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発明の名称 半導体装置及び半導体装置の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−244226
公開日 平成6年(1994)9月2日
出願番号 特願平5−30086
出願日 平成5年(1993)2月19日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
発明者 栗原 保敏 / ▲高▼橋 茂
要約 目的
本発明は半導体装置に関し、信頼性の高い半導体素子基体と載置部材との接着構造を得ることを目的とする。

構成
Cr,Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1の元素を主成分とする金属層(3)がSn及びSbを主成分とするろう材(4)と直接固着される接着構造を、半導体基体(1)と載置部材(5)の間に有する。
特許請求の範囲
【請求項1】半導体基体が載置部材上に接着された半導体装置において、Cr,Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1の元素を主成分とする金属層がSn及びSbを主成分とするろう材と直接固着される接着構造を、前記半導体基体と載置部材間に有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】請求項1記載の半導体装置において、前記Cr,Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1の元素を主成分とする金属層は、前記半導体基体のダイボンディングされる面に設けられたことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】請求項1記載の半導体装置において、前記金属層はSn及びSbを含有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】請求項1記載の半導体装置において、前記接着構造は電気伝導部又は熱伝導部として用いられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】請求項1記載の半導体装置において、上記金属層がAu,Ag,Pt,Ni,Cu,Zn,Al,Co,Fe,Pbの群から選択された少なくとも1種の金属を含有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】請求項1記載の半導体装置において、Sn,Sb,Au,Ag,Pt,Ni,Cu,Zn,Al,Co,Fe,Pbの群から選択された少なくとも1種の金属が上記金属層へ拡散していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】半導体基体のダイボンディングされるべき面にCr,Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1種を主成分とする金属層と、上記金属層の表面にSn,Sb,Au,Ag,Pt,Ni,Cu,Zn,Al,Co,Fe,Pbの群から選択された少なくとも1種の金属からなる表面金属層が順次被着され、上記表面金属層がSnとSbを主成分とするろう材とともに上記ろう材の液相点以上の温度に加熱されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】請求項7記載の半導体装置の製造方法において、上記金属層の表面にNi又はCuの層とAg又はAuの層が順次被着された表面金属層を設けることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】請求項7記載の半導体装置の製造方法において、上記ろう材が添加材としてのNi,Cu,P,Vの群から選択された少なくとも1種の物質を含有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】請求項7記載の半導体装置の製造方法において、上記表面金属層が上記ろう材とともに真空雰囲気中,不活性雰囲気中,還元性雰囲気中の群から選択された1つの雰囲気中で加熱されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】Cr,Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1の元素を主成分とする金属層がSn及びSbを主成分とするろう材と直接固着される接着構造を、半導体基体と載置部材間に有する半導体装置が、負荷に給電する電気回路に組み込まれたことを特徴とする電子装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体素子をろう材で固着する半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体素子基体は、半導体装置の金属載置部材上に融点の比較的低いろう材により接着される。