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発明の名称 機器の異常監視方法および装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−4789
公開日 平成6年(1994)1月14日
出願番号 特願平4−162751
出願日 平成4年(1992)6月22日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
発明者 山田 泉 / 朝倉 大和 / 長瀬 誠 / 及部 光治 / 芥川 邦雄
要約 目的
正常値の把握が困難な機器から多数の監視信号を検出し、これら多数の監視信号の関連性を抽出して、機器の異常初期徴候を検出し、検出精度が向上化された異常監視方法および異常監視装置を実現する。

構成
多数の監視信号のうち、高速変化する監視信号から機器の異常監視に必要な成分のみを抽出する(ステップ1〜5)。予め記憶された目的・説明変数名リストに対応する監視信号を読みとり、監視信号間の回帰係数を算出する(ステップ6〜12)。回帰係数の許容範囲を算出して、回帰係数が、許容範囲内であるか否かを判断し、範囲外のときには、警報を表示する(ステップ13〜16)。次に、回帰係数の時間変化率を算出するとともに、許容時間変化率を算出し、回帰係数の時間変化率が許容値内であるか否かを判断し、許容値外であるときは、警報を表示する(ステップ17〜20)。
特許請求の範囲
【請求項1】 監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を検出し、検出した多数の特性を多数の監視信号として、取り込むステップと、取り込んだ多数の監視信号を重回帰分析し、回帰係数を算出するステップと、算出した回帰係数の妥当性評価を実行するステップと、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断するステップと、を備えることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項2】 請求項1記載の機器の異常監視方法において、回帰係数の時間変化率を算出して、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断するステップを、さらに備えることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項3】 請求項1記載の機器の異常監視方法において、回帰係数の所定の正常範囲は、機器の試運転時等において、重回帰分析により運転状態の関数として、算出され、機器の運転状態に応じて正常範囲が設定されることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項4】 監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を検出し、検出した多数の特性を多数の監視信号として、取り込むステップと、取り込んだ多数の監視信号を重回帰分析し、回帰係数を算出するステップと、算出した回帰係数の妥当性評価を実行するステップと、回帰係数の時間変化率を算出して、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断するステップと、を備えることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項5】 監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を検出し、検出した多数の特性を多数の監視信号として、取り込むステップと、取り込んだ多数の監視信号のうち、高速変化する特性を示す高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを分離し、抽出するステップと、高速特性監視信号以外の監視信号と、高速特性監視信号の監視に必要な成分と、を重回帰分析するか、もしくは、高速特性監視信号の監視に必要な成分どうしを重回帰分析して、回帰係数を算出するステップと、算出した回帰係数の妥当性評価を実行するステップと、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断するステップと、を備えることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項6】 請求項5記載の機器の異常監視方法において、回帰係数の時間変化率を算出して、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断するステップを、さらに備えることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項7】 請求項6記載の機器の異常監視方法において、回帰係数の所定の正常範囲は、機器の試運転時等において、重回帰分析により運転状態の関数として、算出され、機器の運転状態に応じて正常範囲が設定されることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項8】 請求項5または請求項6記載の機器の異常監視方法において、高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを抽出した後に、抽出した成分の平均化処理を行い、この平均化処理が行われた成分が回帰係数の算出に用いられることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項9】 