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発明の名称 多層磁気抵抗効果膜及び磁気ヘッド
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−163257
公開日 平成6年(1994)6月10日
出願番号 特願平4−311645
出願日 平成4年(1992)11月20日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】中村 純之助
発明者 奥田 清美 / 中谷 亮一
要約 目的
高い磁気抵抗効果を示し、かつ、磁気抵抗効果曲線のヒステリシスの小さい磁気抵抗効果膜を提供すること。

構成
上記目的は、飽和磁束密度が1.2 T 以上の Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、上記磁性金属層間に非磁性金属層の伝導電子を介した交換相互作用が働く構成としたことを特徴とする多層磁気抵抗効果膜とすること、あるいは、Co系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向が非磁性金属層を挾んだ他の磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向と直交した構成としたことを特徴とする多層磁気抵抗効果膜とすることによって達成することができる。
特許請求の範囲
【請求項1】飽和磁束密度が1.2 T 以上の Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、上記磁性金属層間に非磁性金属層の伝導電子を介した交換相互作用が働く構成としたことを特徴とする多層磁気抵抗効果膜。
【請求項2】Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向が非磁性金属層を挾んだ他の磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向と直交する構成としたことを特徴とする多層磁気抵抗効果膜。
【請求項3】請求項1または2に記載の多層磁気抵抗効果膜を少なくともその一部に用いたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項4】請求項1または2に記載の多層磁気抵抗効果膜を少なくともその一部に用いたことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項5】請求項4に記載の磁気ヘッドと誘導型磁気ヘッドとを組み合わせたことを特徴とする複合型磁気ヘッド。
【請求項6】請求項4または5に記載の磁気ヘッドを用いたことを特徴とする磁気記録再生装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高い磁気抵抗効果を有する多層磁気抵抗効果膜に係り、特に、磁気ディスク装置などに用いる再生用磁気ヘッドにおける磁気抵抗効果膜に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録の高密度化に伴い、再生用磁気ヘッドに用いる磁気抵抗効果材料として、高い磁気抵抗効果を示す材料が求められている。現在使用されているパーマロイの磁気抵抗変化率は約3%であり、新材料はこれを上回る磁気抵抗変化率を有することが要求されている。
【0003】最近、Journal of Magnetism and Magnetic Materials Vol.94 pp.L1‐L5に記載の Mosca 等による 'Oscillatory interlayer coupling and giant magneto‐resistance in Co/Cu multilayers 'に述べられているように、多層構造を有する磁性膜(Co/Cu多層膜)において、4.2 K における磁気抵抗変化率が約78%という値が観測されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記多層構造を有する磁性膜を磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドなどに用いるためには、外部磁界の変化する範囲での抵抗変化量の大きいことが要求され、上記文献記載の多層膜は8kOe程度の高い磁界を印加しなければ十分な磁気抵抗効果が得られないという問題があった。これは、磁性層間の交換交互作用が強く、磁性層の磁化の向きが外部磁界によって変化し難いためである。また、この Co/Cu 多層膜では、Co の保磁力が高いために、磁気抵抗効果曲線に大きなヒステリシスが生じ、磁気ヘッドなどの磁界センサに使用するには問題がある。
