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発明の名称 露光方法及び露光装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−163366
公開日 平成6年(1994)6月10日
出願番号 特願平4−318163
出願日 平成4年(1992)11月27日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
発明者 瀬谷 英一 / 伊東 昌昭 / 片桐 創一 / 寺澤 恒男 / 日高 稔 / 武田 英次 / 斉藤 徳郎
要約 目的
設置された状態の光学系の個々の光学素子の形状誤差と設置誤差を計測する。該計測機能と光学素子面の修正機能を備えた露光装置および方法を実現する。

構成
測定する光学系11〜14のフィールド内で、光源位置と結像点位置を移動位置決めしながら波面収差分布を測定し、反射面位置誤差と波面収差の関係を線形近似した係数群を用いて、各光学面11〜14上の複数点における面位置誤差の修正量を得る。露光装置において、干渉計23、凹面鏡24を備えたウェハステージ2、参照球面21、および露光光学系11〜14の面形状を制御するアクチュエータ群を備え、該修正量に基づき光学面11〜14を修正して露光する。
特許請求の範囲
【請求項1】光ないしX線用の光学系の測定方法であって、波面収差測定における光源位置及び結像点位置を、測定する光学系においてそれぞれ有効な領域内の複数の点のうちの1点に移動位置決めする工程と、測定する光学系の波面収差を計測する工程とからなる工程を繰り返して上記の複数の点における波面収差を測定する工程と、光学系を構成する各光学素子面上の複数の点における面法線方向の面位置の修正量を計算する工程からなることを特徴とする、光学系の測定方法。
【請求項2】請求項1に記載の光学系の測定方法において、上記の面位置の修正量を計算する工程が、測定する光学系の光学素子の幾何学的配置関係から、光学素子面の位置変化と光学系の波面収差の間の関係を線形関係に近似してその係数群をあらかじめ計算して記憶保存する工程と、上記の係数群を並べたマトリクスと、波面収差の測定値を開口内の光線位置に関して並べたベクトルと、定数マトリクスと、定数ベクトルとスカラー定数の積和により、各光学素子面上の上記複数の点における面位置修正量を与える連立方程式の係数および定数項を得る工程と、数値計算によりこの連立方程式の解を求める工程からなることを特徴とする、光学系の測定方法。
【請求項3】投影光学系を用いる露光方法であって、上記投影光学系を構成する各光学素子面の個別の設置誤差及び形状誤差、ないし各面上の複数の点における面法線方向の面位置の修正量を、露光を行う際の投影光学系の設置位置における投影光学系の波面収差測定と計算によって求める工程と、上記の工程によって得られた結果に基づいて各光学素子面の形状及び位置を修正する工程を含むことを特徴とする露光方法。
【請求項4】請求項3に記載の露光方法において、複数回繰り返される露光工程を含み、上記光学素子面の個別誤差ないし各面の修正量を求める工程と、上記の各光学素子面形状及び位置を修正する工程を、ある露光工程と次の露光工程の間に含むことを特徴とする露光方法。
【請求項5】請求項3にまたは請求項4に記載の露光方法において、上記光学素子面の個別誤差ないし各面の修正量を求める工程が、測定光集光用光学系及び参照球面を移動位置決めすることにより、測定光を投影光学系の原パターン側の露光フィールド内に配置された複数の点のうちの一点に集光する工程と、上記露光フィールド内の点から発せられた光が投影光学系によって集光されるべき点に曲率中心が一致するように、測定光を反射する凹面鏡を移動位置決めする工程と、干渉法により投影光学系の波面収差を測定する工程の各工程の繰り返しにより上記複数の点における露光光学系の波面収差を測定する工程と、各光学素子の面上の複数の点における面法線方向の面位置の修正量を計算する工程からなることを特徴とする露光方法。
【請求項6】転写されるべきパターンを備えた第1の基板と、このパターンが転写される第2の基板と、第2の基板を移動位置決めするための手段と、パターンの像を第2の基板に投影するための投影光学系を備えた露光装置において、測定光の光源と、干渉測定手段と、移動位置決め可能な干渉測定光集光用光学系及び参照球面と、上記第2の基板の移動位置決め手段に固定された凹面鏡とを備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項7】請求項6に記載の露光装置において、上記参照球面の曲率中心が露光状態における上記第1の基板の表面上に位置し、上記凹面鏡の曲率中心が露光状態における上記第2の基板の表面を含む面の上に位置することを特徴とする露光装置。
【請求項8】請求項6または請求項7に記載の露光装置において、上記投影光学系を複数の反射鏡によって構成し、それぞれの反射鏡に反射面形状および位置を変化させる複数の変位発生器を設け、さらにこの変位発生器の変位量を制御する手段を設けたことを特徴とする露光装置。
【請求項9】請求項6、請求項7または請求項8に記載の露光装置において、上記投影光学系を構成する各光学素子面上の複数点における面法線方向の反射面位置誤差と投影光学系の波面収差の変動の関係を示す係数群を記憶保持する手段を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項10】請求項8に記載の露光装置において、上記各変位発生器の駆動量と投影光学系の波面収差の変動の関係を示す係数群を記憶保持する手段を備えたことを特徴とする露光装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学系を構成する光学素子の面形状誤差および設置誤差の測定方法、また、半導体製造用の露光装置及び露光方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】現在、半導体微細パターンを加工するためのリソグラフィとして広く用いられている、紫外光による縮小投影露光法は0.1μm程度が解像限界であるといわれている。紫外光リソグラフィで対応が不可能な0.1μm以下のパターン加工を実現する方法として、波長5〜15nm程度の軟X線を用いるX線縮小投影露光法が有力視されている。良く知られているように、露光装置の理論最小解像寸法は露光光の波長λに比例するから、λ=15nmのX線縮小投影露光法による理論最小解像寸法は、同一開口数のもとでは、現在用いられているλ=365nmの紫外光による場合の1/20程度の値を得ることが出来る。
