米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 電気素子 -> 株式会社日立製作所

発明の名称 表面処理方法および装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−224156
公開日 平成6年(1994)8月12日
出願番号 特願平5−281039
出願日 平成5年(1993)11月10日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】薄田 利幸
発明者 山本 清二 / 持地 広造
要約 目的
ドライエッチングに際しては高い異方性と高い選択性とをもたらし、デポジションに際しては高い均一性をもたらすような表面処理方法およびその方法を実施するための装置を提供すること。

構成
ドライエッチングやデポジションなどの表面処理に有効な特定の化学種(イオン)を含む種々の化学種を光イオン化法により生成させ、生成した種々の化学種の中から上記した特定の化学種のみを所定の捕捉位置に適当な時間内捕捉し、この捕捉した特定の化学種を目的とする表面処理に有効な特定の振電状態に励起し、この特定の振電状態に励起した特定の化学種(イオン)をその並進速度を揃えて引き出して試料に照射することによって、試料表面の処理を行う。
特許請求の範囲
【請求項1】表面処理用のガスを電離して表面処理に必要な特定の化学種を含む種々の化学種を生成する化学種生成工程と、生成した種々の化学種の中から上記特定の化学種を選択して所定の捕捉位置に捕捉する化学種捕捉工程と、捕捉した特定の化学種を上記捕捉位置から引き出す化学種引き出し工程と、引き出した特定の化学種を試料表面に供給して該試料表面を処理する表面処理工程とを含んでなることを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】上記した特定の化学種の内部状態のエネルギーを100eV以下に励起する化学種励起工程をさらに含んでなることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】上記の化学種生成工程は、上記表面処理用ガスを細孔を通して真空中に噴射することによって該表面処理用ガスの分子ビームを形成する段階と、該分子ビームを電離して表面処理に必要な特定の化学種を含む種々の化学種を生成する段階とからなることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項4】上記した分子ビームの電離は、上記分子ビームに光を照射することによって行われることを特徴とする請求項3に記載の表面処理方法。
【請求項5】上記の化学種捕捉工程は、内部状態のエネルギーが100eV以下である化学種を選択して捕捉するものであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項6】上記の化学種励起工程は、上記化学種引き出し工程によって引き出された後の上記特定の化学種を励起することからなることを特徴とする請求項2に記載の表面処理方法。
【請求項7】上記の化学種引き出し工程は、上記の特定の化学種をその並進エネルギーを揃えて引き出すものであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項8】上記の特定の化学種の並進エネルギーは、100eV以下であることを特徴とする請求項7に記載の表面処理方法。
【請求項9】上記の特定の化学種の並進エネルギーは、その平均値を中心として±5%の範囲内に揃えられていることを特徴とする請求項7に記載の表面処理方法。
【請求項10】上記の化学種捕捉工程は、イオントラップ法を用いて上記特定の化学種を選択して捕捉するものであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項11】上記の化学種捕捉工程は、レーザ冷却法を用いて上記特定の化学種を選択して捕捉するものであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項12】上記の化学種励起工程は、励起すべき特定の化学種に所定波長のレーザ光あるいはシンクロトロン放射光を照射して、該化学種を光励起することからなることを特徴とする請求項2に記載の表面処理方法。
【請求項13】上記の化学種生成工程は、上記表面処理用ガスの原子ビーム、分子ビーム、またはクラスタービームを形成する段階と、該ビームを電離して表面処理に必要な特定の化学種を含む種々の化学種を生成する段階とからなることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項14】表面処理に用いる化学種を中性原子の形で真空室内に導入する化学種導入工程と、導入された中性原子からなる化学種を所定の捕捉位置に捕捉する化学種捕捉工程と、捕捉された中性原子からなる化学種を上記捕捉位置から引き出す化学種引き出し工程と、引き出された中性原子からなる化学種を試料表面に照射する化学種照射工程とを含んでなることを特徴とする表面処理方法。
【請求項15】上記の中性原子からなる化学種の内部状態のエネルギーを100eV以下に励起する化学種励起工程をさらに含んでなることを特徴とする請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項16】上記の化学種励起工程は上記の化学種捕捉工程によって捕捉された状態にある中性原子からなる化学種を励起するものであることを特徴とする請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項17】上記の化学種励起工程は上記の化学種引き出し工程によって引き出された後の上記中性原子からなる化学種を励起するものであることを特徴とする請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項18】上記の化学種捕捉工程は、上記の導入された中性原子からなる化学種にその進行方向とは反対の方向から光をあてることによって該中性原子からなる化学種を捕捉するものであることを特徴とする請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項19】上記の化学種引き出し工程は、上記の捕捉された中性原子からなる化学種に光をあてることによって該中性原子からなる化学種を上記の捕捉位置から引き出すものであることを特徴とする請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項20】上記の化学種捕捉工程は、内部状態のエネルギーが100eV以下である化学種を選択して捕捉するものであることを特徴とする請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項21】上記の化学種励起工程は、上記中性原子からなる化学種に光あるいは原子、分子、電子、イオンあるいはラジカルからなるアシストビームを照射することからなることを特徴とする請求項17に記載の表面処理方法。