監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を検出し、検出した多数の特性を多数の監視信号として、取り込むステップと、取り込んだ多数の監視信号のうち、高速変化する特性を示す高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを分離し、抽出するステップと、高速特性監視信号以外の監視信号と、高速特性監視信号の監視に必要な成分と、を重回帰分析するか、もしくは、高速特性監視信号の監視に必要な成分どうしを重回帰分析して、回帰係数を算出するステップと、算出した回帰係数の妥当性評価を実行するステップと、回帰係数の時間変化率を算出して、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断するステップと、を備えることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項10】 請求項9記載の機器の異常監視方法において、高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを抽出した後に、抽出した成分の平均化処理を行い、この平均化処理が行われた成分が回帰係数の算出に用いられることを特徴とする機器の異常監視方法。
【請求項11】 監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を多数の監視信号として検出する検出手段と、検出された多数の監視信号を重回帰分析し、回帰係数を算出するとともに、算出した回帰係数の妥当性評価を実行する相関抽出手段と、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断する異常判別手段と、を備えることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項12】 請求項11記載の機器の異常監視装置において、異常判別手段は、回帰係数の時間変化率も算出し、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときにも、機器に異常が発生したと判断することを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項13】 請求項11記載の機器の異常監視装置において、回帰係数の所定の正常範囲は、機器の試運転時等において、重回帰分析により運転状態の関数として算出され、記憶手段により記憶され、記憶された回帰係数の所定の正常範囲は、機器の運転状態に応じて正常範囲として、設定されることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項14】 請求項11記載の機器の異常監視装置において、異常判別手段は、学習モードと監視モードとを選択し設定するためのモード設定器と、モード設定器により、学習モードが設定されているときには、算出された回帰係数と多数の監視信号とを取り込み、これら回帰係数と多数の監視信号の正常変動幅に関する変動幅データを算出して記憶し、監視モードが設定されているときには、記憶された変動幅データを出力する変動幅データ学習器と、モード設定器により、監視モードが設定されているときには、上記変動幅データに基づいて、回帰係数と多数の監視信号の正常範囲を算出し、実際の回帰係数及び多数の監視信号が上記正常範囲内であるか否かを判断し、正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断する異常検出器と、を備えることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項15】 請求項11記載の機器の異常監視装置において、異常判別手段は、算出された回帰係数と多数の監視信号とが供給され、これら多数の監視信号から主監視パラメータと従属監視パラメータとを分離し、出力する信号分離手段と、学習モードと監視モードとを選択し設定するためのモード設定器と、モード設定器により、学習モードが設定されているときには、主監視パラメータの複数の量子化値のそれぞれに対応して各従属監視パラメータの正常変動幅に関する変動幅データを算出して記憶し、監視モードが設定されているときには、実際の主監視パラメータの量子化値に対応して記憶された従属監視パラメータの変動幅データを出力する監視パラメータ学習器と、モード設定器により、監視モードが設定されているときには、上記変動幅データに基づいて、従属監視パラメータの正常範囲を算出し、実際の従属監視パラメータが上記正常範囲内であるか否かを判断し、正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断する異常検出器と、を備えることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項16】 請求項15記載の機器の異常監視装置において、上記変動幅データは、各従属監視パラメータの平均値及び標準偏差であることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項17】 