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磁気検出装置 - 株式会社日立製作所
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発明の名称 磁気検出装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−237022
公開日 平成6年(1994)8月23日
出願番号 特願平5−20975
出願日 平成5年(1993)2月9日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
発明者 茶原 健一 / 大野 俊之 / 葛西 昌弘 / 菅家 庸子 / 小園 裕三
要約 目的
高感度を有する磁気検出装置を提供する。

構成
酸化物磁気抵抗効果膜を有する磁気抵抗効果素子。
特許請求の範囲
【請求項1】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子を構成する要素として、少なくとも酸化物磁性体からなる酸化物磁気抵抗効果膜を有する磁気検出装置。
【請求項2】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素として、少なくとも磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/磁気抵抗効果膜からなる3層膜を有し、前記磁気抵抗効果膜の少なくとも一方が酸化物磁性体からなる酸化物磁気抵抗効果膜である磁気検出装置。
【請求項3】請求項2において、酸化物導電性膜が巨視的に自発磁化を有しない薄膜材料であって、磁気秩序を有しないが微視的に磁性スピンを有する薄膜材料、あるいは磁気秩序を有する反強磁性体材料からなる酸化物導電性薄膜材料であることを特徴とする磁気検出装置。
【請求項4】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素として、少なくとも酸化物磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/酸化物磁気抵抗効果膜からなる全酸化物3層膜を有する磁気検出装置。
【請求項5】請求項4において、酸化物導電性膜が巨視的に自発磁化を有しない薄膜材料であって、磁気秩序を有しないが微視的に磁性スピンを有する薄膜材料、あるいは磁気秩序を有する反強磁性体材料からなる酸化物導電性薄膜材料であることを特徴とする磁気検出装置。
【請求項6】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、単体磁性体であって磁性層と非磁性層とからなる磁性層/非磁性層多層構造を有する磁性材料である磁気検出装置。
【請求項7】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、単体磁性体であって、磁場と電流の方向に依らない等方的な、あるいは異方性の小さい磁気抵抗効果膜である磁気検出装置。
【請求項8】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、単体磁性体であって、そのスピン構造において2つの異なるスピン方向を有し、このスピン間のなす角度に対応した磁化が誘起される磁性材料であることを特徴とする磁気検出装置。
【請求項9】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、単体磁性体であって、そのスピン構造において2つの異なるスピン方向を有し、このスピン間の角度の被検出磁界によって誘起される角度変化分を磁気抵抗変化分として磁気信号を検出する磁気検出装置。
【請求項10】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、キャント磁性を示す磁性材料である磁気検出装置。
【請求項11】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、室温付近に磁気転移温度を有する磁性材料である磁気検出装置。
【請求項12】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、磁気検出温度付近に磁気転移温度を有する磁性材料である磁気検出装置。
【請求項13】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、これを構成する元素組成比の連続的な変化に対応して、その磁気転移温度が−250〜500℃の広い範囲で連続的に変化する磁性材料である磁気検出装置。
【請求項14】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜が、ペロブスカイト構造を有するLnMnO3 を母体とし、Ca,Srの中の少なくとも1つの元素を含み、その磁気特性を制御したペロブスカイト型酸化物磁性体である磁気検出装置。
【請求項15】磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置であって、前記磁気抵抗効果素子を構成する要素として、少なくとも酸化物磁性体からなる酸化物磁気抵抗効果膜とこれに電流を印加する電極とを有する磁気検出装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気検出装置に関し、特に高感度磁気検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気抵抗効果膜を用いた磁気検出に関しては以下のような従来技術がある。アイ イー イー トランスアクション オン マグネティクス 第18巻 第2号 3月(1982)707〜708頁 (IEEE Transaction on Magnetics,Vol.Mag-18,No.2March(1982) p.707-708)にはNi/NiO/Ni3層膜による磁気検出の記載がある。ジャーナル オブ ザ フィジカル ソサイエティ オブジャパン 第59巻 3061〜3064頁には、磁気特性の異なる金属磁性膜を非磁性膜を介して積層したものが記載されている。フィジカル レビューB43号 1297〜1300頁(Physical review,B43,1297〜1300)には、FeMn反強磁性膜を強磁性/非磁性多層膜にしものが記載されている。第69回日本応用磁気学会研究会資料(1991)の21〜26頁には、Fe(30Å)/Cr(9Å)/Fe(30Å)を用いた磁気検出が記載されている。また、特開平2−61572号広報には、強磁性膜/非磁性膜/強磁性膜/反強磁性膜を用いた磁気センサについての記載がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来、磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置においては、十分な検出感度を有する磁気抵抗効果膜が得られなかった。また、大きな磁気抵抗効果を有する磁気抵抗効果多層膜においては、多層膜各層の膜厚が数10Å以下と薄いことによるピンホール等により多層構造の作製,素子特性の安定性,制御性に困難があった。
【0004】本発明の目的は、磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置に対して、高感度の磁気検出能力を有し、かつ、単純な素子構造を有する磁気抵抗効果膜を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、磁気抵抗効果素子を有する磁気検出装置における課題として、磁気検出感度の向上を目的としている。
【0006】本発明では第1に、磁気抵抗効果素子を構成する磁気抵抗効果膜に酸化物磁気抵抗効果膜を用いる。ここで、酸化物磁気抵抗効果膜とは、膜を使用する温度で磁気抵抗効果を示す強磁性あるいは弱強磁性の酸化物膜であって、その比抵抗が1〜500mΩcmと電気伝導性の高いことが好ましい。
【0007】本発明の酸化物磁気抵抗効果膜はまた、単体磁性体であって磁場と電流の方向によらない等方的な、あるいは異方性の小さい磁気抵抗効果を示す磁性材料を用いる。ここで、等方的なあるいは異方性の小さい磁気抵抗効果とは、磁気抵抗効果膜が単体磁性体からなる磁気抵抗効果膜であって、磁気抵抗効果膜に流された抵抗変化検出用の電流方向と、記録媒体あるいは磁界発生体から漏洩する磁界方向とのなす角度に依存しない、あるいは依存性の小さい磁気抵抗効果を示すことである。これまで、単層磁性膜の磁気抵抗効果は抵抗変化検出用の電流方向と、記録媒体あるいは磁界発生体から漏洩する磁界方向とのなす角度に依存した異方性磁気抵抗効果を示した。異方性磁気抵抗効果では、電流方向と磁界方向が平行な場合、磁気抵抗変化率は−0.5% 以下と小さかった。(ただし、磁気抵抗変化率の前に付けられた負号は磁場印加による抵抗の減少を表す。以下同様。)しかし、本発明の等方的なあるいは異方性の小さい酸化物磁気抵抗効果では、電流方向と磁界方向の相対角度に依らない−4〜−50%の大きな磁気抵抗効果が得られる。単体磁性体であって等方的なあるいは異方性の小さい磁気抵抗効果を示す磁性材料としては、単体磁性体内部で、抵抗変化検出用の電流が単体磁性体のスピン構造に起因したスピン依存散乱を受けている磁性材料であることが望ましい。ここで、スピン依存散乱とは、異なる2つのスピン方向を有する物質、あるいは、特に人工的に異なる2つのスピン方向を有する状態を実現させた金属強磁性膜/金属非磁性膜/金属強磁性膜のような金属多層膜の磁気抵抗効果において生じるものであって、抵抗変化検出用の電流の担い手である電子の前記スピンによる散乱の度合いが、異なる2つの方向を有するスピン間のなす角度に依存して変化するという伝導電子の散乱である。つまり、スピン間のなす角度の変化が、磁気抵抗変化を生じさせていることになる。また、単体磁性体であって等方的なあるいは異方性の小さい磁気抵抗効果を示す磁性材料としては、その単体磁性体が、そのスピン構造において、2つの異なるスピン方向を有し、或るスピン方向を有する磁性層と、これと異なるスピン方向を有する磁性層が、非磁性層を介して磁性層/磁性層からなる多層構造を有することが好ましい。上のような特性を有する磁性体に、キャント磁性体(あるいは寄生強磁性体と呼ばれる)材料がある。ここで、キャント磁性体(あるいは寄生強磁性体)とは、反強磁性整列した原子のスピンが反平行から傾き、異なる2つのスピン方向が生じる。そして、このスピンのなす角度に対応した自発磁化が現われる物質である。スピンが反平行から傾く原因としては、スピン間の二重交換相互作用あるいは異方性超交換相互作用、また、あるいは磁性結晶の磁気異方性が上げられる。二重交換相互作用に原因を持つ材料は例えばLa1-xCaxMnO3(x=0〜1),La1-xSrxMnO(x=0〜1),異方性超交換相互作用に原因を持つ材料は例えばFe3,MnCO3,YFeO3,CrF3、磁気異方性に原因を持つ材料は例えばNiF2が上げられる。ここでは特に、二重交換相互作用に原因を持つキャント磁性体材料を用いることが好ましい。
【0008】本発明の酸化物磁気抵抗効果膜はまた、磁気抵抗効果膜の元素組成比を変化させることによって、室温を含む広い温度範囲で磁気転移温度を連続的に変化できる磁性材料を用いる。ここで、磁気転移温度とは、磁気的な相転移の起こる温度であって、磁性体原子のスピンが無秩序配列から秩序配列へ変化する際の臨界温度である。そして、本発明の磁性材料としては、磁気転移温度近傍で抵抗値に、臨界磁気散乱による抵抗成分が多く含まれる磁性材料であることが好ましい。ここで、臨界磁気散乱とは、臨界状態での大きなスピンのゆらぎのために伝導電子が異常に大きい散乱を受ける現象であって、一般に比抵抗は臨界磁気散乱による抵抗成分が最大となる温度である磁気転移温度にピークのある比抵抗−温度特性を示す。また、磁気転移温度近傍はスピンのゆらぎの大きい温度領域であって、外部から磁性材料に印加された磁場によって、臨界磁気散乱による抵抗成分が大きく変化する磁気抵抗効果の大きな温度領域である。本発明の磁性材料としては、磁気転移温度近傍で抵抗値に臨界磁気散乱による抵抗成分が多く含まれる磁性材料であって、磁気転移温度近傍で磁気検出を行うことにより、外部から磁性材料に印加された磁場によって臨界磁気散乱による抵抗成分が大きく変化する、つまり大きな磁気抵抗効果の生じる磁性材料であることが好ましい。
【0009】また、酸化物磁性体は一般式ABO3 ただし、Aは3価の元素、またはアルカリ土類金属である。