【請求項22】上記の化学種引き出し工程は、上記の捕捉された中性原子からなる化学種をその並進エネルギーを揃えて引き出すものであることを特徴とする請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項23】上記の化学種引き出し工程によって引き出された中性原子からなる化学種の並進エネルギーは100eV以下であることを特徴とする請求項14に記載の表面処理方法。
【請求項24】上記の化学種引き出し工程によって引き出された中性原子からなる化学種の並進エネルギーは、その平均値を中心として±5%の範囲内に揃えられていることを特徴とする請求項22に記載の表面処理方法。
【請求項25】表面処理用のガスを電離して表面処理に必要な特定の化学種を含む種々の化学種を生成する化学種生成手段と、生成した種々の化学種の中から上記特定の化学種を選択して所定の捕捉位置に捕捉する化学種捕捉手段と、捕捉した特定の化学種を上記捕捉位置から引き出す化学種引き出し手段と、引き出した特定の化学種を試料表面に供給して該試料表面を処理する表面処理手段とを含んでなることを特徴とする表面処理装置。
【請求項26】上記の化学種生成手段は、上記表面処理用ガスを細孔を通して真空室中に噴射することによって該表面処理用ガスの分子ビームを形成する分子ビーム形成手段と、該分子ビームを電離して表面処理に必要な特定の化学種を含む種々の化学種を生成する電離手段とからなることを特徴とする請求項25に記載の表面処理装置。
【請求項27】上記の分子ビーム形成手段は、上記真空室中に上記表面処理用ガスをパルス状に噴射することによってパルス状の分子ビームを形成するものであることを特徴とする請求項26に記載の表面処理装置。
【請求項28】上記の電離手段は、上記分子ビームに光を照射することによって該分子ビームを電離させるものであることを特徴とする請求項26に記載の表面処理装置。
【請求項29】上記の光は、レーザ光であることを特徴とする請求項28に記載の表面処理装置。
【請求項30】上記の光は、シンクロトロン放射光であることを特徴とする請求項28に記載の表面処理装置。
【請求項31】上記の電離手段は上記分子ビームに電子線を照射することによって該分子ビームを電離させるものであることを特徴とする請求項26に記載の表面処理装置。
【請求項32】上記の電離手段は、上記分子ビームに高励起リュードベリ状態にある原子または分子を照射することによって該分子ビームを電離させるものであることを特徴とする請求項26に記載の表面処理装置。
【請求項33】上記の化学種生成手段は、RF放電、アーク放電、グロー放電、あるいは電子サイクロトロン共鳴(ECR)によるプラズマ中で上記表面処理用ガスを電離させるものであることを特徴とする請求項25に記載の表面処理装置。
【請求項34】上記の化学種捕捉手段は、上記分子ビームにその進行方向とは反対の方向からレーザ光を照射することによって上記特定の化学種をレーザ冷却して捕捉するものであることを特徴とする請求項26に記載の表面処理装置。
【請求項35】表面処理に用いる化学種を生成する化学種生成手段と、生成した化学種を捕捉する化学種捕捉手段と、捕捉した化学種を励起する化学種励起手段と、励起した化学種を引き出す化学種引き出し手段と、引き出した化学種を試料に照射する化学種照射手段とを含んでなることを特徴とする表面処理装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体素子の製造方法に係り、特にエッチングやデポジションなどの表面処理工程において、高い材料選択性と高い異方性とを有する超微細加工を実現する方法およびその方法を実施するための装置に関する。なお、ここでの超微細加工とは、原子層レベルでの表面処理を意味する。
【0002】
【従来の技術】半導体素子の微細化が進むにつれて、エッチング工程においては、より高いアスペクト比(エッチングの深さと開口寸法との比率)を実現でき、しかも材料選択性のより大きな方法が望まれている。
【0003】従来、ドライエッチングでは、メガヘルツオーダーの高周波によるプラズマ中で生成したエッチングガスのイオンあるいはラジカルを用いるのが主流となっている。この方法では、生成するイオン、ラジカル、解離分子などの化学種の種類およびそれらのエネルギーは様々である。例えば CF4ガスは次のように解離する。
CF4+e~→CF3+F*+e~→CF3+F~→CF3(+)+F+2e~→CF2+2F*→C+4F*ここで、F*はラジカルを、CF3(+)は CF3の1価の正イオンをそれぞれ表している。このように、CF4のような単純な分子でも プラズマ中では多種多様な化学種に変化する。しかも、従来は生成する化学種の内部状態のエネルギーの制御は行われていない。しかし、大量の活性種を利用できるのがこの方法の特長であり、異方性は不十分であるが、高いスループットでエッチングを行うことができる。
【0004】また、デポジションに関しても全く同様な状況にあり、高いスループットで薄膜を形成できるが、やはり、使用する化学種の選定およびその内部エネルギーの制御は行われていない。
【0005】従来より、プラズマエッチングにおいて、エッチングに不必要な化学種を除去してエッチングに有効な化学種のみを用いることにより良質なエッチングを行おうとする試みがなされてきている。その一例として、特開昭62−248226号公報に記載された方法を挙げることができる。この方法では、放電プラズマからの種々のイオン種を四極電磁石を用いて質量分離することにより、所望のエネルギーを持つ特定のイオン種のみを選択的に取り出し、その後さらに、減速電極でもってこの取り出したイオン種の速度を調節してから試料表面の加工に用いている。一般に、イオン種の選別には、代表的な例として、高周波を用いる四重極質量分離器や磁場と電場を直交させて用いるウィーンフィルター型質量分離器などが使用されている。また、質量分析法としては、特開昭59−134546号公報に記載のような四極イオントラップを用いる方法もある。また、光アシストによる内部エネルギーの制御法に関しては、特開昭61−231716号公報に記載の方法が提案されている。この方法は、エッチング反応が進行する試料表面に光を照射して、良質のエッチングを行おうとするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来のドライエッチング方法においては、高いエネルギーを与えて生成したプラズマを用いるので、生じるイオンの種類やそのイオンの回転,振動,電子の各内部エネルギー、およびその並進エネルギーに大きなバラツキがある。そのため、エッチングに必要のないイオンやエッチング反応を起しにくいエネルギー状態にあるイオンがマスクや下地を不必要にエッチングしてしまうので、高い材料選択性を得ることは困難であった。また、エッチング形状の異方性を高めるために加速された高い並進エネルギーを持つイオンを用いているので、さらに材料選択性は低下し、そのために種々の基板損傷も発生した。また、イオンと同時に生成する種々のラジカルや電子などの影響により、エッチング反応はより一層複雑となり、制御しにくいものとなっていた。