【0005】本発明の目的は、上記従来技術の有していた課題を解決して、高い磁気抵抗効果を示し、かつ、磁気抵抗効果曲線のヒステリシスが小さく、さらに、低磁界で磁気抵抗効果を示す磁気抵抗効果膜及び磁気ヘッドを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的は、飽和磁束密度が1.2 T 以上の Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、上記磁性金属層間に非磁性金属層の伝導電子を介した交換相互作用が働く構成としたことを特徴とする多層磁気抵抗効果膜とすること、あるいは、Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向が非磁性金属層を挾んで他の磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向と直交する構成としたことを特徴とする多層磁気抵抗効果膜とすることによって達成することができる。
【0007】
【作用】本発明者等は種々の材料及び膜厚の磁性金属層、非磁性金属層を積層した多層磁性膜について鋭意検討を重ねた結果上記の結論に達したものであるが、以下、その作用、効果について説明する。多層膜において磁気抵抗効果を生ずるためには磁界が零に近い領域において磁性金属層の磁化が隣の磁性金属層に対して反平行になっていることが必要であるが、Co 系非晶質合金からなる磁性金属層間に非磁性金属層を設けた場合、該非磁性金属層の伝導電子を介した交換相互作用が働くことにより反平行状態が達成され、磁気抵抗効果を示した。
【0008】上記したように、本発明においては、磁性層材料として飽和磁束密度が1.2 T以上の Co 系非晶質合金を用いることによって上記磁気抵抗効果が高くなることを実現したが、これは、上記の Co 系非晶質合金においてフェルミ面での電子の上向きスピンと下向きスピンとの状態密度の差が Co と同様に大きいためと考えられる。さらに、Co 系非晶質合金を用いることで、磁気抵抗効果曲線のヒステリシスを小さくすることを実現した。これは、Co 系非晶質合金の保磁力が低いためである。
【0009】また、Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、磁性金属層の磁気異方性から生ずる磁化容易方向が非磁性金属層を挾んで直交している多層磁気抵抗効果膜とすることにより、低い磁界で高い磁気抵抗効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】また、本発明の磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効果素子は低い磁界を高感度で検出することができる。さらに、上記磁気抵抗効果素子は、低い磁界で高感度を示すため、磁気ヘッドに最適である。磁気ヘッドとしては、実用上、別に記録能力を有する誘導型磁気ヘッドと組合せ、複合型磁気ヘッドとすることが好ましい。また、この磁気ヘッドを用いることにより、高性能磁気記録再生装置を得ることができる。
【0011】上述したように、飽和磁束密度が 1.2 T 以上の Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、上記磁性金属層間に非磁性金属層の伝導電子を介した交換相互作用が働くことにより高い磁気抵抗効果が得られる。
【0012】また、Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層磁性膜において、上記磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向を、非磁性金属層を挾んだ他の磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向と直交させることにより、低い磁界で高い磁気抵抗効果を示す多層磁気抵抗効果膜が得られる。このとき、磁性金属層の磁気異方性による磁化の向きを他の磁性金属層の磁気異方性による磁化の向きと直交させるためには、非磁性金属層を挾む磁性金属層をスパッタリングする際、磁性金属層ごとに印加磁界の方向を90°変化させてスパッタリングすることが必要である。
【0013】また、本発明の磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効果素子は低い磁界を高感度で検出できる。さらに、上記磁気抵抗効果素子は、低い磁界で高感度を示すため、磁気ヘッドに最適である。磁気ヘッドとしては、別に記録能力を有する誘導型磁気ヘッドと組合せ、複合型磁気ヘッドとすることが実用上好ましい。また、この磁気ヘッドを用いることにより、高性能磁気記録再生装置を得ることができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の磁気抵抗効果膜及び磁気ヘッドについて、実施例によって具体的に説明する。
