に条件が厳しい場合に対しては、表皮深さの2倍の厚みを確保することによって、最大限の渦電流を流して、磁場をシールドできるようにする。これによって、外部からの変動磁場に対して、充分なシールド効果を持つとともに、不必要な重量増加を伴わない超電導磁石を得ることができる。
【0017】さらに、励磁/消磁の速度を保証し、この時の発熱を抑制するためには、設置する低抵抗材の比抵抗の選択が重要となる。数式1に示すように、設置する低抵抗材の、比抵抗ρが定まり、使用する状況での変動磁場または外乱の、周波数fがあらかじめ予測できれば、その場合の表皮深さδが計算できる。次に、数式2【0018】
【数2】

【0019】に示す通り、設置材料の面比抵抗を求め、これに超電導コイル収納容器の周長lを乗じ、超電導コイル収納容器断面の周長dで割ったものが、設置材料の抵抗値RINCということになる。
【0020】次に、励磁電流IMAXに対して、励磁/消磁速度IVが定まれば、励磁/消磁の所要時間Tが定まり、超電導コイルと永久電流スイッチ(以下、PCSと記述する。)で構成する回路を流れる電流Iは、次の数式3で表される。
【0021】
【数3】

【0022】前記回路の方程式は、数式4で表される。
【0023】
【数4】

【0024】ここで、RPCS:PCSの抵抗値LSCM:超電導コイルの自己インダクタンスM :超電導コイルとコイル容器との相互インダクタンスIR :コイル容器を流れるリバース電流である。
【0025】従って、数式3及び数式4から、リバース電流IRは、次の数式5のように求まる。
【0026】
【数5】

【0027】このリバース電流による発熱WRは、次の数式6から求められ、【0028】
【数6】

【0029】これを励磁/消磁の所要時間Tだけ積分した値が、リバース電流による発熱量QRとなる。尚、数式6のLINCは、コイル容器の自己インダクタンスである。
【0030】従って、励磁/消磁速度IVを決めておくと、許容発熱量QRから比抵抗ρを逆算でき、この関係から、励磁/消磁速度IV、許容発熱量QR、比抵抗ρの3つをパラメータとして、最少の発熱量、最適の励磁/消磁速度及び比抵抗を求めることができる。実際には、励磁/消磁時の発熱としては、リバース電流による発熱の他にPCSヒータの発熱及びPCSの自己発熱、超電導線の交流損失を考慮しなければならない。PCSヒータの発熱WPCSHは次の数式7で示されるように、【0031】
【数7】

【0032】PCSヒータの抵抗値RPCSHとヒータの通電電流IPCSHから計算され、これらの値は、装置によって定数となり、励磁/消磁の所要時間分積分することで、発熱量が求められる。また、PCSの自己発熱WPCSは、次の数式8から求められ、【0033】
【数8】

【0034】励磁/消磁速度さえ決まれば、定数として扱え、時間積分によって発熱量が求められる。超電導線の交流損失WSCMは、次の数式9から求められる。
【0035】
【数9】

【0036】ここで、WH:超電導線のヒステリシス損WE:渦電流損WC:フィラメントの結合損である。それぞれの損失は、次の数式10、数式11、数式12で表される。
【0037】
【数10】