【0007】従って、本発明の目的は、上記した従来法の問題点を克服し、高い選択性と高い異方性を有するドライエッチング方法を含めた表面処理方法およびその方法を実施するための装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明においては、光のエネルギーを利用して表面処理用のガスをイオン化することにより、所望とする表面処理に有効な特定の内部エネルギー状態にある特定の質量数のイオンを分離生成し、この分離生成したイオンをドライエッチングやデポジションなどの表面処理に利用している。
【0009】すなわち、本発明による表面処理方法は、表面処理用のガスを電離して種々の化学種を生成する化学種生成工程と、生成した種々の化学種の内から特定の化学種を選択して捕捉する化学種捕捉工程と、捕捉された特定の化学種を引き出す化学種引き出し工程と、この引き出された特定の化学種を用いて表面処理を行う表面処理工程とからなることができる。
【0010】また、表面処理に用いる化学種の内部エネルギー状態を制御するために、上記の捕捉された化学種に光を照射して該化学種を所望の内部エネルギー状態に励起する化学種励起工程をさらに含めてもよい。また、上記した特定の化学種を捕捉する化学種捕捉工程と、捕捉した化学種を励起する化学種励起工程と、励起された化学種を引き出す化学種引き出し工程との順序は、使用する化学種の種類あるいは表面処理の種類に合わせて適宜入れ替えても良い。
【0011】また、表面処理用の化学種として中性原子(または分子)を用いる場合には、本発明による表面処理方法は、真空室内に表面処理に必要な化学種(中性原子または分子)を導入する化学種導入工程と、導入された化学種にその進行方向とは反対方向から光を当てて該化学種を捕捉する化学種捕捉工程と、捕捉した化学種を光を用いて引き出す化学種引き出し工程と、引き出した化学種(中性原子または分子)を用いて表面処理を行う表面処理工程とからなることができる。また、表面処理に用いる化学種の内部エネルギー状態を制御するために、上記の捕捉された化学種に光を照射して該化学種を所望の内部エネルギー状態に励起する化学種励起工程をさらに含めてもよい。
【0012】図1に、本発明による表面処理方法の基本概念を模式的に示す。図示の様に、本発明による表面処理方法は、基本的には、化学種生成工程(1)と、化学種捕捉工程(2)と、化学種励起工程(3)と、化学種引き出し工程(4)と、表面処理工程(5)とからなっている。
【0013】化学種生成工程(1)においては、表面処理用のガスをイオン化させることにより、表面処理に必要とされる特定の化学種を含む種々の化学種6,7,8,9等を生成させる。ここで生成された化学種の中には様々な質量数のものが存在し、それらの内部状態および並進速度も様々である。化学種捕捉工程(2)においては、化学種生成工程(1)で生成された種々の化学種の中から表面処理に必要とされる特定の化学種6を選択して捕捉する。化学種励起工程(3)においては、化学種捕捉工程(2)で捕捉された特定の化学種6を特定の励起状態に励起して、該化学種6の内部エネルギー状態を揃える。化学種引き出し工程(4)では、化学種励起工程(3)で特定の内部エネルギー状態に励起された特定の化学種6をその並進速度を揃えて引き出す。表面処理工程(5)では、化学種引き出し工程(4)で引き出された特定の化学種6を試料(被処理物)10の表面に供給して、該試料の表面処理を行う。
【0014】なお、上記した化学種捕捉工程(2),化学種励起工程(3),および化学種引き出し工程(4)からなる三つの工程の時間的順序は、使用する化学種の種類あるいは表面処理の種類に応じて、適宜入れ替えても良い。
【0015】また、本発明による表面処理装置は、表面処理に用いられる特定の化学種を生成させる化学種生成手段と、生成された特定の化学種を捕捉する化学種捕捉手段と、捕捉された特定の化学種を引き出す化学種引き出し手段と、引き出された特定の化学種を被処理試料に照射する化学種照射手段とからなることができる。また、上記の捕捉された特定の化学種を特定の内部エネルギー状態に励起する化学種励起手段をさらに含むことができる。
【0016】図2に、本発明による表面処理装置の基本的構成を示す。この装置は大きく分けて三つの真空室すなわちガス導入室12,中間処理室13,試料処理室26を持っている。各室はそれぞれバルブ17,18,19を介してそれぞれ真空ポンプ14,15,16によって真空排気され得る。
【0017】この装置において、表面処理に必要な特定の化学種(イオン)を生成させるにあたっては、先ず、パルス超音速ジェット発生器20によりガスボンベ25からの表面処理用ガス(表面処理に必要な特定の化学種を生成させ得るガス)を細孔を通してガス導入室12内に噴出させて、パルス超音速ジェット31を発生させる。このパルス超音速ジェット31をさらにスキマー21に通すことによって、中間処理室13内にパルス分子線31’として導入し、このパルス分子線31’をイオントラップセル22中に入射させる。このパルス分子線31’中の殆どの分子は基底状態にある。そして、このセル22内でパルス分子線31’にレ−ザ光32(または、シンクロトロン放射光)を照射することにより、分子線31’中に含まれる基底状態の分子あるいはクラスターをイオン化し、表面処理に必要な特定の化学種(イオン)を生成させる。
【0018】次に、生成した特定の化学種の捕捉にあたっては、イオントラップセル22を動作させて、上記特定の化学種のみをセル22内に捕捉する。
【0019】また、捕捉された特定の化学種を励起するにあたっては、セル22内に捕捉されたイオンにレ−ザ光源33からのレ−ザ光32’を照射して、該捕捉イオンを特定の内部エネルギー状態に励起する。
【0020】次いで、特定の内部エネルギー状態に励起された特定の化学種を引き出すにあたっては、イオントラップセル22内にイオン引き出し電界を形成させて、セル22内に捕捉されている特定の化学種(イオン)をセル外に引き出す。
