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発明の名称 積層磁性膜およびそれを用いた磁気ヘツドならびに磁気記録・再生装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−61050
公開日 平成6年(1994)3月4日
出願番号 特願平4−210320
出願日 平成4年(1992)8月6日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】武 顕次郎
発明者 藤原 英夫 / 光岡 勝也 / 杉田 愃
要約 目的
磁界感度の高い積層磁性膜ならびに磁気ヘツド(磁気記録・再生装置)を提供することにある。

構成
少なくとも2層以上の磁性膜5,7が介在膜6,8を介して積層された積層磁性膜において、前記介在膜6,8が、遷移金属と、その遷移金属とヘテロジニスな混合体を形成しやすい物質とを含有している。
特許請求の範囲
【請求項1】 少なくとも、2層以上の磁性膜が介在膜を介して積層された積層磁性膜において、前記介在膜が、遷移金属と、その遷移金属とヘテロジニアスな混合体を形成しやすい物質とを含有していることを特徴とする積層磁性膜。
【請求項2】 前記遷移金属がCr,Mn,Fe,Co,Niのグループから選択された少なくとも1種の金属で、その遷移金属とヘテロジニアスな混合体を形成しやすい物質が、Ti,V,Cr,Cu,Ag,Au,Pt,Ir,Al,Si,Ge,Ta,W,Biのグループから選択された少なくとも1種の金属であることを特徴とする請求項1記載の積層磁性膜。
【請求項3】 前記磁性膜の少なくとも1層が磁気的なハードな膜で、他を磁気的にソフトな膜で構成されていることを特徴とする積層磁性膜。
【請求項4】 磁気的なハードな膜と磁気的なソフトな膜とが交互に積層されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層磁性膜。
【請求項5】 少なくとも、第1の磁性膜と第2の磁性膜との間に第1の介在膜が介在され、前記第2の磁性膜と第3の磁性膜との間に第2の介在膜が介在されて各磁性膜が積層してなる積層磁性膜において、前記各磁性膜が磁気的にソフトな膜で構成されているとともに、前記第1の介在膜の膜厚t1 と第2の介在膜の膜厚t2 とが等しくない(t1 ≠t2 但し、中間膜の膜厚tは0を含む)ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層磁性膜。
【請求項6】 前記相隣る磁性膜間の磁化の実質的な安定方向が±0°〜±90°の範囲で交差していることを特徴とする請求項5記載の積層磁性膜。
【請求項7】 少なくとも、第1の磁性膜と第2の磁性膜との間に第1の介在膜が介在され、前記第2の磁性膜と第3の磁性膜との間に第2の介在膜が介在されて各磁性膜が積層してなる積層磁性膜において、前記第1の介在膜と第2の介在膜とが互いに異なる材料で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層磁性膜。
【請求項8】 前記相隣る磁性膜間の磁化の実質的な安定方向が±0°〜±90°の範囲で交差していることを特徴とする請求項7記載の積層磁性膜。
【請求項9】 前記第1の介在膜の膜厚t1 と第2の介在膜の膜厚t2 とが等しくない(t1 ≠t2 但し、介在膜の膜厚tは0を含む)ことを特徴とする請求項7記載の積層磁性膜。
【請求項10】 磁気的にハードな膜を含む3層以上の磁性膜が介在膜を介して積層してなる積層磁性膜において、相隣る磁性膜間の磁化の実質的な安定方向が±0°〜±90°の範囲で交差し、それら積層体の最上層、最下層の少なくともどちらかの膜が磁気的にハードな膜で構成され、かつ積層された磁性膜が巨大磁気抵抗効果を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層磁性膜。
【請求項11】 前記積層磁性膜が主に磁気的にソフトな膜の積層体から構成されていることを特徴とする請求項10記載の積層磁性膜。
【請求項12】 少なくとも、第1の磁性膜と第2の磁性膜との間に第1の介在膜が介在され、前記第2の磁性膜と第3の磁性膜との間に第2の介在膜が介在されて各磁性膜が積層してなる積層磁性膜において、前記第1の介在膜の膜厚t1 と第2の介在膜の膜厚t2 とが等しくなく(t1≠t2 但し、介在膜の膜厚tは0を含む)、かつ前記各磁性膜が磁気的にソフトな膜で構成され、その積層された磁性膜が巨大磁気抵抗効果を有することを特徴とする請求項1または2記載の積層磁性膜。
【請求項13】 前記第1の介在膜と第2の介在膜とが互いに異なる材料で構成されていることを特徴とする請求項12記載の積層磁性膜。
【請求項14】 前記積層された磁性膜の印加交番磁界に対する巨大磁気抵抗効果が実質的にヒステリシスを示さないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層磁性膜。
【請求項15】 前記巨大磁気抵抗効果が、5エルステッド以下の保磁力を有することを特徴とする請求項14記載の積層磁性膜。
【請求項16】 前記積層された磁性膜の印加交番磁界に対する比抵抗に飽和値が存在することを特徴とする請求項14記載の積層磁性膜。
