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発明の名称 マルチフィラメント超電導線材
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−103835
公開日 平成6年(1994)4月15日
出願番号 特願平4−249939
出願日 平成4年(1992)9月18日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
発明者 佐伯 満 / 綿引 誠之
要約 目的
本発明は、層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材において、各々のフィラメントに流れる電流が逆流するような不均一にならないように構成する。

構成
概同軸状の隣り合うフィラメント環のギャップ距離の合計のうち自分自身で作るソレノイド磁場方向の距離が半分以下になるようにフィラメント環を構成すれば良い。また、長方形断面のマルチフィラメント超電導線材の場合はエッジワイズに巻回すことによって達成される。
特許請求の範囲
【請求項1】層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材であって、線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概略同軸状に回転配置されたマルチフィラメント超電導線材において、概略同軸状の隣り合うフィラメント環のギャップ距離の合計のうち、合成磁場方向の距離が半分以下になるように構成されていることを特徴とするマルチフィラメント超電導線材。
【請求項2】層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材であって、線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概略同軸状に回転配置されたマルチフィラメント超電導線材において、該超電導線材の断面形状、及び同軸状のフィラメント環の形状が矩形であると共に、概略同軸状の隣り合うフィラメント環のギャップ距離の合計のうち、合成磁場方向の距離が半分以下になるように構成されていることを特徴とするマルチフィラメント超電導線材。
【請求項3】層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材であって、線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概略同軸状に回転配置されたマルチフィラメント超電導線材において、該超電導線材の断面形状、及び同軸状のフィラメント環の形状が矩形であり、かつ、この矩形形状の短辺の隣り合うフィラメント環のギャップ距離の合計をA、長辺の隣り合うフィラメント環のギャップ距離の合計をBとしたときに、A/(A+B)が0.5 以下であることを特徴とするマルチフィラメント超電導線材。
【請求項4】層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材であって、線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概略同軸状に回転配置されたマルチフィラメント超電導線材において、該超電導線材の断面形状、及び同軸状のフィラメント環の形状が円形であると共に、概略同軸状の隣り合うフィラメント環のギャップ距離の合計のうち、合成磁場方向の距離が半分以下になるように構成されていることを特徴とするマルチフィラメント超電導線材。
【請求項5】前記超電導線材は、前記合成磁場を高速に変化させ電源からの電流供給部のフィラメント環間の抵抗による電圧に対してコイルのインダクタンスによる電圧が大きくなるパルスコイルを構成する超電導線材であることを特徴とする請求項1,2,3、又は4記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項6】前記超電導線材は、前記合成磁場を永久電流モードで使用し、電源から電流供給する励磁時コイルのインダクタンスによる電圧に対して電流供給部のフィラメント環間の抵抗が小さくなるコイルを構成する超電導線材であることを特徴とする請求項1,2,3、又は4記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項7】前記超電導線材は、層状の隣合う層の巻回し方向を逆にし前記合成磁場を隣合う層間に閉じ込めることによって概無誘導のコイルを構成し、電源から電流供給する励磁時コイルのインダクタンスによる電圧に対して電流供給部のフィラメント環間の抵抗が小さくなるコイルを構成する超電導線材であることを特徴とする請求項1,2,3、又は4記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項8】前記フィラメントが配置されている金属基材が銅であることを特徴とする請求項5,6、又は7記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項9】前記フィラメントが配置されている金属基材がアルミニウムであることを特徴とする請求項5,6、又は7記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項10】前記フィラメントが配置されている金属基材が銅合金であることを特徴とする請求項5,6、又は7記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項11】前記フィラメントが配置されている金属基材がアルミニウム合金であることを特徴とする請求項5,6、又は7記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項12】前記フィラメントが配置されている金属基材がCuNiであることを特徴とする請求項10記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項13】前記フィラメントが配置されている金属基材がCuSnであることを特徴とする請求項10記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項14】層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材であって、該線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概略同軸状に回転配置された概略長方形形状の超電導線材が層状にエッジワイズで巻回されたことを特徴とするマルチフィラメント超電導線材。
【請求項15】前記超電導線材は、前記合成磁場を高速に変化させ電源からの電流供給部のフィラメント環間の抵抗による電圧に対してコイルのインダクタンスによる電圧が大きくなるパルスコイルを構成する超電導線材であることを特徴とする請求項14記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項16】前記超電導線材は、前記合成磁場を永久電流モードで使用し、電源から電流供給する励磁時コイルのインダクタンスによる電圧に対して電流供給部のフィラメント環間の抵抗が小さくなるコイルを構成する超電導線材であることを特徴とする請求項14記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項17】前記超電導線材は、層状の隣合う層の巻回し方向を逆にし、前記合成磁場を隣合う層間に閉じ込めることによって、概無誘導のコイルを構成し、電源から電流供給する励磁時コイルのインダクタンスによる電圧に対して電流供給部のフィラメント環間の抵抗が小さくなるコイルを構成する超電導線材であることを特徴とする請求項14記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項18】前記フィラメントが配置されている金属基材が銅であることを特徴とする請求項15,16、又は17記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項19】前記フィラメントが配置されている金属基材がアルミニウムであることを特徴とする請求項15,16、又は17記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項20】前記フィラメントが配置されている金属基材が銅合金であることを特徴とする請求項15,16、又は17記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項21】前記フィラメントが配置されている金属基材がアルミニウム合金であることを特徴とする請求項15,16、又は17記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項22】前記フィラメントが配置されている金属基材がCuNiであることを特徴とする請求項20記載のマルチフィラメント超電導線材。
【請求項23】前記フィラメントが配置されている金属基材がCuSnであることを特徴とする請求項20記載のマルチフィラメント超電導線材。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材に係わり、特に、線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概同軸状に回転配置されたフィラメント配置において、各々のフィラメントに流れる電流が不均一にならないように構成されたマルチフィラメント超電導線材に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のマルチフィラメント超電導線材のフィラメント構成例は、Foner S and Schwartz B B “Superconducting Machines and Devices”(1973)NewYork Plenum に記載され公知である。
【0003】超電導機器を構成し、自ら磁場を発生させる超電導線材は熱的な安定性を確保するために銅やアルミニウムのような極低温で抵抗率が大きく下がり、熱伝導率が向上する金属基材の中に100μm以下の線径の超電導材料のフィラメントを多数配置(マルチフィラメント)し、極低温に冷却することによって抵抗ゼロの超電導状態を維持し、銅やアルミニウムのような常電導金属に通常流せる電流密度の2桁以上高い電流密度の通電を可能にしている。金属基材に配置されているフィラメントは、線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概同軸状に回転配置されており、フィラメント環の集合として構成されている。
【0004】最近では、印加される変化磁場に対する交流損失を低減するために、金属基材を抵抗率の高い銅合金にしたものや、線材に垂直に印加される傾斜した変化磁場に対してもフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように該線材を数本束ねて所定のピッチでツイスト(ストランド)した線材等が開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】超電導線材は上述のように多数の超電導フィラメントの並列回路となっており、各々の並列回路に均等に電流が分配されてはじめて線材として大電流を通電することができる。しかし、超電導材料はその使用状態で抵抗がゼロになっているため、線材そのものの抵抗で電流分配する機能はなく、電源から電流供給する励磁時コイルのインダクタンスによる電圧に対して電流供給部の各フィラメントへの抵抗による電圧が大きくなるように抵抗を設定すると抵抗損失が大きくなってしまうという問題が発生する。
