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発明の名称 量子細線超格子構造体及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−97425
公開日 平成6年(1994)4月8日
出願番号 特願平4−244496
出願日 平成4年(1992)9月14日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
発明者 原口 恵一 / 勝山 俊夫 / 比留間 健之 / 矢沢 正光 / 高口 雅成 / 柿林 博司
要約 目的
本発明の目的は、1次元量子細線超格子を容易に実現することにある。

構成
針状結晶1は単一の材料のジンクブレンド構造2とウルツァイト構造3とで1次元量子細線超格子を構成する。
特許請求の範囲
【請求項1】異なる結晶構造を結晶内の異なる位置に形成することによってポテンシャル分布を形成したことを特徴とする量子細線超格子構造体。
【請求項2】上記構造体を半導体材料で形成することを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項3】上記異なる結晶構造を、上記結晶内の周期的に異なる位置に形成することによって、上記ポテンシャルに周期的分布を形成したことを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項4】径が1000Å以下の量子細線内の長手方向の異なる位置に、上記異なる結晶構造を形成することによってポテンシャルを変化させ、1次元超格子構造を実現していることを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項5】針状結晶を用いて結晶構造を周期的に異なる位置に形成することによってポテンシャルに周期的分布を形成したことを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項6】結晶構造の変調の周期が200Å以下であることを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項7】上記異なる結晶構造を、それぞれ異種の材料で形成していることを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項8】上記異なる結晶構造としてジンクブレンド構造とウルツァイト構造を用いて形成していることを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項9】請求項4記載の構造体の量子細線の長手方向に電流を流すことを特徴とする量子細線超格子装置。
【請求項10】請求項1記載の構造体の異なる結晶構造の接合する部分に電流を流すことを特徴とする量子細線超格子装置。
【請求項11】請求項5記載の構造体の周期的に異なる位置に形成した結晶構造の軸方向に電流を流すこと特徴とする量子細線超格子装置。
【請求項12】請求項1記載の構造体の異なる結晶構造の接合する部分を通過する電流を流すことを特徴とする量子細線超格子装置。
【請求項13】請求項1記載の構造体に電界を加えることによってポテンシャルを制御することを特徴とする量子細線超格子装置。
【請求項14】請求項1記載の構造体に磁界を加えることによってポテンシャルを制御することを特徴とする量子細線超格子装置。
【請求項15】請求項6記載の構造体を用いた半導体レーザ。
【請求項16】針状結晶の長手方向の結晶構造を周期的に変化させることによって、長手方向に移動する電子または正孔の光学フォノンによる散乱を低減することを特徴とする量子細線超格子装置。
【請求項17】単一の材料において、他の不純物をドープすることなく、上記ポテンシャル分布を形成したことを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項18】単一の材料において、第1の領域と他の領域にそれぞれ別々のバンド構造を有する結晶を配置することを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項19】単一の材料において、第1の領域と他の領域にそれぞれ別々の誘電率を有する結晶を配置することを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項20】単一の材料において、第1の領域と他の領域にそれぞれ別々の透磁率を有する結晶を配置することを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項21】単一の材料において、第1の領域と他の領域にそれぞれ別々の電気伝導度を有する結晶を配置することを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項22】単一の材料において、第1の領域と他の領域にそれぞれ別々の超伝導臨界温度を有することを特徴とする請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項23】結晶を成長する際、自然現象により決定される結晶構造を、成長温度や圧力等で制御することを特徴とする量子細線超格子構造体の製造方法。
【請求項24】針状結晶を成長する際、その成長種としてその結晶材料と共晶を作る材料を用いることを特徴とする量子細線超格子構造体の製造方法。
【請求項25】自己組織化作用(自然現象により構造を形成する作用)により作製されることを特徴とする量子細線超格子構造体の製造方法。
【請求項26】上記構造体をIII−V族化合物半導体を用いて実現した請求項1記載の量子細線超格子構造体。
【請求項27】上記構造体をII−VI族化合物半導体を用いて実現した請求項1記載の量子細線超格子構造体。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は1次元量子細線超格子を持つ構造体、その製造方法、及びそれを用いた光デバイス、電子デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、一般に古典物理のイメージによって設計された半導体素子の性能向上には限界がせまりつつあるとみられている。これは微細加工技術そのものに限界が見え始めていることと、微細構造による様々な困難の出現によるものである。
【0003】しかし一方、微細な構造を作製することによって、所謂閉じ込め効果などの量子効果が出現し始め、この効果を積極的に利用することによって、半導体デバイスの様々な性能の向上が期待されている。すなわち、光デバイスの分野において、半導体量子井戸や量子細線を用い、キャリアの多次元量子閉じ込め効果により、半導体レーザの発振光の線スペクトル幅の低減や、しきい値電流密度の低下が実現している。また、電子デバイスの分野において、高電子移動度トランジスタ(HEMT)に代表される電子デバイスにおける変調ドープ構造の活用により、キャリア移動度の大幅な向上や低雑音化が実現している。
【0004】このような量子井戸や量子細線について、様々な作製法が提案されている。特に、量子細線では、主にGaAs等の半導体にリソグラフィとエッチング技術による微細加工技術を施すことによって作製されている(フィジカル・レビュー・レターズ 64、(1990年)第1154ページから第1157ページ、(Phys.Rev.Lett.64,1154-1157(1990))),(アプライド・フィジックス・レターズ 58、(1991年)第1440ページから第1442ページ、(Appl.Phys.Lett.58,1440-1442(1991)))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような微細加工によって作製された量子細線は、細線の表面あるいは界面に結晶欠陥が多数形成されるという欠点がある。このような結晶欠陥は発光現象の場合では、非発光中心を形成し、発光効率を著しく低下させる原因となり、キャリア輸送の場合では、捕獲中心を形成してキャリアをトラップし、著しく移動度を低下させる原因となる。また、超格子構造の作製という観点からも同様のことが指摘できる。
【0006】一般に従来技術を用いて量子効果によりデバイスの性能を向上させるためには、1000Å以下の構造を1原子層の狂いもないほどに形成する高度な制御性と、超格子構造の作製における場合のように複雑で、かつ多数の工程を必要としている。しかし、これは現在極めて困難である。すなわち、半導体の微細加工技術は近年極限にきているといわれており、このような微細加工を従来技術で行なうことは不可能に近いと考えられている。このため、量子細線構造や1次元超格子構造を採用することにより、デバイス性能の大幅な改善が期待されているにもかかわらず、いまだ実現にはいたっていない。したがって、このような方法で量子細線や1次元超格子を利用して、例えば半導体レーザや電子デバイスを作製したとしても、高効率の発振も高い移動度も得られず、実用上致命的な欠点となる。