【0003】既に提案されているX線縮小投影露光装置の構成例としては、例えば特開昭63−18626号公報に記載されたものなどがある。しかしながら、こういった提案にもかかわらず、X線縮小投影露光技術は、未だに実用化の領域には到達していない。その最大の理由は、軟X線用の良い結像光学系を製作することが困難なことにある。
【0004】すなわち、軟X線領域では実用的な屈折率を持つ材料が得られないため、従来のようなレンズを用いた屈折型光学系でなく、曲面鏡による反射型光学系を用いる必要があり、しかも、反射鏡表面に軟X線反射用多層膜を用いたとしても、反射率は数十%に理論的限界があるため、露光光強度を低下させないためには反射面数を少なくすることの出来る非球面反射鏡を使用しなくてはならない。特開昭63−18626号公報の例では、数枚の非球面反射鏡を用いて軟X線用縮小投影光学系を構成し、これによってパターンの転写を行っている。
【0005】ところが、一般に、結像光学系において波動光学より求められる理論限界解像度を得るには、収差をλ/4程度以下にする必要のあることが知られている。X線縮小投影露光法では使用する波長が短いため、光学系への要求は極めて厳しくなり、露光波長が15nmとすると、許容される収差は、光路長差にして4nm程度以下となる。これを実現するためには、光学系を構成する各反射面単体の形状精度を1nm以下、また反射面同士の設置精度もこれに近い値とすることが必要となる。
【0006】このうち、光学素子の面形状に関しては、上記のような精度を直接に実現出来る非球面形状加工法は無いので、計測評価と形状修正を繰り返しながら必要な形状に近付けていく方法を取る必要がある。このような場合に必要となる面形状の高精度な計測に一般的に用いられる方法としては、干渉法やプローブ法がある。干渉法は、コヒーレントな光源から出射した光をハーフミラーなどで分離してその一部を測定する面に、また残りを参照面にそれぞれ当てて反射させ、これら2つの反射光を重ね合わせて干渉させることにより、参照面の形状と比較する形で測定面の形状を求める方法である。またプローブ法は、定圧触針などを利用した3次元測定により、測定する面の形状を求める方法である。
【0007】一方、光学系を構成するための光学素子の設置精度に関しても、支持部材の機械精度による光学素子位置決めでは、0.1μm程度の精度しか期待できないため、組立て後に設置精度を評価し、設置位置の修正をする必要がある。但し、設置精度を評価するといっても、光学面は曲面であるため、面間の距離や相対的な姿勢を高精度に測定するのは困難である。そこでこのような場合、一般的には、組み立てた光学系の波面収差を測定し、その結果から光学素子の設置位置が正確であるかを推定する方法を取る。光学系の波面収差を測定する方法としては、例えば図9に示すような方法がある。干渉計23から出射する測定光20を測定用の集光光学系26により集め、その焦点を、測定しようとする光学系81の光源位置82に一致させる。また、球面鏡24を結像点位置83に一致するように設置し、測定光20がもとの光路を戻るようにする。このようにして反射して来る測定光を、球面である参照面21からの反射光と重ね合わせて干渉計で測定することにより、戻り光の球面波からのずれ量を測ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来提案されている露光装置には、非球面反射鏡を用いる軟X線用縮小投影光学系を、露光に必要なnmオーダの精度で構成し、また保持することが出来ないという問題点がある。
【0009】まず、光学素子面形状を加工するためにどうしても必要な、素子単体の面形状の計測については、干渉法による形状計測では、平面や球面の計測に比較して、軟X線用縮小投影光学系に必要な非球面ではコモンパス性の低下を避けられないために精度が低下することが知られており、数nm以下の形状測定精度を達成することは困難である。一方、プローブ法では、検出感度自体は1nm程度の値を得ている例があるものの、プローブ送り機構の運動精度や安定性、形状を決定するための基準面の精度などの問題から、やはり数nm以下の測定精度を達成することが出来ない。
【0010】また、光学素子の設置精度の評価に関しては、図9に示されるような方法で波面収差を計測したとしても、光学系の波面収差は、各反射面の形状誤差および設置誤差の作用がすべて重なり合って生ずるものであり、X線縮小投影光学系においては、各反射面形状に十分な精度が期待出来ない以上、波面収差のみの測定からは、各面の形状と姿勢を具体的にどれだけ修正すべきかの情報は得られないという問題がある。
【0011】しかも、露光装置においては、露光フィールドと呼ばれる、ある広がりを持った領域を正しい倍率で像歪無しに投影することが求められる。このため、図9のような方法で光学系の波面収差を測定した結果をもとに、反射面を適当に選んでその形状および姿勢を修正することにより収差を補正したとしても、フィールド内にわたって収差が小さく出来る保証は無いし、また、倍率や像歪を小さくできる保証もない。
【0012】また、これらの問題に加えて、X線縮小投影光学系の場合、装置実装状態における熱変形や応力による変形の発生という問題も生ずる。上記のような精度を要求する場合、光学素子自身の自重や固定力による変形は無視出来ない大きさとなってしまうし、露光中にはX線の一部が反射鏡に吸収されて熱となるから、反射鏡内に場所による温度勾配が発生し、不均一な熱膨張による変形を生ずる。すなわち、たとえ設置当初の収差を小さくすることができたとしても、使用中に有害な収差を新たに生ずることが考えられる。