例えば、(1)特開平4−49630号には、Sb−Sn系合金ろう材であって、Ni,Cu及びPを共に含有した半導体装置組立て用合金ろう材が開示されている。この場合、SnにSbを添加することによってろう材自身の機械的強度を高め、はんだ層と被接着部材の表面との界面にNi−SnあるいはCu−Snの金属間化合物が生成されるのを抑えて、半導体装置の信頼性の向上が可能と言う。
【0003】(2)特公平3−3937 号には、半導体素子とこれを支持する銅載置部材とを、重量比87〜92.4%のSn,7.0〜10.0%のSb,0.6〜3.0% のNiのろう材でろう付けした半導体装置が開示されている。この場合、ろう材にNiが添加されているため、載置部材のCuとろう材のSnとの反応による金属間化合物の生成が抑えられ、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【0004】(3)“ベアチップ実装”と題する文献(技術情報協会、技術情報社、1990年1月31日)の154頁に、シリコンICチップをガラス基板にはんだバンプを用いて接続した半導体基体の接着構造が開示されている。この中で、チップの接着面に設けられたAl層の上にTi(0.15μm)−Cu(1.5μm)−Ni(5μm)積層金属層を設け、この部分にはんだ(Pb−5wt%Sn)バンプを形成して、これによる融着によりガラス基板にICチップを固定,接続している。また、Crがはんだにぬれにくい性質を利用して、このCrにはんだの流出を防止するダムの役割を与えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】半導体装置における発熱量が少なく、要求される信頼性がさほど高くない場合には、半導体基体を金属載置部材上にどのようなろう材を用いて接着しても問題はない。しかし、発熱量が大きく高い信頼性が要求される場合には、適用されるべきろう材は選択されねばならない。このような観点から、それ自体剛性や破壊強度が高い、Sn−5wt%Sb系はんだ材がダイボンディング用ろう材として選択される。この際、半導体基体のダイボンディング面には、ろう材及び半導体基体との接着性が付与されたCr−Ni−AgやTi−Cu−Agのような多層金属層が設けられる。接着が完了した状態では、Agのような最表層金属はろう材の中に溶け込んで、接着界面から消失するが、NiやCuのような中間層金属はろう材に溶け込まずに界面に残留し、ろう材とCrやTiのような最下層金属との反応を抑制する障壁としての役割を担う。このような役割を持つ中間金属層が設けられるのは、最下層金属とろう材とが直接接触する構造をとった場合は、(a)両者が冶金的に結合しないため、接着が不可能と考えられていたこと、又は、(b)両者の反応により最下層金属がろう材により侵食されて消失し、強固な接着力が得られなくなると考えられていたことに基づく。先行技術例(3)におけるCu層やNi層も同様の配慮のもとに設けられたものである。
【0006】しかしながら、接着界面に中間金属層が存在している場合は、半導体装置の稼働時の熱やストレスの印加により、中間層金属とSnを含むはんだ材との反応を生じ、金属間化合物が生成されやすい。例えば、表1に示すように、中間層金属とろう材の間には多種に及ぶ金属間化合物が生成される。これらの金属間化合物の多くは硬くかつ脆い性質を有しており、界面部に過大な熱応力が与えられた場合には、金属間化合物の領域における破壊が選択的に進む。特に、それ自体剛性や破壊強度が高いSn−5wt%Sb系はんだ材の場合には、金属間化合物の生成と選択的な破壊が半導体装置の熱的及び電気的機能に関する信頼性を損なう最も大きな原因となる。
【0007】
【表1】

【0008】先行技術例(1)乃至(3)では、要求される信頼性が高い半導体装置に好適なろう材とその接着構造は開示しているが、前記の金属間化合物の生成と選択的な破壊の防止についての配慮はなされていない。