【請求項17】 前記磁性膜の巨大磁気抵抗効果が実質的にヒステリシスを示さない範囲での比抵抗の変化の最大値(Δρ)と、その比抵抗の前記飽和値(ρA F −ρF )との比率|Δρ|/|ρA F −ρF |が1/10以上であることを特徴とする請求項14記載の積層磁性膜。
【請求項18】 前記磁性膜の巨大磁気抵抗効果が5エルステッド以下の保磁力を有する範囲での比抵抗の変化の最大値(Δρ)が、その比抵抗の前記飽和値(ρA F −ρF )とほぼ同じである(|Δρ|≒|ρA F −ρF |)ことを特徴とする請求項14記載の積層磁性膜。
【請求項19】 前記相隣る磁性膜間の磁化の実質的な安定方向が±0°〜±90°の範囲で交差していることを特徴とする請求項14ないし請求項18のうちのいずれか1項記載の積層磁性膜。
【請求項20】 前記磁性膜間の磁気的相互作用を交互に強磁性的、反強磁性的にしたことを特徴とする請求項14ないし請求項19のうちのいずれか1項記載の積層磁性膜。
【請求項21】 前記積層磁性膜のうち少なくとも1つの磁性膜が磁気的にハードな膜であることを特徴とする請求項7ないし請求項9、請求項14ないし請求項20のうちのいずれか1項記載の積層磁性膜。
【請求項22】 前記磁気的にハードな膜が、反強磁性膜と磁気的にソフトな膜の複合膜で構成されていることを特徴とする請求項21記載の積層磁性膜。
【請求項23】 前記磁気的にハードな膜が、永久磁石膜と磁気的にソフトな膜の複合膜で構成されていることを特徴とする請求項21記載の積層磁性膜。
【請求項24】 前記磁気的にハードな膜が、フエリ磁性体で構成されていることを特徴とする請求項21記載の積層磁性膜。
【請求項25】 前記磁気的にハードな膜のネツトの磁気モーメントをソフトな膜のネツトの磁気モーメントよりも小さくし、かつ、ハードな膜とソフトな膜の磁化の実質的な安定方向が±0°〜±90°の範囲で交差していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層磁性膜。
【請求項26】 前記積層磁性膜が、磁気的にソフトな膜とハードな膜とが交互に積層されて構成されていることを特徴とする請求項25記載の積層磁性膜。
【請求項27】 前記積層磁性膜に少なくとも2層の磁気的にハードな膜が存在し、そのハードな膜が異なる材料で構成されていることを特徴とする請求項25記載の積層磁性膜。
【請求項28】 前記積層磁性膜に少なくとも2層の磁気的にハードな膜が存在し、その第1のハードな膜の膜厚tH 1 と磁化の強さIH 1 の積の値と、第2のハードな膜の膜厚tH 2 と磁化の強さIH 2 の積の値とがほぼ等しい(tH1 ・IH 1 ≒tH 2 ・IH 2 )ことを特徴とする請求項25記載の積層磁性膜。
【請求項29】 第1の磁性膜における膜厚tM 1 とそれの比抵抗ρ1 との積(tM 1 ・ρ1 )と、その第1の磁性膜と相隣る第2の磁性膜における膜厚tM2とそれの比抵抗ρ2 との積(tM 2 ・ρ2 )の比(tM 1 ・ρ1 )/(tM 2・ρ2 )が、0.1〜10であることを特徴とする請求項1ないし請求項28のうちのいずれか1項の記載の積層磁性膜。
【請求項30】 信号磁界と同一な方向に外部磁界を印加すると磁束は外部磁界とともに大きくなる磁束−磁界特性を有し、保磁力が5エルステツド以下となること、又は前記方向と180°反対方向については外部磁界が大きくなると前記磁束−磁界特性が前記同一方向の磁束−磁界特性と同一でないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層磁性膜。
【請求項31】 磁気的にソフトな膜、磁気的にハードな膜及び介在膜との3種の界面のうち、少なくとも1種の界面に窒化物、炭化物、硫化物、酸化物、半金属又は高融点金属などからなる異種金属拡散防止膜を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層磁性膜。
【請求項32】 磁気記録媒体と対向して、その磁気記録媒体に情報を書き込んだり、その磁気記録媒体に書き込まれている情報を読み出したりする磁気ヘツドにおいて、その磁気ヘツドの情報書込部あるいは情報読出部に請求項1、請求項7、請求項10、請求項12、請求項14、請求項25のうちのいずれか1項記載の積層磁性膜を用いたことを特徴とする磁気ヘツド。
【請求項33】 磁気記録媒体を駆動する駆動手段と、前記磁気記録媒体と対向してその磁気記録媒体に情報を書き込んだり、その磁気記録媒体に書き込まれている情報を読み出したりする磁気ヘツドと、書き込むべき情報に対応した電気信号を前記磁気ヘツドに送ったり、あるいは磁気ヘツドから送られてくる信号を読み出す電気回路とを有する磁気記録・再生装置において、前記磁気ヘツドの情報書込部あるいは情報読出部に請求項1、請求項7、請求項10、請求項12、請求項14、請求項25のうちのいずれか1項記載の積層磁性膜を用いたことを特徴とする磁気記録・再生装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば磁気ヘツドあるいは磁気センサなどに使用する積層磁性膜に係り、特に磁気的にハードな膜と磁気的にソフトな膜とを一層づつ交互にあるいは複数層づつ交互に積層したもの、または多層の磁気的にソフトな膜と少なくとも一層の磁気的にハードな膜とを積層したもの、あるいは磁気的にソフトな膜を積層した人工格子膜からなる積層磁性膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えばNi−Fe合金(パーマロイ)などのように磁気的にソフトな磁性材料は、弱い磁場の変化を電気的に検出することができるから、例えば磁気ヘツドや磁気センサなどに使用でき、その研究、開発が各方面で進められている。
