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スピン波デバイス - 株式会社日立製作所
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発明の名称 スピン波デバイス
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−97562
公開日 平成6年(1994)4月8日
出願番号 特願平4−240998
出願日 平成4年(1992)9月9日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】富田 和子
発明者 葛西 昌弘 / 菅家 庸子 / 大野 俊之 / 茶原 健一 / 小園 裕三
要約 目的
可視光より短い波長の光や電磁波を、発生または検出することができる小型な素子を提供する。

構成
励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段とを有し、前記励起部は、少なくと一部は、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を有する材料で構成されている電磁波源。
特許請求の範囲
【請求項1】電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体部を有し、前記磁性体部は、外部からエネルギーが入力されると、内部の電子の磁気的な相互作用が変化することを特徴とするスピン波デバイス。
【請求項2】請求項1において、前記スピン波を形成する材料は、FeTiO3,YCo2,YCoAl2,NaTiO2,La1-xCaxMnO3,La1-xSrxMnO3,CeFe2,Er2Fe14B,CeNiSn,Yb3Se4,Ni0.45Mn0.55TiO3,LiNiO2,LiVO3,CsNiBr3,CuFeO2,Lu2Fe37,CsNiCl3,FeRhCoのうち、少なくともいずれかを有することを特徴とするスピン波デバイス。
【請求項3】請求項1において、前記エネルギーは、電場、磁場、電磁波、熱、音で表されるエネルギーのいずれかであることを特徴とするスピン波デバイス。
【請求項4】電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体部と、前記磁性体部の比抵抗を検出する手段とを有し、外部から前記磁性体部に供給された検出すべきエネルギーの変化を、前記磁性体部の比抵抗の変化として検出することを特徴とするスピン波センサ。
【請求項5】電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料によって構成された磁性体部と、前記磁性体部に対して電磁波を照射する照射手段と、前記磁性体部を透過した電磁波を検出する検出手段とを有し、外部から前記磁性体部に供給された検出すべきエネルギーの変化を、前記磁性体部を透過した電磁波の変化として検出することを特徴とするスピン波センサ。
【請求項6】電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体部と、前記磁性体部に対して磁場を印加する印加手段と、前記磁性体部の磁化を検出する検出手段とを有し、外部から前記磁性体部に供給された検出すべきエネルギーの変化を、前記磁性体部の磁化の変化として検出することを特徴とするスピン波センサ。
【請求項7】請求項4、5または6において、前記検出すべきエネルギーは、電場、磁場、電磁波、熱で表されるエネルギーのいずれかであることを特徴とするスピン波センサ。
【請求項8】請求項4、5または6において、前記磁性体部は、前記スピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、前記磁性体薄膜に積層された、前記スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有し、前記スピン波を形成しない材料で構成された薄膜は、前記スピン波を形成する材料で構成された薄膜の両面に配置され、前記スピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜の膜厚は、電子の平均自由行程以下であることを特徴とするスピン波センサ。