【0009】したがって本発明の目的は、上述の問題点を解決し、金属間化合物の生成と選択的な破壊の防止を可能にする半導体基体の接着構造及びこれを適用した半導体装置と電子装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の半導体装置は、Cr,Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1の元素を主成分とする金属層がSn及びSbを主成分とするろう材と直接固着される接着構造を、半導体基体と載置部材間に有することを特徴とする。
【0011】本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基体のダイボンディングされるべき面にCr,Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1種を主成分とする金属層と、上記金属層の表面にSn,Sb,Au,Ag,Pt,Ni,Cu,Zn,Al,Co,Fe,Pbの群から選択された少なくとも1種の金属からなる表面金属層が順次被着され、上記表面金属層がSnとSbを主成分とするろう材とともに上記ろう材の液相点以上の温度に加熱されることを特長とする。
【0012】
【作用】本発明の半導体装置における半導体基体の接着構造は、次の点で従来の接着構造と異なる。
【0013】(1)半導体基体のダイボンディングされるべき面に設けられたCr,Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1種からなる金属層が、SnとSbをはじめとするろう材の成分を含有し、上記金属層とはんだ材は、金属層の成分とはんだ材の成分とが相互拡散して接着力が付与されている。
【0014】(2)上記金属層とはんだ材の間には、Snとの間で金属間化合物を生成しやすいNi,Pt,Cu,Pdのような中間層金属が介在しない。
【0015】上記の相違点は、上述した(a)及び(b)のような接着に関する従来の常識を覆すものである。上記金属層の成分はろう材の成分と親和性が高く、ろう材成分の拡散を促す。この結果、ろう材との間の拡散による接着力が付与される。また、金属層とはんだ層の界面には、金属間化合物を生成しやすい物質が存在しないため、その生成による選択的な破壊も生じない。
【0016】
【実施例】本発明を実施例により詳細に説明する。
【0017】〔実施例 1〕本実施例では、半導体基体の接着構造とその製法について説明する。
【0018】図1は半導体基体を接着した構造体10の断面を示す。この接着構造体10において、サイズ12.8mm×12.8mm×0.5mmのIGBT(Insulated GateBipolar Transistor)素子基体1が、そのダイボンディングされるべき面に蒸着により形成された厚さ3.5μmのAl層2と厚さ0.18μmのCr層3を介して、組成Sn−5wt%Sb−0.6wt%Ni−0.05wt%P,厚さ200μmのはんだ層4により厚さ約3.5μm のNiめっきを施したCu載置部材5に固着されている。ここで特筆すべき点は、Cr層3とはんだ層4とが直接接触し、前記両者が冶金的に結合されていることである。ここで構造体10は、素子基体1とCu載置部材5の間にはんだ4を介装し、水素雰囲気中で270℃に加熱して得た。構造体10を得るのには真空雰囲気,還元性雰囲気,不活性雰囲気のもとで、はんだ4の液相点以上の温度に加熱するのが好適である。また、SnとSbを主成分とするはんだ4にNi,Cu,P,Vのごとき物質が添加されていることは好ましいことである。これは、はんだ材4の酸化を抑制するのに、上記の添加物質が効果的な作用を及ぼすからである。
【0019】図2は半導体基体のダイボンディングされるべき部分のはんだ付けされる前の断面構造を示す。IGBT素子基体1には、Al層2,Cr層3、そして厚さ0.6μmのNi層6と厚さ0.2μmのAg層7が蒸着により順次形成されている。基体1には図2のように多層金属層が形成されていたにもかかわらず、はんだ付けが終了した段階では図1のようにNi層6とAg層7が接着界面部から消失している。金属層としてのCr層3は、Ti,Mo,W,Zr,Hfの群から選択された少なくとも1種の金属で代替されてもよいものである。また、金属層3の表面にはSn,Sb,Au,Ag,Pt,Ni,Cu,Zn,Al,Co,Fe,Pbの群から選択された少なくとも1種の表面金属層が形成されていることが望ましい。この理由は、比較的活性な金属である金属層3の酸化を抑制し、はんだ層4との冶金的接着を促進させるためである。特に、金属層3の表面にNi又はCu層と、Ag又はAu層が表面金属層として順次被着形成されていることが効果的である。