【0003】MR素子として高性能化するためにはさらに高い磁界感度を有する材料の研究、開発が望まれ、最近、Fe/CrやCo/Cuなどの人工格子膜において、所謂、巨大磁気抵抗効果が発見されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の人工格子膜では、まだ十分に高い磁界感度(変調度)を有する材料は得られていない。その主要な原因は、外部磁界が零のときの磁化の安定状態として、隣接する磁性層の磁化が互いに反対の方向に向く、所謂、反強磁性的配置を実現させるために、相互間に反強磁性的結合が生じる膜厚条件を選んでいることにある。
【0005】本発明の目的は、このような問題点を解消し、さらに磁界感度の高い積層磁性膜あるいはそれを用いる磁気ヘツドならびに磁気記録・再生装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、2層以上の磁性膜が介在膜を介して積層された積層磁性膜において、前記介在膜が、遷移金属と、その遷移金属とヘテロジニアスな混合体を形成しやすい物質とを含有していることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】本発明は前述のように、介在膜が、遷移金属と、その遷移金属を余り固溶させない、すなわちその遷移金属とヘテロジニアスな混合体を形成しやすい物質とを含み、適当な厚さ(通常、介在膜の厚さを0から次第に厚くしていくと磁性膜間の相互作用は、強磁性的→反強磁性的→強磁性的 というように周期的に変化する)、すなわち単独では反強磁性的な相互作用をする厚さとし、その介在膜を、遷移金属と、遷移金属とヘテロジニアスな混合体を形成しやすい物質との混合物で構成し、これを通じて強磁性的相互作用を生じさせ、前記反強磁性的相互作用を相殺するようにする。
【0008】このようにすることにより、実質的には、両磁性膜間に磁気的相互作用がほとんどない状態を実現して、各磁性膜内の磁化が独立に振る舞えるようになる。かくして、磁性膜のうちの少なくともいずれか1つを軟磁気特性に優れた材料で構成すれば、微弱な印加磁界でも十分に反応する巨大磁気抵抗効果膜を得ることができる。
【0009】
【実施例】次に本発明の実施例を図とともに説明する。図1は実施例に係る磁気ヘツドの斜視図、図2はその磁気ヘツドに使用する積層磁気抵抗効果素子の拡大断面図である。
【0010】本発明の実施例に係る磁気ヘツドは図1に示すように、短冊状をした積層磁性膜1と、それの両端に接合された電極2、2とから主に構成されている。なお、各電極2、2は必要に応じて電流端子と電圧端子に分離することもできる(図示せず)。
【0011】前記積層磁性膜1は図2に示すように、ガラスやセラミツクからなる基板3と、その上に形成された例えばNi−Fe/介在膜/Co/介在膜系からなる多層膜4とから構成されている。
【0012】この多層膜4を具体的に説明すると、膜厚が約30ÅのNi−Fe合金(パーマロイ)からなる磁気的にソフトな膜5と、膜厚が約30〜80Åの介在膜6と、膜厚が約30ÅのCoからなる磁気的にハードな膜7と、膜厚が30〜80Åの介在膜8とから構成される最小単位の積層体9が数層〜数十層繰り返して形成されている。
【0013】これら多層膜4は例えば超高真空の電子ビーム蒸着によつて順次所定の膜厚に堆積して形成されるが、例えばスパツタリングなど他の薄膜形成技術をもつて形成してもよい。
【0014】ところで前記ソフト膜5ならびにハード膜7を成膜するときに、それぞれの所定の基準方向Reに対してある角度をもつた方向に磁界を印加した状態で成膜される。このときの磁界の印加方向の例を図3とともに説明する。
【0015】すなわち同図の(a)に示すように、最初、第1番目のソフト膜5(Ni−Fe合金膜)を形成するとき、それの所定の基準方向Reに対してある角度(+θ)をもつた方向に磁界を印加しながら成膜する。
【0016】次に第1番目のハード膜7(Co膜)を形成するとき同図の(b)に示すように、それの所定の基準方向Reに対して直交する方向に磁界を印加しながら成膜する。
【0017】次に第2番目のソフト膜5(Ni−Fe合金膜)を形成するときには同図の(c)に示すように、それの所定の基準方向Reに対してある角度(−θ)をもつた方向に磁界を印加しながら成膜する。
【0018】次に第2番目のハード膜7(Co膜)を形成するとき、同図の(d)に示すようにそれの所定の基準方向Reに対して直交する方向に磁界を印加しながら成膜する。
【0019】次に第3番目のソフト膜5は同図の(a)と同様に+θの角度をもつた方向に、第4番目のソフト膜5は同図の(c)と同様に−θの角度をもつた方向に、というようにソフト膜5は+θ、−θ交互に角度を変えて磁界を印加しながら成膜を行い、一方、ハード膜7の方は、常に所定の基準方向Reに対して直交する方向に磁界を印加しながら成膜する。ソフト膜5ならびにハード膜7の成膜における磁界は、例えば数百Oe以上で行なわれる。