【0007】上述したように、従来の方法で作製した量子細線は実用上重大な欠点があり、本発明は、このような欠点を除いた量子細線を用いたデバイスを提供するものである。
【0008】一般に、量子細線や1次元超格子構造(1000Å以下の径を持つ量子細線の長手方向に超格子構造を形成した構造)を作製するための障害と成る事項は、次の通りである。
(1)量子細線や1次元超格子構造の表面及び界面の揺らぎ、つまり作製における制御性の困難である。
(2)バンド構造を変調するために結晶の材料を変えることから生じる捕獲準位、非発光準位の形成である。
(3)量子細線や1次元超格子構造をリソグラフィやエッチング技術を用い人工的に形成することから生じる工程数の多さ、及び複雑さである。
(4)また、これらのことから派生する素子の信頼性の低さ、歩留まりの悪さ、耐久性の低さである。
【0009】本発明の目的のひとつは、量子細線や1次元超格子構造の表面及び界面の揺らぎを無くした構造体、装置、その作製方法と、それを用いた素子を提供することである。 本発明の他の目的は、他の材料を用いることなく単一の材料を用いて(このため、捕獲準位や非発光準位の形成を伴わない)バンド構造や誘電率、透磁率、電気伝導度を変調することが可能な構造体、装置、その作製方法を提供することである。
【0010】本発明の他の目的は、量子細線や1次元超格子構造を自然現象を利用して形成するゆえに、工程数が少なく単純な構造体、装置、その作製方法を提供することである。
【0011】本発明の他の目的は、上記技術をもとにした、信頼性の高い、歩留まりのよい、耐久性の高い構造体、装置、その作製方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、結晶構造を結晶内の異なる位置に形成することによってポテンシャル分布を形成した構造体を用いることを基本とする。
【0013】上記目的を達成するために、本発明では、半導体基板上に成長した針状結晶を用いることを基本とする。
【0014】
【作用】一般に針状結晶はその独特の成長機構のゆえに結晶欠陥が非常に少ないという特徴を持つ。
【0015】最近、GaAsやInAsの針状結晶の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、その結晶性は極めて良好であることが分かった。また、針状結晶の結晶性長の途中でドーパントをnからpに切り換え、p-n接合を針状結晶の内部に形成し、その電流−電圧特性を評価したところ、その電気特性は極めてよいことが分かり、このことから、針状結晶の結晶性が優れていることが分かった。さらに、成長の温度を変えた針状結晶のTEM像によれば、その構造は図1(a)に示すようにジンクブレンド構造とウルツァイト構造の双晶になっており、GaAsの針状結晶の成長中の基板温度500℃のものでは構造の周期が200Åと、極めて整然と整列していることが分かった。従って、針状結晶の長手方向のバンド図は図1(b)に示すような超格子構造をとっていることが明らかとなった。
【0016】量子効果を有効に引き出すためには径が1000Å以下であることが望ましいが、この時の針状結晶の直径はおよそ100Åで(これは結晶の成長時間により、容易に制御可能である)、量子細線として用いるためにも最適である。また、InAsの針状結晶では、成長中の基板温度350℃で結晶構造の周期がわずか40Åのものが作製できた。従って、針状結晶には所謂1次元超格子を形成することができる。本発明では、人工的で複雑な工程を用いずに自然現象によって、こうした構造を単一の材料でも作製できることを利用する。
【0017】この針状結晶を用いて、例えば発光素子として利用しようとすれば、非発光過程が少ないために発光効率がよい多重量子井戸レーザが容易に作製できる。また、電子デバイスとして利用しようとすれば、捕獲準位が少なく、電子と光学フォノンの散乱が少ないという1次元超格子特有の性質のために、極めて高移動度で低雑音のトランジスタが容易に作製できる。
【0018】光素子、例えば上述した多重量子井戸レーザ(MQWレーザ)を実現する場合、針状結晶をp層とn層の間にi層として挿入した構造の作製が可能である。また、針状結晶の成長中にpまたはnをドープすることもできるので、もちろんこの方法でもMQWレーザを実現可能である。電子デバイスとして用いる場合も、もちろん、p,i,nのいずれのド−ピング構造も実現できる。