【0020】図3はIGBT素子基体の接着構造体の接着部の剪断強度に関する分布を示す。この分布図は剪断強度のデータを正規確率紙上にプロットしたもので、本実施例で得た図1に示す構造体である(A)ロット及び(B)ロットを他の接着構造体の結果(C)ロットと比較して示す。比較例として用いる他の接着構造体は、図2の半導体基体を厚さ200μmのPb−5wt%Sn−1.5wt%Ag はんだ材によりNiめっきCu載置部材5に固着したものである。比較例の他の接着構造体は、はんだ付けが終了した段階で、図2におけるAg層7を接着界面部から消失させ、Ni層6をAl層2やCr層3とともに界面部に残すようにしたものである。
【0021】プロットした各データはいずれもあてはめ直線に乗っており、剪断強度の分布は正規分布していることが明らかである。この分布から求められる平均強度は、本実施例の接着構造体10の場合約3kg/mm2 と他の接着構造体の場合の1.75kg/mm2より大きい。
【0022】ここで、本実施例の接着構造体10はCr層3とはんだ層4とが直接接触した構成であるにもかかわらず、Ni層6がCr層3とはんだ層4との間に介在している他の接着構造体の場合より大きな接着力を具備している点が特筆される。
【0023】図4はIGBT素子基体を接着した構造体における接着界面部の構成成分のSIMS分析(Secondary Ion Mass Spectroscopy)によるデプスプロファイルを示す。ここでは、はんだ付けした構造体10の支持体5及びはんだ層4側を接着界面部の近傍まで研磨除去し、わずかに残ったはんだ層4の側から逐次スパッタリングを施しながら分析している。はんだ層領域4とAl層領域2の境界部にCrのピークが観測される。Crのピーク位置でSn,Ni及びSbのピークが重なり、AlもCrの側に移動している。また、AgはCr,Sn,Ni及びSbのピークとはんだ領域4の境界部にピークを有している。ここで特筆される点は、はんだ付け後に残留したCr層領域3にはんだ層や多層蒸着層の構成成分が移動し、これらの成分が混じり合った状態を呈していることである。また、接着構造体における接着界面部をX線回折したところ、Sn,Ni,Ag,Cr及びAlの単体金属のほかに、SbSn,0.9Sb0.1Sn,Ni5Sb2及びAg3Sb の金属間化合物が検出された。ここで特筆される点は、検出された単体金属の中にSbが含まれていないこと、及び、検出された金属間化合物にはSbが含まれていることである。以上のSIMS分析及びX線回折の結果から、Cr層3とはんだ層4の間に接着力が付与されるのは、次のメカニズムによると言える。はんだ付けの際に、はんだと多層蒸着層を構成する各金属がCr層3へ移動して、拡散接合的な界面を形成する。同時に、移動した各金属が金属間化合物の生成により化学的結合対を形成して接着に寄与する。
【0024】表2はIGBT素子基体を接着した構造体に−55〜150℃の温度サイクルを印加した時の剪断強度を、比較例としての上記他の接着構造体の場合のそれとともに示す。この際の剪断強度は、図3の場合と同様に正規確率紙上で求めた平均値を示す。本実施例構造体10の剪断強度は、初期値の3.0kg/mm2から温度サイクル数500回の2.0kg/mm2まで変化している。一方、比較例としての上記他の接着構造体の場合は、温度サイクル数200回で0.2kg/mm2とほぼ完全に接着力を失っている。接着力を失なう主因は、接着界面部が熱応力のたび重なる印加により疲労破壊することによる。このように熱ストレスを印加した場合でも、本実施例構造体10は比較例としての接着構造体より圧倒的に優れた接着性が維持されている。
【0025】
【表2】

【0026】図5は上記の温度サイクルを印加した時に接着界面部に生成されるNi−Sn系金属間化合物の厚さを示す。ここでは、本実施例構造体10の場合(a)と比較例接着構造体の場合(b)とを比較して示す。本実施例構造体では、金属間化合物は初期段階ではほとんど形成されておらず、温度サイクル数500回後でもそれが新たに生成されることはない。これに対し比較例接着構造体では、金属間化合物の厚さは温度サイクル数とともに増加し、500回後では3.5μm に達している。本実施例構造体10の場合に金属間化合物が生成されないのは、Cr層3とはんだ層4の間の界面に金属間化合物を形成するための高濃度のNi層が介在しないためである。一方、比較例接着構造体の場合は、Cr層3とはんだ層4の間の界面に高濃度のNi層が介在し、繰返し印加される熱エネルギーと熱応力の作用により、金属間化合物の生成が促進される。X線回折によれば、界面に生成されている化合物はNi3Sn,Ni3Sn4及びNi6Sn5であった。