【0038】
【数11】

【0039】
【数12】

【0040】これらの数式中のdB/dtは、次の数式13で表される。
【0041】
【数13】

【0042】この数式13と前記の数式3を用いて前記の数式9を書き直すと、次の数式14が得られる。
【0043】
【数14】

【0044】この数式14中の係数α,βは、次の数式15,数式16に示す通りである。
【0045】
【数15】

【0046】
【数16】

【0047】結局、励磁/消磁速度が決まれば超電導線の交流損失WSCMは定数となり、時間積分によって発熱量が計算されることになる。結局、リバース電流による発熱、PCSヒータの発熱、PCSの自己発熱、超電導コイル線材の交流損による超電導コイル容器の全発熱は、数式6、数式7、数式8、数式14の和で表され、励磁/消磁速度IV、許容発熱量QR、比抵抗ρがパラメータであることに変わりない。従って、これらのパラメータをサーベイして最少の発熱量、最適の励磁/消磁速度及び比抵抗を求めることができる。ここで求めた比抵抗ρを有する導電材料で超電導コイル収納容器を被覆することによって、外部からの磁場変動や外乱を受けて渦電流が流れても、クエンチが生じにくい超電導磁石を得ることができる。また、励磁/消磁速度IVで励磁/消磁を行うことによって、励磁/消磁時の発熱が少なく、液体Heの蒸発量を抑制する超電導磁石を得ることができる。
【0048】参考として、図2に、励磁速度と発熱量の相関の一例を示す。図2中の発熱量の最小値をとる励磁速度は、比抵抗によって変化し、また、発熱量の最低値も、比抵抗によって変化するわけである。
【0049】超電導コイル収納容器の低抵抗化による、励磁/消磁速度と発熱量の関係を求めた計算値と、実際に行った実験の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】計算値と実験値との違いは、実際にはPCSヒータのみ長く通電するため、実験値の発熱の方が大きくなるものと考えられ、計算によって、あらかじめ液体ヘリウム冷却系での発熱が見積もれることがわかる。
【0052】また、実験結果から、超電導コイル収納容器の比抵抗と励磁/消磁速度を変えて、励磁/消磁時の発熱を計算した結果を図3に示す。横軸の抵抗比は、アルミニウム(Al)のRRR(Relative Resistivity Ratio)でとっており、板厚は1mm一定で計算した結果である。板厚を外乱周波数の最低値で求めた表皮深さに設定しなおして同様の図にまとめれば、傾きが1/2に修正される。これは、比抵抗が抵抗値に対してルート(2乗根)で効いてくるためである。
【0053】図3の発熱を発熱量(液体He蒸発量)に換算したのが図4である。図4から、厚さ1mmのアルミニウムの純度に対して、励磁/消磁速度を変化させて発熱量を読み取ったのが表2である。
【0054】
【表2】

【0055】仮りに、液体Heの蒸発量許容値を5リットルと設定し、1A/sec以上の励磁/消磁速度を保証しようとすると、純度を99.99%以上にできないことがわかる。この評価によって、最適な励磁/消磁速度、抵抗値、設置材料の厚さ等を決定する。
【0056】ここで、諸方面で一般的に用いられる、周長3m(半径0.5m)、断面周長300mm程度の超電導コイルを対象とし、励磁/消磁時の液体ヘリウムの許容蒸発量を5リットル以下、励磁/消磁速度を1.0A/sec以上、外乱の最小周波数は50Hzと設定し、条件を満たす材料の比抵抗を求めると、1×10~11から1×10~9Ωmが最適である。超電導コイルの使用温度で、この程度の比抵抗を有する材料として、アルミニウム及び銅が挙げられるが、取扱の容易さ、製作性等の面からも最適と考えられる。また、この程度の比抵抗を有するアルミニウム及び銅の純度は、99.0〜99.99%の範囲にある。従って、これらの材料を低抵抗材料として設置することによって、外乱によって生じた渦電流によるクエンチを抑制できるとともに、励磁/消磁時の液体ヘリウム蒸発量を押さえ、かつ充分な励磁/消磁速度を保った超電導磁石を得られる。
【0057】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施例に係る超電導磁石を2分割した一方の透視図である。1は超電導コイル、2は収納容器、3は輻射熱シールド、4は真空断熱容器、5は支持部材、6は低抵抗材、7は低抵抗材の溶接部である。収納容器2は、その内部に超電導コイル1と液体ヘリウムを納め、超電導コイル1と共に4.2Kに冷却されている。輻射シールド3は、常温の真空断熱容器4と、極低温の収納容器2の間の輻射熱を抑制するために設けられ、液体窒素で80Kに冷却されている。真空断熱容器4は、厚肉のアルミニウムである。支持部材5は真空断熱容器4の中に、超電導コイル1及び収納容器2、輻射熱シールド3を懸架支持している。収納容器2は、内径370mm、外径495mmで、板厚5mmのステンレス鋼で構成され、断面周長は345mmである。
【0058】この収納容器2の表面を、厚さ1mmの低抵抗材6で被覆する。低抵抗材6は、純度99.98%のアルミニウム展伸材で、JIS規格A1N90の材料である。尚、表3に、JIS規格のアルミニウム合金展伸材の化学成分を示す。
【0059】
【表3】

