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発明の名称 樹脂材料の表示方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−34521
公開日 平成6年(1994)2月8日
出願番号 特願平5−112711
出願日 平成5年(1993)5月14日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
発明者 西村 朝雄 / 田中 直敬 / 広瀬 閥
要約 目的
樹脂材料の接着強度を測定する方法において、真の接着強度と残留応力とを分離し、試験片の寸法や形状に依存しない普遍的な接着強度を高精度かつ容易に測定する。

構成
樹脂2と被着材3との間に部分的な剥離箇所5を設け、接着界面4に互いに逆向きの剪断応力τ1、τ2が作用するような2方向の荷重P1、P2を個別に負荷して、夫々の場合の見掛けの剥離進展強度から真の接着強度を求める。
特許請求の範囲
【請求項1】樹脂の被着材に対する剪断応力に基づく接着強度を、被着材名と共に表記することを特徴とする樹脂材料の表示方法。
【請求項2】実質的に残留応力の影響を除外して求めた樹脂の被着材に対する接着強度を表記することを特徴とする樹脂材料の表示方法。
【請求項3】請求項1または2において、前記樹脂は樹脂硬化物であり、前記樹脂材料は樹脂組成物乃至重合前原料であることを特徴とする樹脂材料の表示方法。
【請求項4】請求項1または2において、前記表記は応力拡大係数で示すことを特徴とする樹脂材料の表示方法。
【請求項5】請求項1または2において、前記表記はひずみエネルギ解放率で示すことを特徴とする樹脂材料の表示方法。
【請求項6】樹脂の被着材に対する剪断応力に基づく接着強度を、被着材名と共に表記することを特徴とする樹脂材料の収納容器。
【請求項7】実質的に残留応力の影響を除外して求めた樹脂の被着材に対する接着強度を表記することを特徴とする樹脂材料の収納容器。
【請求項8】請求項6または7において、前記樹脂は樹脂硬化物であり、前記樹脂材料は樹脂組成物乃至重合前原料であることを特徴とする樹脂材料の収納容器。
【請求項9】請求項6または7において、前記表記は応力拡大係数で示すことを特徴とする樹脂材料の収納容器。
【請求項10】請求項6または7において、前記表記はひずみエネルギ解放率で示すことを特徴とする樹脂材料の収納容器。
【請求項11】樹脂の被着材に対する剪断応力に基づく接着強度を、被着材名と共に表記することを特徴とする樹脂材料の掲載書面。
【請求項12】実質的に残留応力の影響を除外して求めた樹脂の被着材に対する接着強度を表記することを特徴とする樹脂材料の掲載書面。
【請求項13】請求項11または12において、前記樹脂は樹脂硬化物であり、前記樹脂材料は樹脂組成物乃至重合前原料であることを特徴とする樹脂材料の掲載書面。
【請求項14】請求項11または12において、前記表記は応力拡大係数で示すことを特徴とする樹脂材料の掲載書面。
【請求項15】請求項11または12において、前記表記はひずみエネルギ解放率で示すことを特徴とする樹脂材料の掲載書面。
【請求項16】少なくとも一つの樹脂を含む二つ以上の材料からなる構成において、前記少なくとも一つの樹脂と他の材料との間の接着界面に予め部分的に剥離箇所を設け、接着界面に互いに逆向きの剪断応力が作用するような2種類の荷重を個別に負荷して、夫々の荷重負荷に対する剥離進展強度を求めることを特徴とする樹脂材料の接着強度測定方法。
【請求項17】少なくとも一つの樹脂を含む二つ以上の材料によって層状にされた構成において、前記少なくとも一つの樹脂と他の材料との間の接着界面に予め部分的に剥離箇所を設け、接着界面に垂直な方向の曲げ荷重を、向きを反転させて負荷することにより逆向きの剪断応力を作用させることを特徴とする樹脂材料の接着強度測定方法。
【請求項18】少なくとも一つの樹脂を含む二つ以上の材料からなる構成において、前記少なくとも一つの樹脂と他の材料との間の接着界面に予め部分的に剥離箇所を設け、接着界面に作用する残留応力と同一方向及び逆方向の応力を個別に作用させて接着強度を求めることを特徴とする樹脂材料の接着強度測定方法。
【請求項19】樹脂と金属との複合体を形成するに際し、該金属を被着材として得られた樹脂の接着強度を基にして、樹脂と金属の組合せを選択することを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項20】請求項19において、前記樹脂はエポキシ系であり、前記金属は銅、銅合金または鉄−42ニッケルから選択されるものであることを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項21】金属製リードフレームと半導体素子を封止樹脂でモールド成形するに際し、該金属製リードフレームの材料を被着材として得られた封止樹脂の接着強度を基にして、封止樹脂の材料、金属製リードフレームの材料、金属性リードフレームの表面処理条件、のうちのいずれか、または相互の組合せを選択することを特徴とする半導体装置の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は樹脂材料の表示方法、収納容器、掲載書面、接着強度(剥離強度ともいう。以下において同じ。)測定方法及び複合体の製造方法に係り、特に残留応力を分離でき、しかも試験片の寸法や形状に依存しない普遍的な接着強度の得られる樹脂材料の表示方法、収納容器、掲載書面、接着強度測定方法及び複合体の製造方法に関し、更には接着信頼性を容易に評価し得る樹脂材料に関する。