【0021】最後に、セル22から引き出された化学種(イオン)を試料表面に照射するにあたっては、イオンレンズ34等のイオン光学系を用いてイオン流の断面形状等を整えた上で、該イオン流を試料27の表面に照射する。
【0022】なお、イオントラップセル22内に入射させる分子線は、上記したようなパルス分子線であることが望ましいが、場合によっては、連続的な分子線であってももよい。
【0023】次に、表面処理に利用する化学種が中性原子(または分子)の場合には、本発明による表面処理装置は、真空室中に表面処理に利用する化学種を原子線(または分子線)として導入する化学種導入手段と、導入された化学種にその進行方向とは反対方向から光を当てて該化学種を捕捉する化学種捕捉手段と、捕捉された化学種を光を用いて引き出す化学種引き出し手段と、引き出した化学種(中性原子または分子)を試料の表面処理を行うために試料表面に照射する化学種照射手段とからなることができる。また、この場合にも、表面処理に用いる化学種の内部エネルギー状態を制御するために、上記の化学種捕捉手段によって捕捉された化学種を特定の内部エネルギー状態に励起するための化学種励起手段を付加することができる。また、上記した化学種導入手段によって真空室中に導入される化学種のビームもパルス状のビームであることが望ましいが、連続的なビームであってもよい。
【0024】なお、捕捉すべき化学種が中性原子(または分子)の場合には、上記した化学種捕捉手段は、共鳴波長のレーザ光を用いたレーザ冷却法によって捕捉すべき化学種を減速して捕捉する方式のものであることができる。また、上記の化学種励起手段は、捕捉された化学種にレーザ光を照射して該化学種を光励起する方式のものであることができる。さらに、上記の化学種引き出し手段は、捕捉された化学種(中性原子または分子)にレーザ光を照射して、光の輻射圧によってそれらを引き出す方式のものであることができる。
【0025】
【作用】上記した本発明の表面処理方法および装置によれば、以下のような作用効果が得られる。なお、ここでは、表面処理の中でも主にドライエッチングの場合を例にとって述べる。
【0026】本発明においては、質量と並進速度の揃った特定の回転,振動,電子状態(以下、振電状態と略す)にある化学種(イオン)を光を用いて生成させ、該化学種を用いて試料表面のエッチングを行う。
【0027】化学種生成工程(1)においては、エッチングガスを高真空室中にパルス分子線として導入する。高圧の気体を細孔を通してパルス的に高真空中に噴出することによって超音速のパルス分子線を発生させることができ、この超音速パルス分子線中のガス分子はその殆どが断熱膨張により基底状態にあり、並進速度も揃っている。このパルス分子線に特定の波長のレーザ光あるいはシンクロトロン放射光を照射することにより、該パルス分子線中の分子あるいはクラスターをイオン化し、エッチングに必要な特定の化学種(イオン、またはイオンの解離種)を生成させる。もちろんこの際、図1に示すように、上記の特定の化学種の他にも種々の化学種が生成される。
【0028】次いで、化学種捕捉工程(2)においては、上記のようにして生成された種々の化学種の内から特定の化学種(特定の質量のイオン)のみを、図4に示すようなイオントラップセル22を用いて選択的に捕捉する。この方法について、図4を参照して説明する。まず、表面処理に用いられる化学種を生成するための原料物質としては、F2,Cl2,Br2,I2,CCl4,CHCl3,CCl3,CHF4,SF6,HF,HCl,HBr,HI,NF3,WF6 などのハロゲン化物、酸化物、水素化物、窒化物、無機錯体のうちのいずれか、またはそれらのいずれかを含む混合物であって気体または液体の状態にあるものを用いることができる。これらの中から、所望とする表面処理に必要な化学種を生じ得る物質を選び、それを細孔を通して真空中にパルス的に噴出することによって、パルス分子線31’を形成する。ここで「パルス的に噴出する」とした理由は、イオントラップセル22で特定の化学種のイオンを選択捕捉する際に、イオントラップセル22内から排除されてしまうその他の余分な化学種の導入量を減らし、イオントラップセル22周辺の圧力の上昇を抑えるためである。イオントラップセル22は、回転双曲面状に形成されたリング電極40とキャップ電極39,39’との間に高周波電圧Eh=U+Vsinωt(Uは直流電圧成分、Vsinωtは高周波電圧成分)を印加して、セル内に三次元四重極電界を形成することにより、特定のイオンの選別および捕捉を行う装置である。分子線31’は、リング電極40に設けられた開孔40Aを通してセル22内に導入される(図4の(a))。
【0029】セル22内に導入された分子線31’がセル22の中心部を通過する際に、該分子線31’に光32が照射され、導入分子35のイオン化が行われる(図4の(b))。
【0030】上記のイオン化と同時にまたはその直後に、高周波電源37を用いてリング電極40とキャップ電極39,39’との間に上記の高周波電圧Ehが印加され、セル22内に高周波電場が形成される。ここで、イオン化されなかった中性分子35は、上記高周波電場の作用を受けることなくそのまま開孔40B等を通してセル22外に排出される。また、イオン化によって生成されたイオンの中には、導入分子35がそのままイオン化して生じた親イオン36とフラグメントイオン38とがあるが、上記高周波電場内では質量数の異なるイオンは異なる軌道を運動するので、印加する高周波電場の振幅および周波数を調整することにより、捕捉条件に適合した特定の質量数のイオン(図ではイオン36)のみを捕捉することができる。また、捕捉条件に適合しないイオン(図ではイオン38)は上記高周波電場の作用によってセル外に飛散してしまう。従って、内部状態のできるだけ揃った特定の質量数のイオンのみをイオントラップセル22内に捕捉できることになる(図4の(c))。なお、このイオントラップの技術に関しては、“質量分析”Vol.36, No.5, 187-195 (1988)に詳しい。
【0031】次に、化学種励起工程(3)においては、上述のようにしてセル22内に捕捉されたイオンを光によって励起し、特定の振電状態にあるイオンないしイオンの解離種を生成させる。なお、この化学種励起工程(3)は、上述した化学種生成工程(1)における特定のイオン種の生成の直後において行われても良い。ここでは、一例として、エネルギーの異なる三種類の光を用いて、特定の分子を励起して特定のイオン種を生成させると共に、この特定のイオン種をさらに励起して特定の振電状態にあるイオンとする方法について、図3を用いて説明する。