【0015】
【実施例1】磁性金属層として Co 系非晶質合金を用いた多層磁気抵抗効果膜を高周波スパッタリング法によって作成した。このとき、到達真空度は 1/106Pa、膜形成速度は0.01〜0.06 nm/s とした。また、磁性金属層のスパッタリングの際に一方向に磁界(3.2×104 A/m)を印加して多層磁気抵抗効果膜を形成した。また、基板としてはコーニング社製7059ガラスを用いた。形成した多層磁気抵抗効果膜の断面構造を図1に示す。図において、11は強磁性層、12は非磁性層、13はバッファ層、14は基板を示す。また、本実施例では飽和磁束密度が1.5 T である Co‐7.5at%Zr系合金を用い、Co‐7.5at%Zr(2.5nm)/Cu(2.1nm)を10周期積層した。すなわち、強磁性層11として Co 系非晶質合金、非磁性層12として Cu を用いた。試料形状は一辺の長さが5mmの正方形である。
【0016】上記試料について得られた磁気抵抗効果を図2に示す。磁界が零近傍の状態では、磁性金属層に非磁性金属層である Cu の伝導電子を介した交換相互作用が働くことにより、磁性金属層の磁化は隣の磁性金属層に対して反平行状態を達成する。この多層膜に磁界を印加することにより磁化の向きが反平行になる。この磁化のなす角度により磁気抵抗効果を生ずる。さらに、図示のように13.9%という高い磁気抵抗変化率を示したのは、飽和磁束密度が1.5 T である磁性金属層の Co ‐ Zr 系合金はフェルミ面での電子の上向きスピンと下向きスピンの状態密度の差が大きいためと思われる。また、この Co ‐ Zr 系合金の保磁力が小さいために、小さいヒステリシスをも実現することができた。
【0017】多層磁気抵抗効果膜に従来の Co/Cu を用いた場合には、ヒステリシスが大きく、磁気ヘッドには不適であるが、保磁力の低い Co 系非晶質合金を磁性金属層に用いると、ヒステリシスが小さいので、磁気ヘッドに適する。
【0018】上記のような多層磁気抵抗効果膜として有効な磁性金属層材料を表1及び表2に示した。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】例えば、表1の Co ‐ Zr 系合金において、Co と Zr との組成比が 95at%:5at%から 80at%:20at%の範囲のとき非晶質合金になる。特に、Zr の組成が5〜10at%のとき、保磁力が低く飽和磁束密度が比較的高いので、多層磁気抵抗効果膜として用いるのに有効である。
【0022】また、表2で挙げた非晶質になる組成や飽和磁束密度が1.2 T 以上となる非晶質組成の詳細を、それぞれ、図3、図4、図5、図6に示した。
【0023】さらに、表1及び表2に挙げた Co 系非晶質合金以外に、Co‐Hf、Co‐Ta、Co‐W、Co‐Y、Co‐V、Co‐Mo、Co‐Ta‐Zr においても、非晶質であれば、Co‐Zr等と同様の結果を示し磁気抵抗効果を有するので、多層磁気抵抗効果膜として用いるのに有効である。但し、下記実施例2の場合のように、飽和磁気密度が1.2 T 以上であることが望ましい。
【0024】また、多層膜における1層当りの膜厚が減少すると、連続した磁性層及び非磁性層を得ることが困難になる。膜の平坦性を高め、各層の連続性を向上させるためには、上記多層磁気抵抗効果膜と基板との間にバッファ層を形成することが有効である。バッファ層としては、Cu、Ti、Cr、V が有効である。
【0025】
【実施例2】実施例1の場合と同様にして、図1に示す断面構造の多層磁気抵抗効果膜を形成した。但し、本実施例においては、Co‐(0〜20)at%Zr(2.5nm)/Cu(2.3nm)を10周期積層した。すなわち、強磁性層11として Co 系非晶質合金、非磁性層12として Cu を用いた。また、試料形状は、一辺の長さが5mmの正方形とした。
【0026】実施例1に挙げた Co 系非晶質合金の Co の組成を変化させることにより、飽和磁束密度は変化する。例えば、Co‐Zr 系合金においては、Zr の組成が5%のとき飽和磁束密度は1.55 T であり、Zr の組成が増加するにつれて飽和磁束密度の値は減少し、Zr の組成が20%のとき飽和磁束密度は0.8 T となる。