【0002】
【従来の技術】樹脂封止型半導体装置や樹脂絶縁変圧器など、インサート部材を樹脂モールドした構造の電子、電気部品においては、樹脂の硬化収縮や樹脂とインサート部材との線膨張係数差によって樹脂接着界面に高い残留応力が発生する。◆更に、これらの部品の動作時や信頼性試験時には、内部発熱や苛酷な加熱冷却によって一層高い熱応力が発生し、接着界面に剥離が発生することがある。
【0003】このような界面剥離は半導体素子、電気配線材料の腐食や電気絶縁劣化を引き起こすだけでなく、剥離による応力集中が原因となって樹脂の割れや微細配線の断線など様々な損傷を引き起こす。◆従って、このような樹脂モールド部品の信頼性を確保する上で、樹脂材料の接着強度評価が必要不可欠となっている。
【0004】従来、樹脂材料の接着強度測定方法としては、例えばアイ・イー・イー・イートランザクション オン コンポーネンツ ハイブリッズ アンド マニュファクチャリング テクノロジー、第14巻、第4号(1991年)第809頁から第817頁(IEEE Trans. Comp., Hybrids,Manuf. Technol., Vol.14, No.4(1991)pp.809−817)や接着の技術、第9巻、第1号(1990年)第60頁から第63頁、同誌第64頁から第75頁に記載されているように、接着試験片に引張り、剪断などの荷重を負荷して、剥離発生時の荷重を接着面積や接着長さで割る方法が知られている。
【0005】また部分的に剥離箇所を設けた接着試験片に荷重を負荷し、剥離進展時の剥離先端、すなわち、剥離部と接着部の境界近傍の応力分布を破壊力学パラメータで一義的に記述する方法が日本機械学会第67期通常総会講演会講演論文集、A編(1990年)第75頁から第77頁などにより知られている。
【0006】更に、接着試験片モールド後の冷却過程で残留応力によって剥離が発生する温度を測定し、そのときの剥離起点部の残留応力分布を解析によって求める方法が日本機械学会論文集、A編、第54巻、第499号(1988年)第597頁から第603頁により知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術のうち、引張りや剪断などの荷重を負荷する方法では接着試験片の作成時点ですでに残留応力が存在しているため、測定できる接着強度が真の接着強度に残留応力の重畳した見掛けの接着強度に過ぎないという問題がある。◆特に半導体封止用トランスファモールド樹脂の場合、モールド金型からの樹脂の離型を容易にするため樹脂中に離型剤が配合されており、接着強度が比較的低い。このため残留応力による接着強度の低下割合が大きく、試験片の形状や寸法によっては、残留応力だけで界面に剥離が発生することもある。
【0008】従ってこのような方法で測定した接着強度を、解析或いは実験によって求めた界面応力と比較しても、樹脂モールド部品の接着信頼性を評価することはできない。◆更に、接着界面の応力は一般に一様ではなく、多くの場合端部で応力が無限大となる特異性を有している。
【0009】接着試験時の負荷荷重によって発生する応力や残留応力の分布は、いずれも試験片の寸法、形状や材質に依存するため、一様な応力分布を仮定して荷重を接着面積で割ったり、荷重が剥離先端に沿った直線上にのみ作用すると仮定して荷重を接着長さで割る従来の方法では、得られる接着強度が試験片寸法などに依存し、普遍的な測定値を得ることができない。
【0010】残留応力が存在しない場合には、剥離先端などの特異点近傍の応力分布を破壊力学パラメータで記述する方法によって、普遍的な接着強度を得ることができる。しかし残留応力が存在する場合には、従来技術の最後の例(日本機械学会論文集、A編、第54巻、第499号(1988年)第597頁から第603頁)と同様、解析によって残留応力分布を求めることが必要になる。解析によって残留応力を求める場合、樹脂の材質によっては物性値の温度依存性や高温での粘弾性挙動が著しいため、解析が極めて煩雑であったり精度の高い解析が困難な場合もある。
【0011】また、上述した従来技術の最後の例のように残留応力のみによって剥離を生じさせる場合には必要な任意の温度で自由に接着強度を測定できないという問題もある。
【0012】上記のように従来は物性値としての普遍的な接着強度が事実上得られていなかったため、樹脂成形品の界面の接着信頼性を評価するにあたっては定量的な予測は困難であり、実際に成形品を作成して界面の接着状態、接着強度等を検査、測定することが必要であった。
【0013】本発明の第1の目的は、真の接着強度と残留応力とを分離でき、しかも試験片の寸法や形状に依存しない普遍的な接着強度を高精度かつ容易に測定し得る樹脂材料の接着強度測定方法を提供し、この結果を用いた樹脂材料の表示方法、収納容器、掲載書面及び複合体の製造方法を提供することにある。◆また本発明の第2の目的は、与えられた物性値から成形品の界面の接着信頼性を容易に予測評価し得る樹脂材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的は、樹脂材料と、これとの接着強度を求める相手材(以下、被着材と呼ぶ)との間に部分的な剥離箇所を有し、剥離先端部近傍の接着界面の残留応力が剪断応力成分主体となるような形状の接着試験片を作成し、剥離先端近傍の接着界面に正、逆2方向の剪断応力が作用するような荷重を個別に負荷して夫々の場合の見掛けの剥離進展強度を求めることにより達成される。◆また上記第2の目的は、樹脂材料に、上記手段によって得られた接着強度の測定結果を添付することによって達成される。