【0020】このようにして所定の層数を有する多層膜4を形成したのち、図1に示すように所定の基準方向Reに対して面内に垂直な方向(矢印X方向)に一度強磁界を印加し、その後に強磁界を除去する。このような配向処理は昇温された雰囲気中で行うことにより、より効果的になし得る。
【0021】このようにすることにより、積層磁性膜としたときにソフト膜5の磁化の方向(外部磁界が零のときの磁化の安定な方向)とハード膜7の磁化の方向との間にある角度αをもたせて交差させることができる。この角度αは、±0°から±90°の範囲内で適当に選択することができ、特に角度αの絶対値が30°〜90°、好ましくは45°〜90°、さらに好ましくは60°〜90°になるとさらに高い磁界感度が得られる。
【0022】前記実施例では、ソフト膜5の製膜時にそれの所定の基準方向Reに対して+θ、−θというように交互に角度を変えて磁界を印加したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第1番目のソフト膜5から第m番目のソフト膜5までは、所定の基準方向Reに対して+θの角度をもつた方向に磁界を印加しながら製膜し、第m+1番目のソフト膜5から第n番目のソフト膜5までは、所定の基準方向Reに対して−θの角度をもつた方向に磁界を印加しながら製膜するなどして、複数のグループ毎(この場合、2つのグループ毎)で磁界の印加方向を異にすることもできる。
【0023】このようにソフト膜5の磁化が、ハード膜7と磁気的に強く結合しない介在膜の厚さを選択することにより、ソフト膜5の磁化の方向とハード膜7の磁化の方向の間にある角度αをもたせることができるから、図4に示すように基準方向Reにほぼ垂直方向に印加されるほぼ外部磁界Xに対してソフト膜5の磁化が回転し易くなるとともに、後述する式(A)によつて明らかなように、ソフト膜5の磁化の一定の回転角度に対する磁気抵抗の変化率が高くなるから、高磁界感度を有する積層磁性膜が得られる。なお、図4において矢印Eは、磁気ヘツドに流す電流の方向である。
【0024】前記ハード膜を補償温度が積層磁性膜を使用する温度付近にあるフエリ磁性の強磁性遷移金属−希土類金属合金(例えばTb−Fe(Co),Dy−Fe(Co),Nd−Fe(Co)など)で構成して、初期化をフエリ性磁性材料の補償温度から外れた比較的保磁力の小さい温度で行なうとよい。そうすれば、例えば積層磁性膜を磁気ヘツドなどとして使用する際、その使用温度が前述のように補償温度付近であるため、その温度でのトータル磁化が小さいため、ハード膜の磁化による磁気記録媒体への悪影響を排除することがてきるという特長を有している。
【0025】前述のようにソフト膜とハード膜とを交互に積層してなる巨大磁気抵抗効果人工格子膜(なお本発明において「巨大磁気抵抗効果」という語句は、外部磁界の印加による磁気抵抗の増減の符号が電流の方向に依存しない磁気抵抗効果をいう。)においては、ソフト膜とハード膜の間に反強磁性的または強磁性的結合が生じる性質が強いため、ソフト膜内の磁化の方向(外部磁界が零のときの磁化の安定方向)を任意の方向にコントロールすることが困難なことがある。
【0026】ところで、積層磁性膜としたときのソフト膜の磁化の方向とハード膜の磁化の方向との交差角をαとしたとき、αがΔαだけ変化するときの抵抗Rの変化ΔRは、下式で与えられる。
【0027】
ΔR/平均値R=K・sinα・Δα ……(A)
K:素子の材料、構造で定まる定数磁気抵抗効果素子が十分な磁界感度を得るためには、交差角の絶対値|α|を前述のように0°から90°の範囲での任意の値にする必要がある。
【0028】ここで、前記ソフト膜とハード膜との磁気的相互作用を交互に強磁性的および反強磁性的にすることにより、上下のハード膜の中間に配置されるソフト膜には両側から反対方向の磁気的相互作用が働き、互いに打ち消すことになる。したがつて前述のようにソフト膜に磁界を印加して磁気異方性を付与する際、それの磁化の方向を任意の方向に設定することが容易になる。
【0029】これの実施例を図5とともに説明する。同図に示すように、ガラスなどの基板3上に、Cr膜10とCo膜11とを形成した後、(介在膜/Ni−Fe/介在膜/Co)の最小単位の積層体12が所定層数繰り返して数Å〜数十Åの膜厚で形成される。
【0030】具体的に説明すると、まず、基板3上に膜厚が例えば約30ÅのCr膜10と約30ÅのCo膜とを形成する。しかる後、膜厚がt1 の介在膜8と、膜厚が約30ÅのNi−Fe合金(パーマロイ)からなる磁気的にソフトな膜5と、膜厚がt2 の介在膜6と、膜厚が約30ÅのCoからなる磁気的にハードな膜7とから構成される最小単位の積層体12が、所定数繰り返して形成されている。
【0031】前述の介在膜8の膜厚がt1 ならびに介在膜6の膜厚がt2 は、これらを介してソフト膜5とハード膜7の磁気的相互作用が強磁性的ならびに反強磁性的になるような値に設定される。この介在膜6、8の膜厚t1 、t2 の具体例を示せば次の表の通りであり、この表に示すように膜厚t1 とt2 等しくない(t1 ≠t2 )ように形成される。
【0032】
表 介在膜8の膜厚t1 介在膜6の膜厚t2 0〜 5Å 6〜12Å 12〜17Å 18〜25Å 25〜30Å 31Å以上 この例では介在膜8の方を比較的薄膜にしてソフト膜5とハード膜7との磁気的相互作用を強磁性的にし、介在膜6の方を比較的厚膜にしてソフト膜5とハード膜7との磁気的相互作用を反強磁性的にしているが、反対に介在膜8の方を比較的厚膜にしてソフト膜5とハード膜7との磁気的相互作用を反強磁性的にし、介在膜6の方を比較的薄膜にしてソフト膜5とハード膜7との磁気的相互作用を強磁性的にしてもよい。