監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を多数の監視信号として検出する検出手段と、検出された多数の監視信号を重回帰分析し、回帰係数を算出するとともに、算出した回帰係数の妥当性評価を実行する相関抽出手段と、回帰係数の時間変化率を算出し、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断する異常判別手段と、を備えることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項18】 監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を多数の監視信号として検出する検出手段と、検出された多数の監視信号のうち、高速変化する特性を示す高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを分離し、抽出する成分分離手段と、成分分離手段からの出力信号と、高速特性監視信号以外の監視信号と、を重回帰分析するか、もしくは、成分分離手段からの出力信号のみを重回帰分析して、回帰係数を算出するとともに、算出した回帰係数の妥当性評価を実行する相関抽出手段と、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断する異常判別手段と、を備えることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項19】 請求項18記載の機器の異常監視装置において、異常判別手段は、回帰係数の時間変化率も算出し、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときにも、機器に異常が発生したと判断することを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項20】 請求項18記載の機器の異常監視装置において、回帰係数の所定の正常範囲は、機器の試運転時等において、重回帰分析により運転状態の関数として算出され、記憶手段により記憶され、記憶された回帰係数の所定の正常範囲は、機器の運転状態に応じて正常範囲として、設定されることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項21】 請求項20記載の機器の異常検出装置において、成分分離手段は、成分分離した信号を平均化する平均化処理部を有し、この平均化部により平均化された信号を、相関抽出手段と異常判別手段とに供給し、異常判別手段は、平均化部からの出力信号と高速特性監視信号以外の監視信号とから機器の運転状態を判断するように構成したことを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項22】 請求項18または請求項19記載の機器の異常検出装置において、成分分離手段は、成分分離した信号を平均化する平均化処理部を有し、この平均化部により平均化された信号を、相関抽出手段に供給するように構成したことを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項23】 請求項22記載の機器の異常監視装置において、成分分離手段は、高速特性監視信号の周波数成分を分析する周波数成分分析部を有し、平均化処理部は、ローパスフィルタからなることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項24】 請求項23記載の機器の異常監視装置において、監視対象機器は、回転機器であり、成分分離手段の周波数成分分析部は、機器の回転周波数とその分数次成分および倍数次成分を抽出することを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項25】 請求項22記載の機器の異常監視装置において、成分分離手段は、複数のバンドパスフィルタを有し、平均化処理部は、バンドパスフィルタの出力信号を加算する平均応答処理部と、バンドパスフィルタの出力信号の実効値を演算する実効値演算部と、平均応答処理部からの出力信号および実効値演算部からの出力信号を選択して出力する出力選別部と、からなることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項26】 請求項22記載の機器の異常監視装置において、成分分離手段は、高速特性監視信号うちの2つの信号間の相関が強い周波数帯域と相関が低い周波数帯域とを解析するコヒーレンス解析部と、コヒーレンス解析部により解析された周波数帯域に基づいて相関が強い周波数帯域と相関がない周波数帯域とを判定する相関帯域判別部と、相関帯域からの出力信号のうちの所定の周波数帯域の信号を通過させる通過帯域選択部と、を有し、平均化処理部は、通過帯域選択部からの出力信号の実効値を演算する実効値演算部からなることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項27】 請求項22記載の機器の異常監視装置において、異常監視が行われる機器は、回転機器であり、成分分離手段は、上記機器の所定の回転角度を基準として、信号処理を実行することを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項28】 