【0006】しかも、フィラメント間の電流分配はフィラメント間のインダクタンスの差及び抵抗で決定されるため、フィラメント間の距離が接近している超電導線材においては抵抗で電流分配を保証するのは困難である。
【0007】特に、加速器用超電導磁石のようにパルスコイルとして使用する線材の場合は、インダクタンスによる電圧が大きく問題は深刻である。また、MRI(核磁気共鳴イメージング)用超電導磁石のように永久電流モードで定常的に使用するコイルであっても、電源から電流供給する励磁時問題になり、永久電流運転時電流が減衰しないように電流供給部のフィラメント間の抵抗が極端に小さくなっている(超電導接続)ため重要度はかわらない。
【0008】このフィラメント間のインダクタンスの差による電流分配の不均一を防止するために、線材に垂直に印加される傾斜した変化磁場に対してもフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように該線材を数本束ねて所定のピッチでツイスト(ストランド)した線材等が開発されている。しかし、この場合は各線材間を熱的,電気的及び強度的に連結する方法がハンダのような合金でストランド後接合するか外側から機械的に圧迫するしかなく、熱的な安定性の確保や変化磁場に対する交流損失(ストランド損失)や線材が動くことによる(ワイヤームーブ)クエンチの問題を総合的に解決する手段がなかった。
【0009】つまり、傾斜した変化磁場の中で電流の均一な分配を保証するストランド構造で熱的、及び電気的結合、または強度的な連結を可能にするハンダのような溶融性の合金は、銅やアルミニウムなどの低抵抗金属に比べ抵抗が1桁以上大きく従って熱伝導率は1桁以上小さい。そのため、臨界電流付近で使用する線材の電流性能として問題が残る。また、逆にCuNiのような高抵抗金属にくらべ抵抗が約1桁小さく、低交流損失を指向するパルスコイルや常電導時高抵抗を要求される永久電流スイッチの線材としては交流損失またはOFF時抵抗の面で問題が残っている。パルスコイル用線材としては、ハンダでの固定はせず金属支持材で外部から圧迫して固定し、熱的及び電気的結合は接触のみに委ねることによって交流損失を低減する方法が用いられているが、依然線材の動き(ワイヤームーブ)によるクエンチの可能性が残っている。
【0010】本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、各フィラメントに流れる電流が逆流のような不均一分布にならず、フィラメントの断面積を合理的に利用し大電流超電導線材を可能にしたマルチフィラメント超電導線材を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】これらの問題を解決するためには本発明によれば、傾斜する磁場のうちもっとも大きな自分自身の発生する磁場に注目し、マルチフィラメント線材のフィラメント配置を最適化し電流の分配が保証できるようにすればよい。
【0012】即ち、層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材であって、線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概略同軸状に回転配置されたマルチフィラメント超電導線材が、概略同軸状の隣り合うフィラメント環のギャップ距離の合計のうち、合成磁場方向の距離が半分以下になるように構成されることにより、上記目的が達成される。
【0013】
【作用】いま層状に巻回され、層内の線材の作る磁場が互いに干渉し線材単独で作る磁場に比べて大きくなる合成磁場をソレノイド磁場と呼ぶことにする。層状の隣合う層の巻回し方向を逆にして合成磁場を隣合う層間に閉じ込め、概略無誘導のコイルを構成した場合は一般にはソレノイドとは言わないが、磁場の形状を仮にソレノイド磁場と呼ぶことにする。また、コイル形状がレーストラックのような非円形の場合もソレノイドとは言わないが層内の磁場の形状は同じであり、ソレノイド磁場と呼ぶことにする。
【0014】つまり、ソレノイド磁場とは層内の線材の作る磁場が互いに干渉するために、磁場の方向が層方向と一致しておりその磁場の大きさはアンペールの定理により、層の厚さ方向に存在する電流で決定される。
【0015】いま、電流の分配を決定するためにはフィラメント間のインダクタンスを決定しなければならない。ここでは図7を用いて、インダクタンスの定式化を実施する。ある基準線上にマルチフィラメント線材が並んで巻回されており、ここでは仮に中心から半径Rの位置を基準線としている。マルチフィラメント線材は一辺2bの正方形の形状1で模擬してある。フィラメントは所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概略同軸状に回転配置(ツイスト)されており、フィラメント環を形成している。ここでは、一辺2a及び2cで厚さdの正方形環2及び3で表している。ソレノイド磁場は外周側Boに比べ、内周側Biが大きくなっており層内の線材の作る磁場が互いに干渉している状況を表している。ここで、層の単位長さ当りインダクタンスLは下式となる。
【0016】
【数1】

