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発明の名称 超電導量子干渉素子およびこれを用いたデジタル駆動磁束計
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−11555
公開日 平成6年(1994)1月21日
出願番号 特願平5−66423
出願日 平成5年(1993)3月25日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
発明者 武田 栄里子 / 西野 壽一
要約 目的


構成
少なくとも,2つのジョセフソン接合4と,これを含む超電導リング11と,絶縁膜を介して積層して形成された前記超電導リング11に磁束を入力するための磁束入力用超電導配線とを含んで構成される超電導量子干渉素子において,前記超電導リング11の少なくとも1ヵ所にインピーダンスの不整合部分を設ける構成とする。さらに,超電導リングに切り込みを設けて不整合部分を設けた場合は,その切り込み部分に帰還電流を直接注入する構成とする。
特許請求の範囲
【請求項1】少なくとも,2つのジョセフソン接合と,前記2つのジョセフソン接合を含む超電導リングと,前記超電導リングに磁束を入力するための磁束入力用超電導配線とを含んで構成され,かつ,前記超電導リングと前記磁束入力用超電導配線は,絶縁膜を介して積層して形成される超電導量子干渉素子において,前記超電導リングは他の部分よりもインピーダンスの高い少なくとも1つの高インピーダンス部分,あるいは,他の部分よりもインピーダンスの低い少なくとも1つの低インピーダンス部分を含んで構成されていることを特徴とする超電導量子干渉素子。
【請求項2】前記超電導リングは超電導体薄膜によって構成され,かつ,前記高インピーダンス部分,もしくは,前記低インピーダンス部分は,前記超電導体薄膜の幅を部分的に細く,もしくは,太くすることによって構成されることを特徴とする請求項1記載の超電導量子干渉素子。
【請求項3】前記超電導リングは超電導体薄膜によって構成され,かつ,前記高インピーダンス部分は,前記超電導体薄膜の少なくとも1ヵ所以上に,前記超電導体薄膜の外縁から切り込み部分を設け,前記超電導体薄膜の幅を部分的に細くすることによって構成されることを特徴とする請求項1および2に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項4】前記2つのジョセフソン接合が存在する場所の中心点と前記超電導リングの中心点とを結んだ直線で分割される右側および左側の超電導リング部分に,それぞれ少なくとも1ヵ所以上の切り込み部分を設けることを特徴とする請求項3に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項5】前記2つのジョセフソン接合が存在する場所の中心点と前記超電導リングの中心点とを結んだ直線で分割される右側および左側の前記超電導リング部分に,前記右側および前記左側のインダクタンスがほぼ等しくなるように前記切り込み部分を設けることを特徴とする請求項4に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項6】前記2つのジョセフソン接合が存在する場所の中心点と前記超電導リングの中心点とを結んだ直線に対して,線対称となるごとくに,前記超電導リングに前記切り込み部分を設けることを特徴とする請求項5に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項7】前記超電導リングに設ける前記切り込み部分は,前記超電導リングに対して偶数回対称となるごとくに設けることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の超電導量子干渉素子。
【請求項8】前記超電導リングに設けた前記切り込み部分の少なくとも一つに,超電導量子干渉素子内の磁束を一定に保つための帰還用の電流を直接注入することを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載の超電導量子干渉素子。
【請求項9】前記超電導リングと前記絶縁膜を介して積層して形成される前記磁束を入力するための前記磁束入力用超電導配線は超電導体薄膜より成り,前記高インピーダンス部分,もしくは,前記低インピーダンス部分は,前記超電導配線を構成する前記超電導体薄膜の外縁と,これと超電導的に接続し隣接して配置した超電導配線を構成する超電導体薄膜の外縁との間の距離を複数種類設けることによって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項10】前記高インピーダンス部分,もしくは,前記低インピーダンス部分は,前記超電導配線を構成する超電導体薄膜の幅の異なる複数種類の部分より構成されることを特徴とする請求項1,2または9に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項11】前記高インピーダンス部分,もしくは,前記低インピーダンス部分は,前記超電導リングと前記磁束を入力するための前記磁束入力用超電導配線との間に設けた前記絶縁膜の膜厚を部分的に厚く,もしくは,薄くすることにより構成されることを特徴とする請求項1,2,9または10に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項12】前記高インピーダンス部分,もしくは,前記低インピーダンス部分は,前記超電導配線を構成する前記超電導体薄膜が前記超電導リングを覆っている範囲の中心を,前記超電導リングを構成する前記超電導体薄膜の幅の中心よりも,外側,もしくは,内側に配置することにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項13】前記超電導配線を構成する前記超電導体薄膜が前記超電導リングを覆っている範囲が,前記超電導リングの幅の中心よりも外側であることを特徴とする請求項12に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項14】前記超電導配線を構成する前記超電導体薄膜が前記超電導リングを覆っている範囲が,前記超電導リングの幅の中心よりも内側であることを特徴とする請求項12に記載の超電導量子干渉素子。
【請求項15】少なくとも,2つのジョセフソン接合と,前記2つのジョセフソン接合を含む超電導リングと,前記超電導リングに磁束を入力するための磁束入力用超電導配線とを含んで構成され,かつ,前記超電導リングと前記磁束入力用超電導配線は,絶縁膜を介して積層して形成される超電導量子干渉素子において,前記超電導リングは超電導体薄膜によって構成され,かつ,前記超電導体薄膜の少なくとも1ヵ所以上に,前記超電導体薄膜の外縁から切り込み部分を設け,前記超電導体薄膜の幅を部分的に細くすることによって構成されたる超電導量子干渉素子を少なくとも含んで構成される磁束計。
【請求項16】前記切り込み部分に電流を注入するための電極を設けたことを特徴とする請求項15に記載の磁束計。