【0010】BはFe,Co,Ni,Cr,Mn等の磁性元素である。で表わされるものを用いることが好ましい。本発明に用いられる酸化物磁性体は、具体的には、(La,Ca)1Mn1y,(La,Sr)1Mn1y,Bi1Mn1y,Ba1Fe1y,Sr1Co1y,(La,A)11y(AはBa,Sr,Pb,Cdの少なくとも1つの元素、BはMn,Coの少なくとも1つの元素)、(La,A)111y(Aは少なくとも1種以上の希土類元素、Bは少なくとも1種以上のアルカリ土類元素、CはFe,Co,Mn,Ni,Cr,Coの少なくとも1つの元素)、[(Pr,Nd),(Ba,Sr)]1Mn1y,(Bi,Ca)1Mn1y,La1(M,Mn)1y(MはCo,Ni,Cu,Crの少なくとも1つの元素)、Gd1(Co,Mn)1y,A1(Fe,B)1y(AはBa,Ca,Srの少なくとも1つの元素、BはMo,Mnの少なくとも1つの元素)、Bi1Cr1y,Ca1Ru1y,A1(B,C)1y(AはBa,Ca,Sr,Pbの少なくとも1つの元素、BはNi,Mn,Cr,Feの少なくとも1つの元素、CはW,Sb,Mo,Uの少なくとも1つの元素)、(Sr,La)1(C,D)1Oy(CはCo,Niの少なくとも1つの元素、DはNb,Sb,Taの少なくとも1つの元素で、yは2.7〜3.3とする。)であることが好ましい。ここで、(AB)とはAまたはBの少なくとも一方を含むという意味である。
【0011】さらに、本発明は、基板上に形成した酸化物磁気抵抗効果膜と、これの膜面方向に電流を流す手段と発生電圧を検出する手段とを有し、酸化物磁気抵抗効果膜が磁界を感じたときの抵抗値の変化によって磁気を検出する磁気検出素子を提供するものである。このためには、基板上の酸化物磁気抵抗効果膜に、膜面内長手方向に電流を流すための2つの電流端子と、この時に発生する電圧を検出するための2つの電圧端子を形成する。さらに、これを支持体上に固定して、電流供給源及び電圧検出手段に接続する。このようにして、磁界を外部から酸化物磁気抵抗効果膜に印加すると、印加磁界の大きさに応じて電圧端子間に発生する電圧が変化し、これによって磁界を検出することが出来る。上記端子は、電流端子と電圧端子が同じものであってもかまわない。この時の電圧変化率は、従来技術による磁気抵抗効果素子に比べて一桁以上大きい−50%にも及ぶ値である。また、酸化物磁性体の比抵抗は室温ではおおよそ10〜100ミリオームセンチメートルであり、発生する電圧の絶対値も従来の磁気抵抗素子に比べて2桁以上大きな値となる。このため、SN比の良い磁気検出素子が得られる。また、素子動作時の電流値を数十マイクロアンペア程度にまで小さくすることができるので、電極部での発熱をおさえることができ、かつ、発熱等による磁気抵抗効果膜の劣化という問題点が解決される。
【0012】また、本発明を磁気記録装置に用いるためには、次のようにする。本発明による少なくとも酸化物磁気抵抗効果膜を有する磁気検出素子に、電流を供給するための手段と、素子の電圧を検出するための手段を接続し、上記磁気検出素子とは別の磁気信号を磁気記録媒体に書き込むための素子、いわゆる記録用磁気ヘッドを同一の支持体上に設置する。支持体は、制御部によって制御された駆動系により、磁気記録媒体の所定の位置に磁気記録を書き込み、または読み取りが出来るようにする。これにより、高密度大容量で小型の磁気記録装置が実現可能となる。
【0013】本発明の少なくとも酸化物磁気抵抗効果膜を有する磁気検出素子は、大型計算機やパーソナルコンピューター等の演算システムの記録装置として用いることが出来る。また、光通信システムや光演算システムの記録装置や、演算素子としての使用も可能である。
【0014】また本発明の、少なくとも酸化物磁気抵抗効果膜を有する磁気検出素子は、電磁石によって作られた高電磁界を使用する種々のシステム例えば、物理実験用システム,MRIシステム,リニアモータカーシステム等において、電磁石部分の消耗等による高電磁界の消失,乱れ等を高感度で検出する保全システムを提供する。
【0015】本発明の磁気抵抗効果素子の構成の一例は、酸化マグネシウム基板上に単層磁性膜を作製し、磁性膜表面に電極を配してなる磁気抵抗効果素子である。磁性膜は基板に対しエピタキシャルな方位関係で成長していることが望ましい。磁性膜の磁気特性には結晶方位依存性があるためである。本発明の磁性膜は例えば、La1-xCaxMnOz のようなペロブスカイト型酸化物磁性体である。ここでxはカルシウム組成であってx=0〜〜0.6 である。磁性膜の膜厚は50〜5000Åである。この構成は、その磁気転移温度近傍での大きな磁気抵抗変化により、高感度の磁気検出を実現するものである。
【0016】本発明では第2に、磁気抵抗効果素子を構成する磁気抵抗効果膜に、磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/磁気抵抗効果膜からなる磁気相互作用3層膜を用いる。ここで、上下の磁気抵抗効果膜の少なくとも一方は、酸化物磁性体からなる酸化物磁気抵抗効果膜であって、上下の磁気抵抗効果膜の両方が酸化物磁性体である全酸化物3層膜であっても構わない。ここで、酸化物導電性膜とは、巨視的に自発磁化を有しない薄膜材料からなり、磁気秩序を有しないが微視的に磁性スピンを有する薄膜材料、あるいは磁気秩序を有するが巨視的に自発磁化を有しない反強磁性体材料等からなる。このような磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/磁気抵抗効果膜からなる磁気相互作用3層膜とは、中間の酸化物導電性膜を介した、上下の磁気抵抗効果膜に含まれる磁性元素(例えば、マンガン,コバルト,鉄など)の間に働く磁気相互作用を利用して高感度の磁気検出を実現するものである。
【0017】以下では、単層磁性膜内でのスピンの間の相互作用をスピン間相互作用,空間的に離れた2枚の磁性膜のスピンの間の相互作用を磁気相互作用として区別する。磁性膜内には磁性原子のスピンの間にスピン間相互作用が生じており、これにより磁性膜は、強磁性や反強磁性を示す。ある一つのスピンの向きを「+」とし、これと反対の向きのスピンの向きを「−」とすると、それぞれのスピンがと「−」の向きに整列するようなスピン間相互作用が働いたとき、この磁性膜は反強磁性を示し、「+」と「+」の向きに整列するようにスピン間相互作用が働いたときは強磁性を示す。しかし、2枚の磁性膜が、空間的に離れて存在している場合には、本発明における中間層のような、一方の磁性膜のスピン間相互作用を他方の磁性膜へ伝えるような役目を果たすものが必要となる。この一例が、磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/磁気抵抗効果膜3層膜であり、中間の酸化物導電性膜を介した上下の磁気抵抗効果膜における磁気相互作用は通常、単層磁性膜内に働くスピン間相互作用より弱く、印加磁場により抵抗は大きく変化し高感度磁気検出を実現できる。また、中間層を介して2つの磁性膜間に磁気相互作用が生じている状態では、外部から与えられた磁界以外の光,圧力,音などの刺激に対しても、上述の磁気相互作用が高い感度で反応を示す。このような磁気相互作用の生じている状態に電流を流すと、電子がスピンにより散乱を受け磁気相互作用の変化が電気抵抗の変化として検出される。本発明の磁気相互作用3層膜は、上記電気抵抗の変化を利用して、磁界,光,圧力,音などに対する高感度検出を実現するものである。