【0060】JIS規格A1N90の材料の比抵抗は4.2Kで、1.49×10~10Ωmであり、外乱の周波数50Hz以上を対象とすると、表皮深さは、0.869mmである。この場合、板厚1mmは外乱を遮蔽するのに充分な厚さである。低抵抗材6による被覆部は、表裏の2分割と周方向に4分割で製作され、境界はJIS規格A5083の溶接棒により10mm幅で接合される。また、支持部材5を収納容器2に取り付ける都合上、収納容器2の裏側に相当する低抵抗材6の部位には、50×75mmの穴を窃ける。励磁/消磁によるリバース電流は、周方向に流れるため、収納容器2または低抵抗材6の表から裏に渡っては流れないものとし、表裏の溶接部については考慮せず、表と裏で並列の回路として考える。
【0061】4.2Kでの前記の溶接棒A5083の比抵抗は3.0×10~8Ωm、収納容器に用いたステンレス鋼の比抵抗は5.0×10~7Ωmである。以上から、収納容器2と低抵抗材6による回路抵抗を求めると、3.771×10~7Ωに相当する。ここで述べた超電導磁石2個を並べ、励磁/消磁時の発熱を実験で測定し、その結果を示したものが上記の表1である。これから、超電導コイル1個当たり、1.85リットルのヘリウム蒸発量で5.0A/secの励磁/消磁速度が確保できることがわかる。また、この場合、被覆に用いた低抵抗材6の重量は収納容器1個当たり約2.5kgで、比抵抗の近い銅を同様の条件で用いた場合の約1/3の重量で済む。
【0062】本実施例によれば、第1に、収納容器2を低抵抗材6で被覆することによって、外部から磁場変動を受けた場合に生じる渦電流による発熱を抑制でき、超電導磁石の信頼性が高まり、クエンチしにくい超電導磁石が得られる。第2に、低抵抗材の設置により、外乱を受けて、超電導磁石が振動することによって生じる渦電流による発熱を抑制でき、超電導磁石の信頼性が高まり、クエンチしにくい超電導磁石が得られる。第3に、前述のような比抵抗を、選択することにより、励磁/消磁速度を損なわず、励磁/消磁時の発熱も抑制可能な超電導磁石を得ることができる。第4に、設置する比抵抗と、外乱の最小周波数から算出される表皮深さで、設置する低抵抗材の厚さを決定することによって、充分なシールド効果を得るのに必要最低限の設置厚さを得ることができ、さらに低抵抗材としてアルミニウムを選択することによって、低抵抗材を最も軽量に設置することができ、超電導磁石の小型軽量化が可能となる。
【0063】図5は、本発明の第2実施例に係る超電導磁石の断面図である。1は超電導コイル、2は収納容器、3は輻射熱シールド、4は真空断熱容器、5は支持部材、6は低抵抗材である。収納容器2は、その内部に超電導コイル1と液体ヘリウムを納め、超電導コイル1と共に4.2Kに冷却されている。輻射シールド3は、常温の真空断熱容器4と、極低温の収納容器2の間の輻射熱を抑制するために設けられ、液体窒素で80Kに冷却されている。真空断熱容器4は、厚肉のアルミニウムである。支持部材5は真空断熱容器4の中に、超電導コイル1及び収納容器2、輻射熱シールド3を懸架支持している。収納容器2は、内径370mm、外径495mmで、板厚5mmのステンレス鋼で構成され、断面周長は345mmである。
【0064】この収納容器2の表面に、厚さ1mmの低抵抗材6を一様に被覆する。低抵抗材6は、純度99.92%のアルミニウム展伸材(JIS規格A1080)の材料である。この材料の比抵抗は4.2Kで、3.7×10~10Ωmであり、外乱の周波数50Hz以上を対象とすると、表皮深さは、1.369mmで、この場合、板厚1mmは50Hzの外乱を遮蔽するのにやや不足ぎみである。しかし、50〜80Hzの外乱が加わる時間を短くすることができ、80Hz以上の外乱を主に対象とする場合には充分な厚さである。低抵抗材6による被覆部は、表裏2分割で製作され、境界はJIS規格A5083の溶接棒により10mm幅で接合する。しかし、励磁/消磁によるリバース電流は、周方向に流れるため、収納容器2または低抵抗材6の表から裏に渡っては流れないものとし、表裏の溶接部については考慮せず、表と裏で並列の回路として考える。