【0033】ソフト膜5の磁化の方向ならびにハード膜7の磁化の方向は、各膜の堆積中に印加した磁界の方向によつて制御可能である。
【0034】次に、面内の任意の方向に十分強い磁界(ハード膜7の磁化の方向を印加する磁界の方向に向けられる程度、望ましくは数千Oe以上)の磁界を印加して、ハード膜7の磁化の方向を希望する方向に向ける。
【0035】このときソフト膜5の磁化容易軸方向も印加した磁界の方向に向けられるが、その磁界を除去するとハード膜7の磁化の方向は印加した磁界の方向に留まるが、ソフト膜5の磁化容易軸方向は上下のハード膜7との相互作用が互いにほぼ打ち消されるから、ソフト膜5自体の磁化容易軸方向に向いて安定する。
【0036】こうしてソフト膜5の磁化容易軸方向は、それに誘起されている一軸磁気異方性に支配されることになるから、特に磁化容易軸方向と垂直方向の外部磁界に対して極めて鋭敏に反応して、その磁化の向きが変化する。
【0037】図6は、ソフト膜(Ni−Fe合金膜)ならびにハード膜(Co膜)の製膜直後、強磁界印加中ならびに強磁界を除去したのちのそれぞれの磁化容易軸方向ならびに磁化の方向をまとめて示した図である。この図に示すように最終的にはソフト膜(Ni−Fe合金膜)の磁化容易軸方向がハード膜(Co膜)の磁化の方向と交差したものが得られる。
【0038】前記介在膜6,8は、遷移金属と、その遷移金属とヘテロジニスな混合体を形成しやすい物質、すなわち遷移金属を余り固溶させない物質の混合物から構成される。
【0039】前記遷移金属としては、Cr,Mn,Fe,Co,Niのグループから選択された1種もしくは2種以上の金属が好適である。
【0040】前記後者の物質としては、Ti,V,Cr,Cu,Ag,Au,Pt,Ir,Al,Si,Ge,Ta,W,Biのグループから選択された1種もしくは2種以上の物質が好適であり、さらにその含有率が0.1〜10原子%となるのが望ましい。
【0041】前記遷移金属と後者の物質との組み合わせならびに混合割合は、種々の例が考えられる。
【0042】前述の例では介在膜6,8に同じ材料のものを使用し、介在膜6,8の膜厚t1 、t2 をコントロールすることにより、ソフト膜5とハード膜7との磁気的相互作用を順次、強磁性的ならびに反強磁性的にしたが、介在膜6,8に使用する材料を異にしてソフト膜5とハード膜7との磁気的相互作用を強磁性的ならびに反強磁性的にすることもできる。またこのように中間膜の材料を違えるとともに、各々の膜厚を異にすることもできる。
【0043】本発明に係る磁気抵抗効果素子を磁気ヘツドとして使用する場合、ハード膜の磁化による磁気記録媒体への擾乱作用を避けるため、ハード膜の磁化の方向が媒体の記録面に対してほぼ水平方向になるようにすると有利である。
【0044】ところで、ハード膜の磁化の方向が媒体の記録面に対してほぼ水平方向になるようにして、かつ、ソフト膜の磁化容易軸方向を媒体の記録面に対してほぼ垂直方向に向けると、磁気記録媒体からの漏洩磁界に対するソフト膜の磁界感度が弱くなつてしまう。これに対して、ハード膜の磁化の方向が媒体の記録面に対してほぼ水平方向になるようにして、かつ、ハード膜の磁化の方向に対するソフト膜の磁化容易軸方向の交差角度を15°〜45°、好ましくは30°前後にしておけば、磁気記録媒体からの漏洩磁界に対しても十分に反応し、しかも磁気抵抗効果の大きい磁気ヘツドを製作することができる。
【0045】磁気抵抗効果素子を磁気ヘツドとして使用する場合、磁気記録媒体の記録面に垂直な磁束を検出することになる。したがつて、ソフト膜の磁化容易軸方向は外部磁界が零のとき記録面に対して水平になるように設定するのが効率的である。
【0046】前述のようにソフト膜の磁化容易軸方向とハード膜の磁化の方向との間に適当な交差角度を設けるためには、ハード膜の磁化に記録面に対する垂直成分をもたせなければならない。そのときハード膜の磁化の方向をすべて同一方向に平行にしておくと、磁気ヘツド(積層磁気抵抗効果素子)の端面から発生する磁束が磁気記録媒体の磁化に擾乱を与え易くなる。
【0047】磁気ヘツド(積層磁気抵抗効果素子)の実効的全層厚te f f が、磁気ヘツド(積層磁気抵抗効果素子)と磁気記録媒体の間の実効的スペーシングhf に比較して小さければ、その影響は少ない。その基準は図7に示す式(1)で与えられる。
【0048】前記式(1)において、hf は磁気記録再生装置などによつて異なるが、磁気ヘツドと磁気記録媒体が接触するタイプでは一般的に10〜50nmである。
【0049】前記式(1)中の各項目を図8に示すような値に設定すると図8の式(3)のようになり、この値は磁気記録媒体における垂直方向の保磁力を超えてしまう。
【0050】この問題を解決するため、本発明の実施例ではハード膜をグループ分けして、その磁化の垂直成分が互いに打ち消し合うようにしている。
【0051】この状態を模式的に示したのが図9で、図中において13は例えばSiO,SiO2 ,Al2 3 やプラスチツクスなどからなる電気絶縁層、14は媒体対向面である。同図に示されているように、この例ではハード膜(H)7と、介在膜6と、ソフト膜(S)5と、介在膜8と、ハード膜(H)7と、介在膜6と、ソフト膜(S)5と、介在膜8と、ハード膜(H)7とから最小単位の積層体15が構成されている。そしてこの積層体15が所定数繰り返して配置され、各積層体15間に前記電気絶縁層13が介在されて、各積層体15間が電気的に絶縁される。