【0018】また、磁性膜間の中間酸化物導電性膜は、微視的に磁性原子を有し巨視的に自発磁化を有しない材料であって、磁性原子のスピンや電荷に揺らぎのある材料であることが望ましい。例えば磁気秩序を有しないが微視的に磁性スピンを有する材料、あるいは磁気秩序を有するが巨視的に自発磁化を有しない反強磁性体材料などがある。磁性膜において、スピンに働く強磁性的な力の大きさと反強磁性的な力の大きさがほぼ同程度である場合、1つの原子スピンに着目した場合、この原子スピンは「+」方向と、「−」方向のどちらの方向をとるかは確定しない。このような状態を、スピンが揺らいでいる状態という。あるいは、通常スピングラスとも呼ばれる状態であってもよい。本発明における磁気相互作用3層膜は、このような中間酸化物導電性膜のスピンの揺らぎが一方の磁性膜のスピン相互作用を、他方の磁性膜に伝える作用を有することを利用したものである。
【0019】中間の酸化物導電性膜は、ペロブスカイト構造を有する酸化物からなることが好ましい。中間層に用いられる材料は、一般式Ln12Cu37,A24Cu310,A23Cu28,A14Cu38, A13Cu111,M2-xxCu14(ただし、AはTl,Bi,Pbの少なくとも一つの元素。Bは少なくとも一種類のアルカリ土類金属。MはLaまたはNdの何れか一方の元素。NはCeまたはアルカリ土類金属の何れか一種類の元素。LnはY,希土類金属,3価元素の何れか一つの元素。wは0.05〜1.00である。)で表わされるものを用いることが好ましい。更に、中間層に用いられる材料は、具体的には、(La1-xx)Cu24(MはBa,Ca,Srの少なくとも1つの元素),La1Ba2Cu37,La2NaCuO4,Bi0.1La1.8Sr0.1CuO,La2CuO4,La2Ba3LuCu6O,YBa2Cu37,Y2Ba4Cu820,Yb2Ba4Cu715,Bi2Sr2CuO6,Bi2Sr2Ca1Cu28, Bi2Sr2Ca2Cu310,Bi2Sr2Ca3Cu412,Ba(Pb1-xBix)O3,(Ba1-xx)BiO3,(Bi1-xPdx)2Sr2Ca2Cu3O, Bi2Sr2.6Nd0.4CuO8,Tl2Ba2CuO6,Tl2Ba2Ca1Cu28,Tl2Ba2Ca2Cu310,Tl1Ba2Ca1Cu26,Tl1Ba2Ca3Cu48,Tl1Ba3Ca2Cu410,Tl1Sr2Cu3O,(Tl0.5Pb0.5)Sr2Ca2Cu38,Nd1.6Sr0.2Ce0.2CuO4,Pb2Sr20.5Ca0.5Cu38,(Tl0.75Bi0.25)1.3(Sr0.5Ca0.5)2.7Cu28、(ただし、xは0.05〜1.0とする。)であることが好ましい。ここで、(AB)とはAまたはBの少なくとも一方を含むという意味である。
【0020】また、中間層は、この中間層に用いられる材料の温度を下げた場合超電導特性を示す物質であることが好ましい。本発明者等は、酸化物超電導体と磁性体を近接させたときの相互作用を調べることは、高温超電導の発現機構を明らかにする上で重要であると考え、これまで研究を進めてきた。その結果ぺロブスカイト構造を有するマンガン系の酸化物磁性体であるところの、La1-xCaxMnOz(LCMO)及びLa1-xSrxMnOz(LSMO)と酸化物高温超電導体 YBa2Cu3y(YBCO)の間には、有る限られた磁性(x=0.2〜0.3)の領域においてのみ磁性体中を超電導電流が流れるという特異な近接効果が起こることを見出した。この現象(近接効果)は、次の3つの点で新しい現象であるといえる。
【0021】(1)コヒーレント長をはるかに超えるバリア層を介して超電導電流が流れる。
【0022】(2)半導体的な電気特性のバリア層を酸化物超電導体で挟むと接合抵抗は金属的な振舞を示す。
【0023】(3)強磁性と超電導電流が共存している。
【0024】発明者等は、この特異な現象を解明する研究を進めるうちに、酸化物超電導体と酸化物磁性体の間には、室温においても既に磁気的な相互作用が生じており、このため接合抵抗が金属的な特性を示すことを見出すに至った。この発見により得られた知見をもとに本発明の磁気相互作用3層膜を得たものである。素子としての形成が容易であるためには、中間層の膜厚は100〜2500Åと厚いことが好ましい。酸化物高温超電導体(YBCO)は、このように厚く形成することができる酸化物導電性材料である。そして、これは中間の膜に、上述のスピン揺らぎがある材料を用いたことの効果である。
【0025】一方、中間層を挟む磁性体としては、酸化物磁性体を用いることが好ましく、特に、ペロブスカイト構造を有する酸化物磁性体を用いることが望ましい。ここで、酸化物磁性体は、一般式ABO3 ただし、Aは3価の元素、またはアルカリ土類金属である。
【0026】BはFe,Co,Ni,Cr,Mn等の磁性元素である。で表わされるものを用いることが好ましい。本発明に用いられる酸化物磁性体は、具体的には、(La,Ca)1Mn1y,(La,Sr)1Mn1y,Bi1Mn1y,Ba1Fe1y,Sr1Co1y,(La,A)11y(AはBa,Sr,Pb,Cdの少なくとも1つの元素、BはMn,Coの少なくとも1つの元素)、(La,A)111y(Aは少なくとも1種以上の希土類元素、Bは少なくとも1種以上のアルカリ土類元素、CはFe,Co,Mn,Ni,Cr,Coの少なくとも1つの元素)、[(Pr,Nd),(Ba,Sr)]1Mn1y,(Bi,Ca)1Mn1y,La1(M,Mn)1y(MはCo,Ni,Cu,Crの少なくとも1つの元素)、Gd1(Co,Mn)1y、A1(Fe,B)1y(AはBa,Ca,Srの少なくとも1つの元素、BはMo,Mnの少なくとも1つの元素)、Bi1Cr1y、Ca1Ru1y、A1(B,C)1y(AはBa,Ca,Sr,Pbの少なくとも1つの元素、BはNi,Mn,Cr,Feの少なくとも1つの元素、CはW,Sb,Mo,Uの少なくとも1つの元素)、(Sr,La)1(C,D)1y(CはCo,Niの少なくとも1つの元素、DはNb,Sb,Taの少なくとも1つの元素で、yは2.7〜3.3とする。)であることが好ましい。ここで、(AB)とはAまたはBの少なくとも一方を含むという意味である。