監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を多数の監視信号として検出する検出手段と、検出された多数の監視信号のうち、高速変化する特性を示す高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを分離し、抽出する成分分離手段と、成分分離手段からの出力信号と、高速特性監視信号以外の監視信号と、を重回帰分析するか、もしくは、成分分離手段からの出力信号のみを重回帰分析して、回帰係数を算出するとともに、算出した回帰係数の妥当性評価を実行する相関抽出手段と、回帰係数の時間変化率を算出して、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断する異常判別手段と、を備えることを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項29】 請求項28記載の機器の異常検出装置において、成分分離手段は、成分分離した信号を平均化する平均化処理部を有し、この平均化部により平均化された信号を、相関抽出手段に供給するように構成したことを特徴とする機器の異常監視装置。
【請求項30】 監視対象機器の音響特性と、監視対象機器又はその周辺設備に使用される溶液中の水素量と、を含む、監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を多数の監視信号として検出する検出手段と、上記音響特性を目的変数として、検出された多数の監視信号を重回帰分析し、回帰係数を算出するとともに、算出した回帰係数の妥当性評価を実行する相関抽出手段と、算出した回帰係数のうち、上記水素量に対する回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、上記水溶液中への水漏洩異常が発生したと判断する異常判別手段と、を備えることを特徴とする機器の異常監視装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばプラントで使用される機器の稼働状態が、正常であるか異常であるかを監視する機器の異常監視方法およびその装置に係わり、特に、その異常を機器単独の監視信号だけでなく、周囲の冷却材ループ等の関連設備の監視信号も用いる方式の機器の異常監視法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、原子力プラントで使用されている機器の振動や回転数等を検出し、機器が異常となる初期徴候を監視する異常監視方法または装置がある。上記異常監視方法の一例としては、特開昭62ー14210号公報に記載された異常診断分析方法がある。この異常診断分析方法においては、例えば、原子力プラントに使用されている機器の観測信号の変化を、ベクトル表現し、このベクトルを分析することによって、機器の異常現象の初期徴候を診断している。また、異常監視装置の例としては、特開平1ー234083号公報に記載された回転機のための異常検査装置がある。この異常検査装置は、回転機械の検査の高速化のためになされたものであり、回帰分析により回転数と音圧との回帰係数を求め、求めた回帰係数から回転機械の回転数と音圧の正常特性を予測する。そして、回転数と音圧とが正常特性からどれだけ逸脱しているかによって、機器が正常か異常かを判断するように構成されている。
【0003】さらに、他の例として、特開昭61ー199114号公報に記載された可動体の動作特性評価装置がある。この動作特性評価装置においては、回帰分析により、可動体の駆動信号と変位量との回帰係数を求め、求めた回帰係数と予め定めた正常値とを比較する。そして、比較結果に基づいて、可動体の動作が正常か異常かの判定を行うように構成されている。また、他の例としては、特開昭60ー19207号公報に記載された制御系監視装置がある。この制御系監視装置においては、予め制御系のモデルを用意しておき、この制御系モデルの回帰係数を回帰分析により、求めておく。そして、実際の制御系の回帰係数が、制御系モデルの回帰係数からどれだけ逸脱しているかにより、制御系が正常か異常かの判定を行うように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、原子力プラントのような大規模プラントにおいては,使用している機器の異常初期徴候をより早期に検出することが重要である。したがって、使用している機器やその関連設備からできるだけ多くの監視信号を検出し、これら多数の監視信号に基づき早期に異常初期徴候を検出するように構成することが望ましい。そこで、上記特開昭62ー14210号公報に記載された異常診断分析方法を適用して、異常初期徴候の検出精度を向上させることが考えられる。ところが、原子力プラント等は、動特性が複雑であり、監視信号の正常値そのものがプラント毎および定期検査毎に変化するため、正常値の把握が困難となっている。したがって、上記異常診断分析方法をそのまま原子力プラントに適用しても、異常初期徴候の検出精度の向上は、望めない。
【0005】また、上記特開平1ー234083号公報、特開昭61ー199114号公報、特開昭60ー19207号公報に記載されているように回帰分析を適用して、原子力プラントにおける異常初期徴候の検出精度を向上することが考えられる。しかしながら、上記特開平1ー234083号公報、特開昭61ー199114号公報、特開昭60ー19207号公報に記載の回帰分析においては、変数の数が少なく、多数の監視信号の処理には、適してはいない。さらに、原子力プラントにおいては、多数の監視信号の特性が全て同一であるとは限らない。例えば、再循環ポンプの振動信号や回転数信号は、高速で変動し、温度や流量などの変化は、低速である。これら特性の異なる監視信号をどのようにして回帰分析するかについては、上記公報には記載されておらず,異常初期徴候の検出精度の向上化が困難であった。