【0032】図3に示すように、先の化学種生成工程(1)において発生された超音速のパルス分子線中の分子35は断熱膨張に伴い冷却されて基底状態にある。この基底状態の分子35は、第一の光(エネルギー:hν1 )を吸収することにより、より高いエネルギーをもつ特定の中間状態へと遷移する。この中間状態にある分子35’は、さらに第二の光(エネルギー:hν2 )を吸収して電子を放出し、正イオン36の基底状態へと遷移する。この基底状態の正イオン36は、さらに第三の光(エネルギー:hν3 )を吸収し、特定の振電状態にあるイオン36’となる。エネルギーの高い分子イオンでは、イオンの種類によっては解離などの緩和過程があるために特定の振電状態に留まれないものもある。この場合には、化学種の内部状態に分布が生じるが、可能な限り状態選択を行うことができる。また、必要に応じて励起光のエネルギーを変えることにより、任意の中間状態を経由して特定の振電状態にあるイオンを生成できる。好適には、化学種の50%以上が同一の内部状態にあることが望ましい。また、内部エネルギーの大きさは、エッチングの際に基板損傷を与えないという観点から、並進エネルギーと合わせて100eVよりも小さいことが望ましい。
【0033】次に、化学種引き出し工程(4)においては、セル22内に捕捉されている特定の振電状態に励起された特定のイオン種をセル外に引き出す。この方法を図5を用いて説明する。イオントラップセル22内のイオン36’は、リング電極40とキャップ電極39,39’と間に高周波電圧Ehが印加されている間は、セル22内に捕捉され続ける(図5の(a))。なお、この捕捉時間は、数ミリ秒から数百ミリ秒の範囲内とされるのが望ましい。
【0034】捕捉イオン36’の引き出しは、高周波電源37による高周波電圧Ehの印加を停止する前、あるいは停止後に、直流電源37’を用いてキャップ電極39,39’間にイオン引き出し電圧Eを印加して行う。好適には、並進速度の分布は設定した平均の速度を中心として±5%の範囲内に揃える。これは、表面処理の均一性を高めるためである。また、表面処理の際に基板に与える損傷を抑えるため、並進エネルギーは100eV以下であることが望ましい。図2に示した装置構成のように分子線31’の方向とは異なる方向にイオン36’を引き出して試料に照射することにより、必要のないイオン化しなかった化学種35等が試料表面に到達するのを防止できる。
【0035】以上述べた一連の操作により、内部エネルギー、および、並進速度(大きさと方向)の分散の小さな、エッチングに有効な化学種のみのイオン流36’が形成される(図5の(b))。これにより、異方性および選択性に優れたドライエッチングが可能となる(図5の(c))。また、均一な膜質のデポジションも可能となる(図5の(d))。
【0036】中性原子(または中性分子)を用いて表面処理を行う場合には、図2と同様な装置構成において、イオントラップセル22は動作させずに、原子線(または分子線)31’中の中性原子(または中性分子)をレーザ冷却法により減速して捕捉し、その後この捕捉された中性原子(または中性分子)を光の輻射圧を利用して引き出し、この引き出された中性原子(または中性分子)を用いて表面処理を行う。これにより、より損傷の少ない表面処理が可能となる。
【0037】このように表面処理に必要な化学種を分離・捕捉し、捕捉された化学種を光により励起し、励起された化学種を速度を揃えて引き出すことにより、内部エネルギーおよび並進エネルギーの揃った化学種のビームとすることができる。以下、エッチングマスクとして表面に微細なレジストパターンを形成したSi基板を試料とし、上述したイオントラップ法を利用して該試料表面のドライエッチングを行う場合を例にとって、本発明の作用効果について説明する。
【0038】第一に、イオントラップ法を用いることによって目的とするSi基板のエッチングに有効な化学種のみを選択して利用することができる。また、マスクや下地に与える影響の少ない化学種を選択して利用することができるので、エッチングにおける材料選択性が向上する。原子イオンや分子が解離せずに直接イオン化した親イオンでは、内部エネルギー状態も選択されているので、エッチングに有効な内部状態のイオンを選んで用いることによって、さらに材料選択性を向上させることが可能である。これは、同じ化学種でも内部エネルギーの違いによって化学反応の起こり易さが異なるためである。
【0039】また、エッチングに用いる化学種の並進速度の制御も可能である。すなわち、選択した化学種を一旦捕捉した後に改めて引き出すことにより、化学種の並進エネルギーと運動の方向を揃えることができる。そのため、化学種間の衝突による運動方向の拡がりを小さい範囲に抑えることができるので、エッチング加工の垂直性が向上する。つまり、エッチングの異方性が向上する。また、選択した化学種を一旦捕捉した上で改めて引き出すことにより、該化学種に付与するエネルギーを小さくできるので、基板損傷を抑えることができる。
【0040】なお、表面処理に利用するイオンは、上記した分子線の光イオン化により生成させるのみでなく、電子衝撃、リュードベリ原子および分子(高励起リュードベリ状態にある原子および分子)の衝撃によって生成させてもよいし、さらには、RF放電、アーク放電、グロー放電、あるいは電子サイクロトロン共鳴(ECR)によって生起されるプラズマ中で生成されるイオン(正イオンまたは負イオン)を引き出してきて捕捉する手法によっても良い。これらいずれの場合も全く同様の効果が得られる。
【0041】上記した本発明の表面処理装置における個々の構成手段はいずれも従来技術によるものであるが、本発明ではそれらを巧みに組み合わせることにより、これまでにない高度な表面処理を可能にしている。表面処理に必要なイオンをイオントラップセル内で生成させ、これを長時間捕捉することにより他の不必要なイオンから選別し、その間に光照射により所望とする特定の振電状態にイオンを励起する。このイオンの捕捉・励起の過程は、従来技術の項で述べた四重極質量分離器やウィーンフィルター等の通過型の質量分離器を用いる方法によっては実現困難である。また、本発明におけるイオンの励起は、ただ光を照射するだけの光アシスト法とは異なり、所望とする特定のイオンを最も効率良く励起することのできる波長の光を選択して行われる。また、イオンを一旦捕捉した後に改めてそれを引き出すようにしているので、内部エネルギーと並進エネルギーの揃ったイオンビ−ムを形成できる。このように、イオンの捕捉によって該イオンの状態の制御が可能となり、この状態制御されたイオンを用いることによって初めて高い材料選択性と高い異方性とを有する微細かつ良質な表面処理が可能となるのである。
【0042】
【実施例】以下、本発明の実施例につき、図面を参照して、詳細に説明する。