【請求項17】前記切り込み部分において幅を部分的に細くした超電導体薄膜の部分が,これを含む超電導ループ,もしくはジョセフソン接合を含むrf−SQUIDまたはdc−SQUIDを構成していることを特徴とする請求項15または16に記載の磁束計。
【請求項18】前記2つのジョセフソン接合が存在する場所の中心点と前記超電導リングの中心点とを結んだ直線で分割される右側および左側の超電導リング部分に,それぞれ少なくとも1ヵ所以上の切り込み部分を設けることを特徴とする請求項15ないし17のいずれかに記載の磁束計。
【請求項19】前記2つのジョセフソン接合が存在する場所の中心点と前記超電導リングの中心点とを結んだ直線で分割される右側および左側の前記超電導リング部分に,前記右側および前記左側のインダクタンスがほぼ等しくなるように前記切り込み部分を設けることを特徴とする請求項15ないし18のいずれかに記載の磁束計。
【請求項20】前記2つのジョセフソン接合が存在する場所の中心点と前記超電導リングの中心点とを結んだ直線に対して,線対称となるごとくに,前記超電導リングに前記切り込み部分を設けることを特徴とする請求項15ないし19のいずれかに記載の磁束計。
【請求項21】前記超電導リングに設ける前記切り込み部分は,前記超電導リングに対して偶数回対称となるごとくに設けることを特徴とする請求項15ないし20のいずれかに記載の磁束計。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,微小な磁束を検出する超電導量子干渉素子(SuperconductingQuantum Interference Device ; SQUID)に関し,特に,高感度化および低雑音化することを可能にする超電導量子干渉素子の構造,およびそれを用いたデジタル駆動方式による磁束計の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】超電導量子干渉素子は超電導の性質を利用して,微小な磁場を検出することができる素子である。超電導量子干渉素子については,例えばジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジックス 第24巻 第10号 (1985年) 第L798頁から第L800頁(Japanese Journal ofApplied Physics Vol.24 No10 (1985)PP.L798〜L800)において論じられている。
【0003】従来技術における超電導量子干渉素子を用いた磁束計では,一般にジョセフソン接合部を有する超電導リングで直接磁束を検出せずに,磁束検出用の超電導配線と磁束を超電導リングに入力するための磁束入力用超電導配線とからなる超電導閉回路で形成される入力回路により磁束を検出する。また,その入力回路を用いて超電導量子干渉素子に伝達された磁束はヌルメソッドにより検出される。図11は,磁束計の一部として使用される従来技術における超電導量子干渉素子の一部の形状を示す上面図である。図11においては絶縁膜は省略してある。
【0004】また,従来技術における超電導量子干渉素子では,ほぼ正方形に近い形状をした超電導体薄膜のほぼ中央に正方形状の開口部7,および,スリット6を設け,そのスリット6を介して対向している超電導体薄膜にジョセフソン接合4を設け,それらの上部電極5を超電導的に接続させることにより,超電導リング61を形成していた。磁束入力用超電導配線8は,超電導リング61との磁気結合度を高めるため,図には記されていないが,ほぼ同一の膜厚を有する絶縁膜を介して超電導リング61の上部もしくは下部に積層して形成されていた。また,この磁束入力用超電導配線8の外側に,電流を流して逆向きの磁束を発生させて,超電導量子干渉素子内の磁束を一定に保つための帰還用超電導配線9が形成されている。これらの磁束入力用超電導配線8および帰還用超電導配線9は,主に,ほぼ均一の配線間隔,および,ほぼ均一の線幅で渦巻状に,超電導リング61のほぼ全面に配置されていた。このような構造のため,超電導リング61は,ほぼ均一のインピーダンスを有していた。
【0005】また,従来技術における超電導量子干渉素子では,磁束入力用の超電導配線と超電導リング61との間の磁束伝達率を高めるために,超電導リング61の開口部7を大きくし,かつ,磁束入力用超電導配線8の巻数を多くしており,また,帰還用超電導配線9も超電導配線8の外側に配置していたため,超電導リング61は数百平方μm角の面積があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】超電導リング61と磁束入力用超電導配線8,および,帰還用超電導配線9は,絶縁膜を介して積層して形成されており,マイクロストリップラインの形状を有する伝送線路を構成している。このため,超電導リング61に,ジョセフソン接合4が交流ジョセフソン効果によって発生する高周波電圧が印加されると,その周波数に対応する波長の2分の1の長さと伝送線路としての超電導リング61の長さが一致したところで定在波が生じる。この定在波により,超電導量子干渉素子の電流−電圧特性に電圧ステップが生じる。この定在波の波長は,超電導リング61を形成する超電導体薄膜の幅や,開口部7の大きさに依存する。一般に,超電導リング61の開口部7の大きさや超電導リング61の外寸が大きくなるに従い定在波の波長が長くなる。交流ジョセフソン効果によって発生する高周波の波長と,ジョセフソン接合4に発生する電圧,すなわち超電導量子干渉素子に発生する電圧は,反比例の関係にあるので,定在波の波長が長くなると電圧ステップの生じる電圧値は小さくなる。
【0007】前記従来技術における超電導量子干渉素子では,超電導リング61は,ほぼ均一のインピーダンスを有しているため,交流ジョセフソン効果によって生じた電磁波の反射は超電導リング61の両端,すなわちジョセフソン接合4との接続部分で起きた。また,磁束伝達率を向上させるために超電導リング61の開口部7を大きく,また,磁束入力用超電導配線8の巻数を多くしていた。例えば,ごく一般的な例として,超電導リング61の開口部7の大きさが80μmで,磁束入力用超電導配線8を,線幅3μm,線間隔3μmで39回巻とし,その外側に,帰還用超電導配線9を配置した場合,超電導リング61の一辺の長さは約600μmとなる。従って,上述の超電導量子干渉素子の場合,定在波が生じる周波数を電圧に換算すると,約80μVとなり,超電導量子干渉素子の動作電圧範囲内になった。そのため,定在波により電流−電圧特性に生じた電圧ステップの影響で,超電導量子干渉素子の出力電圧が減少し,高感度な超電導量子干渉素子を作製できないという問題があった。
【0008】また,この定在波による電圧ステップは,上述のようにマイクロストリップラインによって構成される共振器の共振によって生じる。この共振のQ値を小さくするために,超電導リング61にダンピング抵抗を挿入することがある。しかし,このダンピング抵抗の挿入は,ダンピング抵抗がジョンソンノイズを発生するために,超電導量子干渉素子の雑音を増加させるという新たな問題を引き起こしていた。