【請求項9】電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、前記磁性体薄膜に積層された、前記スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有し、前記スピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜の膜厚は、電子の平均自由行程以下であることを特徴とする磁性体超格子デバイス。
【請求項10】請求項9において、前記スピン波を形成しない材料で構成された薄膜は、前記スピン波を形成する材料で構成された薄膜の両面に配置されていることを特徴とする磁性体超格子デバイス。
【請求項11】励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段とを有し、前記励起部は、少なくとも一部が、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成されていることを特徴とする電磁波源。
【請求項12】請求項11において、前記励起部は、前記スピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有し、前記スピン波を形成しない材料で構成された薄膜は、前記スピン波を形成する材料で構成された薄膜の両面に配置されていることを特徴とする電磁波源。
【請求項13】請求項11において、前記励起部は、前記スピン波を形成する材料で構成された粒子を有し、前記粒子の大きさは、電子の平均自由行程以下であることを特徴とする電磁波源。
【請求項14】請求項13において、前記粒子は、最も短い辺の長さが電子の平均自由行程以下の直方体形状、底面の直径が電子の平均自由行程以下の円柱形状、および、直径が電子の平均自由行程以下の球形のうち少なくともいずれかを有することを特徴とする電磁波源。
【請求項15】請求項11において、前記励起部にエネルギーを供給する手段は、前記励起部に電場を印加する手段、前記励起部に磁場を印加する手段、および、前記励起部に電磁波を照射する手段のうち、少なくともいずれかを有することを特徴とする電磁波源。
【請求項16】請求項11において、前記励起部から発せられた光を反射するための反射ミラー部をさらに有することを特徴とする電磁波源。
【請求項17】基体と、前記基体上にアレイ状に配置された複数の発光素子と、前記発光素子を駆動する駆動手段とを有する発光素子アレイであって、前記発光素子は、励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段とを有し、前記励起部は、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有することを特徴とする発光素子アレイ。
【請求項18】微細パターンを試料上に描画するための描画装置であって、前記描画装置は、電磁波源と、試料を載置するための試料台と、前記電磁波源から発せられた電磁波を前記試料台上で相対的に走査させるための走査手段とを有し、前記電磁波源は、励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段とを有し、前記励起部は、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有することを特徴とする描画装置。
【請求項19】基体と、前記基体上にマトリクス状に配置された複数の電磁波源と、前記マトリクス状に配置された複数の電磁波源上に配置された、蛍光材料を含んだ蛍光板とを有する平面光源装置であって、前記電磁波源は、可視光よりも短波長の電磁波を発し、前記蛍光板は、前記電磁波源が発光した電磁波を可視光に変換し、前記電磁波源は、励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段とを有し、前記励起部は、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、前記スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有することを特徴とする平面光源装置。
【請求項20】試料を載置する試料台と、可視光より短い波長の電磁波を前記試料に照射する電磁波源と、前記電磁波の前記試料への入射角を変化させる駆動手段と、前記試料によって回折した電磁波を検出する検出手段とを有する電磁波回折装置であって、前記電磁波源は、励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段とを有し、前記励起部は、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、前記スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有することを特徴とする電磁波回折装置。