【0043】<実施例1>図2に本発明の一実施例になる表面処理装置の概略構成を示す。本装置には、三つの真空チャンバ、すなわち、ガス導入室12,中間処理室13,試料処理室26が設けられている。ガス導入室12はバルブ17を介して真空ポンプ14に接続され、中間処理室13はバルブ18を介して真空ポンプ15に接続されている。ガス導入室12と中間処理室13の間にはスキマー21が設けられており、両室はスキマー21の細孔を介して連通しており、ガス導入室12側よりも中間処理室13側の方がより高真空となるように差動排気される。試料処理室26内は真空ポンプ16によって真空排気される。中間処理室13と試料処理室26との間にはバルブ19が設けられており、それによって両室間の開閉ができるようになっている。
【0044】ガス導入室12内にはガスボンベ25から供給されるガスをパルス超音速ジェット31として噴射させるためのパルス超音速ジェット発生器20が設けられており、中間処理室13内にはイオントラップセル22,電子銃30およびイオンレンズ系34が設けられている。また、試料処理室26内には、試料27を導入保持するための試料導入器23と質量分析器24とが設けられている。
【0045】なお、上記のイオントラップセル22は、具体的には図5の(a)に示されるように、二枚のキャップ電極39,39’と、両キャップ電極39,39’間に設けられた回転双曲面状に形成されたリング電極40とからなっている。リング電極40と両キャップ電極39,39’との間には、高周波電源37が接続されている。この高周波電源37は、接地電位に置かれた両キャップ電極39,39’に対してリング電極40に、Eh=U+Vsinωtなる電圧(Uは直流電圧、Vsinωtは高周波電圧)を印加して三次元四重極電界を形成し、特定のイオン種を選別して捕捉するためのものである。また、直流電源37’は、スイッチSwを介してキャップ電極39に正電圧Eを印加して、セル内にイオン引出し電界を形成させるためのものである。なお、リング電極40の側壁には分子ビーム31’を通すための開孔40A,40Bが設けられており、キャップ電極39’にはイオン引出し用の開孔39’Aが設けられている。
【0046】本装置には、また、可視または紫外領域のパルスレーザ光32を放射するパルスレーザ11および内部状態励起用のレーザ光32’を放射する波長可変レーザ33とが設けられており、両レーザ光32,32’は、それぞれ、ミラー28,28’およびレンズ29,29’を介して中間処理室13内に設けられたイオントラップセル22内に導入される。なお、イオントラップセル22内にレーザ光32,32’を導入するためには、上記したキャップ電極39に開孔を設けておいてもよいが、キャップ電極39の一部または全部をレーザ光を透過させ得る物質で構成してもよい。
【0047】本装置の動作に当たっては、先ずバルブ17,18,19を開放し、真空ポンプ14,15,16によってガス導入室12,中間処理室13,試料処理室26内を高真空に保つ。次に、パルス超音速ジェット発生器20を用いて、ガスボンベ25からのSF6ガスを3 atm の圧力でピンホールから真空中にパルス状に噴出することにより SF6ガスのパルス超音速ジェット31を生成する。このパルス超音速ジェット31をさらにスキマー21の細孔に通すことによって SF6ガスのパルス分子ビーム31’を形成させ、該パルス分子ビーム31’をイオントラップセル22中に導入する。なお、場合によっては、スキマー21を取り外して SF6ガスをジェット噴流のままでイオントラップセル22中に導入するように構成してもよい。
【0048】次に、 イオントラップセル22内に導入されたSF6ガスのパルス分子ビーム31’に、該パルス分子ビーム31’の導入タイミングに同期したパルスレーザ光32を照射して SF6ガス分子をイオン化する。そして、高周波電源37を動作させることによって、例えばSF5+などの特定のイオン種36を選択し、それを1ミリ秒から100ミリ秒の間セル22内に捕捉する。さらに、この捕捉された特定のイオン種36に波長可変レーザ33からのレーザ光32’を照射して、上記特定のイオン種36を特定の振電準位に励起し、内部状態の揃った特定のイオン種36’とする。
【0049】この状態で、図5の(b)に示すように、スイッチSwを直流電源37’側に切り換えてキャップ電極39に正電位( +E)を与えてキャップ電極39,39’間に50V/m〜200V/m程度の直流電界を形成し、上記した特定のイオン種36’を開孔39’Aを通して引き出す。これにより、引き出されたイオンには数10eV程度の運動エネルギーが与えられる。イオンの運動方向に関しては、セル22内の真空度を向上させたり、電場の乱れを抑えるなどして、技術的に可能な限り揃えるのが望ましい。
【0050】この引き出されたイオンは、次いで、試料処理室26内に導入され、該室内に設けられた質量分析器24によって、実際に引き出されたイオンが所望のイオン種であるかどうかの確認がなされる。しかる後に、試料導入器23によって表面処理されるべき試料27がイオン照射位置に導入され、該試料表面のドライエッチング加工が行われる。なお、この場合の試料(被エッチング物質)は、その表面に厚さ0.3μm、開口幅0.1μmのレジストパターンを設けたSi基板とした。
【0051】上記の条件で60分間のドライエッチングを行った結果、Si基板表面に溝幅が0.1μmで深さが0.5μm(アスペクト比:5)のエッチング溝を形成することができた。なお、必要に応じてイオンレンズ系34を用いてセル22からのイオンを収束させれば、さらに短い時間で上記と同等のドライエッチング加工が可能となる。また、試料表面へのイオン照射に際して、試料表面近傍に、光を照射したり、原子,分子,電子,イオン,ラジカルなどのアシストビームを導入することにより、エッチング速度のさらなる向上を図ることも可能である。
【0052】なお、イオントラップセル22内で導入分子をイオン化させるための励起用ビームとしては、上記したレーザ光32に限らず、その他一般のランプ光、シンクロトロン放射光、さらには、電子、高励起リュードベリ原子および分子などを用いても良い。
【0053】本実施例では、試料表面に照射するイオンの質量数、並進速度、内部状態の三条件を選択したが、これら三条件のうち一つあるいは二つの条件を満たすだけでも良い場合もある。また、セル内でのイオン生成の際に、反跳によりわずかなイオンがイオン引き出し電圧Eの印加タイミングとは無関係にセル外に出てくるので、イオンレンズ系34への印加電圧を適宜変調してできるだけ試料表面にエッチングに無関係なイオンが到達しないようにすることが望ましい。なお、イオン生成のための原料物質としてはF2,Cl2,Br2,I2,CCl4,CHCl3,CCl3,CHF4,SF6,HF,HCl,HBr,HI,NF3,WF6 などのハロゲン化物、酸化物、水素化物、窒化物、無機錯体のうちのいずれか、またはそれらのいずれかを含む混合物であって気体または液体の状態にあるものを適宜選択して用いることができる。