【0027】また、本発明の磁気相互作用3層膜は磁性膜間に、ペロブスカイト構造の酸化物導電膜からなるカップリング層を有することを特徴とする。ここで、カップリング層とは磁性膜間に磁気相互作用が生じるように、一方の磁性膜のスピンの状態を他方の磁性膜に伝える働きをする中間層のことである。本発明に用いた、カップリング層であるところのぺロブスカイト構造を有する酸化物導電膜は、スピンの揺らぎを有するものである。本発明者等は、酸化物超電導体を上記カップリング層として用いることができることを、Mn系酸化物磁性体La1-x(Sr,Ca)xMnO3を障壁層とし、YBa2Cu3y(YBCO)でこれを挟んだ3層構造の接合において、5000Åと厚くかつ強磁性を示す障壁層を通して超伝導電流が流れるという近接効果を研究する過程においてこれを見出した。この現象には、La1-x(Sr,Ca)xMnO3のスピン状態が密接にかかわっている。 YBa2Cu3y/La0.8Sr0.2MnO3(LSMO)/YBa2Cu3y3層膜と単層のLa0.8Sr0.2MnO3 膜のMnのスピンの状態の違いを調べるために、強磁性共鳴(FMR)ピーク幅の温度依存性を調べた。両者の強磁性共鳴ピーク幅には以下のような顕著な違いが見られた。LSMO単層膜では温度変化はほとんど見られないが、3層膜の強磁性共鳴ピーク幅は温度に強く依存し、150K付近で極大を示す。上記ピークの半値幅は、スピンゆらぎの大きさを表すものであり、酸化物磁性体が酸化物超電導体と積層されることにより、スピンの動的性質に変化が生じていることを示す結果である。本発明は、上記スピン状態の性質に基づいたものである。
【0028】また、本発明の磁気相互作用3層膜は酸化物導電性膜を磁気抵抗効果膜ではさんでなる3層構造の3層膜と、前記磁気相互作用3層膜に電流を与える手段と、これに発生する電圧を検出する手段とを有することを特徴とする。上記磁気相互作用3層膜は、酸化物超電導体膜を酸化物磁性体膜ではさんだ3層膜を作製したものである。従来より、数10オングストローム程度の膜厚の非超電導層を、超電導体ではさんだ3層構造の素子が、ジョセフソン素子として知られていたが、本発明による磁気相互作用3層膜は超電導体を非超電導体ではさんだ構造を持ち、構造的にもまた原理的にもこれとはまったく異なったものである。特に本発明においては、上記ジョセフソン素子と違い、酸化物超電導体が超電導特性を示す超電導遷移臨界温度よりも高い温度における、超電導体の特性を利用することを特徴とする。特に室温での使用が可能になる。
【0029】また、本発明の磁気相互作用3層膜は酸化物導電膜を磁気抵抗効果膜ではさんでなる3層膜と、前記磁気相互作用3層膜に電流を与える手段と、これに発生する電圧を検出する手段および外部からエネルギーを与える手段とを有することを特徴とする。磁気相互作用3層膜に電流を与える手段とは、一定の電流を流すことの出来る定電流源であり、金または銀などからなる電極を通して、電流を供給するものである。この時に発生する電圧は、電圧計によってこれをモニターする。電圧を検出するための端子と、電流を供給するための端子は同一のものであっても構わない。上記磁気相互作用3層膜に、外部から電磁波,磁界,光,音,圧力などのエネルギーを与えると、スピンの状態が高い感度を有して変化する。この変化は、電圧の変化として読み取ることが出来るので、高感度の検出素子としての利用が可能である。また、電流を流したときに発生する電磁波を利用するような使用法も可能である。
【0030】さらに、本発明は、基板上に形成した磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/磁気抵抗効果膜からなる磁気相互作用3層膜と、これに電流を流す手段および発生電圧を検出する手段とを有し、磁気相互作用3層膜が磁界を感じたときの抵抗値の変化によって磁気を検出する磁気検出素子を提供するものである。上記の磁気相互作用3層膜を磁気検出素子として用いる場合には、以下のようにしてこれを用いる。磁気相互作用3層膜において、上部磁気抵抗効果膜に対して電流を流すための電極を設け、電流を供給するための手段に接続する。また、さらに磁気相互作用3層膜に発生する電圧を検出するための電極と、これを検出するための手段を接続する。上記素子に対して、膜面に平行な磁場を印加すると、磁気抵抗効果により発生電圧が変化する。上記発生電圧をモニターすることにより、磁気検出素子としての利用が可能である。
【0031】さらに、本発明は、基板上に形成した磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/磁気抵抗効果膜からなる磁気相互作用3層膜と、これの膜面方向に電流を流す手段と発生電圧を検出する手段とを有し、磁気相互作用3層膜が磁界を感じたときの抵抗値の変化によって磁気を検出する磁気検出素子を提供するものである。このためには、基板上の磁気相互作用3層膜に、膜面内長手方向に電流を流すための2つの電流端子と、この時に発生する電圧を検出するための2つの電圧端子を形成する。さらに、これを支持体上に固定して、電流供給源及び電圧検出手段に接続する。このようにして、磁界を外部から磁気相互作用3層膜に印加すると、印加磁界の大きさに応じて電圧端子間に発生する電圧が変化しこれによって磁界を検出することが出来る。上記端子は、電流端子と電圧端子が同じものであってもかまわない。この時の電圧変化率は、従来技術による磁気抵抗素子に比べて一桁以上大きい−40%にも及ぶ値である。また、酸化物磁性体の比抵抗は室温ではおおよそ1〜100ミリオームセンチメートルであり、発生する電圧の絶対値も従来の磁気抵抗素子に比べて2桁程度大きな値となる。このため、SN比の良い磁気検出素子が得られる。また、素子動作時の電流値を数十マイクロアンペア程度にまで小さくすることができるので、電極部での発熱をおさえることが出来、かつ、発熱等による磁気抵抗膜の劣化という問題点が解決される。