【請求項21】電磁波源と、前記電磁波源を生物体内部に挿入可能にするために、前記電磁波源を密閉した状態で収容する容器とを有し、前記電磁波源は、励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段とを有し、前記励起部は、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、前記スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有することを特徴とする医療用電磁波源。
【請求項22】光源と、光記録媒体を保持する保持手段と、前記光源から発せられた光を前記光記録媒体上に集光する光学系と、前記光記録媒体からの反射光を検出する検出手段とを有する光記録装置であって、前記光源は、励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段と、前記励起部から発せられた光を反射するための反射ミラー部とを有し、前記励起部は、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体薄膜と、スピン波を形成しない材料で構成された薄膜とを有することを特徴とする光記録装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁性体中において見られる、スピン波の波動性を利用したデバイスに係り、特に、高速スイッチング素子、高感度検出素子、検出素子、磁性体超格子素子、電磁波源および発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、赤色光から赤外域の波長の光を発する光源や、これらの光を検出する光検出素子としては、半導体を材料とする小型な半導体レーザ素子や発光ダイオード素子やフォトダイオード素子が、光通信、光記録などに広く用いられている。半導体を用いた素子は、小型で、安価に大量生産することができ、光通信や光記録等に、既に広く用いられている。
【0003】光通信においては、単位時間内に送れる情報量を増やすために、また、光記録においては、単位面積内に記録できる情報密度が高くするために、より短波長の光を発光する素子の開発が望まれている。しかしながら、現状では、青色より短い波長の可視光や、可視光より短い波長の光や電磁波を発生する装置としては、大型なガスレーザや、電子線等を用いたX線発生装置や、加速器等の高価で大型な装置しか存在しないため、安価で小型な装置の開発が望まれている。
【0004】近年、GaAsあるいはGaAlAs等のバンドギャップの異なる半導体材料を積層して量子井戸を形成した超格子を用いた素子の開発が進んでいる。例えば、超格子を用いた素子は、応用物理 第61巻、第4号(1992年)第350頁から351頁に記載されている。
【0005】通常の半導体レーザは、半導体材料を利用した発光素子は、伝導帯・価電子帯間でキャリアが遷移することによって発光するので、発光エネルギーは、バンドキャップをこえることはなく、半導体材料のバンドギャップの大きさが、発光波長を制限する重要な因子となっていた。これに対し、半導体超格子を用いた発光素子は、活性層の厚さをキャリアのド・ブロイ波長以下に薄くすることにより、量子サイズ効果が生じ、通常のバンドギャップとは異なる量子準位を形成する。通常のバンドギャップとは異なる量子準位で、キャリアが遷移することにより、通常の発光素子より、短い波長の光を発光する可能性がある。
【0006】これは、半導体中の電子の動きを波としてとらえた量子力学的な概念の「電子波」に基づくものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電子波デバイスを発光素子として用いた場合にも、電子波のエネルギーは、およそ1から10エレクトンボルトであるため、電子波デバイスにより発生させることのできる電磁波の波長は、理論的に、1ミクロンから0.5ミクロン程度である。従って、電子波デバイスでは、可視光より短い波長の光や電磁波を発生させることはできないという問題があった。
【0008】本発明は、可視光より短い波長の光や電磁波を、発生または検出することができる小型な素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様によれば、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体部を有し、前記磁性体部は、外部からエネルギーが入力されると、内部の電子の磁気的な相互作用が変化することを特徴とするスピン波デバイスが提供される。