【0009】また,同様に磁束入力用超電導配線8,および,帰還用超電導配線9に関してもマイクロストリップラインの形状を有する伝送線路を構成しているため,超電導リング61に,ジョセフソン接合4が交流ジョセフソン効果によって発生する高周波電圧が印加されると,その周波数に対応する波長の2分の1の長さと伝送線路としての磁束入力用超電導配線8,または,帰還用超電導配線9の長さが一致したところで定在波が生じる。この定在波により,超電導量子干渉素子の電流−電圧特性に電圧ステップが生じる。磁束入力用超電導配線8の場合は超電導リング61の上に螺旋状配置されておりその長さが十分長い場合は,定在波による電圧ステップは数μVという,超電導量子干渉素子の動作範囲よりも非常に低い電圧になる。しかし,帰還用超電導配線9に関しては,その長さが超電導リング61の伝送線路としての長さの約2倍程度であり,例えば上述の超電導量子干渉素子の場合は,帰還用超電導配線9による電圧ステップは約50μV付近に生じる。この電圧は超電導量子干渉素子の動作電圧範囲であり,この電圧ステップの影響で,超電導量子干渉素子の出力電圧が減少し,高感度な超電導量子干渉素子を作製できないという問題があった。
【0010】また,磁束入力用超電導配線8の外側に,帰還用超電導配線9を配置するという構造により,両者が磁気的に結合し,その結果,どちらかの超電導配線に生じる雑音が,他の超電導配線に影響を及ぼすなど,低雑音化できないという問題があった。また,帰還用超電導配線9は磁束入力用超電導配線8の外側に配置されるため,超電導リング61との磁気結合も小さく,かつ配線長が長いため,インダクタンスも大きかった。そのため,高速信号を伝達するのが困難であり,この超電導量子干渉素子を用いた磁束計の広帯域化が困難であるという問題もあった。
【0011】また,帰還電流を離散的なデジタル値として流して制御する方法は,精度と動作速度の点から,極めて高性能な超電導量子干渉素子を実現できる可能性を秘めているが,従来技術においては,広帯域化が困難であったため,超電導量子干渉素子の動作をデジタル化しても十分なメリットを引き出せないという問題があった。
【0012】上述の如く,従来技術においては,高感度かつ低雑音の超電導量子干渉素子を実現すること,およびそれを用いた高性能の磁束計を実現するための充分な配慮がなされていたとは言えない。本発明は上記従来技術のもつ問題点を解決して,高感度かつ低雑音の超電導量子干渉素子を提供すること,およびそれを用いた高性能の磁束計を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は,少なくとも,2つのジョセフソン接合と,前記2つのジョセフソン接合を含む超電導リングと,前記超電導リングに磁束を入力するための磁束入力用超電導配線とを含んで構成され,かつ,前記超電導リングと前記磁束を入力するための前記磁束入力用超電導配線は,絶縁膜を介して積層して形成される超電導量子干渉素子において,前記超電導リングは他の部分よりもインピーダンスの高い少なくとも1つの高インピーダンス部分,あるいは,他の部分よりもインピーダンスの低い少なくとも1つの低インピーダンス部分を含む構成とすることで解決することができる。
【0014】また,前記高インピーダンス部分,もしくは,前記低インピーダンス部分は,(1)前記超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅を部分的に細く,もしくは,太くすることによって,もしくは,(2)前記超電導リングと前記絶縁膜を介して積層して形成される前記超電導配線を構成する超電導体薄膜の外縁と,これと超電導的に接続し隣接して配置した超電導配線を構成する超電導体薄膜の外縁との間の距離を複数種類設けることによって,もしくは,(3)前記超電導リングと前記絶縁膜を介して積層して形成される前記磁束を入力するための前記磁束入力用超電導配線を構成する超電導体薄膜に幅の異なる複数種類の部分を設けることによって,もしくは,(4)前記超電導リングと前記磁束を入力するための前記磁束入力用超電導配線との間に設けた前記絶縁膜の膜厚を部分的に厚く,もしくは,薄くすることによって,もしくは,(5)前記超電導配線を構成する超電導体薄膜が前記超電導リングを覆っている範囲の中心を,前記超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅の中心よりも,外側,もしくは,内側に配置することによって,もしくは,(6)前記超電導リングは超電導体薄膜によって構成され,かつ,前記インピーダンスの異なる部分は,前記超電導体薄膜の少なくとも1ヵ所以上に,前記超電導体薄膜の外縁から切り込み部分を設け,前記超電導体薄膜の幅を部分的に細くすることによって,それぞれ構成することができ,また,この超電導量子干渉素子を用いた磁束計を前記切り込み部分に電流を注入するための電極を設けるか,あるいは,前記切り込み部分において幅を部分的に細くした超電導体薄膜の部分が,これを含む超電導ループ,もしくはジョセフソン接合を含むrf−SQUIDまたはdc−SQUIDを構成することによって,本発明の課題を解決することができる。
【0015】
【作用】従来技術においては,超電導リングに生じる定在波の波長を超電導リングの寸法によって決まる一定の値から変えて,超電導量子干渉素子を使用するという考え方が存在しなかった。しかし,発明者等は,超電導リングに生じる定在波の波長を所望の値に変化させ,これにより,定在波に起因して超電導量子干渉素子の電流−電圧特性に生じる電圧ステップを,超電導量子干渉素子の動作電圧範囲よりも高電圧側へ移動させることができれば,超電導量子干渉素子を高感度化することができることに着目した。
【0016】定在波の波長を変化させる具体的な方法としては,(1)超電導リングを,少なくとも1つの高インピーダンス部分と少なくとも1つの低インピーダンス部分とを含む構成とし,インピーダンスの値の異なる部分の境界で電磁波の反射をおこして定在波の波長を短くする,(2)超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅の中心よりも内側部分を低インピーダンス部分,外側部分を高インピーダンス部分とする構成とし,定在波を超電導リングの幅の中心よりも内側部分に立たせることにより,定在波の波長を短くする,(3)超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅の中心よりも外側部分を低インピーダンス部分,内側部分を高インピーダンス部分とする構成とし,定在波を超電導リングの幅の中心よりも外側部分に立たせることにより,定在波の波長を長くする,の3つの方法に発明者等は着目した。