【0013】装置実装に際するこれらの現象に対応する手段として、適応光学系技術が提案されている。これは、各反射面に形状を制御するための変形機構を備え、装置上で歪を検出して形状を理想的な状態に戻してやろうというものである。しかし、適応光学系技術が実用化された例は殆ど無い。これは、装置上に実装された状態で各反射面の誤差を計測する良い方法が無いことによる。というのは、既に述べた各反射面単体の測定で充分な測定精度が得られないことに加えて、光学系として組立てた状態での各面の形状の計測では、測定する面に対向する位置に参照面あるいは検出プローブなどを配置することが必要となるので、他の光学素子との機械的な干渉により測定がさらに困難となるためである。
【0014】以上述べたように、非球面の形状計測の困難さと、組み立てた光学系の各反射面の設置誤差を具体的に計測する方法の無いこと、また、装置実装状態で収差を小さく保つために適応光学系技術を適用しようとする上で、装置上で各反射面の誤差を計測する良い手段が無いことがX線縮小投影光学系実現上の障害となっていた。
【0015】本発明の目的は、非球面反射光学系の収差の原因となる、光学素子の設置誤差及び形状誤差を正確に計測すること、とりわけ光学系および各光学素子を装置から取り外すことなく、光学系全体としての収差を計測することによって、各面別の設置誤差と形状誤差に由来する反射面位置の誤差を計測する方法を得ることにある。また、露光光学系の各光学素子の誤差を、露光装置に設置された状態で正確に測定し、各光学素子の誤差を修正して、常に光学系の収差を小さく保つ露光方法、及びそれを行う露光装置を得ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明では、波面収差測定における光源位置と結像点位置をフィールド内で移動位置決めすることのできる波面収差測定手段を備え、光源と結像点を移動位置決めしながら、対象とする光学系の波面収差を開口内の光線位置の関数として数回計測する。また、対象とする光学系における各光学素子の幾何学的配置関係から、各光学素子面の位置誤差と光学系の波面収差の間の関係を線形関係に近似してその係数群をあらかじめ計算して記憶保存しておく。これらの係数群を並べたマトリクスと、上記の波面収差の測定値を開口内の光線位置に関して並べたベクトルと、定数マトリクスと、定数ベクトルとスカラー定数の積和の形で、各光学素子面上の複数位置における光学素子面の位置誤差の最適修正量を与える連立方程式の係数および定数項を求め、これを解くことにより、開口内における複数の光線の光路長のばらつきの2乗和の、上記の各測定位置にわたる総和を極小にするような、各光学素子面上の複数位置における面法線方向の反射面位置誤差の最適修正量を得る。
【0017】また本発明の別の一形態では、露光方法において、露光動作と次の露光動作の間に、干渉計から発せられた測定光が、露光光学系の原パターン側の露光フィールド内に配置された複数の点のうちの一点に集光するように測定光の集光用光学系及び参照球面を移動位置決めし、また、露光フィールド内の点から発せられた光が露光光学系によって集光されるべき点に曲率中心が一致するように凹面鏡を移動位置決めして露光光学系の波面収差を測定することを繰り返して得たデータから、露光光学系を構成する各光学素子面に関し、面上の複数の点における面法線方向の位置の修正量を上記の方法により求め、得られた結果に基づいて各光学素子面の形状及び位置を修正して、光学系の熱変形などによる誤差を取り除いて露光を行う。
【0018】また本発明の別の一形態では、露光装置において、干渉計と、移動位置決め可能な干渉測定光集光用の光学系及び参照球面と、上記第2の基板の移動位置決め手段に固定された凹面鏡とを備え、上記参照球面の曲率中心が露光状態における上記第1の基板の表面上に位置し、上記凹面鏡の曲率中心が露光状態における上記第2の基板の表面を含む面の上に位置するように配置し、集光用光学系及び参照球面と凹面鏡を移動位置決めしながら干渉計により露光光学系の波面収差を測定することを繰り返す。また、露光光学系を複数の反射鏡によって構成し、それぞれの反射鏡に反射面形状および位置を変化させる複数の変位発生器を設ける。さらに、露光光学系を構成する各光学素子の面上の複数の点における面法線方向の面位置誤差と波面収差変動の関係を示す係数、あるいは、上記変位発生器の駆動量と波面収差変動の関係を示す係数を記憶保持する手段を設け、上記波面収差の測定値から面位置の修正量、または、変位発生器の駆動量を計算し、それに基づき反射面形状および位置を制御する。
【0019】
【作用】以下、図2に示す、実施例であるX線縮小露光装置の光学系を例として具体的に作用を説明する。図1は波面収差測定中の側面図である。本装置は、光学系の精度を保つために、干渉計23による光学系の誤差測定機能を備えており、原パターンステージ4を図中上方に移動することにより、測定光20が貫通穴25から光学系に導かれて測定が可能になる。
【0020】以下、複数反射面からなる光学系の各反射面の位置誤差を求める方法の原理を詳しく説明する。
【0021】ここで、以下の説明に用いるために、若干の用語について述べる。図6は開口と光線の関係を示す図である。以下の説明において、開口とは、原パターン3上の光源位置あるいはウェハ1上の結像点位置からみた立体角のうちで、光源から出た光線52が光学系を通じて結像点に到達する範囲を示す。また、以下の説明において、光線位置とは、開口内の任意の光線が光源から結像点に至る道筋を示し、光線位置を示すために、開口の中心に位置する光線と直交する平面あるいは球面を想定し、この面と光線の交点の位置でその光線の位置を規定するものとする。
【0022】まず、反射面の位置誤差と光路長誤差の関係を図10を用いて示す。波面収差は、光線位置に関する結像光の位相分布であり、光源から結像点に至る光路長の光線位置に関する変動の分布を光波長で除したものと等価である。光学素子形状誤差および設置誤差により、反射面には法線方向の位置誤差Eを生ずる。反射面位置誤差Eと光路長誤差ΔLの関係は、光線の入射角θを用いて、数1によって表すことが出来る。
【0023】
【数1】