【0032】磁気記録再生装置の高密度大容量化を目的とした、読み出し・書き込み分離型ヘッドである従来型磁気抵抗ヘッドは、強磁性薄膜において薄膜の面内方向に一軸磁気異方性が付与されている場合に、外部磁界が膜面に対して垂直に印加されると、素子の抵抗が変化する現象いわゆる「磁気抵抗効果」を利用したものである。そして、従来型磁気抵抗ヘッドは、磁性膜中で磁化の方向が異なるときに生じるところの磁壁が移動する際に発生する、いわゆるバルクハウンゼン雑音の影響を受けやすいという問題点があった。また、従来型磁気抵抗ヘッドに用いる強磁性体膜、すなわち磁気抵抗膜には主としてパーマロイ(Ni−Fe)などの金属強磁性体材料が用いられているが、これら金属磁性体はその比抵抗が数十マイクロオームセンチメートルと非常に小さいため、高い再生出力を得るためには素子の磁気抵抗膜の膜厚を数百オングストローム以下の極めて薄いものにするか、あるいは素子に流す電流値を出来るだけ大きくする必要がある。しかし、このような薄い膜厚の薄膜を作製することは困難であり、膜のピンホールによる保磁力の増大に伴う感度の低下という問題点が有った。また、大電流を流すことには発熱等により素子の劣化を早めるという問題点があった。
【0033】上記問題点を解決するために、上記従来の単層磁性膜磁気抵抗効果とは異なる現象であるところの巨大磁気抵抗効果を利用した磁気検出素子が提案された。上記巨大磁気抵抗効果とは、強磁性体/非磁性体/強磁性体のような3層膜あるいは強磁性体/非磁性体からなる多層膜において、極めて大きな磁気抵抗効果が現れる現象である。この現象は、上部と下部の強磁性体が非磁性層を介して磁気相互作用をするために起こるものとされている。しかし、非磁性層の膜厚を、数10オングストローム以下に薄くしなければ、巨大磁気抵抗効果は起こらないため、ピンホール等により素子特性の制御は困難であった。一方、本発明の磁気相互作用3層膜では、中間の酸化物導電性膜を500〜2500Åと厚くできるため、ピンホール等による素子特性の乱れはない。
【0034】さらにまた、上記磁気検出素子とは異なる原理による磁気検出素子に、強磁性トンネル接合素子が有る。これは、強磁性体薄膜で膜厚数十オングストロームの極めて薄い絶縁物をはさんだもので、高感度かつ高出力の磁気検出素子として利用が可能である。上記強磁性トンネリング現象は、極低温でしか起こらないために磁気検出素子としての応用は困難であったが、本発明によればこのような問題は解決し、室温での磁気検出も可能である。
【0035】発明者等は、高温超電導のメカニズムについての研究を進めるうちに、ぺロブスカイト構造を有する酸化物超電導体と酸化物磁性体の間には、1.0 ミクロン以上にも及ぶ長距離にわたって磁気相互作用が働くこと、及びこの磁気相互作用は超電導体が超電導状態に転移する超電導転移臨界温度より高い温度においても作用していることを発見した。本発明は、上記の磁気相互作用を利用し、高感度の磁気検出素子や、これを用いた高密度大容量の磁気記録装置の実現を可能とするものである。
【0036】また、本発明は、磁気記録媒体に記録された磁気信号を読み取る磁気記録再生装置であって、磁気相互作用3層膜を有する磁気検出素子を具備し、これが前記磁気記録媒体に記録された磁気信号を読み取る磁気記録装置を提供するものである。また、磁気検出素子を情報が記録された磁気記録媒体に接近させると、磁気記録媒体からの磁界により、磁気検出素子の検出電圧が変化し磁気記録媒体に書き込まれた情報を読み取ることができる。
【0037】また、本発明は、酸化物磁性膜間に超電導膜を有する磁気相互作用素子の使用方法であって、前記超電導体の超電導転移臨界温度よりも高い温度で使用する磁気相互作用素子の使用方法を提供するものである。
【0038】本発明の磁気相互作用素子は、大型計算機やパーソナルコンピューター等の演算システムの記録装置として用いることが出来る。また、光通信システムや光演算システムの記録装置や、演算素子としての使用も可能である。
【0039】また、本発明を磁気記録装置に用いるためには、次のようにする。本発明による磁気検出素子に電流を供給するための手段と、素子の電圧を検出するための手段を接続し、上記磁気検出素子とは別の磁気信号を磁気記録媒体に書き込むための素子、いわゆる記録用磁気ヘッドを同一の支持体上に設置する。支持体は、制御部によって制御された駆動系により、磁気記録媒体の所定の位置に磁気記録を書き込み又は読み取りが出来るようにする。これにより、高密度大容量でかつ小型の磁気記録装置が実現可能となる。
【0040】本発明による3層膜を素子に利用する場合は、超電導体の超電導転移臨界温度よりも高い温度で使用することが望ましい。この温度範囲においては、発明者等の発見による特異な磁気相互作用が起きているからである。本発明を、上記の温度で使用することにより、従来になく高検出感度でかつ高出力の磁気検出素子を得ることが出来る。
【0041】また本発明の、少なくとも酸化物磁気抵抗効果膜を有する磁気検出素子は、電磁石によって作られた高電磁界を使用する種々のシステム例えば、物理実験用システム,MRIシステム,リニアモータカーシステム等において、電磁石部分の消耗等による高電磁界の消失,乱れ等を高感度で検出する保全システムを提供する。
【0042】これらの酸化物磁性膜及び酸化物超電導膜を、積層して3層構造の積層膜を作製するときは、スパッタリング法,イオンビームスパッタリング法,真空蒸着法などの作製法を用い、チタン酸ストロンチウム単結晶基板,酸化マグネシウム単結晶基板,酸化ジルコニウム単結晶基板,硝子基板,シリコン単結晶基板,ガリウムひ素単結晶基板,ガドリニウムガリウムガーネット単結晶基板等の上に作製する。この時の超電導層の膜厚は、100オングストローム以上であることが望ましい。また、各磁性膜と各超電導膜は相互にエピタキシャルな方位関係で成長していることが望ましい。磁気相互作用の強さには、結晶方位依存性があるためである。3層膜を作製するときは、基板温度を500から650℃の間の最適な温度に設定し、酸化性雰囲気(O2,O3,N2Oなど)を導入してこれを作製する。膜作製後はO2 ガスを導入し、自然冷却する。スパッタリング法によるときは、所定の組成比の焼結体ターゲットを用い、真空蒸着法によるときは、金属または所定の組成比の合金蒸着源を用いる。本発明の磁気抵抗効果素子の構成の一例は、酸化マグネシウム基板上に磁性膜/酸化物導電性膜/磁性膜3層膜を作製し、上部磁性膜表面に電極を配してなる磁気抵抗効果素子である。磁性膜は、La1-xCaxMnOz ペロブスカイト型酸化物磁性体であり、酸化物導電性膜はYBa2Cu3y ペロブスカイト型酸化物導電体である。ここでxはカルシウム組成であってx=0〜0.6 である。磁性膜の膜厚は50〜5000Åであり、酸化物導電性膜の膜厚は100〜2500Åである。この構成は、その磁気転移温度近傍での大きな磁気抵抗変化により、高感度の磁気検出を実現するものである。