【0052】そして図に示す如く、第1の積層体15(A1)においてはハード膜(H)7の磁化の垂直成分が矢印で示すように下向きに、その隣の第2の積層体15(B1)においてはハード膜(H)7の磁化の垂直成分が上向きになつており、グループ毎に磁化の垂直成分が互いに打ち消し合うようになつている。なおこのとき、図10に示す関係式が成立するように構成するのがよい。
【0053】この第3の実施例では、ハード膜の磁化の向きをソフト膜とハード膜の複数層のグループ毎に交互に反対にして、そのグループ毎に電気的絶縁層を設けたが、ハード膜の磁化の向きをハード膜−ソフト膜−ハード膜の最小単位毎に交互に反対にして、その間に電気的絶縁層を設けてもよい。
【0054】図11はこのように構成された磁気ヘツドの電気回路図で、端子16にはハード膜の磁化の垂直成分が下向きになつているAグループ(A1,A2……An)がそれぞれ接続され、端子17にはハード膜の磁化の垂直成分が上向きになつているBグループ(B1,B2……Bn)がそれぞれ接続されている。
【0055】前述のようにハード膜の磁化の垂直成分がグループ毎に反対になつているから、抵抗の変化の仕方が反対となるため、同図のような回路構成になつており、コンパレータ19からはAグループとBグループの抵抗の差に比例した出力が得られる。なお、図中の18は磁気ヘツドの感磁部でトラツク幅に対応している。
【0056】次に前記ソフト膜5とハード膜7の磁化の方向との角度αが45°となるようにして作製した積層磁性膜の磁気特性を述べる。一般に磁気ヘツドは図1に示す積層磁性膜1の上、下位置に磁気シールド膜(図示せず)が形成されている。この磁気シールド膜を除去した積層磁性膜のみの磁束−磁界特性を図19に示し、図1に示すX方向に外部磁界を印加した場合の例で、ソフト膜にNi−Fe合金を、ハード膜にCoを用いている。
【0057】積層磁性膜の外部よりX方向に磁束は磁界とともに大きくなり、やがて飽和する。これに対し、X方向と180°反対方向に磁界を印加すると、磁界が小さい範囲では上記X方向に印加した場合と同様な磁束−磁界特性を示すが、磁界が大きくなるとCo膜の磁化の反転が起こり、同図に示すようなヒステリシスのある磁化曲線となる。
【0058】また、同図の磁束−磁界特性曲線でも分かるように保磁力(磁束が零となる磁界の大きさ)は大きくても10エルステツド程度で、一般的には数エルステツドとなる。
【0059】適当なハード膜としては、前記ソフト膜に反強磁性膜(例えばFe−Mn合金,Ni−Mn合金,Cr−Mn合金,NiO等の膜)を積層した複合膜、又は前記ソフト膜に永久磁石膜(Co−Pt合金,Al−Ni−Co合金,Baフエライト等の膜)を積層した複合膜がある。
【0060】ハード膜としてNi−FeとFe−Mnの複合膜を用いた場合の積層磁性膜の磁束−磁界特性曲線を図20に示す。前記ハード膜にCo膜を用いた場合(図19)と異なり、磁束−磁界特性曲線には大きなヒステリシスは認められない。
【0061】但し、X方向と180°反対方向に印加した場合、磁界が大きくなると磁束が増大する傾きが小さくなつている。これはハード膜にFe−Mnを用いており交換バイアスにより異方性磁界が大きくなつたためである。
【0062】この図19、図20から明らかなように、外部磁界が大きい範囲では磁気特性が異なるが、外部磁界が小さい範囲では同一である。磁気ヘツドではこの外部磁界が小さい範囲で使用するので、図19,図20の磁気特性を示す積層磁性膜で大きな問題はない。
【0063】ところで、前記積層磁性膜を構成している層はほとんど金属膜である。磁気ヘツドを作製するにはプロセス中の熱履歴を受け、プロセス最高温度は低くとも150°Cと予想される。
【0064】このような熱履歴を受けても前記積層磁性膜の磁気特性を劣化させない方法として、異種物質の界面、すなわち磁気的にソフトな膜、磁気的にハードな膜ならびに介在膜の3種の界面のうち少なくとも1種の界面に、薄い拡散防止膜を設け異種金属の拡散を防止する方法が有効である。
【0065】この拡散防止膜として例えば下記のようなものが使用でき、この拡散防止膜はできれば全ての異種金属界面に介在することが望ましい。
【0066】■.AlN,SiN等の窒化物、■.Ta2 5 ,Al2 3 ,SiO,SiO2 ,ZnO,SnO,Cr2 5等の酸化物、■.ZnS,CrS等の硫化物、■.B4 C等の炭化物、■.B,C等の半金属、■.W,Ta,Mo,Nb等の高融点金属。
【0067】本発明における磁性膜(磁気的にハードな膜ならびにソフトな膜)ならびに介在膜の膜厚は、当該膜を構成する材料の電子の平均自由行程以下に規制されている。電子の平均自由行程は熱運動のあいつぐ電子の2衝突間の平均距離(λg)で、この電子の平均自由行程は当該材料のバルク状態で測定される。
【0068】本発明のように、相隣る磁性膜間の磁化の実質的な安定方向が±0°〜±90°の範囲で交差している積層磁性膜に、外部から交番磁界を印加したときの磁気抵抗Rの変化の状態を図12ならびに図13に示す。
【0069】図12の場合は、磁気的にハードな膜の磁化方向(H)と磁気的にソフトな膜の磁化方向(S)とのなす角度が90°で、外部磁界の方向(Y)がハード膜の磁化方向(H)と平行な場合の特性曲線である。