【0024】なお、厳密には、反射面の傾き誤差により光線が横ずれを生じることによる光路長誤差の発生も考えられるが、反射面は滑らかな鏡面で、形状誤差の横周期はmmオーダ以上であり、しかも位置誤差Eは0.1μm以下程度に小さい範囲にあるとすると、その影響は数1の関係によって示される光路長誤差に比較して無視出来る程度に小さいものとなる。
【0025】形状誤差や設置誤差による反射面の位置誤差Eは反射面上の位置の関数となるから、これによって引き起こされる光路長の変動も光線位置の関数となる。反射面に形状誤差の分布があれば、これによって、開口内の分布としての光路長偏差を生ずることになる。従って、光路長偏差あるいは波面収差を測定すれば、反射面の位置誤差Eの分布に関する情報も得られることになる。しかしながら、露光光学系は4枚の反射面の組合せであり、それぞれの反射面の誤差の影響の総和によって収差が決まるわけであるから、波面収差から直ちに各面の誤差が求まるわけではない。
【0026】そこで、本発明では、光源位置がフィールド内で移動することにより、反射面上で開口の像が移動することを利用して各反射面の位置誤差を計算する。図8は、フィールド内で光源および結像点位置が移動すると反射面上での開口の像が移動することを示す図である。図8(a)は露光フィールドを、(b)は光源位置が移動した場合の開口の位置を、また(c)は第1反射面上での開口の像を示す図である。なお、ここで開口の像とは、光源位置を定めた場合に、反射面上で開口内の光線を反射する領域を示すものとする。
【0027】本光学系はアパーチャのための部材を特に設けず、第2反射面を開口を定めるために用いている。すなわち、図6において原パターン側開口51およびウェハ側開口53は第2反射面12の外形で規定されている。このため、図8(a)においてフィールド41内の位置42および43を考えると、それぞれの開口は、第2反射面で規定されるから図8(b)における開口44および45のようになる。その結果、第1反射面上の開口像は図8(c)における開口像46及び47のようになる。すなわち、開口像はフィールド内の光源位置に依存して反射面上を移動することがわかる。
【0028】図11は、フィールド内で光源および結像点位置が移動することによる収差の発生の仕方の変化から、原因となる誤差がどの反射面に由来するかを判断する方法を説明する図である。ここでは、1つの面に形状誤差があった場合の収差の発生状況について説明する。図11において、a列とb列はそれぞれ、反射面の形状誤差分布、反射面上における開口像の移動状態を示し、c列とd列はそれぞれ、図8におけるフィールド内の点43および42を測定における光源位置とした場合の開口内の光路長誤差分布を示す。1行から4行までの各行はそれぞれ第1反射面から第4反射面に対応する。本光学系では、第2反射面を開口に用いているため、a列2行に示す第2反射面の形状誤差は、そのままの位置でc列およびd列に示す光路長誤差に反映され、測定点によって動くことは無い。一方、第1反射面、第3反射面および第4反射面の形状誤差は、測定点の位置に応じてb列に示す開口像が移動するため、c、d列の光路長誤差に現われる位置が変化する。1行と3行を比較すると、開口像の移動方向が逆であり、それにつれて、光路長誤差上に影響が現われる位置も逆方向に移動しているが、これは、反射面が第2反射面より光源側にあるか否かによるものである。更に第3反射面より第4反射面の方が移動量が大きくなっているのは、後者の方が第2反射面から遠いことによる。
【0029】これらの関係をみると、局所的な形状誤差による収差に関しては、露光フィールド内の数点で計測を行い、収差の現われる位置がどのように移動するかを調べれば、どの面の誤差に依存するか特定することが出来ることがわかる。ところが一般には、反射面の誤差は反射面全面に分布するものであって、しかも各面が同時に誤差を持つ。このため、各面の位置誤差の分布に関する連立方程式を立てて、それを解く方法を用いないと各面の誤差分布を知ることはできない。
【0030】以下、連立方程式による具体的な計算方法について説明する。なお、以下の説明では、ベクトル及びマトリクスを表すために、頭にそれぞれv及びxをつけるものとする。たとえば、ベクトルEをvE、マトリクスMをxM、などと書く。また、一般的な説明とするため、反射面の枚数をrと書く。さらに、反射面上に点群をとり、点の数をnとする。ここで、隣合う点同士の間隔を、考えられる形状うねり横周期より小さくなるように取れば、面の形状及び姿勢はこの点群における反射面の高さ位置のずれによってほぼ一意に記述できる。そこで、反射面位置誤差の分布は、数2に示すように各点上の位置誤差を並べたn次元のベクトルで表記する。
【0031】
【数2】