【0006】本発明の目的は、正常値の把握が困難な機器から多数の監視信号を検出し、これら多数の監視信号の関連性を抽出して、機器の異常初期徴候を検出し、検出精度が向上化された異常監視方法および異常監視装置を実現することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、次のように構成される。機器の異常監視方法において、監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を検出し、検出した多数の特性を多数の監視信号として、取り込むステップと、取り込んだ多数の監視信号を重回帰分析し、回帰係数を算出するステップと、算出した回帰係数の妥当性評価を実行するステップと、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断するか、もしくは、回帰係数の時間変化率を算出して、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断するステップと、を備える。
【0008】また、機器の異常監視方法において、監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を検出し、検出した多数の特性を多数の監視信号として、取り込むステップと、取り込んだ多数の監視信号のうち、高速変化する特性を示す高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを分離し、抽出するステップと、高速特性監視信号以外の監視信号と、高速特性監視信号の監視に必要な成分と、を重回帰分析するか、もしくは、高速特性監視信号の監視に必要な成分どうしを重回帰分析して、回帰係数を算出するステップと、算出した回帰係数の妥当性評価を実行するステップと、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断するか、もしくは、回帰係数の時間変化率を算出して、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断するステップと、を備える。
【0009】好ましくは、回帰係数の所定の正常範囲は、機器の試運転時等において、重回帰分析により運転状態の関数として、算出され、機器の運転状態に応じて正常範囲が設定される。また、好ましくは、高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを抽出した後に、抽出した成分の平均化処理を行い、この平均化処理が行われた成分が回帰係数の算出に用いられる。
【0010】機器の異常監視装置において、監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を多数の監視信号として検出する検出手段と、検出された多数の監視信号を重回帰分析し、回帰係数を算出するとともに、算出した回帰係数の妥当性評価を実行する相関抽出手段と、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断するか、もしくは、回帰係数の時間変化率を算出し、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときには、機器に異常が発生したと判断する異常判別手段と、を備える。
【0011】また、機器の異常監視装置において、監視対象機器または監視対象機器及びその周辺設備の多数の特性を多数の監視信号として検出する検出手段と、検出された多数の監視信号のうち、高速変化する特性を示す高速特性監視信号から監視に必要な成分のみを分離し、抽出する成分分離手段と、成分分離手段からの出力信号と、高速特性監視信号以外の監視信号と、を重回帰分析するか、もしくは、成分分離手段からの出力信号のみを重回帰分析して、回帰係数を算出するとともに、算出した回帰係数の妥当性評価を実行する相関抽出手段と、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かを判断し、所定の正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断するか、もしくは、回帰係数の時間変化率も算出し、算出した時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否かを判断し、所定の正常変化率を越えているときにも、機器に異常が発生したと判断する異常判別手段と、を備える。
【0012】好ましくは、回帰係数の所定の正常範囲は、機器の試運転時等において、重回帰分析により運転状態の関数として、算出され記憶手段により記憶され、記憶された回帰係数の所定の正常範囲は、機器の運転状態に応じて正常範囲として、設定される。また、好ましくは、成分分離手段は、成分分離した信号を平均化する平均化処理部を有し、この平均化部により平均化された信号を、相関抽出手段に供給するように構成される。さらに、好ましくは、平均化部により平均化された信号を、相関抽出手段と異常判別手段とに供給し、異常判別手段は、平均化部からの出力信号と高速特性監視信号以外の監視信号とから機器の運転状態を判断するように構成される。さらに、好ましくは、成分分離手段は、高速特性監視信号の周波数成分を分析する周波数成分分析部を有し、平均化処理部は、ローパスフィルタからなる。また、好ましくは、成分分離手段は、複数のバンドパスフィルタを有し、平均化処理部は、バンドパスフィルタの出力信号を加算する平均応答処理部と、バンドパスフィルタの出力信号の実効値を演算する実効値演算部と、平均応答処理部からの出力信号および実効値演算部からの出力信号を選択して出力する出力選別部と、からなる。