【0054】ここで、上記した一連の工程を図10のタイミング図を用いて説明する。先ず基準となるクロック信号Scを発生させ(同図の(a))、このクロック信号Scと同期してパルス超音速ジェット発生器20を動作させて、パルス超音速ジェット31を発生させ、スキマー21を介してパルス分子ビーム31’を発生させる(同図の(b))。このパルス分子ビーム31’がイオントラップセル22内に到達するまでの時間差をおいた後、セル22内にパルスレーザ光32を照射して該セル内の分子をイオン化させる(同図の(c))。このパルスレーザ光照射によるイオン化と同時あるいはそれより少し前にセル22のキャップ電極39,39’とリング電極40との間に高周波電圧Ehを印加し、上記イオン化により生成されたイオンのうちの特定のイオンをセル22内に捕捉する(同図の(d))。この高周波電圧Ehが印加されている間は上記した特定のイオンは捕捉され続ける。この捕捉時間内に、捕捉イオンの励起を行ったりセル内の真空度が向上するのを待つ。必要な捕捉時間の後に、上部キャップ電極39にイオン引出電圧Eを印加してセル内に捕捉されている特定のイオンをセル外に引き出す(同図の(e))。このイオン引出電圧Eの印加タイミングは、高周波電圧Ehが印加されている時でも良いし、イオン濃度は多少低下するが高周波電圧Ehの印加を止めた後でも良い。もちろん、高周波電圧Ehの印加を止めると同時にイオン引出電圧Eを印加するようにしても良い。このようにして引き出されたイオンは、その速度と飛行距離に応じた時間の後に試料27表面に到達し、イオン電流Iiとして観測される(同図の(f))。
【0055】<実施例2>本発明の他の一実施例を、実施例1の場合と同様に図2および図5を用いて説明する。本実施例においては、先ず、バルブ17,18,19を開放し真空ポンプ14,15,16によってガス導入室12,中間処理室13,試料処理室26内を高真空に排気する。次に、パルス超音速ジェット発生器20によって、ボンベ25からのHeとSF6との混合ガスを3 atm の圧力でピンホールから真空中にパルス状に噴出させてパルス超音速ジェット31を発生させる。このパルス超音速ジェット31をさらにスキマー21の細孔に通すことによってHe/SF6混合ガスのクラスタービーム31’とする。このクラスタービーム31’に電子銃30からの電子線を照射することによって、該クラスタービーム31’中の中性クラスターをイオン化させ、このイオン化で生じたクラスターイオンをイオントラップセル22中に導入する。なお、電子銃30はイオントラップセル22の中に置いても良い。また、上記した電子衝撃によるイオン化法に限らず、高励起原子あるいは高励起分子の衝撃によるイオン化技法を用いても良い。
【0056】イオントラップセル22内では、実施例1の場合と同様に高周波電圧印加の方法により、例えば(SF6)SF5+ などの特定のクラスターイオンを選別し1ミリ秒から100ミリ秒の間セル22内に捕捉する。そして、実施例1の場合と同様に、キャップ電極39,39’間にイオン引出電圧Eを印加して、セル22内に50V/m〜200V/mの電界を形成することにより、セル内に捕捉されているクラスターイオンをセル外に引き出す。これにより、引き出されたクラスターイオンには数10eV程度の運動エネルギーが与えられる。この引き出されたクラスターイオンは、次いで試料処理室26内に導入され、質量分析器24で所望とする特定のクラスターイオンであるかどうかの確認がなされる。その後、試料導入器23で試料27を所定のイオン照射位置に導入して、70分間試料表面のドライエッチングを行う。その結果、試料(Si基板)の表面に溝幅が 0.1μmで深さが 0.6μm(つまり、アスペクト比:6)の溝パターンを形成することができた。
【0057】<実施例3>図6に、本発明のさらに他の一実施例を示す。本実施例は、本発明を原子層デジタルエッチングに適用した場合についてのものである。本実施例においては、先の実施例1および実施例2と同様な方法により、先ずGaAs基板43表面に対向して、塩素イオン42を生成し捕捉する。この時、塩素イオン42をできるだけ試料表面と平行な二次元平面内に捕捉した方が良い。次いで、この捕捉した塩素イオン42を、予めパターン形成されたマスク41を介して、GaAs基板43の表面に照射する(図6の(a))。基板43表面に到達した塩素イオン42は、該基板の最表面層の原子43’と反応して反応生成物44を形成し(図6の(b))、この反応生成物44が基板43の表面から脱離する(図6の(c))。この時、基板表面に照射する塩素イオン42には、基板表面第一層のエッチングに最適なエネルギーを与える。好適には、塩素イオン42の持つ並進エネルギーを数十eVとするのが良い。
【0058】先に説明したように、イオントラップセルから引き出されたイオンはその速度が揃っているので、一回のイオン照射では基板表面の同一地点に複数の塩素イオンが時間差をおいて到達すると云うことは殆どない。従って、基板表面第一層のみを選択的にデジタルエッチングすることが可能である。なお、反応の効率を高めるために、あらかじめ適量の塩素を基板表面に吸着させておき、そこにイオントラップセルより引き出してきた速度の揃った特定のイオンを照射してもよい。なお、この場合の照射イオンは上例の塩素イオンに限られるものではない。
【0059】<実施例4>図7に、本発明のさらに他の一実施例を示す。本実施例は、本発明を基板上への薄膜の堆積に適用した場合についてのものである。本実施例においては、イオン生成用の原料ガスとして有機金属錯体の気体を用いて、先の実施例1および実施例2と同様な方法により、解離金属イオン45を生成し捕捉する。この時、解離金属イオン45を可能な限り試料表面と平行な二次元平面内に捕捉した方がよい。次いで、この捕捉した解離金属イオン45をSi基板46の表面に照射する(図7の(a))。この時、基板表面のスパッタなどが副次的に生じるのを抑えるために、照射イオンに与えるエネルギーはできるだけ小さい方がよい。基板46の表面に到達した解離金属イオン45はそこで解離して金属原子45’となって基板表面に堆積する(図7の(b))。先に説明したようにイオントラップセルから引き出される解離金属イオンの速度は揃っており、したがって一回のイオン照射では基板表面上の同一地点に複数の解離金属イオンが時間差をおいて到達することは殆どない。したがって、基板46の表面上には解離して生じた金属原子45’を一原子層だけ堆積させることが可能である。もちろん、解離金属イオン45の照射を繰り返すことによって、照射回数に応じた複数の原子層を堆積させることが可能である(図7の(c),(d))。したがって、イオン照射の回数を調節することによって、堆積膜の厚さを原子層単位で制御できる。