【0027】温度サイクルを印加した時の疲労破壊部は、EPMA分析により調べたところ上記のNi−Sn系金属間化合物が生成されている領域であった。本実施例構造体10の場合には、これらの金属間化合物の生成が抑制されるため疲労破壊を生じにくい。
【0028】〔実施例 2〕本実施例では、図1におけるはんだ層4と直接接触する金属層3がTi,Mo,W,Zr又はHfのいずれかを含む金属層である場合の半導体基体の接着構造について説明する。
【0029】半導体基体を接着した構造体10は、前記実施例1と同様のサイズのIGBT素子基体1が、そのダイボンディングされるべき面に蒸着により形成された厚さ3.5μmのAl層2と金属層としての厚さ0.2μmのTi,Mo,W,Zr又はHfの層3を介して、組成Sn−5wt%Sb−0.6wt%Ni−0.05wt%P,厚さ200μmのはんだ層4により厚さ約3.5μm のNiめっきを施したCu支持体5に固着されている。ここで特筆すべき点は、金属層3とはんだ層4とが直接接触し、前記両者が冶金的に結合されていることである。半導体基体1のダイボンディングされるべき部分は、はんだ付けされる前の段階では、Al層2,上記金属層3、そして厚さ0.6μmのNi層6と厚さ0.2μmのAg層7が蒸着により順次形成されている。基体1にはこのように多層金属層が形成されていたにもかかわらず、はんだ付けが終了した段階ではNi層6とAg層7が接着界面部から消失している。
【0030】表3は本実施例の半導体基体接着構造体10の接着部の剪断強度を示す。この強度も正規確率紙上から求めた平均値で表す。剪断強度はいずれの金属層3の場合も約3kg/mm2 と前記実施例1の場合とほぼ同等で、強固に接着されていることが理解される。ここで、本実施例の接着構造体10は金属層3とはんだ層4とが直接接触した構成であるにもかかわらず、大きな接着力を具備している点が特筆される。
【0031】
【表3】

【0032】本実施例においても、前記実施例1と同様に接着界面部の構成成分のSIMS分析によるデプスプロファイルを得た。この結果、前記実施例1と同様に、はんだ層領域4とAl層領域2の境界部にTi,Mo,W,Zr及びHfのピークが観測された。これらの金属のピーク位置でSn,Ni及びSbのピークが重なり、AlもTi,Mo,W,Zr及びHfの側に移動していた。また、Agは前記これらの金属、Sn,Ni及びSbのピークとはんだ領域4の境界部にピークを有していた。ここで特筆される点は、はんだ付け後に残留した金属層領域3にはんだ層や多層蒸着層の構成成分が移動し、これらの成分が混じり合った状態を呈していることである。以上のSIMS分析の結果から、はんだ付けの際にはんだと多層蒸着層を構成する各金属が金属層3へ移動して拡散接合的な界面を形成することが、金属層3とはんだ層4の間に接着力が付与される主因になっていると言える。
【0033】表4は本実施例の半導体基体接着構造体10に−55〜150℃の温度サイクルを印加した時の剪断強度を示す。この際の剪断強度も正規確率紙上で求めた平均値を示す。たとえばZrを例にとれば剪断強度は初期値の約3.0kg/mm2に対し、温度サイクル数500回を経た後でも約2.0kg/mm2までしか低下していない。このように熱ストレスを印加した場合でも、本実施例構造体10は優れた接着性が維持されている。
【0034】
【表4】

【0035】上記の温度サイクルを500回印加した後に接着界面部に生成されるNi−Sn系金属間化合物の厚さを調べた。しかし、本実施例構造体10では、金属層3がTi,Mo,W,Zr又はHfのいずれの場合でも、計測できる程度の厚さを持つ金属間化合物は検出できなかった。本実施例構造体10の場合に金属間化合物が生成されないのは、金属層3とはんだ層4の間の界面に金属間化合物を形成するための高濃度のNi層が介在しないためである。また、本実施例構造体10の場合には、この金属間化合物の生成が抑制されるため疲労破壊を生じにくい。
【0036】〔実施例 3〕本実施例では、はんだ層4としてCuを添加したSn−Sb系はんだ材を用いた場合の半導体基体の接着構造について説明する。
【0037】本実施例で得られた接着構造体10は、IGBT素子基体1が、そのダイボンディングされるべき面に蒸着により形成された厚さ3.5μm のAl層2と厚さ0.18μmのCr層3を介して、組成Sn−5wt%Sn−0.5wt%Cu−0.05wt%V,厚さ200μmのはんだ層4により厚さ約3.5μmのNiめっきを施したCu支持体5に固着されている。ここで特筆すべき点は、Cr層3とはんだ層4とが直接接触し、前記両者が冶金的に結合されていることである。基体1のダイボンディングされるべき部分には、厚さ3.3μmのAl層2,0.18μmのCr層3,0.2μmのCu層6そして0.2μm のAg層7が蒸着により順次形成されている。基体1にはこのような多層金属層が形成されていたにもかかわらず、はんだ付けが終了した段階ではCu層6とAg層7が接着界面部から消失している。