【0010】前記スピン波を形成する材料は、FeTiO3,YCo2,YCoAl2,NaTiO2,La1-xCaxMnO3,La1-xSrxMnO3,CeFe2,Er2Fe14B,CeNiSn,Yb3Se4,Ni0.45Mn0.55TiO3,LiNiO2,LiVO3,CsNiB3,CuFeO2,Lu2Fe37,CsNiCl3,FeRhCoのうち少なくともいずれかを有する材料を用いることができる。
【0011】前記エネルギーとしては、電場、磁場、電磁波、熱、音で表されるエネルギーのいずれかを用いることができる。
【0012】また、上記目的を達成するために本発明の第2の態様によれば、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成された磁性体部と、前記磁性体部の比抵抗を検出する手段とを有し、外部から前記磁性体部に供給された検出すべきエネルギーの変化を、前記磁性体部の比抵抗の変化として検出することを特徴とするスピン波センサが提供される。
【0013】上記目的を達成するために本発明の第3の態様によれば、励起部と、前記励起部にエネルギーを供給する手段とを有し、前記励起部は、少なくとも一部が、電子が互いに磁気的な相互作用を有し、前記電子のスピンが集団運動をすることによって、前記電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する材料で構成されていることを特徴とする電磁波源が提供される。
【0014】
【作用】本発明では、上記目的を達成するために、磁気的な相互作用を持った系であって電子のスピンが集団運動することによって、電子の磁気的な相互作用が波動として伝播するスピン波を形成する磁性体を用いたものである。
【0015】磁性体には一般に、強磁性体と反強磁性体の2種類がある。電子は上向き下向きの2種類のスピンをとることができる。強磁性体とは、電子のもつスピンが平行な同じ向きを向いた方がエネルギー的に安定な物質で、反強磁性体とはスピンの向きが反平行の状態が安定な物質である。強磁性体においては、電子の持つスピンの向きが揃っているために、磁化を測定したときに磁気モーメントとして観測される。電子のスピンが前記のように磁気的な秩序を持って整列するのは、電子間に磁気的な相互作用、すなわちスピン相互作用があるためである。磁性体中においては、各々の原子の電子が違いに磁気的な相互作用をしあって、エネルギー的にもっとも安定な方向を向く。
【0016】一般に、ある安定な方向を向いたスピンはその位置で安定し、動くことはないのであるが、【0017】
【化1】FeTiO3,YCo2,YCoAl2,NaTiO2,La1-xCaxMnO3,La1-xSrxMnO3,CeFe2,Er2Fe14B,CeNiSn,Yb3Se4,Ni0.45Mn0.55TiO3,LiNiO2,LiVO3,CsNiBr3,CuFeO2,Lu2Fe37,CsNiCl3,FeRhCoのような、ある種の磁性体においては電子のスピンが違いに相互作用をして集団的な運動をする。磁気モーメントの軸を中心として、互いに相互作用しながら回転や振動の運動をすることがある。この運動は、一種の量子力学的な波動としてとらえることができるので、これをスピン波と呼ぶ。前記スピン波は、特定の波長と振動数を持っている。これまでに、上記スピン波をデバイスに応用することは試みられていなかった。
【0018】材料が、上記のようなスピン波を形成する材料であるかどうかは、以下のような検出装置を用いて、スピン波を検出することによって確認することができる。検出装置は、図13のように、磁性体試料211と、磁性体試料211に磁場を印加する装置212と、磁性体試料211に電磁波を照射する装置213と、磁性体試料211を透過した電磁波を検出する検出器214とを有して構成される。この装置を用いて、磁場印加装置212と電磁波照射装置213とから、磁性体試料211に磁場と電磁波を同時に照射する。そして、磁性体試料211を透過した電磁波のスペクトルを検出器214により検出する。照射する電磁波の周波数を一定に保ち、印加する磁場の強度を変化させると、照射する電磁波が、スピン波と共鳴するある特定の周波数において、電磁波の吸収スペクトルは図14のようにするどい吸収をしめす。上記吸収を示すとき電磁波の周波数は、磁性体によって異なるが例えばFe-Niの場合では、マイクロ波帯に当たる。本発明におけるスピン波を形成する試料では、発生するスピン波のエネルギー領域が高くなるため、吸収スペクトルは可視光からX線の領域となる。したがってこの吸収スペクトルの波長を調べることによって、試料が、スピン波を形成する材料で構成されているかどうかを検出することができる。