【0019】針状結晶を用いて閉じ込め効果を引き出すためには、針状結晶の周囲の材料が針状結晶の材質と異なり、例えば、電子を閉じ込める場合であれば、電子親和力が針状結晶よりも小さいことが必要である。このことから、例えば針状結晶の材料がGaAsであれば、周囲の材料はAl0.3Ga0.7Asであればよい。また、周囲の材料が絶縁体(例えばスピン・オン・グラス:SOG)から形成されれば、量子閉じ込め効果はより効率よく発現する。
【0020】針状結晶の材料は現在、III−V族化合物半導体であるGaAsとInAsが実現されているが、針状結晶を形成するものであれば、他のIII−V族化合物半導体(応用上、特にInP)でもよいし、IVのSiなどでもよい。さらに、針状結晶を形成し、かつバンドエンジニアリングを適用する材料であれば絶縁体や、超伝導体でも構わない。
【0021】針状結晶の基板は現在GaAs基板を用いているが、InP基板や、Siの基板でも問題はない。また、針状結晶は一般に基板の{111}面に垂直に(つまり、<111>軸方向、またはこれと等価な方向に)成長するので、基板の面方位を変えれば、針状結晶の軸方向も所望の方向に変えることができる。
【0022】このような針状結晶の作製方法の有効な一つの手段を説明する。まず、基板をリアクティブ・イオン・エッチング(RIE)装置の中に、作製する半導体材料と共晶系を形成する金などの金属とともにいれ、同時にスパッタする。この時、RIE装置に一端金などが付着すれば、次からはいちいち金などをRIE装置にいれる必要はない。また、この他にも、フォーカスド・イオン・ビーム(FIB)により、基板上の所望の位置に金などを打ち込み、その位置に針状結晶を成長させることもできる。
【0023】次に、減圧有機金属気相成長法を用い、実施例に示すような基板の温度範囲で針状結晶を成長させる。針状結晶の長さや太さは、成長時の原料供給量、成長時間等によって制御でき、針状結晶内部の結晶構造の周期は成長時の基板温度等によって制御できる。
【0024】本発明では、直径がほぼ1000Å以下と小さく、かつ内部で結晶構造が変調された針状結晶にキャリアを注入することによって、光デバイスや電子デバイスとして動作させることを基本とする。
【0025】針状結晶の製造の際には、いずれにせよ、作製する半導体材料と共晶系を形成する金などの金属を基板に埋め込む。針状結晶はこれを種にして成長する。従って、成長種の位置を操作することによって、針状結晶の成長する位置を制御することができる。この他、針状結晶の長さや太さは、成長時の成長時間や原料供給量で制御できる。この時、針状結晶の直径を1000Å以下にすることにより、量子閉じ込め効果を発現することができる。また、針状結晶内部の結晶構造は、ジンクブレンド構造とウルツァイト構造でそれぞれエネルギーギャップや電子親和力も異なるため、必然的に1次元超格子構造を形成する。その分布は成長時の基板温度によりある程度制御することができる。このような量子細線の超格子構造は従来技術でも試みられているが、成功にいたっていない。その理由は、量子細線の表面や界面における揺らぎや結晶欠陥である。すなわち、注入されたキャリアは、界面の揺らぎによって散乱を受けたり、結晶欠陥の作る捕獲準位にトラップされたりする。針状結晶は、自然現象によってこれらの1次元超格子構造を形成するために、表面や界面の揺らぎや結晶欠陥が本質的に少なく、そのため、注入されたキャリアを効率よく輸送したり、再結合させたりすることができる。
【0026】一般に、径が1000Å以下の量子細線では、周囲の材料の電子親和力が小さい場合には量子井戸が形成され、そこに量子準位ができる。そこに溜った電子に外部から電界が印加されるとフェルミレベルに勾配が生じ、電子は移動するが、この時、電子のフェルミ波数の選択の範囲がせまく、散乱を受けた場合には大きな運動量変化を伴うため散乱確率は小さくなり、その分電子の移動度が通常のバルクの半導体に比べ向上するといわれている。
【0027】また、径が100Å程度の量子細線の長手方向に超格子構造が形成されると、量子井戸中の量子準位に閉じ込められた電子の波動関数の重なりによってミニバンドが形成される。この時、量子細線の径と超格子の周期が適当に設計されていれば、すなわち、量子細線の径が100Å程度、超格子の周期100Å程度、形成されたミニバンドのバンド幅が20meV程度よりも小さく、ミニバンド間のエネルギーギャップが50meV程度より大きければ、電子−光学フォノン散乱のエネルギー値が存在しないために、電子−光学フォノン散乱そのものが抑制され、電子デバイスの電流値が低雑音化するといわれている。針状結晶は、これらの諸特性向上実現の為の条件を十分備えている。