【0015】本発明の樹脂材料の表示方法、収納容器及び掲載書面は、樹脂の被着材に対する剪断応力に基づく接着強度を、被着材名と共に表記すること、または実質的に残留応力の影響を除外して求めた樹脂の被着材に対する接着強度を表記することを特徴とする。
【0016】この場合、樹脂材料は成形前(重合前等)の状態のもの(液状、粉状等)を意味し、特に熱硬化性樹脂にあっては樹脂組成物を意味する。また、樹脂は樹脂硬化物のことをいう。表記は応力拡大係数またはひずみエネルギ解放率で示すことが好ましい。
【0017】応力拡大係数は、一般にMPa√mまたはkgf/mm32(2分の3乗)の単位で表され、〔応力〕×〔長さ〕の0.5乗、〔力〕×〔長さ〕の−1.5乗、または〔質量〕×〔長さ〕の−0.5乗×〔時間〕の−2乗の次元で示される。
【0018】ひずみエネルギ解放率は、J/m2またはkgf/mmの単位で表され、〔エネルギ〕×〔長さ〕の−2乗、〔力〕×〔長さ〕の−1乗、〔質量〕×〔時間〕の−2乗の次元で示される。
【0019】本発明の樹脂材料の接着強度測定方法は、少なくとも一つの樹脂を含む二つ以上の材料からなる構成において、互いに接着した2つの材料間に(すなわち前記少なくとも一つの樹脂と他の材料との間の接着界面に)予め部分的に剥離箇所を設け、接着界面に互いに逆向きの剪断応力が作用するような2種類の荷重を個別に負荷して、夫々の荷重負荷に対する剥離進展強度を求めること、或いは互いの接着強度を求める2つの材料を層状に接着し、接着界面に垂直な方向の曲げ荷重を、向きを反転させて負荷することにより逆向きの剪断応力を作用させること、或いは互いに接着した2つの材料間に、接着界面に作用する残留応力と同一方向及び逆方向の応力を個別に作用させて接着強度を求めることを特徴とする。
【0020】本発明の複合体の製造方法は、樹脂と金属との複合体を形成するに際し、該金属を被着材として得られた樹脂の接着強度を基にして、樹脂と金属の組合せを選択することを特徴とする。
【0021】また本発明の半導体装置の製造方法は、金属製リードフレームと半導体素子を封止樹脂でモールド成形するに際し、金属製リードフレームの材料を被着材として得られた封止樹脂の接着強度を基にして、封止樹脂の材料、金属製リードフレームの材料、金属性リードフレームの表面処理条件、のうちのいずれか、または相互の組合せを選択することを特徴とする。
【0022】これらの場合、樹脂はエポキシ系であり、金属は銅、銅合金、鉄、アルミニウムまたはこれらの合金例えば鉄−42ニッケルから選択されるものであることが好ましい。ただし樹脂はこれに限定されず、熱可塑性であると、熱硬化性であるとを問わない。また樹脂材料は、液状であっても粉末であっても差し支えなく、硬化が熱によるか否かは問わない。被着材は金属に限定されず、セラミックスでも樹脂でも本発明を適用し得る。硬化物は、フィルム、板状物、バルク、いずれも用途に応じて採用可能である。
【0023】樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン系、ポリアミド系等の熱可塑性樹脂が挙げられ、添加物を含んでも差し支えない。また樹脂として接着剤の使用も可能であり、例えば、エポキシ樹脂ベース等の熱硬化性樹脂、酢酸ビニル系樹脂ベース等の熱可塑性樹脂、クロロプレンベース等のエラストマー、フェノール樹脂−エポキシ樹脂等の混合型樹脂等が挙げられる。
【0024】更に本発明による強度表示の成果は、特に樹脂と金属との密着力を要求される複合体に適用するに際して効果を奏し、樹脂封止半導体装置等の電子部品、樹脂絶縁変圧器等の電力機器、VTRシャーシ等の家電製品に適する。
【0025】尚、本明細書において、剥離進展強度とは、予め剥離した部分を起点にして、更に剥離が進展することに対する強度を示したものである。◆表示は、他の条件との併記を妨げない。
【0026】
【作用】正逆二通りの剪断応力を作用させることによって、残留応力が負荷荷重による応力を増加させる方向と減少させる方向の二つの剥離進展強度を求めることができる。負荷荷重のみによって発生する剥離先端近傍の見掛けの応力分布は、試験片の寸法、形状と物性値から計算によって精度良く求めることができるので、これら二つの見掛けの強度の算術平均を取ることによって、普遍的な真の接着強度を得ることができる。
【0027】すなわち、接合物には必ず残留応力が存在するので、接着界面に残留応力と逆の向きの剪断応力を作用させる測定では、”真の強度+残留応力”が測定されることになり、残留応力と同じ向きに剪断応力を作用させる測定では、”真の強度−残留応力”が測定されることになるので、両者の測定結果の平均、すなわち”(真の強度+残留応力)+(真の強度−残留応力)”/2を求めれば真の強度が求まるという本発明者が見出した原理に基づくものである。
【0028】また樹脂材料において、このような接着強度の測定結果が与えられていれば、従来から用いられている縦弾性係数や線膨張係数などの物性値をもとに成形状態での発生応力を解析によって求め、これを接着強度と比較することによって成形品の接着信頼性を定量的に予測評価することができる。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面によって説明する。◆図1は、本発明の一実施例である樹脂材料の接着強度測定方法において、試験片の形状と荷重の負荷方法を示す正面図である。◆短冊状或いは直方体状の試験片1は、樹脂2と被着材3を接着した2層構造となっており、接着界面4の一端には予め剥離部分5が設けられている。曲げ荷重を受けるこのような形状の試験片は、一般にENF(End−NotchedFlexure)試験片と呼ばれている。