【0019】また、上記方法とは他に、例えば中性子線回折やミューオン散乱などによってもスピン波を検出する事ができる。
【0020】上記スピン波と類似の用語に、従来技術で用いられている「電子波」がある。電子波とは、電子を波としてとらえたときの量子力学的な概念であるが、スピンの集団運動は多電子系を考えなければならないのに対して、電子波の概念は一つの電子で考えることができることが大きく異なっている。これは、電子間の相互作用がほとんどない物質中での近似的なとらえ方である。一般に「電子波デバイス」と言われる、たとえば半導体超格子固体レーザーや、メゾスコピック発光素子などは上記のような考えに基づいてつくられたものである。
【0021】上記のようなスピン波と電子波はともに波動としての性質を持つという点では共通であるが、波動の持つエネルギーが大きく異なっている。電子波のエネルギーはおよそ1から10エレクトンボルトであるのに対して、スピン波の持つエネルギーはおよそ100から1000エレクトロンボルト程度である。上記のエネルギーの違いは、電子波デバイス及びスピン波デバイスを発光素子として用いた場合の、発光波長として現れてくる。電子波デバイスにより発生させることのできる電磁波の波長は、1ミクロンから0.5ミクロン程度であるのに対して、スピン波デバイスはさらに短い波長の電磁波を発生することができ、もっとも短い波長で10オングストローム程度のX線領域の電磁波まで発生させることができる。
【0022】尚、本明細書において、電磁波は、光を含むものとする。
【0023】本発明の第1の態様のスピン波デバイスは、スピン波を形成する材料で構成された磁性体部に、電場、電磁波、磁場、熱、音で表されるエネルギーのうち少なくとも1つを入力することにより、磁性体部の電子の磁気的な相互作用を変化させる。これにより、磁性体部の磁気的性質が変化するので、この変化を利用して、スイッチング素子、発光素子、検出素子等として用いることができる。
【0024】本発明の第2の態様では、スピン波を形成する磁性体をセンサーの励起部に用いたものである。スピン波は一種の励起状態にある。従って、外部から、磁場、電磁波、光、熱などのエネルギーを与えると、励起状態が変わりこれによって発生する電圧が異なることになる。これにより、エネルギーの検出が可能である。また、スピン波の状態が異なると磁性体の磁化の大きさや、電磁波の吸収波長が異なる。この現象を利用して、外部からのエネルギーの検出を可能ならしめたものである。
【0025】また、本発明では、スピン波の生じている磁性体薄膜と、電子の間に磁気的な相互作用の無い非磁性体薄膜、もしくは磁性体であってもスピン波の生じない磁性体薄膜を積層した構造の磁性体超格子デバイスを作製することができる。積層周期は、たとえば50オングストロームから100オングストローム程度のものが考えられる。上記積層膜の膜厚は、発生しているスピン波の波長と同程度の膜厚であることが必要である。また、上記積層膜の積層回数は、発生させようとするスピン波の波長によって異なるが、非磁性体/磁性体/非磁性体のようなスピン波の生じる層を、非磁性体で挟み込むような構造が最低一組は必要である。
【0026】上記のような磁性体超格子を作製することによって、上記のスピン波を生じているような磁性体中のスピン波は、非磁性体もしくは磁性体であってもスピン波の生じていない磁性体によって形成されるスピンバリアによって、上記スピン波の生じている薄膜中に閉じこめられる。このように、磁気的な波動を異なる磁性の材料で挟むことによってポテンシャルを形成し、この中にスピン波を閉じこめることができるようになった。これは、本発明の磁性体超格子によりはじめて可能になった点であり、従来の超格子材料ではできなかった点である。
【0027】また、本発明の第3の態様では、スピン波を形成する材料で構成した励起部と、前記励起部にエネルギーを印加するための手段とを有する構造の電磁波源を作製したものである。励起部を、磁性体超格子構造にした場合、スピン波は超格子中に閉じこめられ新たな量子準位を形成する。上記スピン波は外部からのエネルギーにより励起状態になり、一定の崩壊時間の後に基底状態に戻る。このときの上記2つの準位間のエネルギー差に相当する波長の光子を放出する。放出される光や電磁波の波長は、半導体超格子材料を用いた発光素子の波長に比べ一桁から二桁短いものである。このような、波長域の光や電磁波は、従来技術では加速器のような大規模な装置を用いてしかえられなかったが、本発明により容易にこれを得られるようになった。