【0032】数2において、位置誤差ベクトルvEの添字iは反射面を表す。また位置誤差ベクトルの要素の2番目の添字は面上の点の番号を表すものとする。
【0033】また、光路長誤差に関しても、開口内にs本の光線群を考え、各光線ごとの光路長誤差を並べたs次元のベクトルで表記する。光路長誤差は、同一の光学系でもフィールド内の測定点位置により異なるから、測定点の数をmとして、数3のように表す。
【0034】
【数3】

【0035】数3において、光路長誤差ベクトルvΔLの添字kは、フィールド内の測定点を表す。また、要素の2番目の添字は開口内の光線位置を表すものとする。
【0036】波面収差は、光路長誤差の変動分に相当するから、数4で定義される定数マトリクスxCを用いて数5のようにベクトルで表すことができる。
【0037】
【数4】

【0038】
【数5】

【0039】数4において右辺の第1項はs次の単位行列、第2項はすべての要素が1/sであるようなs次の正方行列である。また、数5において上線の付いたΔLkはベクトルvΔLkの各要素の平均値を示す。
【0040】上記のように位置誤差ベクトル、光路長誤差ベクトル及び波面収差ベクトルを定めると、数1の関係が線形関係であることから、位置誤差ベクトルと光路長誤差ベクトルの間の関係は数6のように書くことができる。
【0041】
【数6】

【0042】数6は、各反射面の位置誤差分布が光路長誤差の分布に及ぼす影響の、全反射面にわたる総和が光路長誤差を与えることを示している。数6においてマトリクスxMは、位置誤差ベクトルと光路長誤差ベクトルの関係を示すs×r次元のマトリクスであり、1番目の添字は反射面を、2番目の添字は測定点を表す。その要素は、反射面上の各点上に存在する単位大きさの反射面誤差が、それぞれ光路長誤差ベクトルの各要素に与える影響の大きさを並べた縦ベクトルを、さらに反射面上の点の順番に横に並べたものである。従って、光路長誤差ベクトルの各要素に対応する光線について、反射面上で反射される位置がその反射面上の上記点群の何番目の点に一番近いか、また、そこでの入射角がどうなるかをすべて調べれば、この関係係数マトリクスは、数1に従って求めることが出来る。既に述べたように反射面誤差が小さいという仮定のもとでは、これらの値は光学系の幾何学的設計形状から、計算により充分な精度で求めることが出来る。
【0043】ここで数5の関係を数6に代入すると、数7の関係が得られる。
【0044】
【数7】

【0045】数7は、位置誤差ベクトルと波面収差ベクトルの関係を示す式であるが、各測定点に関するm本の式が同時に成立することから、位置誤差ベクトルvE1 からvEr に関するベクトル連立方程式とみることも出来る。従って、数7を解いて、各位置誤差ベクトルの値を求めることができれば、目的とする各面の位置誤差が求まることになる。
【0046】ところが実際には、いくつかの問題点がある。未知数の個数と条件式の本数を考えると、未知数は位置誤差ベクトルの次元数と面の枚数の積となるからn×r個であり、式の本数は、波面収差ベクトルの次元数と測定点数の積であるからs×m本である。rは反射面の枚数であって既定であるから、n×r=s×mの関係を満たすようにあらかじめn、s、mを定めておく必要がある。すなわち、位置誤差ベクトルの次元、波面収差ベクトルの次元と測定点数は任意に決めることが出来ないという問題がある。
【0047】また、パターン転写用の結像光学系の設計においては、一般に完全に無収差の特性が得られるように設計を行うことは不可能であって、実用上問題の無い程度の大きさの収差が、設計値においてすでに残存しているのが普通である。このような光学系においては、収差を完全に0とするような解はそもそも存在しないのであって、たとえ上記のようにn、s、mを定めたとしても、当然、数7の方程式は解けないことが予想される。
【0048】そこで、本発明では、フィールド内でのrms収差分布の二乗積分値を評価関数とし、それを最小とする最適値としての解を求める。実際の計算においては、点群が十分に細かく、かつ均一に分布する条件のもとでは、波面収差ベクトルのノルムがrms収差の定数倍にほぼ等しくなること、更に、全測定点にわたってこのノルムの二乗和を作ると、これは上記のフィールド内でのrms収差分布の二乗積分値の定数倍に概ね等しくなることを利用し、数8に示す評価関数Gを用いる。
【0049】
【数8】

【0050】この評価関数Gは、位置誤差ベクトルの二次形式となるから、公知の手法により、極小値を与える位置誤差ベクトルの変化量を求めることが出来る。すなわち波面収差測定時の位置誤差ベクトルをvEia 、位置の修正量ベクトルをv△Ei として、vEia+v△Ei に関する二次形式Gの値を最小にするv△Ei の値を求める問題を解けば良いことになる。
【0051】但し、ここで注意すべきことは、極小値を与える解の組は反射面の枚数r分の自由度を持っていて、一意には定まらないことである。これは、波面収差が光路長の偏差分に相当することによる。すなわち、開口の全面にわたって光路長を一定量だけ増減するような解の変化は波面収差および評価関数Gに影響を与えないから、各面についてのこのような変化が自由度として残ってしまうのである。本発明では、最終的に数値計算によって解を求めるから、解が一意的でないことは数値計算を発散させるので望ましくない。
【0052】このようなケースでは、解のうちで修正量ベクトルv△Ei が最も小さくてすむようなものを選ぶのが一般に実現上望ましい。このような解を得るための手法にはいくつかあるが、ここでは、コスト関数を用いる手法について述べる。すなわち、数9に示すとおり、評価関数Gの替わりに、Gと、ベクトルv△Ei のノルムの総和の定数倍との和G1 を評価関数として用いる方法である。
【0053】
【数9】