【0017】本発明による超電導量子干渉素子の超電導リングは,他の部分よりもインピーダンスの高い少なくとも1つの高インピーダンス部分,あるいは,他の部分よりもインピーダンスの低い少なくとも1つの低インピーダンス部分とを含む構成とした。このために,ほぼ同一のインピーダンスを有するように超電導リングが構成されている従来の超電導量子干渉素子に比べて,本発明による超電導量子干渉素子においては,超電導リングに立つ定在波の波長を,上記の(1)に示した方法を用いて短くした場合にあっては,電圧ステップは従来の超電導量子干渉素子に比べて,より高電圧側に生じる。従って,本発明の超電導量子干渉素子は,電圧ステップを超電導量子干渉素子の動作電圧範囲から除くことができるため,高感度化することができる。この方法は,具体的には,前記超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅を部分的に細く,もしくは,太くすることによって,もしくは前記超電導リングを構成する超電導体薄膜に少なくとも1ヵ所以上に切り込み部分を設け,幅を部分的に細くすることによって,もしくは,前記超電導リングと前記絶縁膜を介して積層して形成される前記超電導配線を構成する超電導体薄膜の外縁と,これと超電導的に接続し隣接して配置した超電導配線を構成する超電導体薄膜の外縁との間の距離を複数種類設けることによって,もしくは,前記超電導リングと前記絶縁膜を介して積層して形成される前記磁束を入力するための前記磁束入力用超電導配線を構成する超電導体薄膜に幅の異なる複数種類の部分を設けることによって,もしくは,前記超電導リングと前記磁束を入力するための前記磁束入力用超電導配線との間に設けた前記絶縁膜の膜厚を部分的に厚く,もしくは,薄くすることによって,実現される。
【0018】超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅を部分的に細くすれば,その部分に高インピーダンス部分を,逆に部分的に太くすれば,その部分に低インピーダンス部分を形成することができる。また,超電導配線を構成する超電導体薄膜の外縁間の距離を短くすると,低インピーダンス部分を,逆に長くすれば高インピーダンス部分を設けることができる。また,超電導配線を構成する超電導体薄膜の幅が太い部分には,低インピーダンス部分を,逆に細い部分には高インピーダンス部分を形成できる。また,超電導リングと前記磁束を入力するための前記磁束入力用超電導配線との間に設けた絶縁膜の膜厚を部分的に厚くすれば,その部分に高インピーダンス部分を,逆に薄くすれば低インピーダンス部分を形成できる。 また,本発明の超電導量子干渉素子においては,超電導リングに立つ定在波の波長を,上記(2)に示した方法を用いて短くした場合にあっては,電圧ステップは従来の超電導量子干渉素子に比べて,より高電圧側に生じる。従って,本発明の超電導量子干渉素子は,電圧ステップを超電導量子干渉素子の動作電圧範囲から除くことができるため,高感度化することができる。この方法は,具体的には,前記超電導配線を構成する超電導体薄膜が前記超電導リングを覆っている範囲の中心を,前記超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅の中心よりも,内側に配置することによって実現される。この場合は,超電導リングの幅の中心よりも,内側部分が,低インピーダンス部分であり,外側部分が高インピーダンス部分となる。
【0019】また,本発明の超電導量子干渉素子においては,超電導リングに立つ定在波の波長を,上記(3)に示した方法を用いて長くした場合にあっては,電圧ステップは従来の超電導量子干渉素子に比べて,より低電圧側に生じる。従って,本発明の超電導量子干渉素子は,電圧ステップを超電導量子干渉素子の動作電圧範囲から除くことができるため,出力電圧をより大きくして高感度化を実現することができ,従って,本発明の課題を解決することができる。この方法は,具体的には,前記超電導配線を構成する超電導体薄膜が前記超電導リングを覆っている範囲の中心を,前記超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅の中心よりも,外側に配置することによって実現される。この場合は,超電導リングの幅の中心よりも内側部分が,高インピーダンス部分であり,外側部分が低インピーダンス部分となる。これら3つの方法を独立に用いても,また2つ以上の組合せとして用いても,本発明の目的は達成することができる。
【0020】加えて,本発明による超電導量子干渉素子においては,超電導リングを構成する超電導体薄膜の幅や,超電導リングと超電導リングに磁束を入力するための磁束入力用超電導配線との間の絶縁膜厚や,超電導リングに磁束を入力するための磁束入力用超電導配線の配置方法,あるいはその組合せによって,高インピーダンス部分,あるいは,低インピーダンス部分の場所を任意に設けることができる。このため,電圧ステップの生じる電圧を所望の値に設定することができる。
【0021】さらに,本発明による超電導量子干渉素子においては,超電導リングの開口部の大きさや,磁束を入力するための磁束入力用超電導配線の巻数を変える必要がないので,磁気結合度を減少させることがなく,さらに,定在波による電圧ステップのQ値を低くするためのダンピング抵抗を,超電導リングに付加する必要がないため,ダンピング抵抗が発生する雑音を増加させることがないので,超電導量子干渉素子を低雑音化かつ高感度化して本発明の課題を解決することができる。
【0022】また,前記超電導リングを構成する超電導体薄膜に少なくとも1ヵ所以上に切り込み部分を設け,幅を部分的に細くすることによって前記高インピーダンス部分を構成した本発明による超電導量子干渉素子においては,切り込み部分の位置や,切り込み部分を設ける場所によって,定在波の波長を任意に設定することができ電圧ステップを所望の電圧にすることができる。また,2つのジョセフソン接合が存在する場所の中心点と超電導リングの中心点とを結んだ直線に対して,右側部分と左側部分のインダクタンスがほぼ等しくなるように切り込み部分を設けることで,超電導リングのインダクタンスを左右対称にすることができるため,インダクタンスの非対称性による電圧ステップの出現を回避することができる。
【0023】加えて,前記超電導リングを構成する超電導体薄膜に少なくとも1ヵ所以上に切り込み部分を設け,幅を部分的に細くすることによって前記高インピーダンス部分を構成した本発明による超電導量子干渉素子においては,従来は,磁束入力用超電導配線の外側に配置していた,帰還用超電導配線のかわりに,超電導リングに設けた切り込み部分の何れかに直接電流を注入する構成とすることもできる。この場合には,超電導リングの面積を小さくして,超電導リングに生じる定在波による電圧ステップをさらに高電圧側に移動させることができることに加え,帰還用超電導配線に生じる定在波による電圧ステップをなくすことができるため,出力電圧を増加させることができ,超電導量子干渉素子を高感度化することができる。
【0024】この場合には,さらに,帰還用超電導配線をなくすことにより,磁束入力用超電導配線と帰還用超電導配線を隣接して配置していたときに生じた,磁気結合による雑音の混入を防ぐことができ,超電導量子干渉素子,および,それを用いた磁束計を低雑音化することができる。また,超電導量子干渉素子内の磁束を一定に保つための帰還用の電流を,切り込み部分に直接電流を流す構成とすることで,帰還用超電導配線のインダクタンスを小さくできるため,従来に比較して高速の信号を伝送することができ,磁束計の広帯域化を図ることができる。