【0013】また、好ましくは、成分分離手段は、高速特性監視信号うちの2つの信号間の相関が強い周波数帯域と相関が低い周波数帯域とを解析するコヒーレンス解析部と、コヒーレンス解析部により解析された周波数帯域に基づいて相関が強い周波数帯域と相関がない周波数帯域とを判定する相関帯域判別部と、相関帯域からの出力信号のうちの所定の周波数帯域の信号を通過させる通過帯域選択部と、を有し、平均化処理部は、通過帯域選択部からの出力信号の実効値を演算する実効値演算部からなる。また、好ましくは、異常監視が行われる機器は、回転機器であり、成分分離手段は、上記機器の所定の回転角度を基準として、信号処理を実行する。
【0014】また、好ましくは、異常判別手段は、学習モードと監視モードとを選択し設定するためのモード設定器と、モード設定器により、学習モードが設定されているときには、算出された回帰係数と多数の監視信号とを取り込み、これら回帰係数と多数の監視信号の正常変動幅に関する変動幅データを算出して記憶し、監視モードが設定されているときには、記憶された変動幅データを出力する変動幅データ学習器と、モード設定器により、監視モードが設定されているときには、上記変動幅データに基づいて、回帰係数と多数の監視信号の正常範囲を算出し、実際の回帰係数及び多数の監視信号が上記正常範囲内であるか否かを判断し、正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断する異常検出器と、を備える。
【0015】また、好ましくは、異常判別手段は、算出された回帰係数と多数の監視信号とが供給され、これら多数の監視信号から主監視パラメータと従属監視パラメータとを分離し、出力する信号分離手段と、学習モードと監視モードとを選択し設定するためのモード設定器と、モード設定器により、学習モードが設定されているときには、主監視パラメータの複数の量子化値のそれぞれに対応して各従属監視パラメータの正常変動幅に関する変動幅データを算出して記憶し、監視モードが設定されているときには、実際の主監視パラメータの量子化値に対応して記憶された従属監視パラメータの変動幅データを出力する監視パラメータ学習器と、モード設定器により、監視モードが設定されているときには、上記変動幅データに基づいて、従属監視パラメータの正常範囲を算出し、実際の従属監視パラメータが上記正常範囲内であるか否かを判断し、正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断する異常検出器と、を備える。好ましくは、上記変動幅データは、各従属監視パラメータの平均値及び標準偏差である。
【0016】
【作用】検出された多数の監視信号が重回帰分析され、回帰係数が算出される。算出された回帰係数の妥当性評価が実行され、この妥当性評価により、機器の異常監視に無意味な回帰係数が除去される。そして、機器の異常監視に有用な回帰係数が所定の正常範囲内にあるか否か、もしくは、回帰係数の時間変化率が所定の正常変化率を越えているか否か、により機器に異常が発生したかどうかが判断される。また、検出された多数の監視信号のうちの高速特性監視信号には、監視に不要な成分が含まれている場合がある。この場合には、高速特性監視信号のうちの監視に不要な成分が除去され、有要な成分のみ抽出される。抽出された成分と、高速特性監視信号以外の監視信号との回帰係数が、重回帰分析により、算出される。算出された回帰係数が、所定の正常範囲内か否か、もしくは、回帰係数の時間変化率が、所定の正常変化率を越えているか否かが判断され、機器の異常が発生したか否かが判断される。これにより、正常値の把握が困難な機器の異常初期徴候の検出精度が向上される。
【0017】
【実施例】図1は、本発明による機器の異常監視方法の一実施例の動作フローチャートであり、図2は、本発明による機器の異常監視装置の一実施例の概略構成図である。なお、図1および図2の例は、本発明を原子力発電プラントの再循環ポンプループの異常監視に用いた例である。
【0018】まず、図2において、原子炉101内部の炉心102で発生する熱は、炉心102内部を流れる冷却水に伝達され、この冷却水は沸騰して主蒸気配管103を通りタービン・発電機(図示せず)を回して電力を得る。タービン・発電機を回した蒸気は、再び水になって給水配管104を通って原子炉101に導かれる。炉心102の発熱量は、再循環ポンプ105、再循環配管106、ジェットポンプ107からなる再循環ポンプループの流量に依存して変化する。炉心102や配管等を通る冷却水の純度を保つため、再循環配管106から冷却水を分岐して炉水浄化装置108で浄化し、給水配管104に戻す。この実施例においては、上述したように、炉心102の発熱量を制御する再循環ポンプループの異常を監視するように構成してある。監視のため、再循環ポンプ105を対象にした振動計測装置121、音響計測装置122、回転数計測装置123、軸受け温度計測装置133等が設置されている。また、流量計測装置132等の再循環ポンプループの運転状態を知るための各種の計測装置を装備してある。再循環ポンプループの運転状態に関する情報を有する水質についても監視するため、炉水浄化装置108にセンサを配して電導度を電導度計測装置131で計測している。上記振動計測装置121、音響計測装置122、回転数計測装置123は、高速変化する監視信号の計測装置であり、軸受温度計測装置133、流量計測装置132、電導度計測装置131は、低速変化する監視信号の計測装置である。なお、図示した計測装置以外の計測装置も配置されているものである。