【0027】上記本実施例試料の Zr の組成を変えて磁気抵抗変化率を測定し、飽和磁束密度と磁気抵抗変化率との関係を求めた。結果を図7に示す。図7の結果から、磁気抵抗変化率を10%以上とするには飽和磁束密度は1.2 T以上を必要とし、磁気抵抗変化率は飽和磁束密度にに比例して大きくなることがわかる。しかし、磁気抵抗変化率が15.7%と高い値をとるとき、飽和磁束密度は1.7 T であり、このとき Co‐Zr 系合金は結晶質となって、これを磁性金属層に用いると、磁気抵抗効果曲線のヒステリシスが大きくなるため磁気ヘッドには向かない。磁気抵抗効果曲線のヒステリシスを小さくするためには、保磁力の低いCo‐Zr 系非晶質合金を磁性金属層に用いた多層磁気抵抗効果膜にすることが必要である。
【0028】また、上記と同様の理由により、実施例1で挙げた Co‐Ti、Co‐Nb、Co‐HfCo‐Ta、Co‐W、Co‐Y、Co‐V、Co‐Mo、Co‐W‐Zr、Co‐Nb‐Zr、Co‐Mo‐Zr、Co‐Ta‐Zr、Co‐Ni‐Zr においても、非晶質であれば Co‐Zr とほぼ同様の結果を示す。従って、Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層磁気抵抗効果膜において、現在使用されているパーマロイの磁気抵抗変化率よりも飛躍的に高い10%以上の磁気抵抗変化率を得るには磁性金属層に用いる Co 系合金の飽和磁束密度を1.2 T 以上とすることが望ましい。
【0029】また、上記の多層磁気抵抗効果膜の非磁性層として Cu 以外に Au、Ag を用いても磁気抵抗効果を生ずる。5%以上の磁気抵抗変化率を得るには、図8の結果から、1.6〜2.5nmの膜厚の Au、Ag 層を用いることが有効である。
【0030】また、多層膜における1層当りの膜厚を減少させると連続した磁性層及び非磁性層を得ることが困難になる。膜の平坦性を高め、各層の連続性を向上させるためには、上記磁気抵抗効果膜と基板との間にバッファ層を形成することが有効である。バッファ層としては、磁性金属では Fe が好ましい。また、非磁性金属のバッファ層としては、Cu、Ti、Cr、V が有効である。
【0031】
【実施例3】実施例1の多層磁気抵抗効果膜において高い磁気抵抗効果を得るためには、交換相互作用以上の磁界を印加しなければならない。本発明者等は、Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを交互に積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、上記磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向が、非磁性金属層を挾んで他の磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向と直交していることを特徴とする磁気抵抗効果膜では、高磁界印加の必要なしに、低磁界で磁気抵抗変化を示すことを見出した。
【0032】本実施例において、非磁性層を挾む磁性金属層の磁気異方性から生ずる磁化容易方向を直交させた磁気抵抗効果膜の作成は高周波スパッタリング法を用いて行った。到達真空度は1/106Paであり、膜形成速度は0.01〜0.06nm/s とした。磁性金属層のスパッタリングの時に印加する磁界(3.2×104A/m)の方向を磁性金属層ごとに90°変化させることにより、非磁性金属層の上下の磁性金属層の磁化容易方向が直交する多層磁気抵抗効果膜を形成した。基板としてはコーニング社製7059ガラスを用いた。形成した多層磁気抵抗効果膜の断面構造は図1の通りである。
【0033】本実施例の場合、Co‐7.5at%Zr(2.5nm)/Cu(1.8nm)を10周期積層した多層膜では、図9に示したように、強磁性層のみ数えた場合奇数層目と偶数層目で磁化容易方向が直角をなす。従って、磁界の印加方向θを45°とした時、例えば、図10のような磁化過程を示す。但し、印加磁界の大きさと磁化状態との関係は、磁性層の保磁力、異方性磁界によって異なる。図10のように、磁界により磁性層の磁化の向きのなす角度が変化することによって磁気抵抗効果が生じる。
【0034】従来の多層膜、例えば前出の Mosca 等による文献に記載のような多層構造を有する磁性膜(Co/Cu多層膜)では、Co 層間の交換相互作用によって、Cu 層の上下の磁性層の Co の磁気の向きを反平行にしていた。交換相互作用以上の磁界を印加すると Co の磁化の向きが平行になり磁気抵抗効果を生じる。しかし、Co層間の交換相互作用が強く、8kOe程度の高い磁界を印加する必要があった。
【0035】しかし、本発明のような非磁性金属層の Cu を挾む磁性金属層である Co‐Zr系合金の磁気異方性から生ずる磁化容易方向が交互に直角をなす多層磁気抵抗効果膜では、逆に、磁性層間の交換相互作用を断ちきっているため、外部磁界が弱くても、磁化の向きが変化する。このため、低い磁界で高い磁気抵抗効果を示す。ここで、磁性層間の交換相互作用を断ちきるために本実施例では非磁性層の厚さを1.8nmとした。この厚さは丁度磁性層間の交換相互作用が弱くなる厚さである。 図11に本発明の多層膜の磁気抵抗効果を示す。図示のように、印加磁界8000A/mで9.4%の磁気抵抗変化率を示した。このように、本発明の多層膜は低い磁界で高い磁気抵抗効果を示すのが特徴である。なお、この場合、ヒステリシスは小さく、2本の曲線は極めて接近した形となっている。