【0054】ここで、定数γは正の実数であって、第2項の存在による解の最適値からのずれ量が充分に小さく、しかも、以下の数値計算の精度が低下しない程度に解が一意性を持つような適当な大きさに選ぶ必要がある。
【0055】以下、最適修正ベクトルv△Ei を求める。評価関数G1 の極小条件は位置誤差ベクトルvEi の各要素Eij による偏微分∂G1/∂Eij が0となることから数10の通りとなる。
【0056】
【数10】

【0057】数10において条件 vEq =vEqa+v△Eq はすべてのqについて成り立つものとする。ここに、ベクトルvEqa は測定を行った時点での位置誤差ベクトルであって、定数であるがその値は未知である。
【0058】評価関数Gの、位置誤差ベクトルvEi 各要素Eij による偏微分である∂G/∂Eij をEi の関数として求めると数11のようになる。
【0059】
【数11】

【0060】従って、数9に従って数10の左辺を、Gの偏微分と修正量ベクトルのノルム和の偏微分の2成分に分解した場合の第1成分は、数12のように書くことができる。
【0061】
【数12】

【0062】数12において、vej は第j項が1であるような単位ベクトルを示し、ベクトルvRka は、k番目の測定点における波面収差の測定値を示す。
【0063】また、同じく第2成分は、数13のように求められる。
【0064】
【数13】

【0065】数12と数13を用いると数10の方程式群は数14のように変形することが出来る。
【0066】
【数14】

【0067】数14の左辺に含まれる未知数は、各面に関する修正量ベクトルv△Ei のみであり、式の値は各v△Ei と定数ベクトルの内積だから、数14の左辺は各v△Ei の要素の線形結合であるのは明らかである。すなわち、数14の方程式群は、各v△Ei の要素を未知数とする、連立1次方程式となることがわかる。この連立1次方程式においては、未知数の個数と式の本数が共にn×r個となるから、通常の連立方程式解法で解くことが出来る。
【0068】ここで、数15に示すように、縦ベクトルである各vΔEi をさらに縦に並べたn×r次元の縦ベクトルvΔEを定義する。
【0069】
【数15】

【0070】また、数14は、1からrまでの整数i、1からnまでの整数jについて成立するから、p=n(i−1)+jなる整数pを考え、数14のn×r個の方程式群をpの順に縦に並べると、数16に示すようなマトリクス形式に書き換えることができる。
【0071】
【数16】