【0065】以上から、収納容器2と低抵抗材6による回路抵抗を求めると、3.771×10~7Ωである。これは第1実施例の回路抵抗値に相当するため、ここで述べた超電導磁石2個を並べ、励磁/消磁時の発熱を実験で測定した場合、その結果は表1に等しいはずである。従って、超電導コイル1個当たり、1.85リットルのヘリウム蒸発量で5.0A/secの励磁/消磁速度が確保できることがわかる。また、この場合、被覆に用いた低抵抗材6の重量は収納容器1個当たり約2.5kgで、比抵抗の近い銅を同様の条件で用いた場合の約1/3の重量で済む。
【0066】本実施例が前述した第1実施例と異なるのは、低抵抗材を一様に設置するかどうかである。第1実施例では、より比抵抗の低い材料を用いることにより、溶接等による局所的な高抵抗部の存在を許容して、一周抵抗を上げている。製作上の容易性は、この第1実施例のほうが高いと考えられる。これに対し、第2実施例では、低抵抗材6を収納容器2の表面に一様に被覆する代わりに、比抵抗をある程度高いところでとって、一周抵抗を確保している。この方法は、製作性で多少困難が伴うが、一様に低抵抗材を被覆することにより、第1に外部から磁場変動を受けた場合に生じる渦電流を均一にすることができ、従って、超電導コイルの受ける変動磁場を一様にシールドするという効果を持つ。この効果によって、変動磁場によって超電導コイルで生じる局所的な渦電流発熱を防ぐことができる。従って、超電導磁石の信頼性が高まり、クエンチしにくい超電導磁石が得られる。第2に、外乱を受けて、超電導磁石が振動することによって生じる渦電流も均一にすることができるので、低抵抗材に流れる渦電流と超電導コイルの作る磁場から生じる電磁力を均一にするという効果を持つ。この効果によって、電磁力の不均一から生じる局所的振動を防ぐことができる。従って、超電導磁石の信頼性が高まり、クエンチしにくい超電導磁石が得られる。第3に、このとき設置する比抵抗を前述のように選択することによって、励磁/消磁速度を損なわず、励磁/消磁時の発熱も抑制可能な超電導磁石を得る。第4に、設置する比抵抗と、外乱の最小周波数から算出される表皮深さで、設置する低抵抗材の厚さを決定することによって、充分なシールド効果を得るのに必要最低限の設置厚さを得ることができ、さらに低抵抗材としてアルミニウムを選択することによって、低抵抗材を最も軽量に設置することができ、超電導磁石の小型軽量化が可能となる。
【0067】尚、上述した実施例では、アルミニウムを例に説明したが、重量の不利を除けば、銅その他の良導体を使用できることはいうまでない。
【0068】
【発明の効果】本発明によれば、超電導コイル収納容器の表面に低抵抗材を一様に設置することによって、外部から磁場変動を受けた場合に生じる渦電流を均一にすることができる。従って、超電導コイルの受ける変動磁場を一様にシールドするという効果を持つ。この効果によって、変動磁場によって超電導コイルで生じる局所的な渦電流発熱を防ぐことができる。これにより、超電導磁石の信頼性が高まり、クエンチしにくい超電導磁石が得られる。
【0069】また、本発明によれば、超電導コイル収納容器の表面に低抵抗材を一様に被覆することによって、外乱を受けて、超電導磁石が振動することによって生じる渦電流を均一にすることができる。従って、低抵抗材に流れる渦電流と超電導コイルの作る磁場から生じる電磁力を均一にするという効果を持つ。この効果によって、電磁力の不均一から生じる局所的振動を防ぐことができる。これにより、超電導磁石の信頼性が高まり、クエンチしにくい超電導磁石が得られる。また、このとき設置する比抵抗を、励磁/消磁速度、及び液体Heの許容蒸発量の制限から最適化することによって、励磁/消磁速度を損なわず、励磁/消磁時の発熱も抑制可能な超電導磁石を得ることが可能となる。更に、設置する比抵抗と、外乱の最小周波数から算出される表皮深さで、設置する低抵抗材の厚さを決定することによって、充分なシールド効果を得るのに必要最低限の設置厚さを得ることができ、超電導磁石の小型軽量化が可能となる。




 

 


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