【0025】切り込み部分が複数ある場合には,電流注入用電極のどの2つを対にしても,帰還による制御を実現することはできるが,特に切り込み部分の両側に設けた電極を対にしてどれか一対あるいは複数対に電流を注入して制御を行う場合には,超電導量子干渉素子の特性の制御が容易になる。これは,切り込み部分では超電導コイルの幅が他の場所よりも狭くなるため,単位長さあたりのインダクタンスが大きくなって,制御に必要な電流を小さくすることができるからである。また,切り込み部分にのみ制御電流が流れるので,磁束入力用コイルとの結合を小さくすることができ,帰還の制御回路とのクロストークによる雑音を小さくできる利点もある。
【0026】前記切り込み部分において幅を部分的に細くした超電導体薄膜の部分が,これを含む超電導ループ,もしくはジョセフソン接合を含むrf−SQUIDまたはdc−SQUIDを構成すれば,これらの超電導ループの内部に蓄えれれる磁束は,磁束量子の整数倍に限られ,従って,切り込み部分を通して超電導量子干渉素子には,磁束量子の整数倍に限られた値の磁束が帰還される。このため,比較的精度の低い電流源を用いて帰還を行っても,デジタル的な帰還による制御を実現できる。一般に,超電導量子干渉素子を構成するワッシャ型の超電導リングのインダクタンスは近くに超電導の電極があると変化するので,超電導の電極は超電導リングに電流が流れる向きと直角方向に引き出すことが望ましい。また,上記のインダクタンスの変化は超電導リングの幅が大きいほど顕著になる。このため幅の狭い切り込み部分を含んだ超電導ループによって帰還を行うことにより,超電導量子干渉素子への影響を小さくして,かつ効率の良い帰還を行うことができる。さらに,帰還のための電流を流す配線のインダクタンスを従来技術に比べて10分の1程度に小さくできるので,帰還の制御をより高速に行うことができ,従って磁束計としての信号検出の帯域をより高い周波数まで拡大することができる。
【0027】従って,上述のように,本発明による構成を用いることにより,高感度かつ低雑音の超電導量子干渉素子を提供し,またそれを用いて低雑音かつ広帯域の磁束計を提供できるため,本発明の課題を解決することができる。
【0028】
【実施例】本発明による実施例1を次に述べる。図1は正方形に近い形状の超電導体の一部に切り込み部分21を設けた超電導リング11を有する本発明の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。図1においては,磁束を超電導リング11に入力するための磁束入力用超電導配線,超電導量子干渉素子内の磁束を一定に保つための帰還用超電導配線,および,絶縁膜は省略してある。実施例1の超電導量子干渉素子の作製方法は次のとおりである。基板は表面を熱酸化したSiウェハを用いた。この表面に厚さ約200nmのNb膜を直流マグネトロンスパッタ法により堆積したのち,フォトレジストをマスク材として反応性イオンエッチング法により上記のNb膜を加工して超電導リング11のパタンを形成した。この超電導リング11は,一辺が約600μmの正方形に近い形状をしており,中央に80μm角の開口部7とその中心から幅5μm,長さ約260μmのスリット6を有する。また,この超電導リング11に長さ216μm,幅80μmの切り込み部分21を設けた。次に,層間絶縁膜を形成する工程に移るが,これ以後,層間絶縁膜は全てSiO蒸着膜を用い,リフトオフ法でパタンを形成した。図には示されていないが,超電導リング11とシャント抵抗2などとを電気的に絶縁するための厚さ約300nmの層間絶縁膜を形成した後に,抵抗膜として,厚さ約100nmのMoNx膜を直流マグネトロンスパッタ法により形成し,フォトレジストをマスク材として,反応性イオンエッチング法により加工してシャント抵抗2のパタンを形成した。抵抗値は約3Ωとした。次に,シャント抵抗2とその上部に形成される超電導体とを電気的に絶縁するための,図には示されていないが厚さ約180nmの層間絶縁膜を形成した後に,下部電極3として,厚さ約250nmのNb−NbN積層膜を直流マグネトロンスパッタ法により形成し,フォトレジストをマスク材として,反応性イオンエッチング法により下部電極3のパタンを形成した。そして,この上に,図1には示されていないが,JJ4の面積を規定するための窓(接合窓;4μm角)を設けた厚さ約320nmの層間絶縁膜を形成した。次に,図には示されていないが,線幅3μm,線間隔3μm,巻数39の磁束入力用超電導配線,帰還用超電導配線,および,上部電極5に対応するフォトレジストのパタンを形成した後に,高周波プラズマ酸化法で,接合窓の中に露出している下部電極3の表面にNb酸化物によるトンネル障壁層を形成し,引き続き,厚さ約450nmのPb合金を蒸着した。そして,リフトオフ法により上記のPb合金薄膜よりなる磁束入力用超電導配線,帰還用超電導配線,および,上部電極5のパタンを形成した。以上によって本発明の実施例1による超電導量子干渉素子を作製することができる。
【0029】本発明の実施例1による超電導量子干渉素子は,超電導リングの大きさが同一で,超電導リングに切り込み部分がない従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を約1.3倍にして,より高電圧側に移すことができた。従って,電流−電圧特性に生じる電圧ステップの大部分を超電導量子干渉素子の動作電圧範囲の外へ移動させることができたため,感度を約1.2倍に向上させることができるとともに,ダンピング抵抗には何ら変更を加えていないので,ダンピング抵抗に起因する雑音の増加は生じなかった。
【0030】同様に,図1の超電導量子干渉素子の超電導リング11とほぼ同一の形状を有する超電導リングに,長さ45μm,幅80μmの切り込み部分を設けた超電導量子干渉素子においても,また,図1の超電導量子干渉素子の超電導リング11とほぼ同一の形状を有する超電導リングに,長さ200μm,幅20μmの切り込み部分を設けた超電導量子干渉素子においても,超電導リングに切り込み部分がない従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を,より高電圧側に移すことができ,高感度化することができた。また,切り込み部分の寸法はこれらの大きさに限ることはなく,また,切り込み部分は1ヵ所に限ることはなく,複数ヵ所設けても同様の効果が得られることは明白である。
【0031】本発明による実施例2を次に述べる。図2は正方形に近い形状の超電導体の一部に切り込み部分21を設けた超電導リング11を有する本発明の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。図2においては,磁束を超電導リング11に入力するための磁束入力用超電導配線,超電導量子干渉素子内の磁束を一定に保つための帰還用超電導配線,および,絶縁膜は省略してある。実施例2の超電導量子干渉素子の作製方法は実施例1と同様である。ただし,実施例1とは切り込みを設ける場所が異なる。