【0017】I:通電電流dΦ:位置xでの単位長さ当りの鎖交磁束N:単位長さ当りのターン数ΦI:層の内周側の磁束N(x):位置xで鎖交する単位長さ当りのターン数dφ:位置xでの単位長さ当たりの磁束ここで、フィラメント環がツイストされた効果はフィラメント環内で誘導起電力が等しくなることを意味し、フィラメント環内で電流密度が一定と仮定すれば良い。なお、フィラメント環厚さ方向は充分薄いとして電流分布の変化を無視する。また、線材そのものの幅2bも基準線の半径Rに比べ充分小さいと仮定する。ここで、フィラメント間の電流分配はフィラメント間のインダクタンス差で決定されるため、フィラメント間で共通のインダクタンス項N・ΦIは省略して議論を進める。
【0018】
【数2】

【0019】n(y):位置yでのターン数密度積分の意味を明確にするためにディリクレの変換を使ってdxとdyを入れ換えると、【0020】
【数3】

【0021】φ(y):位置yのターン数密度n(y)に鎖交する磁束の合計(但し、層の内側まで)。
【0022】(3)を用いて図7のフィラメント環2の単位長さ当たりのインダクタンスL2 は以下のようになる。
【0023】
【数4】

【0024】フィラメント環3の単位長さ当たりのインダクタンスL3 は(4)式でaをcに置き換えれば良い。フィラメント環2とフィラメント環3の相互インダクタンスMも同様にして以下のようになる。
【0025】
【数5】

【0026】このインダクタンスを使えば多層フィラメント環のインダクタンスマトリクスを決めることができ、電流分布を決定することができる。ここで、電流分布の偏りの効果を見るために第8図のような多層フィラメント環を2つのグループに分け、外周のフィラメント環グループ1と内周のフィラメント環グループ6について同様のインダクタンスを決定する。
【0027】
【数6】

【0028】
【数7】

【0029】
【数8】

【0030】2個の並列回路の電流分布に関してはB.Turk:“Influence of a TransverseConductance on Current Sharing in a Two−Layer Superconducting Cable”、Cryogenics 14(1974)448に詳しく述べられており、抵抗成分が充分小さい時には外環の電流I1分の内環の電流I6 は以下のように決められる。
【0031】
【数9】

【0032】ここで、L6>M>L1という場合にはI6<0、つまり内環の電流が外環の電流に対して逆流し、外環は内環の逆流分の電流を余分に流す状況になってしまう。
【0033】(9)式のd/aに対する依存はすぐ計算でき、以下のようになる。
【0034】
【数10】