【0028】磁性体超格子からなる励起部の両面に反射ミラーを設けた場合、上記放出された光子は、反射ミラーによって、反射されることを繰り返し、位相の揃った成分がレーザー光として放出される。放出される上記レーザー光の波長は、半導体超格子材料を用いた固体レーザー素子に比べ一桁から二桁短いものである。上記波長域のレーザー光は、従来技術では加速器のような大規模な装置を用いてしかえられなかったが、本発明により容易にこれを得られるようになった。
【0029】また、本発明の発光素子を用いることにより、アレイ状や大面積の紫外域からX線域の発光波長を持つ光源が実現することができる。これにより、従来の光源では不可能であった超微細加工装置の大幅な小型化、光記録方式の超高密度化が可能となる。さらにまた、人体内に設置可能な医療用X線源が可能となる。さらにまた、上記磁性体超格子材料の積層周期を変えることにより、紫外域の発光素子の作製が可能である。上記紫外域発光素子から放出される光を、蛍光材料により可視域の光に変換することにより、平面光源も可能となる。
【0030】
【実施例】本発明の一実施例を、図面を用いて説明する。
【0031】(実施例1)まず、本発明の第1の実施例の面発光型固体X線レーザ素子について、図1に従って説明する。本実施例の面発光型固体X線レーザ素子は、図1のように、磁性体超格子からなる励起部1と、励起部1の上面に設けられた反射ミラー2aと、励起部1の下面に設けられた反射ミラー2bとを備えて構成される。また、さらに、本実施例の面発光型固体X線レーザ素子は、励起部1を励起するエネルギーとして、励起部1の端面にCu−kX線を照射するX線源3を備えて構成される。
【0032】励起部1として用いた磁性体超格子は、FeTiO3膜5/ガーネット膜6を、50オングストローム周期で、それぞれ20層積層したものを用いた。また、上面の反射ミラー2aとしては、発光波長の1/4の周期で積層したSiO2/Auからなる多層膜を、反射ミラー2bとしては、Auの単層膜を用いている。反射ミラー2aと反射ミラー2bは、レーザ共振器を構成している。
【0033】本実施例の面発光型固体X線レーザ素子を発振させる場合には、このレーザ素子を液体窒素温度に冷却し、X線源3から励起部1に、励起エネルギーとしてCu−kX線を照射する。発光光は、反射ミラー2aを透過して出射される。発光光を検出器で測定したところ、波長25オングストロームのX線が発生していることが分かった。この発光光のスペクトルを図2に示す。単色性のきわめてよいX線が得られていることが分かる。
【0034】本実施例における面発光型固体X線レーザ素子の動作原理を、図3を用いて説明する。励起部1内のポテンシャルは、図3のように、スピン波を生じる磁性体であるFeTiO3膜5のスピンの波動関数を、非磁性体のガーネット膜6のポテンシャルが閉じ込めている。すなわち、ガーネット膜6は、FeTiO3膜5のスピンの波動関数に対して、バリア層としての働きをする。これにより、FeTiO3膜5のスピンの波動関数は、膜厚方向の量子サイズ効果によって、量子準位を形成する。この量子準位間の電子の遷移により、X線が発光される。
【0035】(実施例2)また、本発明の第2の実施例の磁気検出素子を図4を用いて説明する。本実施例の磁気検出素子は、基板100上に、酸化物磁性体La0.7Ca0.3MnOz(以下、LCMOと記す)膜7bと、酸化物超伝導体Y1Ba2Cu3y(以下、YBCOと記す)膜8と、LCMO膜7aとで構成される3層膜101を備えている。さらに、LCMO膜7b上には、2組の電極51、52が設置されている。本実施例では、基板100として、(100)面のMgOを用いた。LCMO膜7a、7bの膜厚は、1500A(A:オングストローム)とした。または、YBCOの膜厚は、500Aから6000Aの膜厚から複数の膜厚を選択して、複数の素子を形成した。
【0036】本実施例の磁気検出素子を動作させる場合には、検出すべき磁場中に、磁気検出素子を3層膜101の法線方向と磁場の方向とが一致するように配置する。そして、電極51に電源を接続して、3層膜101の膜面方向に一定電流を供給し、電極52に電圧計を接続して、電圧を測定する。