【0032】本発明の実施例2による超電導量子干渉素子は,超電導リングの大きさが同一で,超電導リングに切り込み部分がない従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を約1.6倍に大きくして,電圧ステップをより高電圧側に移すことができた。従って,電流−電圧特性に生じる電圧ステップを超電導量子干渉素子の動作電圧範囲の外へ移動させることができたため,感度を約1.4倍に向上させることができるとともに,ダンピング抵抗には何ら変更を加えていないので,ダンピング抵抗に起因する雑音の増加は生じなかった。
【0033】また切り込み部分の寸法はこれらの大きさに限ることはなく,また切り込み部分を設ける場所も,図2に示した場所に限ることはないが,設ける切り込み部分が1ヵ所である場合は,ジョセフソン接合4からより離れた所に設けた方が定在波の波長が短くなるため,より効果が大きい。
【0034】本発明による実施例3を次に述べる。図3は,超電導リング11に,2つのジョセフソン接合4が存在する場所の中心点と超電導リング11の中心点とを結んだ直線に対して,線対称となる位置に,切り込み部分221,および,222を設けた本発明の第3の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。図3においては,磁束入力用超電導配線,帰還用超電導配線,および,絶縁膜は省略してある。この超電導リング11は,一辺が約600μmの正方形に近い形状をしており,中央に80μm角の開口部7とその中心から幅5μm,長さ約260μmのスリット6を有する。また,この超電導リング11に設けた切り込み部分221,および222は,長さが216μm,幅が80μmである。
【0035】実施例3の超電導量子干渉素子の作製方法は,実施例1の超電導量子干渉素子とほぼ同様である。
【0036】本発明の実施例3による超電導量子干渉素子は,一辺が600μmの正方形に近い形状の超電導リングを有する従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を約1.8倍に大きくして,電圧ステップをより高電圧側に移すことができた。従って,電圧ステップを超電導量子干渉素子の動作電圧範囲外へ移動させることができたため,感度を約1.6倍に向上させることができるとともに,ダンピング抵抗には何ら変更を加えていないので,ダンピング抵抗に起因する雑音の増加は生じなかった。また,実施例3の超電導量子干渉素子においては,2つのジョセフソン接合4が存在する場所の中心点と超電導リング11の中心点とを結んだ直線に対して,線対称になるように切り込み部分を設けたため,インダクタンスの値は左右対称になっており,インダクタンスの非対称性による電圧ステップの出現を防ぐことができた。
【0037】また,切り込み部分の大きさや場所はこれに限ることはなく,他の比率にしても同様の効果が得られることは明白である。また,2つのジョセフソン接合4が存在する場所の中心点と超電導リング11の中心点とを結んだ直線に対して,左右のインダクタンスの値がほぼ等しくなるように切り込みを設ければ,線対称ではなくても同様の効果を得ることができる。
【0038】本発明による実施例4を次に述べる。図4は,超電導リング31に,4回対称となるように,切り込み部分321,322,323,および,324を設けた本発明の第4の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。図4においては,磁束入力用超電導配線,帰還用超電導配線,および,絶縁膜は省略してある。この超電導リング31は,一辺が約600μmの正方形に近い形状をしており,中央に80μm角の開口部7とその中心から幅5μm,長さ約260μmのスリット6を有する。また,この超電導リング31に設けた切り込み部分321,322,323,および,324は,長さが216μm,幅が80μmである。
【0039】実施例4の超電導量子干渉素子の作製方法は,実施例1の超電導量子干渉素子とほぼ同様である。
【0040】本発明の実施例4による超電導量子干渉素子は,一辺が600μmの正方形に近い形状の超電導リングを有する従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧が約3倍に大きく,電圧ステップをより高電圧側に移すことができた。従って,電圧ステップを超電導量子干渉素子の動作電圧範囲の外へ移動させることができたため,感度を約2倍に向上させることができるとともに,ダンピング抵抗には何ら変更を加えていないので,ダンピング抵抗に起因する雑音の増加は生じなかった。また,実施例4の超電導量子干渉素子においては,2つのジョセフソン接合4が存在する場所の中心点と超電導リング31の中心点とを結んだ直線に対して,線対称になるように切り込み部分を設けたため,インダクタンスの値は左右対称になっており,インダクタンスの非対称性による電圧ステップの出現を防ぐことができた。
【0041】また,切り込み部分の大きさは,これらの値に限ることはなく,他の比率にしても同様の効果が得られることは明白である。また,本実施例の場合は切り込み部分を4回対称になるように設けてあるが,これに限らず他の回転対称にしても同様の効果が得られることは明白である。
【0042】次に本発明による実施例5を述べる。図5は本発明の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。実施例5の超電導量子干渉素子の作製方法は,基本的には本発明の実施例1による超電導量子干渉素子の作製方法と同じで良い。実施例1による超電導量子干渉素子との違いは,切り込み部分221,および222に電流注入用の電極42,43,44,および45を設けたことである。これらの電流注入用の電極は,超電導リング41の形成と同時にNb薄膜を反応性イオンエッチング法によって加工し形成した。
【0043】本実施例においては,他の実施例において帰還用超電導配線に電流を流して行っていた,帰還による制御を,電流注入用の電極42,43,44,および45に帰還に必要な電流を直接流して,磁界を発生させて超電導量子干渉素子の動作を制御した点に特徴がある。この場合,図5の左右にある電流注入用電極のどの2つを対にしても,帰還による制御を実現することはできるが,特に切り込み部分221もしくは222の両側に設けた電極,即ち42と43,および44と45を対にしてどちらか一方あるいはその両方に電流を注入して制御を行う場合には,超電導量子干渉素子の特性の制御が容易になる。これは,切り込み部分221もしくは222では超電導コイルの幅が他の場所よりも狭くなるため,単位長さあたりのインダクタンスが大きくなって,制御に必要な電流を小さくすることができるからである。また,切り込み部分にのみ制御電流が流れるので,磁束入力用コイル8との結合を小さくすることができるため,帰還の制御回路とのクロストークによる雑音を小さくできる利点もある。
【0044】さらに,本発明によれば,帰還のための電流を流す配線のインダクタンスを従来技術に比べて10分の1程度に小さくできるので,帰還の制御をより高速に行うことができ,従って磁束計としての信号検出の帯域をより高い周波数まで拡大することができる。