【0030】本実施例に用いた樹脂材料は、主剤にクレゾールノボラックエポキシ樹脂、硬化剤にフェノールノボラック樹脂、充填剤に溶融シリカを使用しており、この他に可塑剤、硬化促進剤、カップリング剤、離型剤、難燃化剤、着色剤等が若干量添加されているエポキシ系樹脂組成物である。
【0031】この試験片1を作成するにあたっては、モールド金型内に予め被着材3を入れておき、高温で樹脂2をモールドし硬化させた後、室温まで冷却、或いは試験温度まで加熱、冷却した。
【0032】従って接着界面4には、樹脂2の硬化収縮や被着材3との線膨張係数差によって、剪断応力成分を主体とする残留応力τrが作用している。図1では、樹脂2の収縮が被着材3の収縮よりも大きい場合を例として、剥離先端7近傍での残留応力τrの作用方向を示している。
【0033】接着強度試験は、図1の(a)、(b)に夫々示すように試験片1を上下反転させた両方の場合について3点曲げ試験を行い、剥離が進展を開始するときの荷重を測定した。すなわち図1(a)では、樹脂2側を上にして試験片1を二つの支点6で支持し、スパンの中央部に荷重P1を負荷した。また図1(b)では、被着材3側を上にして同様に荷重P2を負荷した。
【0034】このとき接着界面4の剥離先端7近傍には、荷重P1による剪断応力τ1、荷重P2による剪断応力τ2が夫々図1の(a)、(b)に示した方向に作用する。◆図1の(a)、(b)の例について、剥離進展開始時の各応力間の関係を模式的に示すと、夫々図2の(a)、(b)のようになる。
【0035】図2において、(a)、(b)いずれの場合も残留応力τrの絶対値は同一であり、単に座標系が反転することによって符号が反転している。(a)の場合、荷重P1を負荷していくと荷重P1による剪断応力τ1はまず残留応力τrを軽減させた後、符号を反転させ、両応力τrとτ1の和が真の接着強度である限界の剪断応力τcに達したとき、剥離の進展が開始する。
【0036】一方、(b)の場合は荷重P2による剪断応力τ2が残留応力τrを更に増加させる方向に作用するので、(a)の場合の荷重P1よりも小さい荷重P2で応力和が限界の剪断応力τcに達し、剥離が進展する。
【0037】尚、図1及び図2では、荷重P1、P2の負荷方向を同一として試験片1を上下反転させているが、試験片1を基準として座標系を定義し、荷重負荷方向を反転させると考えれば、図1、図2の(a)(b)間で残留応力τrは互いに同一方向、荷重による剪断応力τ1、τ2は互いに反対方向となる。
【0038】図3は、半導体封止用エポキシ樹脂と半導体リードフレーム用Fe−42Ni合金板を用いた接着試験片について、図1(a)に示すように樹脂2側から荷重P1を負荷した場合の剥離進展開始荷重を測定し、この荷重での接着界面に沿った剥離先端7近傍の応力分布を、有限要素法によって解析した結果である。
【0039】Fe−42Ni合金は一般の樹脂材料に比べて線膨張係数が極めて小さいために試験片作成時の残留応力が大きく、従来、樹脂材料との定量的な接着強度測定が特に困難であった材料である。
【0040】試験片の寸法は、長さ55mm、幅6mm、樹脂とFe−42Ni板の厚さは夫々1.5mmと0.25mm、3点曲げ試験の支点間隔は45mm、剥離部分を設けた側の支点から剥離先端までの距離は10mmであり、175℃でモールドし、硬化させた試験片を室温で試験した。◆また応力解析にあたっては、残留応力がモールド温度から室温までの冷却によって発生するものとして、熱応力と荷重負荷の両方を考慮した解析を行った。
【0041】図3では、試験片1の座標系として接着界面4に平行な方向にx軸、垂直な方向にy軸をとるとき、剥離の進展に関与する二つの応力成分である垂直応力σyと剪断応力τxyの分布を示した。◆図に示すように、剥離先端7近傍では垂直応力σyに比べて剪断応力τxyの方がはるかに大きく、本実施例の測定方法では、剥離の進展が大部分剪断応力成分によって支配されていることが分かる。
【0042】図4は、図3と同一の試験片について図1に示した二通りの荷重負荷に対する剥離進展開始荷重を測定し、これらの荷重のみによって剥離先端近傍に発生する見掛けの剪断応力τ1、τ2の分布と、熱応力のみによる剪断応力τrの分布を有限要素法で解析した結果である。
【0043】また図4には、(τ1+τ2)/2及び(τ1−τ2)/2の分布、並びに図3のτxyに相当する剥離進展開始時の限界応力τcの分布も示してある。図4から分かるように、負荷荷重のみによる見掛けの剪断応力τ1とτ2の算術平均(τ1+τ2)/2は、剥離進展開始時の限界応力τcとよく一致し、(τ1−τ2)/2は熱応力のみによる剪断応力τrと一致している。
【0044】従って図1に示したように試験片1を上下反転した両方の場合について見掛けの剪断応力τ1、τ2を求めることによって、真の接着強度である限界の剪断応力τcと残留応力τrとを分離できることが分かる。
【0045】上記のようにして求めた限界の剪断応力τcの分布は、単一の数値ではないため、そのままでは真の接着強度として使用するのに不便である。そこで図3に示したような剥離先端の応力分布を表すパラメータとして、応力拡大係数やひずみエネルギ解放率などの破壊力学パラメータを使用する。
【0046】剥離先端近傍の接着界面上の応力分布は、開口型(モードI)及び面内剪断型(モードII)の変形に対する応力拡大係数KI、KIIによって、次式のように表される。
【0047】
【数1】