【0035】つまりd/a=0〜2/3の全ての値で負となる関数である。
【0036】この逆流のメカニズムを定性的に図9を使って説明する。図9(A)のように外環1と内環6に同じ電流密度jが流れると、ソレノイド磁場により内周側の磁場Biは外周側の磁場Boに比べ大きくなり線材内で傾斜した磁場となる。この傾斜した磁場は外環と内環のギャップ10においても内周側と外周側で異なった磁場となっている。つまり、ギャップに捕獲された磁場をギャップの周回方向で積分するとゼロにならず、外環と内環の間に鎖交磁場が残っていることになる。この鎖交磁場は図9(B)のように内環に逆の電流が流れることによって打ち消すことができる。つまり、抵抗成分が充分小さい時の並列回路は短絡回路になっており、間に捕獲される鎖交磁場は打ち消すような電流分布となる。結局、図9(C)のように内環に逆電流が流れた状態が平衡状態となる。
【0037】ここで、上述のインダクタンス計算は全て層内の線材の作る磁場が充分互いに干渉し、線材が巻回された層方向だけで表現されるモデルである。しかし、実際には図9(B)のように内環に逆電流が流れる場合、外環にはその分余分の電流が順方向に流れる。つまり、往復同軸導体で導体間に磁場が捕獲されるように各導体で分断された形状となる。この分断の効果は外環と内環のインダクタンスの結合を弱める働きをし、相互インダクタンスが(8)式で記述される値より小さな値になることを意味する。(1)式でこの効果を入れる場合は、ソレノイド磁場に鎖交しないターン数の成分が存在することで説明することができる。相互インダクタンスの値MがL1 より小さくなると、(9)式から逆流はなくなることになる。
【0038】図10に上述の相互インダクタンスが低減される効果を実測したものを示す。横軸のパラメータとして往復電流の磁場のうち幾何学的にソレノイド磁場方向の割合をηとしてとる。ηは往復電流を流すターン数のうちソレノイド磁場と鎖交する割合を示している。縦軸は逆流の電流分布から求めた相互インダクタンスの低減率ξである。ηとξの関係は、η→1でξ→1となると考えられる。白丸2点が実測値である。この関係からη<0.5で内環が逆流する境界のξ≒0.9を下回り逆流しない状況を実現することができる。
【0039】
【実施例】以下、図示した実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【0040】図1が本発明を示すマルチフィラメント超電導線材で、超電導線材1は本図の横方向に巻回されており、ソレノイド磁場Bo、及びBiが形成されている。フィラメントは所定のピッチでツイストされフィラメント環2及び3を形成している。本図は矩形断面の例が記述されている。ソレノイド磁場Bi は内周側であり、外周側Boに比べ大きくなっている。
【0041】この磁場の傾斜はフィラメント環2とフィラメント環3の間のギャップ4の位置でも、内周側は外周側に比べ大きくなっており、ギャップを周回積分しても鎖交磁場が残ることになる。ここで、内環3が逆流しないためには往復電流を流すターン数のうちソレノイド磁場と鎖交する割合を半分以下にすれば良い。本図の場合ギャップ4の距離A及びBにおいてη=A/(A+B)が0.5 以下であることを示す。また、本図のような長方形形状超電導導体の場合フィラメントギャップのA対Bの比は概略導体の比A′対B′になっており、前述の条件は短辺A′を常に内側に巻回すエッジワイズの巻線をすることにほかならない。
【0042】図2は本発明の他の実施例を示すマルチフィラメント超電導線材で、超電導線材1は本図の横方向に巻回されておりソレノイド磁場Bo 及びBi が形成されている。フィラメントは所定のピッチでツイストされフィラメント環2及び3を形成している。本図は円形断面の例が記述されている。ソレノイド磁場Bi は内周側であり、外周側Bo に比べ大きくなっている。
【0043】この磁場の傾斜はフィラメント環2とフィラメント環3の間のギャップ4の位置でも、内周側は外周側に比べ大きくなっており、ギャップを周回積分しても鎖交磁場が残ることになる。ここで、内環3が逆流しないためには往復電流を流すターン数のうちソレノイド磁場と鎖交する割合を半分以下にすれば良い。本図の場合ギャップ4の距離合計2πRにおいてη=A/πRが0.5 以下であると考えることができる。円形ギャップの場合ソレノイド磁場に鎖交するターン数成分は幾何学的には点でしかないが、ギャップの間隔内で最長の直線距離をとるべきであると思われる。
【0044】図3はパルスコイルなどに使用されているストランド線材の例である。マルチフィラメント超電導線材1は、ストランドピッチP2 で丸い心材の回りにストランドされて全体で概略円形の線材5を構成している。ソレノイド磁場Bi は内周側であり、外周側Bo に比べ大きくなっている。