【0045】次に本発明による実施例6を述べる。図6は本発明の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。実施例6の超電導量子干渉素子の作製方法は,基本的には本発明の実施例1による超電導量子干渉素子の作製方法と同じで良い。実施例5と同様に切り込み部分222に電流注入用の電極52,53を設け,ここを流れる電流によって発生する磁束により,帰還を行い,超電導量子干渉素子の特性を制御した。実施例5による超電導量子干渉素子との違いは,電流注入用の電極52,53および切り込み部分222を構成する超電導体薄膜が,ジョセフソン接合54を含んだ超電導ループを構成していることである。さらにこの超電導ループには超電導配線55が含まれ,超電導配線56,57が接続されている。この超電導ループはジョセフソン接合54を含むrf−SQUIDを構成している。このため,外部から超電導配線56と57の間に電流を流した場合,上記の超電導ループの内部に蓄えれれる磁束は,磁束量子の整数倍に限られ,従って,切り込み部分を通して超電導量子干渉素子には,磁束量子の整数倍に限られた値の磁束が帰還される。このため,超電導配線56と57の間に流す電流は,比較的精度の低い電流源を用いても,デジタル的な帰還による制御を実現できる。一般に,超電導量子干渉素子を構成するワッシャ型の超電導リング51のインダクタンスは近くに超電導の電極があると変化するので,超電導リング51に設けた電流注入用の電極52,53は,超電導リング51に電流が流れる向きと直角方向に引き出すことが望ましい。また,上記のインダクタンスの変化は超電導リング51の幅が大きいほど顕著になる。このため本実施例のように,幅の狭い切り込み部分222を含んだ超電導ループによって帰還を行うことにより,超電導量子干渉素子への影響を小さくして,かつ効率の良い帰還を行うことができる。また本実施例においても,切り込み部分にのみ制御電流が流れるので,磁束入力用コイルとの結合を小さくすることができるため,帰還の制御回路とのクロストークによる雑音を小さくできる利点もある。さらに,帰還のための電流を流す配線のインダクタンスを従来技術に比べて10分の1程度に小さくできるので,帰還の制御をより高速に行うことができ,従って磁束計としての信号検出の帯域をより高い周波数まで拡大し,広帯域の磁束計を実現することができる。本発明による実施例7を次に述べる。図7は,縦方向の長さが600μmで,縦横比が1対1.5の長方形に近い形状の超電導体薄膜の中央に,80μm角の開口部7とその中心から幅5μm,長さ約260μmのスリット6を設けることにより超電導リング12を形成した本発明の第7の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。図7においては,磁束入力用超電導配線,帰還用超電導配線,および,絶縁膜は省略してある。
【0046】実施例7の超電導量子干渉素子の作製方法は,実施例1の超電導量子干渉素子とほぼ同様であるが,超電導リング12の形状と,図7には示されていないが,磁束入力用超電導配線,および,帰還用超電導配線の配置方法が異なる。実施例7のこれらの超電導配線は,超電導リング12の上部をほぼ均一に覆うように,横方向の超電導配線は,線幅3μm,線間隔3μmで,縦方向の超電導配線は,線幅4.5μm,線間隔4.5μmとした。超電導配線の巻数は39とした。このため,超電導リング12を伝送線路として見ると,図7において,超電導リング12の開口部7に対して左右の部分と上下の部分で伝送線路の幅が異なっており,より具体的には左右の部分でインピーダンスが低く,上下の部分でインピーダンスが高くなっており,本発明の目的を達成することのできる構造であることがわかる。
【0047】本発明の実施例7による超電導量子干渉素子は,一辺が600μmの正方形に近い形状の超電導リングを有する従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を約1.7倍にして,より高電圧側に移すことができた。従って,電圧ステップの大部分を超電導量子干渉素子の動作電圧範囲の外へ移動させることができたため,感度を約1.5倍に向上させることができるとともに,ダンピング抵抗には何ら変更を加えていないので,ダンピング抵抗に起因する雑音の増加は生じなかった。
【0048】同様に,縦横比が1対1.1の長方形に近い形状の超電導体薄膜で超電導リングを作製した超電導量子干渉素子であっても,また,縦横比が1対3の長方形に近い形状の超電導体薄膜で超電導リングを作製した超電導量子干渉素子であっても,正方形に近い形状の超電導リングを有する従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を,より高電圧側に移すことができ,高感度化することができた。
【0049】また,超電導リングの縦横比は,これらの値に限ることはなく,他の比率にしても同様の効果が得られることは明白である。
【0050】本発明による実施例7を述べる。図8は正方形に近い形状の超電導リング13の外縁から全体の幅の約65パーセントの範囲にのみ,磁束入力用超電導配線83を,絶縁膜を介して積層して形成した本発明の第8の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。図8においては,帰還用超電導配線,および,絶縁膜は省略してあり,また,磁束入力用超電導配線83の巻数は簡略化してある。
【0051】実施例8の超電導量子干渉素子では,超電導リング13は,一辺が約600μmの正方形に近い形状をしており,中央に80μm角の開口部7とその中心から幅5μm,長さ約260μmのスリット6を設けている。また,磁束入力用超電導配線83は,線幅2.0μm,線間隔2.0μmとし,巻数は39とした。磁束入力用超電導配線83の中心は超電導リング13の幅の中心よりも外側に配置されている。超電導リング13を伝送線路としてみると,外側部分のインピーダンスが低くなっている構成である。
【0052】実施例8の超電導量子干渉素子の作製方法は,超電導リング13の形状と,磁束入力用超電導配線83の配置方法が上述の如く異なるだけで,その他は実施例1の超電導量子干渉素子とほぼ同様である。
【0053】本発明の実施例8による超電導量子干渉素子は,同一形状の超電導リングを有し,その上部ほぼ全面に,絶縁膜を介して,線幅3.0μm,線間隔3.0μm,巻数39の,磁束入力用超電導配線を積層して形成した従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を約0.75倍にして,より低電圧側に移すことができた。従って,電圧ステップの大部分を超電導量子干渉素子の動作電圧範囲の外へ移動させることができたため,感度を約1.2倍に向上させることができるとともに,ダンピング抵抗には何ら変更を加えていないので,ダンピング抵抗に起因する雑音の増加は生じなかった。
【0054】同様に,正方形に近い形状の超電導リングの外縁から全体の幅の約30パーセントの範囲にのみ,磁束入力用超電導配線を,絶縁膜を介して積層して形成した超電導量子干渉素子であっても,正方形に近い形状の超電導リングの上部ほぼ全面に,ほぼ均一の線幅と線間隔で,磁束入力用超電導配線を絶縁膜を介して積層して形成した従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を,より低電圧側に移すことができ,高感度化することができた。