【0037】図4の縦軸に、測定した電圧の変化を比抵抗の変化として換算した値を、横軸に、YBCO膜8の厚さを示す。YBCO膜8の厚さが2500A以下の場合には、磁気に対する素子の電圧変化、すなわち比抵抗の変化率は、比較例として測定した単層のLCMO膜の比抵抗の変化率(4%)より、大きかった。このように、本実施例の磁気検出素子は、単層のLCMO膜よりも高感度で、磁場の大きさを検出できる。
【0038】これは、YBCO膜8を挟んで配置されているLCMO膜7a、7bのスピン波が、YBCO膜8を介して相互に干渉しているため、検出出力が上昇したものと考えられる。
【0039】また、本実施例の磁気検出素子のLCMO膜7a、7bのスピン波は、磁場の他に光、電磁波、音などのエネルギによっても変化するので、本実施例の磁気検出素子を用いて、磁場の他に電磁波、音などのエネルギーを電圧の変化として検出することも可能である。
【0040】(実施例3)また、本発明の第3の実施例の端面発光型固体レーザ素子を、図6によって、説明する。図6に示したのは、本発明による磁性超格子を発光層として用いた、端面発光型の固体レーザ素子である。本実施例の端面発光型固体レーザ素子は、図6のように、磁性体超格子からなる発光層12と、発光層1を挟んで配置されたSiO2絶縁膜13a、13bとを有している。絶縁膜13a、13b上には、それぞれ電極14a、14bが配置されている。また、発光層12発光部側の端面には、Al23からなる透過膜15を設け、透過膜15を配置した端面と対向する端面には、Au/TiO2を500オングストローム周期で、5層積層した多層ミラー15を配置した。発光層12は、NaTiO2/NdAlO3を50オングストローム周期で10層積層したものである。
【0041】本実施例のレーザ素子を発光させる際には、電極14a、14bに電圧を印加する。これにより、絶縁層13a、13bを介して、発光層12に電界が印加される。図7に示すように、電極14a、14b間の電圧が、しきい電圧5.2Vを越えたところから、発光が始まった。このときの波長は、250 nmであった。また、電界を印加しないで、外部から2.5 Tのパルス磁場を加えた場合にも同様の発光がみられた。
【0042】(実施例4)また、本発明による第4の実施例の固体レーザアレイを図8を用いて説明する。本実施例の固体レーザアレイは、基体18上に、マトリクス状に実施例3の端面発光型固体レーザ素子17を搭載している。固体レーザ素子17間は、配線20によって接続されている。また、配線20には、励起電源19が接続されている。
【0043】作製手順としては、まず、上記固体レーザ素子17と配線20とを、基体18上に作製し、つぎに、配線20と励起用電源19とを接続する。上記励起用電源19から電圧を供給すると、上記固体レーザ素子は発光動作をし、基体18の法線方向に光を放出する。従って、上記レーザアレーは大面積の平行光源として利用できる。
【0044】上記特性を用いて、図9に示すような可視光平行光を発する平面光源パネルを作製することができる。まず、上述の固体レーザアレイ21を複数個並べて配置し、その前面に蛍光材料110を塗布した透明な板22を設置する。外部の励起用電源19により、レーザアレイ21から紫外域の光を放出させると、上記蛍光材料110はこれを可視域の白色光に変換し、パネル全面が一様に光る平面光源が得られた。
【0045】また、本発明による固体レーザアレイ21は、紫外線やX線を照射して材料分析をする各種装置の線源としても応用が可能である。図10に、本発明による固体レーザ素子を線源としたX線回折装置により、Pt薄膜のX線回折パターンを測定したときの測定結果を示す。本実施例の固体レーザアレイ21をX線回折装置に用いた場合、線源を小型にすることができる。また、固体レーザアレイ21は、半導体製造技術を応用して、大量生産することができるので、安価に提供することができる。
【0046】(実施例5)また、本発明の第5の実施例の描画装置を図5によって説明する。図5に示したのは、第4の実施例の本発明による固体レーザアレイ21を用いた、微細加工のための描画を行う描画装置の概略である。本実施例の描画装置は、第4の実施例の固体レーザアレイ21と、集光光学系10と、試料台11と、試料台11を走査する走査装置113と、これらを保持する筐体112とを備えている。
【0047】図5中のレーザアレイ21から放出された、真空紫外域の波長をもつ紫外線は、光学系10により集光され、試料台11上の試料114に到達する。上記試料台11は、走査装置によりその位置を制御されるので、試料114上に塗布された有機感光材料上に任意の微細パターンを描くことができる。