【0038】接着構造体の接着部の正規確率紙上から求めた平均剪断強度は、約3.5kg/mm2 と大きな値が得られた。ここで、本実施例の接着構造体10はCr層3とはんだ層4とが直接接触した構成であるにもかかわらず、一層大きな接着力を具備している点が特筆される。
【0039】本実施例においても前記実施例1と同様に、接着構造体10における接着界面部の構成成分のSIMS分析によるデプスプロファイルを得た。この結果、はんだ層領域4とAl層領域2の境界部にCrのピークが観測された。Crのピーク位置でSn,Sb及びCuのピークが重なり、AlもCrの側に移動していた。また、AgはCr,Sn,Sb及Cuのピークとはんだ領域4の境界部にピークを有していた。ここで特筆される点は、はんだ付け後に残留したCr層領域3にはんだ層や多層蒸着層の構成成分が移動し、これらの成分が混じり合った状態を呈していることである。以上のSIMS分析の結果から、Cr層3とはんだ層4の間に接着力が付与されるのは、はんだと多層蒸着層を構成する各金属がCr層3へ移動して拡散接合的な界面を形成することがその主因をなしている。
【0040】本実施例の接着構造体10には、−55〜150℃の温度サイクルを印加した。温度サイクル数500回後の正規確率紙上で求めた平均剪断強度は、3.0kg/mm2 を示した。このように熱ストレスを印加した場合でも、本実施例構造体10は優れた接着性が維持されている。また、上記の温度サイクルを500回印加した後に接着界面部に生成されるNi−Sn系金属間化合物の厚さを調べた。しかし、本実施例構造体10では、計測できる程度の厚さを持つ金属間化合物は検出できなかった。本実施例構造体10の場合に金属間化合物が生成されないのは、Cr層3とはんだ層4の間の界面に金属間化合物を形成するための高濃度のCu層が介在しないためである。また、本実施例構造体10の場合には、この金属間化合物の生成が抑制されるため疲労破壊を生じにくい。
【0041】〔実施例 4〕本実施例では、半導体基体としてのIGBT素子基体1を搭載した半導体装置、及びこの半導体装置を電子装置に用いた例について説明する。
【0042】図6はIGBT素子基体1を搭載した1200V,75A級の絶縁型半導体装置900の要部俯瞰図を示す。図において、銅支持板(Niめっき:3μm,40mm×95mm×3mm)125上に、31mm×60mm×0.63mm の窒化アルミニウム絶縁基板122が、Pb−50wt%Snはんだ(図示を省略、厚さ:200μm)により接着され、絶縁基板122上には銅支持板125と同様のNiめっきを施した銅熱拡散板5が2個並んでPb−50wt%Snはんだ(図示を省略、厚さ:200μm)により接着され、銅熱拡散板5にはIGBT素子(13mm×13mm×0.3mm)1がダイオード素子(10mm×10mm×0.3mm)1′とともにSn−5wt%Sb−0.6wt%Ni−0.05wt%Pはんだ(図示を省略、厚さ:200μm)により接着されている。各素子1,1′にはAl線(直径:500μm)117によるワイヤボンディングが施され、エミッタ電極13b,ゲート電極13cに接続されている。銅条片からなるこれらの電極13b,13cは、3mm×23mm×2mmのアルミナ条片114にろう層(図示を省略、Sn−5wt%Sb−0.6wt%Ni−0.05wt%P,厚さ:200μm)により接着され、アルミナ条片114は同じろう材(図示を省略)により銅熱拡散板5に接着されている。IGBT素子基体1及びダイオード素子基体1′がダイボンディングされるべき面には、前記実施例1と同様にAl層,Cr層,Ni層及びAg層からなる多層蒸着層が形成されたものである。しかし、はんだ4によって接着された後は、Ni層及びAg層が接着界面部から消失している。