【0043】
【作用】本発明の磁気検出装置は、上記手段によって、単純な素子構造を有し、かつ、高感度な磁気検出を実現する。
【0044】すなわち、本発明の磁気抵抗効果膜は、酸化物磁性体を用いた酸化物磁気抵抗効果膜からなり、磁気抵抗変化検出用の電流方向と記録媒体あるいは磁界発生体から漏洩する磁界方向とに依らない等方的磁気抵抗効果を示し、膜の元素組成を連続的に変化させることにより、その磁気転移温度を室温を含む広い温度範囲で連続的に変化できる磁性材料であることを特徴とする。
【0045】この素子を記録媒体あるいは磁界発生体に接近して配置し、記録媒体あるいは磁界発生体から磁気抵抗効果素子に印加される磁界の大きさを、磁気抵抗効果膜の磁気抵抗変化として検出する。また、磁気抵抗効果素子はその磁気転移温度付近で動作させることにより、−50%以上の磁気抵抗変化を示し、高感度な磁気検出を実現することができる。
【0046】
【実施例】本発明の具体的な実施例を図に添って説明する。図1は、記録再生分離型ヘッドを有する磁気記録再生装置において、磁気検出素子に少なくとも本発明の酸化物磁気抵抗効果膜を用いた場合の実施例である。記録再生分離型ヘッドは、本発明の磁気抵抗効果素子を用いた再生ヘッドと、インダクティブ型の記録用ヘッドおよび、漏れ磁界による再生ヘッドの混乱を防止するためのシールド部からなる。ヘッドは基体40上に下部シールド32,酸化物磁気抵抗効果膜10,電極20および上部シールド31からなる再生ヘッドと、下部磁性膜52,上部磁性膜51およびこれに起磁力を印加するコイル60からなる記録ヘッドとを形成してなる。このヘッドによって、記録媒体上に信号を書き込み、また記録媒体から信号を読み取るのである。500〜600℃という高温で酸化物磁気抵抗効果膜を作製した後に、インダクティブ型の記録用ヘッドを低温で作製することにより、記録再生分離型ヘッドの熱や応力による磁気特性の乱れを低減できる。
【0047】図2は本発明の、少なくとも酸化物磁気抵抗効果膜を有する磁気抵抗効果素子を用いた、磁気記録再生装置の再生部分の概念図である。基体40上に、磁気抵抗効果膜(あるいは酸化物磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/酸化物磁気抵抗効果膜3層膜)10および電極20を形成し、これを記録媒体を有するディスク円盤71上に位置決めしてに近接し再生を行う。本発明の特徴は、この磁気抵抗効果素子に少なくとも酸化物磁気抵抗効果膜を用いることである。このような構成により、記録媒体上に磁気的に記録された信号は、媒体上に漏れ磁界80として磁気抵抗効果膜10に達し、−40〜−50%という大きな磁気抵抗効果によって高感度な再生出力を得ることができる。
【0048】図3は本発明の磁気記録再生装置の構成概念図である。記録媒体を両面に有するディスク円盤71をスピンドルモータ75で回転させ、アクチュエータ73によってヘッドスライダー72を記録媒体のトラック上に誘導する。ヘッドスライダー上に形成した磁気抵抗効果素子による再生ヘッド、および記録ヘッドはこの回転によって記録媒体上に近接して相対運動し、信号を順次書き込みまたは読み取る。記録信号は信号処理系74を通じて、記録ヘッドにて媒体上に記録し、再生ヘッドの出力を信号処理系74を経て記録信号として読み取る。さらに、再生ヘッドを所望の記録トラック上へ移動する場合、本発明の再生ヘッドからの高感度な出力を用いてトラックの位置を検出し、アクチュエータを制御して、ヘッドスライダーの位置決めを行うことができる。
【0049】本発明の、磁気抵抗効果素子の構成要素である磁気抵抗効果膜は、例えばLa1-xCaxMnOz 磁性膜(以下LCMOと略す)からなる。LCMOのスピン構造を図4に示す。LCMOはペロブスカイト型の結晶構造を有し、そのスピン構造はマンガンスピンがc−面内で強磁性的に整列し、非磁性のLa,Ca−O層を介したc−面間では反強磁性的に整列するものである。つまり、LCMOは単体磁性体であって、スピンを有するMn−O面と、磁性を持たないLn,Ca−O面が順次積層し、かつ、隣りあったMn−O面のスピンが互いに反平行を向いた、磁性層/非磁性層からなる多層構造を有する系である。また、LCMOの磁化は、マンガンイオン間の電子のやり取りに起因した二重交換相互作用によって、反強磁性的に整列したマンガンスピンが傾くことによって出現する。そして、出現した磁化の大きさは、異なる方向を向いたマンガンスピン間のなす角度に対応し、スピン間のなす角度が小さいほど磁化は大きくなる。
【0050】本発明の、磁気抵抗効果素子の構成要素であるLCMO膜は、イオンビームスパッタ法により、厚さ0.5mm ,一辺10mmの正方形をしたMgO(100)単結晶基板上に、磁性膜がc軸配向する条件である基板温度585℃で作製した。スパッタ用のターゲットには、径6インチ,厚さ5mmで、ランタン,カルシウム,マンガン,酸素からなる焼結体を用いた。スパッタ用イオンビームにはキセノンイオンビームを用い、磁性膜作製時の雰囲気ガス圧はキセノンガス圧が0.10mTorr、酸素ガス圧が0.15mTorr である。磁性膜作製条件の詳細を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】作製したLCMO膜はX線回折により結晶の構造と配向性を評価した。X線回折の結果により、LCMO膜はc−軸配向膜であり、c−軸長は膜厚に依らない一定値で7.80Å となった。また、LCMO膜の抵抗率−温度特性及び磁気抵抗効果特性は、4端子法で測定し、磁気特性は振動試料型マグネットメータで測定した。磁気抵抗効果特性測定時の磁場方向と磁気抵抗変化検出用の電流方向との関係は、膜面内に磁場を印加し磁場方向と電流方向が平行な場合(H)と、膜面内に磁場を印加し磁場方向と電流方向が直行する場合(H)、の2通りである。図5(a),(b)に作製したアズデポジションLCMO膜の磁化と比抵抗の温度依存性の例を示す。図5から分かるように、比抵抗は磁気転移温度近傍で極大値をとった。磁気転移温度近傍で、比抵抗が極大値をとるのは臨界状態での大きなスピンのゆらぎのために伝導電子が異常に大きい臨界磁気散乱を受けることによる。また、図6に、4.2K および200KにおけるアズデポジションLCMO膜の磁気抵抗効果の磁場依存性を、磁場方向と電流方向の関係が異なる2つの場合について示す。