【0036】ここで、上記のような多層磁気抵抗効果膜に有効な磁性金属層材料を表3及び表4に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】例えば、Co‐Zr 系合金においては、Co と Zr との組成比が95%:5%から80%:20%のときに非晶質合金になる。特に、Zr の組成が5〜10%のときに、保磁力が低く、飽和磁束密度が比較的高く、上記磁性金属層の磁気異方性が非磁性金属層を挾んで直交している多層磁気抵抗効果膜に用いるのに有効である。
【0040】また、表4に示した非晶質になる組成や飽和磁束密度が1.2 T 以上となる非晶質の組成の詳細を、それぞれ、図3、図4、図5、図6に示した。
【0041】さらに、表3及び表4に挙げた Co 系非晶質合金以外に、Co‐Hf、Co‐Ta、Co‐W、Co‐Y、Co‐V、Co‐Mo、Co‐Ta‐Zr においても、非晶質であれば Co‐Zr系合金等と同様の結果を示し、磁気抵抗効果を有するので、上記磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向が非磁性金属層を挾んで他の磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向と直交していることを特徴とする多層磁気抵抗効果膜に用いるのに有効である。
【0042】また、上記の多層磁気抵抗効果膜の非磁性層に Cu 以外にも Au、Ag を用いることにより磁気抵抗を生じる。何れの場合も交換相互作用が非常に弱いので、1nm〜3nmの範囲で使用可能である。しかし、余り厚いと磁気抵抗効果が低くなるので、図8の結果から、5%以上の磁気抵抗変化率を得るために、1.6〜2.5nmの膜厚の Au、Ag 層が特に有効である。
【0043】また、多層膜における1層当りの膜厚が減少すると、連続した磁性層及び非磁性層を得ることが困難になる。膜の平坦性を高め、各層の連続性を向上させるためには、上記多層磁気抵抗効果膜と基板との間にバッファ層を形成することが有効である。バッファ層としては磁性金属では Fe が好ましい。また、非磁性金属のバッファ層としては、Cu、Ti、Cr、V が有効である。
【0044】また、J. Phys. Soc. Jpn. Vol. p.3061に記載の新庄らによる 'Large Magnetoresistance of Field‐Induced Giant Ferrimagnetic Multilayers 'に述べられている Co/Cu/Ni‐Fe/Cu 多層膜に代表される、保磁力の異なる2種の磁性層を有する多層膜においても、Co 系非晶質合金を利用することにより、低い磁界で高い磁気抵抗効果を示す多層膜が得られる。
【0045】また、多層膜の構造によっては、磁界が零の付近で抵抗変化の勾配が低くなることがある。このような状態では、磁気抵抗効果素子を形成しても高い感度が得られない。その場合は、磁界検出方向にバイアス磁界を印加し、抵抗変化の勾配の高い領域を移動させることが有効である。これにより、磁界が零の近傍での感度を高くすることができる。
【0046】本発明の多層膜では、バイアス法として各磁性層に均一な磁界のかかる方法が好ましい。バイアスを印加するために、非磁性層を介して永久磁石層を形成すると、比較的均一な永久磁石からの漏れ磁界が多層磁気抵抗効果膜に印加される。この点で、永久磁石方式は、多層磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効果素子におけるバイアス印加方式として好ましい。しかし、反面、多層磁気抵抗効果膜と永久磁石層との間に厚い非磁性層を形成しなくてはならないため、素子全体が厚くなり、素子の上下に形成する2枚のシールドの間隔を狭くすることができない。このため、磁気抵抗効果素子の分解能を高くすることに対しては若干の問題がある。
【0047】ところで、一般のパーマロイ磁気抵抗効果素子で知られているシャントバイアス方式、ソフトバイアス方式、相互バイアス方式などを用いても、バイアス磁界を印加することが可能である。
【0048】シャントバイアス方式は、多層磁気抵抗効果膜上に直接非磁性金属層を形成し、非磁性金属に分流した電流により生じる誘導電流によりバイアス磁界を発生させる方法である。この方法は、多層磁気抵抗効果膜上に直接非磁性金属層を形成するため、極めて簡便に素子を形成することができるというプロセス上の大きな利点がある。しかし、非磁性金属層に流れる電流に対しては磁界による電気抵抗の変化は生じず、素子全体の磁気抵抗変化率が減少するという欠点がある。また、非磁性金属層に接している磁性金属層には大きなバイアス磁界が印加されるが、接していない磁性金属層に印加されるバイアス磁界は比較的小さいという問題がある。