【0028】
【実施例】(実施例1)GaAs基板(キャリア濃度1018cm~3、面方位(111))のひ素面をリアクティブ・イオン・エッチング(RIE)装置のプラズマでスパッタする。RIE装置のチャンバ内には、同時に金(または、鉄、ニッケル、白金等)をいれておき、GaAs基板と同時にスパッタする。(一度RIEの装置をこのように汚染しておけば、2度目以降、その装置に金等をいれる必要はない。)次に、減圧有機金属気相成長法(MOCVD法)により、GaAs針状結晶を形成する。III族原料には、トリメチルガリウム(TMG)、V族原料にはアルシン(AsH3)を用いる。この時、nドープをする場合であれば、ジシラン(S26)を同時に用いる。基板温度500℃、原料ガス供給時間300秒、V/III比100(1〜200)の条件で成長すると、図2に示すようにGaAsの微細な針状結晶1が成長する。針状結晶の長さは、ほぼ2μmと均質で、直径は約100Åである。
【0029】上記の条件で作製した試料を透過電子顕微鏡で観察したところ、図1(a)(これは、上記条件で作製したGaAsの針状結晶の1本を横にして見た図である)に示すように、ジンクブレンド構造2とウルツァイト構造3との双晶になっていた。この時、ウルツァイト構造の長さD〜100Å,ジンクブレンド構造の長さd〜100Åであった。
【0030】GaAsの針状結晶を成長する際、その基板温度を460℃で成長するとほぼジンクブレンド構造に、550℃で成長するとほぼウルツァイト構造になる。
【0031】従って、460℃〜550℃の温度範囲で成長することにより、結晶構造の分布は、およそ図3に示すようになるので自由に制御することができる。
【0032】図1(b)はGaAsの針状結晶1の1本を横にして見た図に対応して描いたバンド図である。上記の条件で結晶成長した針状結晶は、バンドギャップ(Eg)の変化の周期が100Åと、超格子として理想であり、また、結晶構造の違いによるエネルギーギャップの差も、およそ200meVと大きい。このため、針状結晶の太さやバンド構造の周期を100Å程度にすることはもちろん、サブバンドの幅を20meV、サブバンド間のバンドギャップを50meV程度にすることも可能である。従ってこの結晶は電子デバイスや光デバイスとして用いる材料としては理想的である。
【0033】(実施例2)GaAs基板(面方位(111))のひ素面に、実施例1と同様にしてInAsの針状結晶を成長することもできる。この時のIII族原料にはトリメチルインジウム(TMI)、V族原料にはアルシン(AsH3)を用いる。基板温度は350℃、原料ガス供給時間300秒、V/III比200(120〜360)の条件で成長すると、図4に示すように、GaAsの針状結晶と同様の構造を持つInAsの針状結晶5が成長する。
【0034】上記の条件で成長した試料では、針状結晶の長さはほぼ2φmと均質で、直径は100Åである。この試料を透過電子顕微鏡で観察したところ、GaAsの場合と同様、ジンクブレンド構造2とウルツァイト構造3との双晶になっており、バンドの概形図は図1(b)と同様で、ウルツァイト構造の長さD〜100Å、ジンクブレンド構造の長さd〜100Åであった。
【0035】InAsの針状結晶を成長する際、その温度を300℃で成長するとほぼジンクブレンド構造に、400℃で成長するとほぼウルツァイト構造になる。従って、300℃〜400℃の温度範囲で成長することにより、結晶構造の分布は、およそ図5に示すようになるので自由に制御できる。
【0036】なお、InAsではGaAsに比べて電子の移動度がもともと大きいのでさらに大きな量子効果を引き出すことができる。
【0037】(実施例3)実施例1、2において、RIE装置を使用せずに、GaAs基板にフォーカスド・イオン・ビーム(FIB)装置により、金等の原子を微小な種として植え付け、そこに針状結晶を成長させることによって針状結晶の成長する位置や密度等を制御することもできる。金等の原子数約105個程度をある微小な領域に打ち込むことにより、針状結晶が1本成長するので、極めて制御性よく成長させることが可能である。
【0038】(実施例4)GaAsの針状結晶を成長させたnドープの基板の上からスピン・オン・グラス(Spin−On−Glass:SOG)7を塗布しベークして、図6に示すように電極6を形成した。針状結晶先端と電極との電気的特性は、針状結晶先端部分に金原子が付着し合金状態を形成しているためにオーミック接触となっていた。図6のような素子を針状結晶を1本含むように劈開して切り出し、図7に示すようにリード線を設ける。