【0048】
【数2】

【0049】
【数3】

【0050】ここでσy,τxy、rは、夫々図3に示した垂直応力、剪断応力及び剥離先端からの距離、またπは円周率、iは虚数単位、dは代表長さである。μとνは夫々材料の横弾性係数とポアソン比であり、添字pとaによって樹脂と被着材を区別する。◆数1で表されるようにKIとKIIの二つのパラメータを組合せることによって、真の接着強度に相当する限界の応力分布を表すことができる。
【0051】尚、異種材料の界面の場合には数1で表されるように、均質材中の亀裂の場合と異なってKIとKIIが夫々σyとτxyに個別には対応していないので、これらを分離して考えることができない。◆このため本実施例のように剪断応力成分が支配的な場合でも、KIIのみで応力分布を表すことはできず、KIとKIIの組合せを用いる必要がある。
【0052】単一のパラメータで剥離先端近傍の応力分布を表す方法の一つとしては、残留応力の存在しない場合について次式で表される応力拡大係数Kiを用いる方法が、従来技術の項で示した日本機械学会第67期通常総会講演会講演論文集掲載の論文などにより知られている。
【0053】
【数4】

【0054】このパラメータは、次に示すように、上記実施例で述べた真の接着強度と残留応力との分離にも適用することができ、またKIとKIIの組合せを用いる場合に比べてパラメータの算出や評価が容易になるという利点がある。
【0055】すなわち、上記実施例では図3に示したようにτxy≫σyとなっているので、Kiは次式のように表すことができ、剪断応力τxyの分布と一対一に対応することになる。
【0056】
【数5】

【0057】従って図1のように試験片を上下反転して負荷荷重P1、P2のみによる見掛けのKi(以下、夫々Ki1、Ki2で表す。)を求めれば、これらの算術平均(Ki1+Ki2)/2から真の接着強度に対応するKi(以下、Kicで表す。)を、また(Ki1−Ki2)/2から残留応力に対応するKi(以下、Kirで表す。)を求めることができ、単一の数値だけで接着強度を評価することができる。
【0058】任意の荷重条件に対してKiを求めるには、有限要素法や境界要素法などの数値解析手法によって解析した剥離先端近傍の接着界面上の応力分布または剥離面の変位分布から、日本機械学会論文集、A編、第55巻、第510号(1989)第340頁から第347頁に記載されている方法によって算出すればよい。
【0059】また図1の実施例の荷重負荷に対するKiは、後述するひずみエネルギ解放率と同様、数値解析を行うことなく、はりの曲げ理論から容易に算出することもできる。
【0060】図5は、図4に示した有限要素法の解析結果に対して、負荷荷重のみによる見掛けの応力拡大係数Ki1、Ki2と熱応力のみによる応力拡大係数Kir、荷重と熱応力の両方を考慮した、剥離進展開始時の限界応力に対応する応力拡大係数Kicを算出した結果である。
【0061】剥離先端のごく近傍で数値解析上の誤差が大きくなっているものの、それ以外の領域では各応力拡大係数ともほぼ一定の値が得られている。◆図で明らかなように、荷重負荷に対する見掛けのKiから求めた(Ki1+Ki2)/2と(Ki1−Ki2)/2は、夫々真の接着強度と残留応力に対応する応力拡大係数、KicとKirによく一致していることが分かる。
【0062】上記の例では、熱応力解析を行うことによって残留応力と真の接着強度を求めている。しかし樹脂の材質によっては、物性値の温度依存性が高いため、解析に先立って試験片モールドから接着強度試験までの熱履歴に対応して線膨張係数や縦弾性係数などの詳細な温度依存データを測定することが必要であったり、高温での粘弾性挙動が著しいため、解析が極めて煩雑であるうえ精度の高い残留応力解析が困難な場合もある。
【0063】荷重負荷に対する見掛けのKiのみから残留応力を分離、消去する本実施例の方法によれば、残留応力の解析を行うことなく容易に、しかも精度良く真の接着強度を得ることができる。◆また、応力拡大係数Kiは剥離先端近傍の応力の強さを一義的に記述することができるので、試験片の寸法や形状に依存しない普遍的な接着強度を得ることができる。
【0064】図1の実施例の荷重負荷に対するKiは、はりの曲げ理論を用いて次のように導くことができる。すなわち、試験片1の幅をb、樹脂2と被着材3の厚さを夫々tp、ta、3点曲げの支点6の間隔を2L、剥離部分5を設けた側の支点6から剥離先端7までの剥離長さをa、樹脂2と被着材3の縦弾性係数を夫々Ep、Eaとすると、支点6間の中央に荷重Pを負荷したときの荷重点のたわみδは、はりの曲げ理論により次式のように求められる。
【0065】
【数6】