【0043】銅熱拡散板5は、コレクタ電極13aを担う。コレクタ電極13a,エミッタ電極13b,ゲート電極13cには、それぞれ外部端子116,116′や中継端子126が設けられ、更に各素子1,1′,銅熱拡散板5等が外気から完全に遮断されるように、エポキシ系樹脂製ケース(図示を省略)を設けるとともに同ケース内にシリコーンゲルやエポキシ樹脂を充填,硬化させて半導体装置900を得た。この半導体装置900は、図7に示した回路を構成している。なお、本実施例では特性を比較するため、IGBT素子と銅熱拡散板5とを接着するはんだとしてのSn−5wt%Sb−0.6wt%Ni−0.05wt%PをPb−5wt%Sn−1.5wt%Ag に置き換えた試料も作製した。半導体装置900は最終的に、図8に示す電動機950の回転数制御用インバータ装置に組込まれた。
【0044】半導体装置900のIGBT素子1−銅支持板125間の熱抵抗は、0.30W/℃と、比較用試料の0.3W/℃と同様に低い値が得られた。低熱抵抗化が図られたのは、熱流路を銅熱拡散板5や窒化アルミニウム122等の高熱伝導性部材で構成したことによる。
【0045】また、半導体装置900に間欠通電し、支持板125の温度を40〜100℃間で繰返し変化させる試験を施した。この試験を30000回施した後の熱抵抗は0.36W/℃と若干増加したが、比較試料の同試験3000回における0.84W/℃より格段に安定しており、優れた放熱性が維持されている。このように、本実施例の半導体装置900が優れた信頼性を示した最大の理由は、銅熱拡散板5と半導体基体1,1′間のはんだ層4の熱疲労破壊が避けられたためである。これは、比較試料の場合のようにはんだ層4とCr層3の間にNiが介在せず、熱ストレスの印加によってもNi−Sn系金属間化合物の生成が抑えられ、そして疲労破壊がこの金属間化合物の領域を選択的に進むことが避けられたためである。
【0046】このように本実施例によれば、比較試料に比べて、放熱性を実質上犠牲にせずに半導体装置の信頼性を向上させることができた。
【0047】本実施例の半導体装置900を組み込んだ、図8のインバータ装置を用いて、電動機950の回転数制御を試みた。図9は、スイッチング周波数とIGBT素子1の発熱温度の関係である。スイッチング損失は周波数を増すにつれ増えるが、商用電源の50Hzから30kHzまでの間では、素子1が安定して動作する温度の125℃を越えることはなかった。この間、電動機は特別な異常を伴わずに作動した。
【0048】また、インバータ装置及び電動機は、電気自動車にその動力源として組み込まれた。この自動車においては、動力源から車輪に至る駆動機構を簡素化できたため、ギヤーの噛み込み比率の違いにより変速していた従来の自動車に比べ、変速時のショックが軽減された。更に、この自動車は、0〜250km/hの範囲でスムーズな走行が可能であったほか、動力源を源とする振動や騒音の面でも従来の気筒型エンジンを搭載した自動車の約1/2に軽減することができた。
【0049】〔実施例 5〕本実施例では、大型の銅熱拡散板上に多数の半導体基体を搭載した半導体装置、及びこの半導体装置を電子装置に用いた例について説明する。
【0050】本実施例の銅熱拡散板は、前記実施例4と同様にNiめっきを施したもので、47mm×76mm×3mmなるサイズを有している。同様のNiめっきを施した銅支持板(95mm×110mm×5mm)上にPb−60wt%Snはんだ(厚さ:200μm)によりアルミナ絶縁基板(68mm×86mm×0.63mm )が接着され、更にアルミナ絶縁基板上にPb−60wt%Snはんだ(厚さ:200μm)により銅熱拡散板が搭載された。この銅熱拡散板には、Sn−5wt%Sb−0.6wt%Ni−0.05wt%P はんだ(厚さ:200μm)により、IGBT素子基体(13mm×13mm×0.3mm ,6個)と、ダイオード素子基体(13mm×13mm×0.3mm,2個)が接着された。以下実施例1と同様の部材搭載,配線,パッケージングを施し、半導体装置を得た。この装置は、搭載された全ての素子が並列に接続され、等価的に図10に示す回路を構成している。
【0051】以上により得られた半導体装置には、−55℃〜+150℃の温度サイクルが3000回印加された。これによる半導体基体−支持板間熱抵抗(初期値:0.28℃/W)の変化は観測されなかった。
【0052】次いで、24個の本実施例半導体装置が、図8と同様のインバータ回路に組み込まれた。ここでは、1相分として8個の半導体装置が割り当てられている。これにより得られたインバータ装置(電源電圧:1500V、ピーク出力電流:650A,平均周波数:2kHz)は、電車用の主電動機(190kW)の速度制御に供された。この結果、走行開始(加速)時に電動機が発する騒音は平均周波数1.5kHzの場合より1/3低く、そして、短い駅間距離(1.2km)を想定した走行試験でも表定速度40km/hと優れた運行性能が得られた。これは、高周波化されて発熱の著しい半導体基体1を効率的に冷却できるだけでなく、同基体を固着しているはんだ層4がたび重なる熱ストレスの印加によっても疲労破壊せず、良好な放熱性を維持できるためである。はんだ層が疲労破壊しにくいのは、接着界面部における金属間化合物の生成が抑えられるためである。