【0039】図7に示す素子の電気伝導を測定すると、(1)量子細線構造によるキャリアの移動度の向上(2)図1に示すような1次元超格子構造をとるために電子−光学フォノン散乱の禁止による低雑音特性等、電気特性を著しく改善することができる。
【0040】なお、n型のみでなく、p型についても同様のことがいえる。
【0041】(実施例5)GaAsの針状結晶を実施例1と同様にして成長した後、それを通常のエピタキシャル成長によりAl0.3Ga0.7As8で埋め込む。次に、実施例4と同様に電極を設け劈開すると図8のような素子を得る。この素子では、SOGで埋め込んだ場合のように真空準位にキャリアを閉じ込めている訳ではないので閉じ込め効果は減ずるが、針状結晶とAlGaAsとの間の界面準位が少ないためにキャリアが界面付近でトラップされる率が少なく、電気的特性をさらに向上させることができる。
【0042】(実施例6)図9のように、実施例2で作製した素子において、針状結晶の電極を設けたところとは異なるAl0.3Ga0.7As8の領域にショットキー電極9を設けることにより、3端子の電子素子を作製することができる。電極9はゲート電極、電極6はソースまたはドレイン電極である。
【0043】動作特性は、実施例1の(1)、(2)の理由により、低雑音の高周波特性を実現できる。
【0044】(実施例7)実施例5と同様の方法でAl0.3Ga0.7As層8で針状結晶を埋め込んだ後、pドープ(本実施例では炭素ドープ)のGaAs層10を通常の方法で積層し、図10に示すような素子を作製する。(ただし、針状結晶の先端に金等の原子が合金状態で付着しているため、p−GaAs層10は無くとも正孔は供給される。)針状結晶1は図1に示すような良好な超格子構造をしているゆえに、多重量子井戸レーザ(MQWレーザ)として動作する。従来のMQWレーザでは量子井戸が多重であるために作製に高度な結晶成長技術と、作製の為の多大な時間が必要であったが、針状結晶は適当な条件さえ整えてあげれば自然に成長するので、作製の為の時間が大幅に短縮できる。
【0045】(実施例8)GaAsのオフ基板12を用いて、図11に示すように素子構造を作製すれば、多重量子細線素子として用いることができる。図11(a)は断面図、図11(b)は上から眺めた図である。FIBにより、nドープの針状結晶をオフ基板の一つのステップ上に並べて成長し、それをn−AlGaAs13で埋め込む。針状結晶の直径は成長時間を変えることにより調整できるので、ステップをすべて覆うように調整する。針状結晶の上の方はエッチングしてゲート電極を設け(この時、針状結晶の上はすべてゲート電極に覆われるようにする)、両側のn−AlGaAs13の部分にはソースまたはドレイン電極を設ける。
【0046】この方法によれば、従来技術ではなかなかかなわなかった多重量子細線が構築できる。このように量子細線を多重化することで、電流を大幅に稼ぐことが可能である。
【0047】上記実施例では、p型でも同様である。
【0048】(実施例9)実施例1の方法において、成長条件を適当に選ぶことによりウルツァイト構造の方がひろい針状結晶を作製することも可能である。図12は、そのようにして作製した共鳴トンネルダイオードである。従来技術では困難であった障壁ポテンシャルを、針状結晶の結晶成長の条件をうまく選ぶことで、なんら加工することなしに作製することができる。
【0049】この他にも、例えばInPなどのIII−V族化合物半導体でも可能である。また、II−VI族化合物半導体の中にはジンクブレンド構造やウルツァイト構造やロックサルト構造をとる材料がしられている。
【0050】しかし、他の材料においても、例えば、半導体に限らず絶縁体や超伝導体、金属においても針状結晶を作製する方法が明らかになれば、その時は上記実施例と同様の方法でバンドエンジニアリングを実現できることはいうまでもない。その時は、例えば磁場をかけて電気伝導を変調するとか、従来からある素子と組み合わせるなどして素子の多様化を実現することは容易に可能である。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、結晶構造を変調した針状結晶を用いて1次元量子細線超格子を自然現象を利用して容易に実現できる。




 

 


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