【0066】負荷荷重Pに対するコンプライアンスCはδ/Pであるから、ひずみエネルギ解放率Gは次式のようになる。
【0067】
【数7】

【0068】応力拡大係数Kiとひずみエネルギ解放率Gの間には次式の関係がある。
【0069】
【数8】

【0070】従って、応力拡大係数Kiは数7、数8から算術計算で容易に求めることができる。
【0071】尚、上記の計算に使用する縦弾性係数E、横弾性係数μ、ポアソン比νの3つの材料定数間には次式の関係があるので、計算にあたっては予めこれらのうちのいずれか二つのみを求めておけば良い。
【0072】
【数9】

【0073】荷重負荷のみによる見掛けの応力或いは応力拡大係数の解析に必要な物性値は、モールド温度からの熱履歴などに無関係に、これらの物性値の試験温度での値のみである。◆上記のひずみエネルギ解放率Gは、真の接着強度を表すパラメータとして応力拡大係数Kiの代りに用いることもできる。
【0074】この場合、ひずみエネルギ解放率Gは応力拡大係数Kiおよび応力の2乗に比例しているので、負荷荷重P1、P2に対する見掛けのひずみエネルギ解放率G1、G2から真の接着強度および残留応力に対応したひずみエネルギ解放率Gc、Grを求める際は、次式のように平方根に対して加減算を行う必要がある。
【0075】
【数10】