【0049】上記のシャントバイアス方式の欠点を解決するために、ソフトバイアス方式では、多層磁気抵抗効果膜上に非磁性絶縁層を形成し、該絶縁層上にさらに軟磁性金属層を形成し、上記3層に電流を流すことによりバイアス磁界を発生させる。この方式によれば、上記シャントバイアス方式よりも均一な磁界を多層磁気抵抗効果膜に印加することができる。多層磁気抵抗効果膜に比較的均一なバイアス磁界を印加できるという観点から、ソフトバイアス方式は好ましい。しかし、多層磁気抵抗効果膜上に非磁性絶縁層を形成する必要があるため、素子全体が厚くなる可能性がある。
【0050】相互バイアス方式も、多層磁気抵抗効果膜に比較的均一なバイアス磁界を印加できるという観点から、ソフトバイアス方式と同様に好ましい。また、2個の多層磁気抵抗効果膜を用いるため、2個とも素子として使用できることにより、2倍の出力を得たり、差動型素子とすることも可能である。しかし、素子全体の構造が複雑になるという問題がある。
【0051】また、以上述べたソフトバイアス方式、シャントバイアス方式、相互バイアス方式、永久磁石方式、電流による誘導磁界による方式から選ばれる2種類以上の方式を併用することも可能である。
【0052】ところで、多層膜では、磁気抵抗効果が図2に示すようなヒステリシスを示す。この場合、磁気記録再生装置には、多層磁気抵抗効果膜に高い磁界を印加し、磁化状態をイニシアライズできる機構を付加することが好ましい。これには、磁気記録再生装置内に永久磁石を配置し、磁気抵抗効果素子を接触させる方法が簡便である。また、磁気記録再生装置内に微小なコイルを配置し、コイル内部に磁気抵抗効果素子を入れて、コイルに電流を流す方法も有効である。また、予め磁気抵抗効果素子にコイルを組み込んでおく方法もある。
【0053】なお、本実施例では多層膜形成に高周波スパッタリング法を用いたが、他の薄膜形成法を用いても、同様の結果が得られる。
【0054】
【実施例4】実施例3で述べた Co‐7.5at%Zr(2.5nm)とCu(1.8nm)とを交互に10周期積層した多層磁気抵抗効果膜を用いて磁気抵抗効果素子を作製した。該磁気抵抗効果素子の構造は図12に示す通りで、シールド層25及び26、多層磁気抵抗効果膜27、電極28からなる。この磁気抵抗効果素子にはバイアス磁界印加機構は備わっていない。シールド層25、26には膜厚1μmのパーマロイ合金層、電極28には膜厚100nmの Cu 層を用いた。また、各層間のギャップ材としては Al2O3を用いた。ギャップ層の膜厚は100nmとした。なお、本磁気抵抗効果素子において、長辺の長さは6μm、短辺の長さは3μmとした。
【0055】上記構造の磁気抵抗効果素子で、特に実施例3構成の素子は8000 A/m 程度の磁界で7.8%の磁気抵抗効果を示す。このように、本発明の磁気抵抗効果素子は高感度を有する。
【0056】上記の Co‐Zr 系非晶質合金以外にも、多層磁気抵抗効果膜において、磁性金属層に表1及び表2に挙げた Co 系非晶質合金を用い、上記同様に磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向が非磁性金属層を挾んで他の磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向と直交していることを特徴とする多層磁気抵抗効果膜は磁気抵抗効果素子に用いるのに有効である。
【0057】また、シールド層は磁気抵抗効果素子の分解能を高めるために有効である。 Co 系非晶質合金をシールド層に用いると、シールド層の厚さを薄くすることができるので特に有効である。これは、Co 系非晶質合金の飽和磁束密度が高いことによる。Co 系非晶質合金としては、表1及び表2に挙げた Co 系非晶質合金が好ましい。その他にも、Co‐Ha、Co‐Ta、Co‐W、Co‐Y、Co‐V、Co‐Mo、Co‐Ta‐Zr、Co‐Cr‐Zr、Co‐V‐Zr においても、非晶質であれば、Co‐Zr 非晶質合金と同様の結果を示し、これを用いた多層膜が磁気抵抗効果を有するので、磁気ヘッドに有効である。
【0058】
【実施例5】実施例4で述べた磁気抵抗効果素子を用いて磁気ヘッドを作製した。図13に記録再生分離型ヘッドの一部分を切断した斜視図を示す。多層磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効果素子41をシールド層42、43で挾んだ部分が再生ヘッドとして働き、コイル44を挾む二つの記録磁極45、46の部分が記録ヘッドとして働く。磁気抵抗効果素子41は実施例1に記載の断面構造を有する多層磁気抵抗効果膜からなる。また、多層磁気抵抗効果膜の平面構造は一辺の長さ2μmの正方形とした。導体層48としては Cu を用いた。