【0070】一方、図13の場合は、磁気的にハードな膜の磁化方向(H)と磁気的にソフトな膜の磁化方向(S)とのなす角度が60°(あるいは30°)で、外部磁界の方向(Y)がソフト膜の磁化方向(S)と直角な場合の特性曲線である。
【0071】これらの図に示すように、最初、十分強い外部磁界をY1 の方向に印加しておき、その外部磁界の強さを除々に弱めていくと■に示すように磁気抵抗Rが除々に高くなり、外部磁界が零のとき磁気抵抗RがRS の値を示し、次に外部磁界の方向をY2 方向に変えて外部磁界の強さを除々に強めていくと■に示すように磁気抵抗Rはさらに高くなり、外部磁界がある程度強くなると■に示すように磁気抵抗Rは飽和値に達し、所謂、プラトーが存在する。さらに外部磁界の強さを増すと、今度は■に示すように磁気抵抗Rが除々に低下する。
【0072】次にY2 方向の外部磁界の強さを除々に弱めていくと■に示すように磁気抵抗Rが除々に高くなり、外部磁界が零のとき磁気抵抗RがRS の値を示し、次に外部磁界の方向をY1 方向に変えて外部磁界の強さを除々に強めていくと■に示すように磁気抵抗Rはさらに高くなり、外部磁界がある程度強くなると■に示すように磁気抵抗Rは飽和値に達し、所謂、プラトーが存在する。さらに外部磁界の強さを増すと、今度は■に示すように磁気抵抗Rが除々に低下するという特性を有している。
【0073】これらの特性図において、実線で示した領域は、印加する外部磁界に対して巨大磁気抵抗効果がほぼ直線的でしかも実質的に5エルステツド以下の保磁力を有する領域を指している。一方、点線で示した領域は、印加する外部磁界に対して巨大磁気抵抗効果が非可逆的である領域を指している。
【0074】同図に示しているように、磁性膜の巨大磁気抵抗効果が5エルステツド以下の保磁力を有する領域での比抵抗の変化の最大値を(Δρ)とし、その比抵抗の飽和値を(ρA F −ρF )とした場合、両者の比率|Δρ|/|ρA F −ρF |は実用上1/10以上、好ましくは1/4以上、さらに好ましくは1/3以上、さらに好ましくは1/2以上、さらにはほぼ1であるのが好ましい。|Δρ|/|ρA F −ρF |が1であるということは、(Δρ)≒(ρA F −ρF )ということ、換言するならば図13に示されているように磁性膜の巨大磁気抵抗効果が保磁力5エルステツド以下となる領域での比抵抗の変化の最大値(Δρ)がその比抵抗の飽和値(ρA F −ρF )に達していることを意味している。
【0075】このように|Δρ|/|ρA F −ρF |が1に近づくということは、磁性膜の巨大磁気抵抗効果が実質的にヒステリシスを示さない外部磁界の範囲が広くなるということで、積層磁性膜の感磁領域が拡張することを意味している。
【0076】磁気的にハードな膜と磁気的にソフトな膜とを一層ずつ交互に、あるとは複数層毎に交互に積層して積層磁性膜を構成する場合、磁気的にハードな膜のネツト(全体して)の磁気モーメントを磁気的にソフトな膜のネツト(全体して)の磁気モーメントよりも小さくする方が好ましい。
【0077】このように磁気的にハードな膜とソフトな膜との間おいて磁気モーメントに差をつける具体的な手段の一例として、例えば図14に示すように、磁気的にハードな膜7とソフトな膜5との間に介在膜6を介して、あるいは介さずして積層したものにおいて、磁気的にハードな膜7の磁化の方向が積層方向において交互に反対になつている。このようにすれば、磁気的にハードな膜7どうしで互いにキヤンセルし合い、積層磁性膜としてみたとき結果的に磁気的にハードな膜のネツトの磁気モーメントを磁気的にソフトな膜のそれよりも小さくすることができる。
【0078】具体的な手段の他の例として、磁気的にハードな膜をフエリ磁性体で構成することにより、積層磁性膜としてみたとき結果的に磁気的にハードな膜のネツトの磁気モーメントを磁気的にソフトな膜のそれよりも小さくすることができる。
【0079】本発明において2層以上の磁気的にハードな膜を有する積層磁性膜において、第1のハードな膜と第2のハードな膜との材料を違わせることもできる。この例として例えば第1のハードな膜をCoで構成し、第2のハードな膜をCo−Cr合金で構成するか、第1,第2のハードな膜をともにCo−Cr合金で構成して、その合金中のCrの含有率を0を超え約30重量%の範囲で異ならしめるか、第1のハードな膜と第2のハードな膜とを全く別の磁性材料で構成する。
【0080】また2層以上の磁気的にハードな膜を有する積層磁性膜において、図15に示すように第1のハードな膜H(1)の膜厚をtH 1 、磁化の強さをIM 1 とし、第2のハードな膜H(2)の膜厚をtM 2 、磁化の強さをIM 2 とした場合、第1のハードな膜H(1)の膜厚tM 1 と磁化の強さIM 1 の積と、第2のハードな膜H(2)の膜厚tH 2 、磁化の強さIM 2 の積がほぼ等しくなる(tM 1 ・IM 1 ≒tM 2 ・IM 2 )ように設計すればよい。
【0081】前述したこれらの実施例では介在膜を介して、例えばCoなどの磁気的にハードな膜と、例えばNi−Fe合金などの磁気的にソフトな膜とを交互に積層したが(H−S−H−S−……−S−H)、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図16に示すように膜厚の異なる介在膜6を介して、磁気的にソフトな膜5のみを順次積層して(S−S−……−S−S)積層磁性膜を構成することもできる。