【0055】また,磁束入力用超電導配線の配置場所は,超電導リングの外縁から全体の幅の約65パーセント,もしくは,超電導リングの外縁から全体の幅の約30パーセントの範囲に限ることはない。従来の超電導量子干渉素子に較べて,実施例8のように,主に超電導リング13の幅の中心よりも外側部分に超電導配線を配置した場合にあっては,電圧ステップの生じる位置を低電圧側にずらすことにより超電導量子干渉素子を高感度化することができる。逆に,主として,超電導リング13の幅の中心よりも内側部分に磁束入力用超電導配線83を配置した場合にあっても,電圧ステップの生じる位置を高電圧側にずらすことにより,超電導量子干渉素子を高感度化することができることは明白である。
【0056】本発明による実施例9を述べる。図9は正方形に近い形状の超電導リング14の上部に,幅の異なる2種類の超電導体薄膜の部分よりなる,磁束入力用超電導配線84を,絶縁膜を介して積層して形成した本発明の第9の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す上面図である。図9においては,帰還用超電導配線および絶縁膜は省略してあり,また,磁束入力用超電導配線84の巻数は簡略化してある。
【0057】実施例9の超電導量子干渉素子の作製方法は,実施例8の超電導量子干渉素子とほぼ同様であるが,磁束入力用超電導配線84の配置方法が異なる。磁束入力用超電導配線84は,線幅3μm,線間隔3μm,の部分と,線幅4μm,線間隔2μm,の部分を設けた。超電導リング14を構成する超電導体薄膜の左上頂点と右下頂点を結ぶ対角線より右側部分の線幅を4μm,左側部分の線幅を3μmにした。磁束入力用超電導配線の巻数は39とした。
【0058】本発明の実施例9による超電導量子干渉素子は,同一形状の超電導リングを有し,その上部ほぼ全面に,線幅3μm,線間隔3μm,巻数39の,磁束入力用超電導配線を,絶縁膜を介して積層して形成した従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を約1.7倍にして,より高電圧側に移すことができた。従って,電圧ステップの大部分を超電導量子干渉素子の動作電圧範囲外へ移動させることができたため,感度を約1.5倍に向上させることができるとともに,ダンピング抵抗には何ら変更を加えていないので,ダンピング抵抗に起因する雑音の増加は生じなかった。
【0059】同様に,磁束入力用超電導配線を,線幅2μm,線間隔4μm,の部分と,線幅4μm,線間隔2μm,の部分で構成した超電導量子干渉素子であっても,また,磁束入力用超電導配線を,線幅2μm,線間隔4μm,の部分と,線幅4.5μm,線間隔1.5μm,の部分で構成した超電導量子干渉素子であっても,磁束入力用超電導配線を,ほぼ均一の線幅と線間隔で配置した従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を,より高電圧側に移すことができ,高感度化することができた。
【0060】本発明によるの実施例10を述べる。図10は,本発明の第10の実施例による超電導量子干渉素子の形状を示す図である。図には示されていない磁束入力用超電導配線と,超電導リング15との間に設けた層間絶縁膜95の,超電導リング15の半分を覆う部分の絶縁膜の厚さを,他の部分の厚さの約1.2倍にした。図10においては,層間絶縁膜95以外の絶縁膜は省略してある。
【0061】実施例10の超電導量子干渉素子の作製方法は,実施例1の超電導量子干渉素子とほぼ同様であるが,超電導リング15と磁束入力用超電導配線の間に設けられる層間絶縁膜95は,膜厚の異なる部分を作製するため,2回に分けてSiOを蒸着して形成した。また,超電導リング15は正方形に近い形状であり,磁束を超電導リング15に鎖交させるための超電導配線は,線幅3.0μm,線間隔3.0μm,巻数39とし,超電導リング15の上部ほぼ全面に,ほぼ均一に配置するようにした。
【0062】本発明の実施例10による超電導量子干渉素子は,同一形状の超電導リングおよび,磁束入力用超電導配線を有し,かつそれらの間の絶縁膜がほぼ均一である従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を約1.7倍にして,より高電圧側に移すことができた。従って,電圧ステップの大部分を超電導量子干渉素子の動作電圧範囲外へ移動させることができたため,感度を約1.5倍に向上させることができるとともに,ダンピング抵抗には何ら変更を加えていないので,ダンピング抵抗に起因する雑音の増加は生じなかった。
【0063】同様に,磁束入力用超電導配線と,超電導リングとの間に設けた層間絶縁膜の,超電導リングの約4分の1を覆う部分の絶縁膜の厚さを,他の部分の厚さの約1.5倍にしても,磁束入力用超電導配線と,超電導リングとの間に設けた層間絶縁膜の厚さがほぼ均一の従来の超電導量子干渉素子に比べて,電圧ステップの生じる電圧を,より高電圧側に移すことができ,高感度化することができた。
【0064】また,低インピーダンス部分と高インピーダンス部分を設けるための層間絶縁膜厚の比は,上記の倍率に限るものではなく,低インピーダンス部分と高インピーダンス部分の割合も,上記の割合に限るものではない。
【0065】また,実施例10による超電導量子干渉素子では,超電導リング15と,磁束入力用超電導配線との間の層間絶縁膜95は2種類の膜厚を有する部分から構成されているが,3種類以上の膜厚を有する部分から構成されていても,同様の効果が得られることは明白である。
【0066】以上に述べた実施例においては,超電導量子干渉素子は超電導材料としてNb,NbN,Pb合金を用いて作製しているが,その他の超電導材料,例えばNb3Si,Nb3Sn,Nb3Ge等のNbの金属間化合物や,YBa2Cu3x等の酸化物材料を用いて超電導量子干渉素子を作製しても同様の効果が得られることは明白である。
【0067】
【発明の効果】以上詳述したごとく,本発明は,超電導リングに立つ定在波を原因として超電導量子干渉素子の電流−電圧特性に生じる電圧ステップの位置を,超電導リングに切り込み部分を設けるなどの構成とすることにより,超電導量子干渉素子の動作電圧範囲外へ移動させることができるので,磁束伝達率の減少や雑音の増加なしに,従来の超電導量子干渉素子に比較して高感度,かつ,低雑音な超電導量子干渉素子を提供できる効果がある。さらに,超電導リングに設けた切り込み部分に,超電導量子干渉素子内の磁束を一定に保つための帰還用電流を直接注入する構成とすることにより,従来に比べて,磁束入力用超電導配線と帰還用超電導配線の間の磁気結合による雑音の混入をなくし,また,従来に比べて高速信号を伝送できるので,低雑音,かつ広帯域の磁束計を提供できる効果がある。




 

 


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