【0059】以下に、このヘッドの作製方法について述べる。まず、Al2O3TiC を主成分とする焼結体をスライダ用の基体47とした。シールド層42、43、記録磁極45、46にはスパッタリング法で形成した Ni‐Fe 合金を用いた。各磁性膜の膜厚は以下のようにした。上下のシールド層42、43は1.0μm、記録磁極45、46は3.0μm、多層磁気抵抗効果膜全体の膜厚は100nmとした。各層間のギャップ材としてはスパッタリングで形成した Al2O3を用いた。また、ギャップ層の膜厚は、シールド層と磁気抵抗効果素子間で0.2μm、記録磁極間では0.4μmとした。さらに、再生ヘッドと記録ヘッドの間隔は約4μmとし、このギャップも Al2O3で形成した。コイル44には膜厚3μmの Cu を使用した。
【0060】以上述べた構造の磁気ヘッドで記録再生を行ったところ、高い再生出力が得られた。これは、本発明の磁気ヘッドに高磁気抵抗効果を示す多層膜を用いたためと考えられる。
【0061】なお、磁気ヘッドとしては、高周波特性の優れていることが必要であり、このためには、磁気記録媒体面に垂直にすることが好ましい。
【0062】ところで、磁気ヘッドが記録及び再生能力を同時に有している場合、基板に近い部分に記録用の素子を形成すると、記録用素子の上部では、コイル、磁極などの形成のために、大きな段差が生じる。この上に多層磁気抵抗効果膜を形成すると、段差の影響で多層構造が乱れ、好ましくない。これに対し、図12に示すように、基板に近い部分に再生用の磁気抵抗効果素子を形成すると、比較的段差の小さい部分に磁気抵抗効果素子が形成されるため、多層構造の乱れが生じにくい。これは、パーマロイ単層膜を用いた磁気抵抗効果素子とは本質的に異なる現象である。
【0063】以上の観点から、磁気ヘッドが記録及び再生能力を同時に有している場合、基板に近い部分に再生用の磁気抵抗効果素子を形成することが好ましい。
【0064】また、同じ観点から、記録用の素子と再生用の磁気抵抗効果素子を同じ基板における他の場所に形成すると段差の少ない部分に磁気抵抗効果素子を形成することができる。
【0065】また、本発明の磁気抵抗効果素子は、磁気ヘッド以外の磁界検出器にも用いることができる。
【0066】また、さらに、上記磁気ヘッドを磁気記録再生装置に用いることにより、高性能磁気記録再生装置が得られる。
【0067】
【発明の効果】以上述べてきたように、多層磁気抵抗効果膜及び磁気ヘッドを本発明構成の多層磁気抵抗効果膜及び磁気ヘッドとすることによって、従来技術の有していた課題を解決して、高い磁気抵抗効果を示し、かつ、磁気抵抗効果曲線のヒステリシスの小さい磁気抵抗効果膜及び磁気ヘッドを提供することができた。
【0068】すなわち、磁性金属層と非磁性金属層とを積層した多層構造を有する磁気抵抗効果膜において、磁性層として Co 系非晶質合金を用いて非磁性金属層と交互に積層すると、非磁性金属層を介した磁性金属層間に交換相互作用が働き、磁界零近傍で反平行状態を達成することことができる。このため、交換相互作用以上の磁界を印加することにより高い磁気抵抗効果を得ることができる。また、Co 系非晶質合金は保磁力が低いために、ヒステリシスの小さい磁気抵抗効果曲線が得られる。
【0069】また、Co 系非晶質合金からなる磁性金属層と非磁性金属層とを積層した多層磁性膜において、上記磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向を他の磁性金属層の磁気異方性による磁化容易方向と直交させることにより、低い磁界で高い磁気抵抗効果を示す多層磁気抵抗効果膜が得られる。このとき、磁性金属層の磁気異方性による磁化の向きを他の磁性金属層の磁気異方性による磁化の向きと直交させるためには、非磁性金属層をスパッタリングする際、磁性金属層ごとに印加磁界の方向を90°変化させてスパッタリングすることが必要である。
【0070】また、本発明の磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効果素子は、低い磁界を高感度で検出できる。さらに、上記磁気抵抗効果素子は低い磁界で高感度を示すため、磁気ヘッドに最適である。磁気ヘッドとしては、別に記録能力を有する誘導型磁気ヘッドと組合せ、複合型磁気ヘッドとすることが実用上好ましい。また、この磁気ヘッドを用いることにより、高性能磁気記録再生装置を得ることができる。




 

 


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