【0045】この磁場の傾斜はフィラメント環2及とフィラメント環3の間のギャップ4の位置でも、内周側は外周側に比べて大きくなっているが、この場合、ストランドピッチP2 のちょうど反対方向の位置で鎖交する磁場が打ち消し合い、ギャップの周回積分としての鎖交磁場はストランド全体で残留しないことになる。
【0046】図4は同様に板状の心材の回りにストランドされて全体で概略長方形の線材5を構成した例である。
【0047】図5は逆にフィラメント内環が逆流すると予想されるマルチフィラメント超電導線材で、超電導線材1は本図の横方向に巻回されておりソレノイド磁場Bo 及びBi が形成されている。フィラメントは所定のピッチでツイストされフィラメント環2及び3を形成している。本図は矩形断面の例が記述されている。ソレノイド磁場Bi は内周側であり、外周側Bo に比べ大きくなっている。
【0048】この磁場の傾斜はフィラメント環2とフィラメント環3の間のギャップ4の位置でも、内周側は外周側に比べ大きくなっておりギャップを周回積分しても鎖交磁場が残ることになる。ここで、内環3が逆流しないためには往復電流を流すターン数のうちソレノイド磁場と鎖交する割合を半分以下にすれば良いが本図の場合ギャップ4の距離A及びBにおいてη=A/(A+B)が0.5 以上でありフィラメント環3の電流は逆流すると予想される。また、本図のような長方形形状超電導導体の場合フィラメントギャップのA対Bの比は概略導体の比A′対B′になっており、長辺A′を常に内側に巻回すフラットワイズの巻線をすることによって電流遍在を引き起こしていることがわかる。
【0049】図6は電流遍在が発生するとすると予想されるマルチフィラメント超電導線材がストランドされたストランド線材で、超電導線材1は本図の横方向に巻回されておりソレノイド磁場Bo 及びBi が形成されている。フィラメントは所定のピッチでツイストされフィラメント環2及び3を形成している。
【0050】また、超電導線材1は同様なマルチストランド超電導線材6の回りにストランドピッチP2でストランドされている。ソレノイド磁場Biは内周側であり、外周側Boに比べ大きくなっている。この磁場の傾斜はフィラメント環2とフィラメント環3の間のギャップ4の位置では図3の例と同様、鎖交磁場は残留しない。また、中央超電導線材6のフィラメント環7及び8も図2の条件を満たしていればフィラメント内環の電流は逆流しない。しかし、本図のように超電導線1と超電導線6の間のギャップ10ではη=A/πR>0.5 の条件が成立する場合があり、その場合は超電導線6の電流が超電導線1の電流に対して逆流することになる。特に、超電導線材1及び6が絶縁被覆されている場合はギャップの幅が広くなり、成立しやすくなる。
【0051】本発明に係わる超電導線材は、フィラメント環間の抵抗による抵抗電圧に対して電流の立ち上げ速度が早いパルスコイル用超電導線材として効果が大きいが、直流運転する超電導コイルでも効果が大きい場合がある。
【0052】図11はMRI用超電導コイルのような永久電流モードで運転されるコイルのフィラメント環単位の回路を模式的に表現したものである。超電導コイル部11はフィラメント環2及び3の並列回路になっている。また、永久電流の開閉をするPCS12もフィラメント環13及び14の並列回路で表している。コイル及びPCSは超電導接続17で永久電流ループを形成している。いま、電源15から抵抗性の電流供給部16を通してコイル側に電流を供給した場合、電流供給部の抵抗による抵抗電圧に対してインダクタンスによる電圧が充分小さくなるように電流を供給したとしてもフィラメント環2及び3は超電導接続部17で短絡されており、電流分布は遍在する可能性が存在している。PCSが層状の巻戻し形状に巻回されている場合はフィラメント環13及び14の電流分布はコイルと同様、遍在する可能性が存在している。
【0053】
【発明の効果】以上説明した本発明のマルチフィラメント超電導線材によれば、層内の線材の作る磁場が互いに干渉し、線材単独で作る磁場に比べて大きな合成磁場となるように層状に巻回されたマルチフィラメント超電導線材において、線材に垂直に印加される一様な変化磁場に対してフィラメント間に鎖交磁場による誘起電流が流れないように所定のピッチで各々のフィラメント位置が線材の断面内で概同軸状に回転配置されたフィラメント配置において、各々のフィラメントに流れる電流が逆流するような不均一にならないように構成されたマルチフィラメント超電導線材を提供することができる。




 

 


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