図6に示すように、アズデポジションLCMO膜における磁気抵抗効果は、磁気抵抗変化の比較的小さい4.2K 、および磁気抵抗変化の大きい200Kのいずれの場合でも1テスラの磁場では飽和せず、磁場方向と電流方向のなす角度に依らない等方的な磁気抵抗効果となった。図7にアズデポジションLCMO膜の磁気抵抗効果の温度依存性の例を示す。比抵抗と同じように、磁気抵抗効果も磁気転移温度近傍で最大値−50%をとることが分かる。磁気転移温度近傍で磁気抵抗効果が最大値をとるのは、磁気転移温度近傍はスピンのゆらぎの大きい温度領域であって、外部から磁性材料に印加された磁場によって、臨界磁気散乱による抵抗成分が大きく変化する温度領域であることによる。また、図8に膜厚3000ÅのアズデポジションLCMO膜を酸素雰囲気中で、580℃,2時間の酸素アニール処理をしたアニール処理LCMO膜の磁気抵抗効果の温度依存性を示す。アニール処理LCMO膜の磁気転移温度は室温であり、磁気抵抗変化率は室温で最大値−15%を取る。このように、アニール処理LCMO膜は室温に大きな磁気抵抗効果を持ち、室温での高感度な磁気検出が可能である。
【0053】
【表2】

【0054】表2に作製したアズデポジションLCMO膜と、アズデポジションLCMO膜を酸素雰囲気中で、580℃,2時間の酸素アニール処理をしたアニール処理LCMO膜の印加磁場1テスラにおける77K,室温,磁気転移温度(Tc)での磁気抵抗効果特性をまとめて示した。アニール処理LCMO膜では、膜中への酸素の導入により、磁気転移温度は上昇しほぼ室温である。表2に示すように、アズデポジションLCMO膜では、磁気転移温度近傍に−50%前後の非常に大きな磁気抵抗効果が生じる。一方、アニール処理LCMO膜では、その磁気転移温度が室温へ移動し、室温で−15%前後の大きな磁気抵抗効果が生じる。以上述べてきたように、LCMO膜では、磁気転移温度付近で磁気検出を行えば非常に高感度な磁気検出が可能になる。
【0055】本発明の、磁気抵抗効果素子の構成要素に3層磁気抵抗効果膜を用いた場合の例は、例えば上下の磁性膜にLCMO膜、非磁性膜に酸化物超伝導材料YBa2Cu3y膜(以下YBCOと略す)を用いる。磁気抵抗効果素子の構成要素である多層磁気抵抗効果膜LCMO/YBCO/LCMO3層膜はイオンビームスパッタ法により、前述のLCMO膜の作製方法と同様の方法で行った。ただし、上下のLCMO膜の膜厚はともに1500Åに固定し、中間のYBCO層の膜厚(dy)は500〜6000Åで変化させた。LCMO膜及びYBCO膜の作製条件の詳細を表1に示す。ただし、YBCO膜作製時のターゲットには、径6インチ,厚さ5mmで、イットリウム,バリウム,銅,酸素からなる焼結体を用いた。X線回折により、作製したLCMO/YBCO/LCMO3層膜は各層ともc−軸配向膜であった。また、断面SEM像の観察から、作製したLCMO/YBCO/LCMO3層膜は中間の酸化物導電性YBCO膜の膜厚が500Åと薄い場合でも、上下の磁気抵抗効果LCMO膜の間にはピンホールはなかった。3層膜の磁気抵抗測定,比抵抗測定,磁化測定等は、LCMO単層膜と同様の方法で行った。図9にdy=1200Å の場合のLCMO/YBCO/LCMO3層膜の比抵抗の温度依存性を、LCMO単層膜とともに示す。LCMO/YBCO/LCMO3層膜の比抵抗には、約30Kに超伝導の影響が見られた。また、LCMO/YBCO/LCMO3層膜の磁気抵抗効果はLCMO単層膜と同様に、1テスラの磁場では飽和せず磁場方向と電流方向のなす角度に依らない等方的な磁気抵抗効果となった。図10にdy=500Å,1500Å,2500Åの場合のLCMO/YBCO/LCMO3層膜の印加磁場1テスラにおける磁気抵抗変化率の温度依存性を、LCMO単層膜とともに示す。図10に示すように、LCMO/YBCO/LCMO3層膜の磁気抵抗効果は、磁化が飽和した140K以下ではLCMO単層膜に比べ増幅され、そして中間のYBCO層の膜厚が薄くなるに従って増幅は大きくなる。図11にLCMO/YBCO/LCMO3層膜の印加磁場1テスラ,温度77Kにおける磁気抵抗変化率のYBCO層の膜厚(dy)依存性を示す。図11に示すように、LCMO/YBCO/LCMO3層膜の磁気抵抗効果は、中間のYBCO層の膜厚が薄くなるに従って大きくなり、中間のYBCO層の膜厚を厚くしていった場合には、2500Å付近を境に急峻に減少する。また、図12に温度77Kにおけるdy=500Å ,1500Å,2500Åの場合のLCMO/YBCO/LCMO3層膜の磁化の磁場依存性を示す。図12から、磁化の飽和する飽和磁界は中間のYBCO層の膜厚が薄くなるに従って大きくなる。これらの結果は、厚さ2500ÅのYBCO層を介した2つのLCMO層間に磁気的な相互作用が及んでいることを示している。以上述べてきたように、LCMOの磁化が飽和した温度以下では、LCMO/YBCO/LCMO3層膜の磁気抵抗効果はLCMO単層膜に比べて増幅され高感度な磁気検出が可能である。
【0056】
【表3】

【0057】また、表3に作製したアズデポジション3層膜およびアニール処理3層膜の印加磁場1テスラにおける、77K,室温,磁気転移温度(Tc)の磁気抵抗効果特性をまとめて示した。ただし、アニール処理は、酸素雰囲気中で、580℃,2時間の酸素アニール処理である。表3に示したように、アニール処理3層膜の室温における磁気抵抗変化率は−6.4% と大きく、室温での高感度な磁気検出が可能である。
【0058】図13は、記録再生分離型ヘッドを有する磁気記録再生装置において、磁気検出素子に少なくとも本発明の酸化物磁気抵抗効果膜を用いた場合の実施例である。記録再生分離型ヘッドは、本発明の磁気抵抗効果素子を用いた再生ヘッドと、インダクティブ型の記録用ヘッドおよび、漏れ磁界による再生ヘッドの混乱を防止するためのシールド部からなる。ヘッドは基体40上に下部磁性膜52,上部磁性膜51およびこれに起磁力を印加するコイル60からなる記録ヘッドを形成し、その後に下部シールド32,酸化物磁気抵抗効果単層膜(あるいは酸化物磁気抵抗効果膜/酸化物導電性膜/酸化物磁気抵抗効果膜3層膜)10,電極20および上部シールド31からなる再生ヘッドを形成する。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、高感度の磁気検出能力を有し、かつ、単純な素子構造を有する磁気抵抗効果膜を得ることができる。




 

 


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