【0060】<実施例5>図8に、本発明のさらに他の一実施例を示す。本実施例では、イオントラップセル22内に捕捉されているイオンの運動を抑えるのにレーザ冷却法を利用している。すなわち、ここでは、レーザ47から放射されるレーザ冷却用のレーザ光32”をミラー28”,レンズ29”を介してイオントラップセル22内に導入している。その他の装置構成は図2に示したものと同じである。
【0061】この場合、イオン生成用のガスとしては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の蒸気を選び、実施例1の場合と同様にして、パルス分子ビーム31’としてイオントラップセル22内に導入する。そして、このパルス分子ビームの導入に同期して短波長のレーザ光32あるいはシンクロトロン放射光の照射を行い導入された金属分子をイオン化し、生成された金属イオンをイオントラップセル22内に捕捉する。次いで、この捕捉された金属イオンにレーザ光32”を照射して該金属イオンをレーザ冷却する。このレーザ冷却とは、イオンが光を吸収、放出する際に受ける輻射圧を利用してイオンを減速する技術である。これによって、イオントラップセル22内に捕捉されている金属イオンは、その運動を抑えられてほぼ停止状態となる。このようなほぼ停止状態にある金属イオンを電界で引き出すことにより、先の実施例4で述べたデポジションなどの表面処理をより高精度で行うことができる。
【0062】<実施例6>本実施例は、本発明を新物質(化合物)の合成に適用した場合についてのものである。本実施例では、イオントラップセル22内に捕捉されるイオンの化学種を捕捉の度毎に任意の化学種に切替選択できるよう構成している。すなわち、■捕捉の度毎に異なる化学種のイオンを生成する物質からなる超音速ジェットを切替発生させる;■複数のイオン生成物質を含む単一の超音速ジェットを発生させ、イオン化のために用いるレーザ光32の波長を変えることにより任意の化学種のイオンを切替生成させる;■イオントラップセル内でのイオンの捕捉条件を変えることにより、任意の化学種のイオンを切替捕捉する;のうちのいずれか、または、それらを組み合わせた手法を採ることによって、イオントラップセル22内に捕捉されるイオンの化学種を捕捉の度毎に変えることができる。その結果、イオントラップセル22からはその都度異なる化学種のイオンが引き出されて試料27表面に供給され、先の実施例5で説明したような原子レベルでのデポジションがその都度行われる。
【0063】このように、本実施例によれば、各層ごとに異なる化学種を任意の層数で堆積させることが可能である。これにより、任意の組成比の新化合物の合成が可能となる。組成比は、各化学種のイオンの照射回数の比とほぼ等しくなるが、さらに各化学種のイオンの照射の順序を変えることにより、組成比は同じでありながら異なった機能を持つ新物質の合成が可能である。
【0064】<実施例7>本実施例は、本発明を試料表面の改質処理に適用した場合についてのものである。本実施例では、超音速ジェット発生器20に供給されるイオン生成用ガスとして酸素ガスを用い、この酸素ガスを実施例1と同様な方法によりイオン化し、生成した酸素イオンを捕捉して、引き出す。この引き出された酸素イオンを試料(Si基板)27の表面に照射して、該試料表面を酸化させる。二次元平面状に配列捕捉された酸素イオンを極低速で引き出してSi基板表面に一括照射することにより、Si基板の最表面層のみを均一に酸化(改質)させることが可能である。
【0065】<実施例8>本実施例は、本発明を中性原子からなる化学種を用いる表面処理に適用した場合についてのものである。本実施例では化学種としてアルゴンを用いる。先ず、実施例1の場合と同様にして、アルゴンガスの原子ビーム31’を生成させ、それをイオントラップセル22内に導入する。ただし、本実施例では、イオントラップセル22は動作させない。このイオントラップセル22内に導入されたアルゴン原子ビーム31’に対して、その進行方向とは反対方向からレーザ光32”を照射し、レーザ冷却法によりビーム中のアルゴン原子の運動を停止させて、停止位置にアルゴン原子を捕捉する。そして、この捕捉されたアルゴン原子に、それを移動させたい方向に進行する光を照射して、光の輻射圧によりアルゴン原子を低速で移動させて、試料27の表面に照射する。これにより、低損傷での試料表面のクリ−ニングが可能となる。
【0066】<実施例9>図9に、本発明のさらに別の一実施例を示す。本実施例では、試料表面に供給すべき化学種のイオンを発生させるのにプラズマ発生装置を利用している。すなわち、ガス導入部56から SF6などのガスをプラズマ発生部48に導入して、該プラズマ発生部48中でこの導入ガスのプラズマを発生させる。この発生プラズマ中では種々の化学種のイオンが生成される。プラズマ発生部48の下方には真空チャンバ49が接続されている。該真空チャンバ49にはゲ−トバルブ50を介して真空ポンプ51が接続されており、真空チャンバ49の内部はこの真空ポンプ51によって高真空に排気されている。上記のプラズマ中で生成された化学種の流れは、真空チャンバ49内に設けられたイオントラップセル52内に導かれ、そこで特定の化学種のイオンが捕捉される。その後、この捕捉された特定の化学種のイオンがプラズマからの化学種の流れの方向とは異なる方向へ引き出され、イオンレンズ53を通して試料台54上に置かれた試料55の表面に照射される。これにより、試料表面の極微細加工を行うことが可能である。
【0067】
【発明の効果】以上、種々の実施例を挙げて説明してきたところから明らかなように、本発明によれば、ドライエッチングにおいては、エッチングに効果の少ない化学種をできるだけ排除することによりエッチングの選択比を向上させ、さらに化学種の並進速度を揃えることによりエッチングの異方性を向上させることが可能となる。さらにまた、より低速の化学種を試料表面に照射できるのでより低損傷でのエッチング加工が可能となる。また、デポジションにおいては、均一な薄膜生成を妨げる化学的性質を持つイオンをできるだけ排除し、また、イオンの並進速度を揃えることにより、より均一な膜質の薄膜を堆積させることが可能となる。さらには、任意の組成比を持つ化合物の合成や均一な表面改質も可能となる。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013