【0019】次に、図1および図2を参照して、本発明の異常監視方法の一実施例を説明する。図1のステップ1において、再循環ポンプループの監視信号のうち高速変化する監視信号からのデータ間引き数を設定する。ステップ2において、高速変化する監視信号の成分(例えば、周波数成分)から異常監視に必要な成分を分離する。次に、ステップ3において、分離された異常監視に必要な成分の平均化処理を行い、ランダムな時間変動を抑制する。そして、ステップ4において、例えば、異常監視に必要な成分のうち大の成分を所定数だけ選別する等の選別処理を行う。高速変化する監視信号には、多数の周波数成分が含まれており、監視に不要な成分も含まれている。この監視に不要な周波数成分が、上記ステップ2、3、4により除去され、有要な成分のみが抽出される。次に、ステップ5において、設定した間引き数だけデータ処理したか否かを判断する。設定した間引き数だけのデータ処理が終了していなければ、ステップ2に戻る。設定した間引き数だけのデータ処理が終了していれば、ステップ6に進む。このステップ6において、適切な記憶手段に記憶された目的、説明変数名(重回帰式)リストを読みとる。
【0020】ここで、重回帰式につき説明する。まず、重回帰式は、次の(1)式により表わされる。
Y=A0 +A1 X1 +A2 X2 +・・・AqXq −−−(1)
ただし、Yは目的変数、X1 〜Xqは説明変数、A0 〜Aqは回帰係数である。さて、例えば、振動を目的変数Y、回転数を説明変数X1 、流量を説明変数X2 、温度を説明変数X3 とし、残差をEiとすると式(1)は次式(2)となる。
Yi=A0 +A1 X1 i+A2 X2 i+A3 X3 i+Ei −−−(2)
回帰係数A0 、A1 、A2 、A3 は、残差Eiの2乗和が最小となるように決定される。残差Eiの2乗和は、次式(3)により表される。
【0021】
【数1】

【0022】上記(3)式において、残差Eiが最小となるためには、次式(4)を満足しなければならない。
【0023】
【数2】

【0024】ところで、式(3)は、次式(5)となる。
【0025】
【数3】

【0026】式(5)を用いて、式(4)を解くと次式(6)が得られる。
【0027】
【数4】

【0028】上記式(6)を解くことにより、回帰係数A0 、A1 、A2 、A3 の値を算出することができる。ところで、上記式(6)には、2つの変数の積の分散、つまり共分散が現れている。ここで、共分散を定義しておく。次式(7)は、通常の分散を示し、次式(8)は、共分散を示す。
【0029】
【数5】

【0030】ただし、nはデータ数、XbはXの平均値を示す。式(8)において、共分散は、XiYiであり、式(6)においては、X1 iとX2 i、X1 iとX3 i、X2 iとX3 i、YiとX1 、YiとX2 i、YiとX3 iである。これら共分散を算出した後に回帰係数が算出される。
【0031】以上の説明においては、監視信号そのままを各変数に対応させて説明したが、監視信号の巾乗や指数関数等を新たな説明変数として重回帰分析することも可能である。
【0032】さて、ステップ6において、目的変数名と説明変数名のリスト(高速変化する監視信号名と低速変化する監視信号名とを含む)を読みとると、ステップ7に進み、リストに対応したデータを読みとる。次に、ステップ8において、読みとった目的変数と説明変数との全ての共分散を算出する。そして、ステップ9において、リストに従って回帰係数を算出する。次に、ステップ10において、リストに従って偏相関係数を算出する。ただし、偏相関係数とは、式(1)において、目的変数Yと説明変数X1 からX2 、X3 、・・・Xqを無視したときの相関である。つまり、YとX1 だけの相関係数である。
【0033】続いて、ステップ11において、算出した全ての偏相関係数が設定値以上か否かを判定する。そして、偏相関係数が設定値以下であれば、ステップ12に進み、設定値以下の偏相関係数に対応する説明変数を上記リストから削除する。つまり、ステップ11及び12において、算出した回帰係数の妥当性評価が実行される。これは、偏相関係数が設定値以下であると、その回帰係数の信頼性が低いためである。ステップ12の処理が終了すると、ステップ9に戻る。
【0034】ステップ11において、全ての偏相関係数が設定値以上であれば、ステップ13に進む。そして、このステップ13において、それぞれの回帰係数の時間変動を求め、それぞれの回帰係数の平均値とゆらぎ幅を算出する。次に、ステップ14において、予め設定してあるゆらぎ幅係数と、平均値およびゆらぎ幅から、各回帰係数の許容範囲を算出する。続いて、ステップ15において、許容ゆらぎ幅を越える回帰係数がないかを判断する。許容ゆらぎ幅を越える回帰係数があれば、ステップ16に進み、適切な表示手段により、その旨を示す警報を発生させ、ステップ17に進む。ステップ15において、許容ゆらぎ幅を越える回帰係数がなければ、ステップ16を介することなくステップ17に進む。