【0072】(ここに、cp はvCの第p要素、apw はxAの第(p,s)要素であって、i、jは n(i−1)+j=p、1≦j≦nを満たす整数、t、uは n(t−1)+u=w、1≦u≦nを満たす整数である)
数16において、係数行列xAは、apw を与える式で示されるとおり、ある行列と、単位行列の実数倍の和となるから、係数γを適当に選べば、必ず正則にすることが出来る。すなわち、数16の方程式は、その条件のもとで、数値計算により必ず一意に解くことが出来ることがわかる。
【0073】なお、既に述べたとおりγは過大に取ると解に含まれる誤差の増大を招き、過小に取ると解の一意性の低下による上記の数値計算の発散を招く。従って、上記の計算を係数γを減少させながら繰り返し、発散する直前の解をもって正しい解とするのが計算誤差を小さくする点からは望ましい。
【0074】以上、上記数16が示す連立方程式の解が、波面収差を極小にする最適解を与えること、および、これらの方程式が数値計算により実際に解けることを示した。すなわち、複数計測点における波面収差の測定結果と、光学系の幾何学的配置に基づく反射面位置誤差と波面収差の変動の関係から、光学系のrms収差の二乗積分値を評価関数として反射面誤差の最適修正量を得る方法が示されたわけである。
【0075】次に、上記の計算に必要な、複数点における波面収差の測定について説明する。図1は波面収差を測定している状態の側面図を示す。干渉計23より出射した測定光20は平面鏡32、33を経て集光用レンズ26および参照面21に達する。原パターンステージ4を図中上方に移動して貫通穴25を通し測定光20を光学系に導き、かつ、ウェハステージ2を移動して球面反射鏡24の曲率中心を結像点に一致させれば、図9に示す従来方法と同様の原理により、露光光学系の波面収差が測定できる。ただし、本装置においては、球面鏡24および参照面21が移動位置決め可能となっているため、光学系に対して光源および結像点を移動しながら複数点で波面収差を測定することが可能である。なお、波面収差測定に利用可能な精密干渉法としては、フリンジスキャン干渉法やヘテロダイン干渉法などがあり、位相差計測の分解能は光路長差にして1nm程度が実現可能である。
【0076】以上述べた手法により、各面に関し、具体的に反射面の位置をどれだけ修正すべきかの値が、面上の位置の関数として得られるわけであるから、各反射面に面形状を制御する機構を備えることにより、理想的な光学系を実現することが出来る。図12は、形状制御機構を備えた反射面の構造を示す。ピエゾアクチュエータ71は、反射面11と基板72の間に配列され、両端を反射面11および基板72に固定されている。配列を構成するそれぞれのピエゾアクチュエータ71に、配列内の位置に応じて適当な駆動電圧を加えることにより、反射面11を任意の形状に歪ませることが出来る。
【0077】また、あらかじめ各アクチュエータの単位駆動量による光学系の波面収差の変化量を実測により求めておき、これらの値を並べたマトリクスを上記の計算方法におけるマトリクスxMの替わりに用いると、各アクチュエータの最適駆動量を示すベクトルを、上記と全く同じ原理、および計算方法により直接求めることが出来る。
【0078】
【実施例】以下、実施例であるX線縮小露光装置について説明する。図2は本装置の透視図、図3は露光動作中の側面図、また、図1は波面収差測定中の側面図である。本装置は、半導体微細パターンをウェハ上に転写露光する用途に用いるものであり、露光光には波長13nmの軟X線を用いる。
【0079】図3に示す露光動作においては、図示しない照明光学系により照射された軟X線7は、原パターン3で反射され、縮小光学系を構成する反射面11、12、13および14によって集光されてウェハ1上に結像する。縮小光学系を構成する第1反射面11および第3反射面13は図中X方向から見て半円状の外形を持つ凹面であり、第2反射面12は同じく円状の外形を持つ凸面であって、いずれも非球面である。また、第4反射面14は平面である。図7は、パターン露光を行っている状態を示す図である。図7において、第1の基板である原パターン3上の弓形の露光フィールド41内のパターンが第2の基板であるウェハ1上に投影される。パターン全面を転写するために原パターンステージ4およびウェハステージ2を連続で移動させる同期走査方式を採用しているが、これは、光学系への制約が厳しいために、チップ全面が一度に露光出来るようなフィールドの広い縮小光学系が設計出来ないことによるものである。
【0080】図1に示す波面収差測定動作においては、干渉計23より出射した測定光20は平面鏡32、33を経て集光レンズ26に達する。集光レンズ26は凸レンズであって、図中右側の面は参照面21を兼ねており、右側の焦点位置を中心とする正確な球面をなすハーフミラーとなっている。測定光20の一部はこの面において反射されて元の光路を戻り、残りはマスクステージの開口部25を通じて露光光7と同じ光路を通りウェハステージ2上に至る。結像位置に球面鏡24の曲率中心を一致させるようにウェハステージ2を位置決めすることにより、干渉計23を利用した波面収差測定が出来る。
【0081】図4は、ウェハステージの構造の詳細を示す図である。可動部に球面鏡24が、曲率中心の高さがウェハ表面と同じになるように設けられている。露光時には結像点にウェハが来るようにステージを移動する。また、波面収差測定時にはステージをX方向に移動して結像点と球面鏡24の曲率中心を一致させる。
【0082】図5は、参照面ステージの構造を示す図である。集光光学系26および参照面21はYZ方向に移動可能な参照面ステージ22に固定されている。干渉計23より入射した測定光20は、平面鏡33および平面鏡32によって折り曲げられ、参照面21に達する。平面鏡33および平面鏡32はそれぞれ、Z移動部31、参照面ステージ22に固定されているため、ステージの移動によって干渉計23より参照面21に入射する光軸が移動することは無い。参照面ステージ22は、集光光学系26により集光された測定光の焦点が、露光時の原パターン上になるように配置されているため、原パターン上で反射した軟X線と同じ光路で縮小光学系に入射する。球面鏡24および集光光学系26、参照面21が移動可能となっているため、光学系に対して光源および結像点を移動しながら複数点で波面収差を測定することが可能となる。
【0083】測定にあたっては、まず露光フィールドの中央部で、参照面および球面鏡の位置を微調整して波面収差が最小となるようにし、そこでの波面収差を計測する。それから、縮小光学系が結像光学系として有効に機能する領域である露光フィールドの内部で、それぞれのステージを、縮小率を考慮して各測定点に正しく位置するように位置決めしながら波面収差の計測を繰り返す。このようにして各点での波面収差を測定すると、光学系に縮小倍率の誤差や像歪がある場合には、場所により、実際の結像点と測定において想定した結像点の間に横ずれを生じる。その影響は、開口内での光路長偏差となるから、あたかも波面収差があるように測定結果に反映されることになる。本装置では、この波面収差データをもとに、数16を用いて面法線方向の面位置の修正量を計算するため、得られる結果は、測定時の実際の結像点ではなく、凹面鏡の曲率中心を位置決めしたそれぞれの位置に関するrms収差の総和を極小にするような修正量となる。すなわち、本装置では測定時に縮小倍率誤差や像歪があったとしても、それを修正するような面位置修正量を得ることが出来る。