【0076】
【数11】

【0077】真の接着強度を表すパラメータとしては、以上で述べた応力拡大係数KI、KII、応力拡大係数Ki、ひずみエネルギ解放率Gのほか、試験片の寸法や形状に無関係に剥離先端近傍の応力の強さを一義的に記述し得るものであれば、破壊力学で用いられる経路独立積分Jなど、任意のパラメータを使用することができる。また実用的には、試験片の寸法、形状を特定した上で、正逆夫々の方向からの荷重負荷による剥離進展開始荷重の値や、同一の剥離長さでの正逆両方向からの平均の剥離進展開始荷重の値を使用しても良い。◆これらの荷重値を使用する場合でも、随時必要に応じて任意の普遍的なパラメータに変換することができる。
【0078】接着強度を測定する樹脂材料は、熱硬化性、熱可塑性のいずれであっても良い。また被着材の材質も金属のほか、セラミックス、シリコン、ガラスなどの各種無機材料や他の樹脂材料、更には別個に成形した同一の樹脂材料同士であっても良い。残留応力の種類も、熱応力だけでなく、硬化反応に伴う収縮や、水分、薬液などの浸透による膨潤、物理的または化学的環境による材質変化など、任意の発生原因による残留応力を分離することができる。
【0079】試験片1の寸法を決定するにあたっては、次のような条件を満たすよう注意する必要がある。◆すなわち、(1)試験片1の作成段階で残留応力によって接着界面4が剥離しない、(2)接着界面の剥離以前に樹脂2や被着材3の破壊または塑性変形が生じない、(3)曲げ試験時にはりの曲げ理論や線形数値解析の適用範囲外となるような大変形が生じない、(4)試験片1の幅方向、すなわち図1の紙面に垂直な方向に作用する剪断応力の影響が無視できる、等である。
【0080】(1)の条件に関しては、試験片の長さや幅に比べて樹脂2ができるだけ薄いことが望ましく、(2),(3)の条件に関しては逆に樹脂2が3点曲げの支点間隔に比べて極端に薄過ぎないことが望ましい。また(4)の条件に関しては試験片1の幅が支点間隔に比べて十分小さいことが望ましい。
【0081】以上の条件を満足する各寸法の限界値は樹脂2と被着材3の材質の組合せによって異なってくるが、概略の目安を示すと次のようになる。◆すなわち、試験片厚さは支点間隔の5分の1から40分の1程度の範囲、試験片幅は支点間隔の5分の1以下であることが望ましい。◆また、剥離先端7は支点6と荷重点の両方から試験片厚さ以上の距離だけ離れていることが望ましい。
【0082】図1の接着強度試験に先立って試験片1の一端に剥離部分5を設けるには、試験片1のモールド前に被着材3の一端に離型剤を塗布するか、またはフッ素樹脂など接着性の悪い材料からなるテープを貼り付けておけば良い。
【0083】また、モールド前にこれらの剥離手段を用いない場合でも、接着強度試験前に予め支点6の間隔を狭くして試験片1の端部近傍に局所的な曲げ荷重を負荷したり、試験片1の端部にかみそりの刃を押し付ける等して剥離部分を形成することができる。
【0084】モールド前に剥離手段を用いる場合も、得られた剥離部分の先端から更に曲げ荷重等によって自然の剥離を進展させた方が、テープ等の影響のない、より精度の高い接着強度を測定することができる。
【0085】応力拡大係数Ki等の算出に必要な剥離部分5の長さは、試験片側面の顕微鏡観察や上下面からの超音波探傷検査等によって測定する。試験片のモールド前に剥離手段を用いる場合は、離型剤の塗布長さやテープの接着長さを測定しても良い。ただし後者の場合は、モールド後に剥離が進展しないことが前提となる。
【0086】3点曲げ試験時の剥離進展の開始は、剥離長さの変化によるコンプライアンスCの変化、すなわち荷重Pとたわみδの関係を示す曲線の折れ曲がりによって検知することができる。またアコースティックエミッションの検出器やマイクロフォン等によって、剥離進展時に発生する音響信号を検出しても良い。
【0087】以上の説明では剥離進展の開始時点をもとに接着強度を求めたが、材質によっては剥離の進展開始時と進展中、進展停止時の応力拡大係数Ki等が異なる場合がある。このような場合は、求める接着強度の用途に応じて適切な時点の値を採用すればよい。
【0088】図6及び図7は、夫々本発明の他の実施例である樹脂材料の接着強度測定方法において、試験片の形状と荷重の負荷方法を示す正面図である。
【0089】本発明の接着強度測定方法に用いる試験片は、必ずしも互いの接着強度を求める樹脂2と被着材3の2材料のみからなっている必要はない。例えば図6のように同種または異種の二つの被着材3a、3bの間にはさまれた樹脂2の、被着材3a側の接着界面4での接着強度を測定したり、或いは図7に示すように被着材3bの表面にめっきや塗装、接着、蒸着等の手段によって設けられた第2の被着材3aと樹脂2との接着強度を測定することもできる。
【0090】更に図1、図6、図7のような2層、3層構造だけでなく、4層以上の多層構造や、試験片全長のうちの一部のみに特定の材質が存在していても良い。これらの場合は剥離部分5を、接着強度を測定すべき材料間の接着界面4に設けておく必要がある。
【0091】図6及び図7では、夫々1方向のみから荷重P1を負荷する場合について荷重負荷方法を示したが、試験片を上下反転した両方の場合について3点曲げ試験を行い、真の接着強度と残留応力を分離することは、図1の実施例の場合と同様である。
【0092】図8は本発明の更に他の実施例である樹脂材料の接着強度測定方法において、試験片の形状と荷重の負荷方法を示す正面図である。◆本実施例では樹脂2と被着材3を接着した試験片1の接着界面4に平行な方向に、図8(a)に示すような圧縮及び図8(b)に示すような引張りの荷重P1、P2を負荷することによって、正逆反転させた剪断応力τ1、τ2を作用させている。
【0093】このように本発明の接着強度測定方法では、剥離先端7近傍の剪断応力を正逆両方向に反転させることができ、しかもその大きさを接着界面4に垂直な方向の垂直応力に比べて十分大きくすることができさえすれば、任意の形状の試験片及び任意の荷重負荷方法を用いることができる。
【0094】図8のように圧縮及び引張り方向の荷重を負荷する場合、接着界面4に垂直な方向の垂直応力成分を小さくするためには、試験片1の両端に対向させて負荷する荷重が互いに同一軸線上となり、試験片1に曲げモーメントが作用しないよう注意することが必要である。
【0095】曲げ荷重によって接着強度試験を行う場合は、図1等に示した3点曲げ荷重のほか、4点曲げ荷重や片持ちはり状に支持した試験片に曲げ荷重を負荷する等、種々の荷重負荷方法を用いることができ、そのときの応力拡大係数Kiやひずみエネルギ解放率Gをはりの曲げ理論から導くことができる。