【0082】また図17に示すように、積層磁性膜のうちの一層を磁気的にハードな膜7で構成し、他を磁気的にソフトな膜5で構成するか(H−S−……−S−S)、あるいはソフトな膜5の何層か毎にハードな膜7を介在すると(H−S−S−……−S−H−S−S−……−S−S−H)、ソフトな膜5の間の磁気的相互作用を交互に安定した状態で強磁性的、反強磁性的にすることができる。なお、このような構成の場合、前記磁気的にハードな膜7の一層は積層磁性膜の外側付近にある方がよい。
【0083】なお、前記磁気的にハードな膜7を、例えばニツケル酸化物などの反強磁性膜とパーマロイなどの磁気的にソフトな膜との複合膜で構成するか、あるいはフエリ磁性体で構成するとよい。
【0084】前述のような(H−S−H−S−……−S−H),(S−S−……−S−S),(H−S−……−S−S)ならびに(H−S−S−……−S−H−S−S−……−S−S−H)の膜の組み合わせに関わりなく、相隣る磁性膜において第1の磁性膜M1 の比抵抗をρ1 , 膜厚をtM 1 、第2の磁性膜M2 の比抵抗をρ2 ,膜厚をtM 2 とした場合、(ρ1 ・tM 1 )/(ρ2 ・tM 2 )が0.1〜10、好ましくは0.3〜3、さらに好ましくは0.3〜1にするとよい。なおこれらの値は、使用する磁性材料のバルク状態での値である。
【0085】図21は、積層磁性膜のさらに他の実施例を示す図で、この実施例では第1のソフトな膜5aと、それと隣接している第1のハードな膜7aの間には介在膜は介在されていない。そして前記第1のハードな膜7aと次の第2のソフトな膜5bとの間には介在膜6が介在され、この第2のソフトな膜5bと第2のハードな膜7bの間にはこの実施例では介在膜6が介在されているが、必ずしも必要ではない。すなわちこの実施例は、強磁性的あるいは反強磁性的にカツプリングさせる磁性膜間に介在膜を介在した例を示している。
【0086】なお、前記実施例ではNi−Fe/Cu/Co系の材料について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば Fe/Cr系,Ag/Co系,Ni/Ag系,Fe/Co/Cu/Fe系,Co/Cu系,Cu/Co系/Cu/Ni−Fe系、あるいはこれらの金属を主成分とする合金系などのような材料を使用することも可能である。
【0087】図22は、前記磁気ヘツドを使用した磁気記録・再生装置の一例を示す概略構成図である。
【0088】同図に示すようにベース100上にはスピンドル101が回転自在に支持され、それには軸方向に所定の間隔をおいて複数枚の磁気デイスク102が固定されている。この磁気デイスク102は周知のように非磁性体からなる基板と、その基板上に形成された磁性膜とから構成されている。
【0089】各磁気デイスク102は、前記スピンドル101ならびに変速手段103を介して駆動モータ104で回転される。ボイスモータ制御回路105からの制御電流がマグネツト106内に設置されているボイスコイル107に流れ、マグネツト106による磁界と前記制御電流の作用でボイスコイルモータを構成し、そしてこのボイスコイルモータはキヤリツジ108を所定の方向に移動する。
【0090】このキヤリツジ108には、データ用の磁気ヘツド109と位置決め用の磁気ヘツド110が一体に取り付けられている。このデータ用の磁気ヘツド109はライト/リード回路111に接続され、磁気デイスク102との間で信号の授受を行い、磁気デイスク102への情報の書き込みあるいは磁気デイスク102からの情報の読み出しが可能である。このライト/リード回路111は、インターフエース112を介して他の上位装置113に接続される。このデータ用の磁気ヘツド109の情報読取部あるいは情報書込部に図1に示すような形で前記積層磁性膜が用いられる。
【0091】一方、前記位置決め用の磁気ヘツド110はボイスモータ制御回路105に接続され、磁気デイスク102に対する磁気ヘツドの位置を光学的あるいは磁気的に検出して、その位置情報をボイスモータ制御回路105に入力することにより、磁気デイスク102に対するデータ用の磁気ヘツド109のトラツキングサーボがなされる。
【0092】
【発明の効果】本発明は前述のように、介在膜が、遷移金属と、その遷移金属を余り固溶させない、すなわちその遷移金属とヘテロジニスな混合体を形成しやすい物質とを含み、適当な厚さ(通常、介在膜の厚さを0から次第に厚くしていくと磁性膜間の相互作用は、強磁性的→反強磁性的→強磁性的 というように周期的に変化する)、すなわち単独では反強磁性的な相互作用をする厚さとし、その介在膜を、遷移金属と、遷移金属とヘテロジニスな混合体を形成しやすい物質との混合物で構成し、これを通じて強磁性的相互作用を生じさせ、前記反強磁性的相互作用を相殺するようにする。
【0093】このようにすることにより、実質的には、両磁性膜間に磁気的相互作用がほとんどない状態を実現して、各磁性膜内の磁化が独立に振る舞えるようになる。かくして、磁性膜のうちの少なくともいずれか1つを軟磁気特性に優れた材料で構成すれば、微弱な印加磁界でも十分に反応する巨大磁気抵抗効果膜を得ることができる。よつて高磁界感度の積層磁性膜ならびに磁気ヘツド(磁気記録・再生装置)を提供することができる。




 

 


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