【0084】なお、本装置では、反射鏡表面に多層膜を設けることにより軟X線の反射率を向上している。このため厳密には、表面反射する測定光と多層膜内部で反射するX線では、反射位置が異なり、同一反射面上でも光路により入射角が異なるため、開口内の光路長分布にも若干の差を生ずる。従って、波面収差測定結果についても、この差分をあらかじめ評価してデータとして保有しておき、それを測定結果に加算する形で補正することが望ましい。
【0085】図12は、形状制御機構を備えた反射面の構造を示す。ピエゾアクチュエータ71は、反射面11と基板72の間に配列され、両端を反射面11および基板72に固定されている。配列を構成するそれぞれのピエゾアクチュエータ71に、配列内の位置に応じて適当な駆動電圧を加えることにより、反射面11を任意の形状に歪ませることが出来る。この際、反射面11はベースに比較して充分薄く作られているので、ベースには殆ど歪を生じない。形状を修正する場合は、駆動電圧を与えて望ましい面形状に変形させ、次回の修正までその電圧を正確に保持する必要がある。なお、ピエゾアクチュエータにはヒステリシスや非直線性があるため、充分に高精度な制御を行おうとする場合、形状修正と誤差測定を数回繰り返し、誤差を追い込む手法を用いることが望ましい。
【0086】図14は、光学系の誤差を計算する処理の方法を示す図である。図において、太い矢印はデータの流れを示す。左側の細線で囲まれた部分は反射面位置誤差と光路長偏差の関係を示す係数マトリクスの計算である。
【0087】この係数マトリクスを構成する各縦ベクトルは、ある反射面のある点における単位大きさの法線方向の面位置誤差が開口内の光線群に与える光路長変化を示す。同時に、この係数マトリクスを構成する各横ベクトルは、開口内のある光線位置における光路長が反射面上の各点における単位大きさの面位置誤差によりどのように変化するかを示す。実際の計算にあたっては、まず、各反射面の面位置誤差をベクトルで表記するための各反射面上の点群の位置と番号、露光フィールド内の測定点群の位置と番号、また、波面収差分布をベクトルで表記するための開口内の光線位置群の位置と番号を定義する。次に、想定している測定点において、想定している光線位置が想定している反射面上でどの点の一番近くで反射されるかを求め、さらにそこでの入射角θを求めて、横ベクトルの上記反射面上の点に相当する要素を数1に従って2cosθとする。反射面上の別の点における面位置誤差は想定している光線位置の光路長を変化させないから、横ベクトルの他の要素はすべて0としてよい。ただし、2点あるいはそれ以上の点が同程度に最も反射位置に近い場合には、上記の2cosθを、対応する要素の間で配分してもよい。この際、横ベクトルの各要素の和は、想定している反射面全面が単位大きさだけ法線方向に移動した場合の光路長変化量である2cosθに等しくしなくてはいけない。
【0088】このような操作によって係数マトリクスを決めると、既に述べたように係数マトリクスの縦ベクトルは、ある点での面位置誤差が開口内の光線群に与える光路長変化を示す。その点が反射面上の開口の像の外にある場合には、面位置誤差が光路長変化を引き起こさないから縦ベクトルの要素は当然すべて0になる。ところが逆に、開口像の内部の点が必ず0でない要素を持つ保証はない。なぜなら、光線の反射位置の分布密度が反射面上の点群の分布密度より低い場合、想定する点がどの光線の反射位置にも最も近い点ではないということが起こりうる。この場合、縦ベクトルの要素はすべて0になるから、この点における面位置誤差が、開口内の光路長分布に影響しないという誤った近似がなされてしまうことになる。このようなことが起こるのを防ぐため、開口像の内部にある点には、必ずその点が反射位置に最も近い点となるような光線が存在するように、光線位置の密度を高めてやる必要がある。すなわち、上記の波面収差ベクトルの定義のための光線位置の定義においては、任意の反射面における開口像内部の反射位置の分布密度が、点群の分布密度と少なくとも同等以上となるように、密度あるいは光線位置の総数を決める必要がある。
【0089】以上の操作によって、面位置誤差と光路長変化の関係が線形に近似されて求められたことになる。なお、この部分は計算量がやや多く、また波面収差の測定結果を用いる必要の無い部分なので、オンラインで求めるよりも、あらかじめ光学系の設計形状をもとに計算を行って、記憶回路を設けそこに結果を記憶しておくことが望ましい。
【0090】一方、図14の右側の部分は、波面収差の測定と、数16による、開口内rms収差積分値を最小にする光学素子面位置修正量を計算するための連立方程式係数群の計算と、数値計算による上記方程式の解の算出であって、オンライン処理で行うものである。
【0091】上記の計算は、反射面の位置修正量を求めるためのものであるが、あらかじめ各アクチュエータの単位駆動量による光学系の波面収差の変化量を実測により求めて記憶回路に記憶しておき、これらの値を並べたマトリクスを、上記の計算方法における係数マトリクスの替わりに用いることで、各アクチュエータの最適駆動量を示すベクトルを、上記と全く同じ計算方法および構成により直接求めることも出来る。ただ、この場合には、位置誤差修正量からアクチュエータの駆動量を計算する手間が省ける一方で、駆動量と波面収差変化量の間の関係を線形近似することになるため、アクチュエータ特性に非線形性がある場合、計算で求めた駆動量による修正結果の実際の面形状には誤差が生じることが考えられる。従って、やはり繰り返し測定及び計算、修正を行うことが望ましく、この際、この修正ループ処理の打切りを判断するには、アクチュエータの駆動量と別に、rms収差積分値の値も計算し、その値が許容値より小さくなっていることを確認することが精度上望ましい。
【0092】本装置では、光学系の精度を保つため、一定時間を限度として露光動作を行うと、次の露光動作を行う前に、面形状を測定して光学素子誤差を修正する。この方法によって、常に光学系の誤差を一定レベル以下に抑えることが出来る。図13は、露光手順の一例を示すものであり、ウェハステージ2を連続移動しながら往復2列のチップパターン96を露光後、凹面鏡24が結像点位置に来るように位置決めを行って波面収差を測定する方法である。このような手順で露光を行うと、測定のためのウェハステージ2の移動距離を小さく出来るため、スループットに与える悪影響を低減することが出来る。なお、このような露光手順の発生は、露光動作を制御する計算機上のソフトウェアにその機能を与えることなどにより容易に実現可能である。
【0093】
【発明の効果】本発明によれば、非球面反射光学系の収差の原因となる、光学素子の設置誤差及び形状誤差を正確に計測することが出来る。しかも、光学系および各光学素子を装置から取り外すことなく、光学系全体としての収差を計測することによって、各面別の設置誤差と形状誤差に由来する反射面位置の誤差を計測することができる。なお、波面収差の計測は、反射してくる球面波の波面の計測となるので、単体非球面の干渉計測に比較してはるかに高精度に行うことが可能である。このため、光学系全体の収差が数nm程度でも、それを検出して光学系の修正値を求めることが可能となる。
【0094】また、本発明によれば、露光光学系の各光学素子の誤差を機上で正確に測定出来る露光装置を得ることが出来る。さらに、本発明によれば、各光学素子の誤差を修正し、常に光学系の収差を小さく保つことの出来る露光装置を実現することができる。




 

 


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