【0053】以上に説明したように、本実施例の半導体装置は、電動機の回転速度や移動装置の走行速度を制御するのに有用である。本実施例と同様の半導体装置がエレベータ,エスカレータ,ベルトコンベヤー等の物体を運搬する装置やその装置に組み込まれた場合でも、電車に組み込まれた場合と同様の効果が得られる。
【0054】〔実施例 6〕本実施例では、一個の基体の中にIGBT素子基体を6個,ダイオード素子基体を6個内蔵した半導体装置、及びこの半導体装置を電子装置に用いた例について説明する。
【0055】銅支持板(Niめっき:3μm,50mm×60mm×3mm)上に、40mm×40mm×0.63mm の窒化アルミニウム絶縁基板が接着され、絶縁基板122上には前記実施例5と同質の銅熱拡散板(サイズ:35mm×35mm×1mmの)が1個接着され、銅熱拡散板5には上記半導体基体(15mm×15mm×0.3mm )が接着されている。基体にはAl線(直径:300μm)によるワイヤボンディングが施され、電極に接続されている。銅条片からなるこれらの電極はアルミナ条片にろう付けされ、アルミナ条片は銅熱拡散板にろう付けされている。以上の積層体を樹脂封止して半導体装置を得た。この半導体装置は、これのみで図8と同様のインバータ回路を構成している。
【0056】半導体装置からなるインバータ装置は、ブラシレス直流電動機とともに家庭用冷暖房機(暖房時の消費電力:150〜1860W,冷房時の消費電力:200〜1375W,電源電圧:100V)に組み込まれた。図11は本実施例のインバータ装置を用いた電動機の効率(A)を示すグラフで、従来の交流電動機を用いた場合(B)と比較して示す。本実施例の場合は、比較した全回転数範囲で、従来の場合より10%以上高い効率を示している。この点は、冷暖房機使用時の電力消費を低減するのに役立つ。また、室内の温度が運転開始から設定温度に到達するまでの時間は、本実施例の場合は従来の交流電動機を用いた場合より約1/2に短縮された。
【0057】本実施例と同様の効果は、半導体装置が他の流体を撹拌又は流動させる装置、例えば洗濯機,流体循環装置等に組み込まれた場合でも享受できる。また、同様の半導体装置は、電源の整流装置や照明設備の光量を制御するインバータ装置に組み込まれてもよいものである。
【0058】本発明において、半導体基体1はシリコンに限られる必要はなく、例えばゲルマニウムや、シリコンとゲルマニウムの混晶であっても、本発明の効果を享受することが可能である。
【0059】本発明において、銅熱拡散板5はMo,W,銅−インバー−銅クラッド材,Cu−Mo系複合焼結体,Cu−C複合焼結体,炭素焼結体等のように熱膨張係数が小さく、熱伝導率が高い材料で代替されても良いものである。また、銅支持板125は熱伝導性が優れることを優先して選択されているが、これの代替材料として上記熱拡散板と同様の材料を適用てきるだけでなく、熱伝導性が高く強度の大きい酸化ベリリウム添加SiC焼結体のようなセラミックスを用いることも可能である。
【0060】本発明において、金属層3とはんだ層4の間にNi−Sn系又はCu−Sn系金属間化合物を生成しないものであれば、はんだ層4として種々の成分及び組成のものを選択しうる。例えば、Pb−5wt%Sb,Au−26wt%Sb,Cu−76.5wt%Sb 、又は、これらを任意に組合せたろう材を適用できる。
【0061】本発明において、熱拡散板5に搭載される素子は半導体基体に限定されず、例えばコンデンサ,抵抗体,コイル等が搭載されても良い。
【0062】本発明において、絶縁型半導体装置の電気回路は、図7及び図10に示したものに限定されない。例えば、図12に示すように、半導体装置の内部で種々の電気回路が設けられていることは、これを電子装置に用いる上で支障になるものではない。また、半導体装置の内部の電気回路に受動素子が組み込まれていることも、好ましいことである。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、金属間化合物の生成とこの金属間化合物を選択的に進む疲労破壊を防止するのに好適な半導体基体の接着構造とその製法、そして、上記接着構造を適用した信頼性の高い半導体装置と電子装置を提供することができる。




 

 


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