【0048】(実施例6)また、本発明による第6の実施例の医療用電磁波源を、図11によって説明する。本実施例の医療用電磁波源は、第1の実施例の面発光型固体X線レーザ素子23と、面発光型固体X線レーザ素子23に対して、電圧を供給するための小型電池24と、永久磁石26と、これらを封入する樹脂カプセル25とを備えて構成される。樹脂カプセル25の形状は、直径5ミリメートルで長さ12ミリメートルの円筒状である。また、樹脂カプセル25は、人体に無害なレジン系の樹脂で構成されている。
【0049】本実施例の医療用電磁波源を用いて、被検者の患部の局所的なレントゲン写真を撮影する手順について説明する。まず、被検者は、医療用電磁波源を嚥下する。撮影者は、被検者の体外から、永久磁石26に磁界を印加することによって、医療用電磁波源の位置を制御して、被検者の患部付近に医療用電磁波源を移動させる。この後に、撮影者は、レントゲン写真用乾板を検者の人体に密着させて、レントゲン写真用乾板を設置することにより、面発光型固体X線レーザ素子23から発光されたX線のうち、患部を透過したX線によって、レントゲン写真用乾板を露光させる。これにより、被検者の患部の局所的なレントゲン写真を、最小の被爆量で撮影することができる。
【0050】(実施例7)本発明の第7の実施例として、基板上に、磁性体超格子の直方体形状の粒子を備えたスピン波デバイスの作製方法について説明する。磁性体超格子は、スピン波を有する材料の薄膜と、スピン波を有さない材料の薄膜とを積層して構成した。 まず、基板上に、150A周期のBaNiO2/CaVO3積層膜を10層をイオンビームスパッタ装置で積層した。図12は薄膜の作製に用いるためのイオンビームスパッタリング装置である。イオンビームスパッタ装置は、図12のように、真空容器130中に、複数のターゲットを保持するためターゲットホルダ27と、試料膜を付着させる基板を保持する基板ホルダ131と、ターゲットにイオンビームを照射するためのイオン源26と、基板に活性化されたガスを照射するためのラジカル源28とを備えている。本実施例では、イオン源26から、キセノン(Xe)イオンビームをターゲットに照射して、ターゲットから飛散したスパッタ粒子を、基板ホルダー131上の基板に対して堆積させて成膜した。また、基板には、ラジカル源28より、高周波により活性化されたガスを照射した。Xeイオンの加速電圧は750ボルト、ビーム電流は50ミリアンペアとして、基板温度摂氏350度で150オングストローム周期のBaNiO2/CaVO3積層膜を10層積層した。
【0051】つぎに、この積層膜上に電子線レジストを塗布して、電子線描画装置でたて10ミクロン、横800オングストロームの長方形のパターンを、100×150個形成した。この後、イオンミリング装置によりアルゴンイオンを照射して、たて10ミクロン、横800A、厚さ1500Aの直方体形状の粒子に加工した。
【0052】この素子に、波長1.504オングストロームのX線を照射したところ、1500オングストロームの光の放出が認められた。これは、直方体の最も短い800Aの辺で生じた量子サイズ効果により、超格子内のエネルギー差の大きな量子準位が形成されたためである。
【0053】本実施例において、粒子の形状は、直方体形状に限定されるものではなく、球形や円柱形や立方体等の種々の形状に形成した場合でも、量子サイズ効果により、短波長の電磁波が発光される。この場合、最も短い辺または直径により、発光する電磁波の最短波長が決定される。
【0054】また、本実施例の磁性体超格子の粒子を励起部や発光部として用いて、上述の第1、3、4、5、6の各実施例のスピン波デバイスを作製することも可能である。その場合、発光波長を粒子のサイズによって、制御することができる。
【0055】また、上述の各実施例においては、磁性体超格子を構成するためのスピン波を有する材料として一例しか記載していないが、FeTiO3,YCo2,YCoAl2,NaTiO2,La1-xCaxMnO3,La1-xSrxMnO3,CeFe2,Er2Fe14B,CeNiSn,Yb3Se4,Ni0.45Mn0.55TiO3,LiNiO2,LiVO3,CsNiBr3,CuFeO2,Lu2Fe37,CsNiCl3,FeRhCo等の材料を用いた場合にも、同様に作製することができる。
【0056】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、可視光より短い波長の光や電磁波を、発生または検出することができる小型な素子を提供することができる。




 

 


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