【0096】図9は、本発明の方法による接着強度の測定結果を記載した樹脂材料の特性記載書面の例である。◆樹脂材料と被着材の両方について、従来から用いられている縦弾性係数やこれに代わる曲げ弾性率、ポアソン比、線膨張係数等の物性値を測定するかまたは与えられれば、これらの値から、成形状態で樹脂モールド部品等の内部の接着界面に発生する応力を解析によって予測することができる。
【0097】従って、若し本発明の方法によって求めたKi等のパラメータによる真の接着強度が、図9に示した書面等の形で与えられるならば、この接着強度と応力の予測結果とを比較することによって、実際に樹脂材料の成形品を作成することなく、界面の剥離発生の有無や剥離発生の程度を定量的に予測評価することができる。
【0098】本発明の接着強度測定方法では剥離部分がすでに存在している場合の剥離進展に対する強度を求めているので、これによる接着強度をもとに成形品の剥離発生の有無を予測する場合は、微小な剥離部分の存在を仮定して、そこからの剥離進展の有無を評価すれば良い。
【0099】従来から用いられている接着強度が試験片の寸法や形状に依存するため材質間等の相対比較にしか利用できなかったのに対し、本発明の方法で測定した接着強度は成形品の接着信頼性の定量評価に適用することができるので、測定結果の表記にあたっては、上下反転した3点曲げ試験或いは剪断応力の反転による方法等、測定方法を表示することが望ましい。
【0100】接着強度の測定結果は図9に示した検査成績書だけでなく、樹脂材料の各種仕様書や収納容器に記載しても、樹脂材料の接着信頼性の予測評価を可能にする効果がある。
【0101】尚、発生応力の解析にあたっては上記のように樹脂材料のポアソン比が必要となるが、ポアソン比は曲げ弾性率等に比べて測定が煩雑である上、応力解析結果への影響が小さいため、図9の例のように記載を省略しても差し支えはない。
【0102】樹脂材料の接着強度は、被着材の材質や表面状態、温度や湿度等の環境条件、成形条件等によって変化するため、接着強度の測定結果を記載する場合は、測定結果の数値とともにこれらの測定条件を併記するか、または温度等の測定条件に対してグラフの形で表示することが望ましい。
【0103】図10は、本発明の方法によって求めた半導体封止用エポキシ樹脂と半導体リードフレーム用Fe−42Ni合金板の真の接着強度Kicと温度との関係を示すグラフである。
【0104】従来の接着強度測定方法では、真の接着強度だけでなく残留応力も温度によって変化するため、接着強度の温度依存性を定量的に求めることはできなかった。図10のように真の接着強度が温度の関数として与えられれば、温度の関数として解析によって求めた成形品の発生応力との比較によって、剥離発生の限界温度を予測することも可能となる。
【0105】次に、本発明の方法による接着強度をもとに、樹脂封止型半導体装置加熱時の、リードフレームと封止樹脂の接着界面の剥離発生温度を予測した例を示す。図11は、評価対象とした樹脂封止型半導体装置の構造を示す断面図、図12は、剥離発生温度の予測結果である。
【0106】図11において、半導体素子8は、Fe−42Ni合金製リードフレームのタブ9部分に接着剤などによって固定されており、タブ9の周囲には複数のリード10が、同一のリードフレーム材によって形成されている。半導体素子8表面の電極とリード10は、図示していない金属細線によって電気的に接続されており、これらの各部材は、リード10の外部引き出し部を除いて、エポキシ系の封止樹脂11によってモールドされている。
【0107】図11に示したような樹脂封止型半導体装置は、配線基板へのはんだ付け実装の際、200℃以上の高温にさらされ、このときの熱応力によって半導体装置内各部の接着界面に剥離が発生することがある。そこで、タブ9下面の封止樹脂11との接着界面端部に、図11に示すような微小な剥離部分12の存在を仮定し、樹脂封止型半導体を種々の温度に加熱したときに剥離先端13に発生する応力拡大係数Kiの値を有限要素法によって解析した。更に、本発明の方法を用いて、種々の温度における封止樹脂11とリードフレーム材との真の接着強度Kicを測定し、前記解析結果と比較した。
【0108】図12に比較結果を示す。図12において、右上がりの曲線は、解析によって求めた発生応力拡大係数Kiと加熱温度との関係、右下がりの曲線は、実験によって求めた真の接着強度Kicと測定温度との関係を示し、両曲線の交点が剥離発生温度、すなわち微小な剥離部分12からの剥離進展発生温度を与えることになる。また、図12の応力拡大係数Kiの解析結果を示す曲線上には、実際の樹脂封止型半導体装置を種々の温度の恒温槽中に10分間放置して、その後超音波検査装置でタブ9下面の剥離発生状況を観察した結果が、種々の記号によって示してある。
【0109】白の丸印は、その温度でタブ9の下面に剥離が観察されなかったサンプル、黒の丸印は、その温度でタブ9下面の全面が剥離していたサンプルを示し、白と黒の混在した丸印は、黒の領域の大小によって、タブ9下面端部近傍の部分的な剥離の大小を示している。
【0110】図12で分かるように、発生応力拡大係数Kiが真の接着強度Kicより低い温度領域ではタブ9下面の剥離は観察されず、真の接着強度Kicより高い温度領域では全面剥離、また両曲線の交点付近の温度領域では部分剥離が観察された。
【0111】この結果は、本発明の方法で求めた接着強度と、樹脂封止型半導体装置の応力解析結果を比較することによって、樹脂封止型半導体装置内部の剥離発生を予測できることを示している。
【0112】上記のように剥離の発生を定量的に予測できれば、実際に樹脂材料の成形品を作成することなく、最適な樹脂材料、リードフレーム材料や、めっきなどのリードフレームの表面処理条件、樹脂モールド条件、及びこれらの組合せ条件などを選定することができる。
【0113】
【発明の効果】本発明によれば、負荷荷重による応力に残留応力を加算した場合と減算した場合の二つの接着強度が得られ、しかも接着界面の応力分布を考慮することができるので、残留応力の解析を行うことなく真の接着強度と残留応力を分離できるとともに、試験片の寸法や形状に依存しない普遍的な接着強度を高精度かつ容易に測定することができる。
【0114】また本発明によれば、解析によって求めた成形品の応力と真の接着強度を比較することができるので、実際に成形品を作成することなく、成形品内部の接着界面の信頼性を予測評価することができる。




 

 


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