【0035】次に、ステップ17において、回帰係数の時間変化率を算出する。続いて、ステップ18において、回帰係数のゆらぎ幅と、予め設定した許容変化率係数から、回帰係数の許容変化率を算出する。そして、ステップ19において、回帰係数の変化率が、算出した許容変化率を越えていないかを判断する。回帰係数の変化率が、許容変化率を越えていれば、ステップ20において、その旨を表示する警報を表示する。ステップ19において、回帰係数の変化率が、許容変化率を越えていなければ、ステップ21に進み、監視処理が終了か否かを判断する。処理終了であれば、処理を終わり、処理終了でなければ、ステップ1に戻り、再び監視処理を開始する。
【0036】以上のように、本発明の一実施例である機器の異常監視方法によれば、正常値の把握が困難な機器から多数の監視信号を検出し、これら多数の監視信号を重回帰分析して得られた回帰係数が所定の範囲を逸脱しているか否かのみならず、回帰係数の変化率が所定の変化率を逸脱しているか否かを判断することにより、異常を監視している。重回帰分析における目的変数と説明変数との組み合わせには、物理的なモデルの考慮が不要となるので、プラントの試運転時等において、回帰係数の正常値を容易に把握することができる。したがって、正常値の把握が困難な機器の異常初期徴候を、高精度に検出し得る異常監視方法を実現することができる。また、上記一実施例によれば、高速変化する監視信号に、成分分離処理、平均化処理、選別処理を施して、監視に有要な成分のみを抽出し、抽出した成分と低速変化する監視信号とにより重回帰分析を実施している。したがって、不要な成分を重回帰分析に用いることがないので、機器の異常初期徴候の検出速度および検出精度をさらに向上することができる。
【0037】なお、上記実施例において、回帰係数の許容範囲および許容変化率は、機器の試運転時に重回帰分析を用いて、運転状態の関数として、算出しておき、機器の運転状態に応じて許容範囲を設定してもよい。このようにすれば、機器の異常初期徴候をさらに高精度に検出できる。また、適用するプラント等によっては、算出した回帰係数の妥当性評価を実行すると、高速変化監視信号のうちの不要な成分が除去される場合が考えられる。この場合には、成分分離処理を省略することができる。さらに、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かのみ、または、所定の正常変化率を越えているか否かのみ、によって、異常か否かを判断するように構成してもよい。また、監視信号が高速変化監視信号のみの場合には、高速変化監視信号どうしのみから回帰係数が算出されることは、もちろんである。
【0038】次に、本発明による機器の異常監視装置の一実施例を説明する。図2において、高速変化する監視信号の計測装置121、122、123等からの出力信号が、成分分離処理装置200に供給される。そして、この成分分離処理装置200において、計測装置121、122、123等から供給された信号の成分のうち、監視に必要な成分のみが抽出される。抽出された成分は、平均化処理装置300に供給され、上記成分の時間変動が抑制される。時間変動が抑制された信号成分は、相関抽出処理装置400に供給される。この相関抽出処理装置400には、低速変化する監視信号を計測する計測装置131、132、133等からの出力信号も供給される。相関抽出処理装置400において、多数の監視信号が重回帰分析され、回帰係数が算出され、さらに算出した回帰係数の妥当性が判断される。そして、算出された回帰係数は、異常判別装置500に供給され、回帰係数そのものから、および回帰係数の変化率から機器の異常初期徴候が判別される。
【0039】以下、図2の例における主要部である成分分離処理装置200、平均化処理装置300、相関抽出処理装置400、異常判別装置500について説明する。なお、成分分離処理装置200としては、周波数成分分離型処理装置、周波数帯域分離型処理装置、さらに相関成分分離型処理装置がある。
【0040】図3は、成分分離処理装置200として、周波数成分分離型処理装置を用いた例の構成図である。図3において、成分分離処理装置200は、周波数分析のためのフーリエ変換部210、周波数分析結果として得られる実数部と虚数部から振幅と位相を計算する振幅・位相成分変換部211、監視に有用な成分のみを選択する出力選別部212からなり、平均化処理装置300は、監視成分を平均化するローパスフィルタ部310により構成されている。高速変化する監視信号つまり振動等の高周波信号がフーリエ変換部210に入力され、周波数分析が行われる。そして、フーリエ変換部210からの出力信号は、振幅・位相変換部211により、振幅と位相とに変換される。位相は、ある時間基準からの遅れを示すものであり、ここでは時間基準として再循環ポンプ105の回転基準パルスが用いられる。つまり、周波数分析される入力データが、回転基準パルスの発生タイミングにあわせて取り込まれることにより、自動的に回転基準パルスが時間基準として用いられる。そして、振幅・位相変換部211からの出力信号は、出力選別部212に供給され、予め定めた監視に有用な成分、つまり、例えば、振動においては、回転周波数の整数倍成分と分数次成分と機械系の固有振動数が選択される。選択された成分は、ローパスフィルタ部310に出力される。なお、出力選別部212を省略して、振幅・位相変換部211で選別処理をするように構成することも可能である。その場合、選別した周波数成分についてだけ振幅・位相変換処理を実施すれば良いため、信号処理量が少なくなる。ここでは、選別処理に際し回転周波数の整数倍成分、分数次の成分、他に回転軸の固有振動数等を選別するように設定してある。ローパスフィルタ部310のカットオフ周波数は、流量計測装置132や温度計測装置133を参考にして設定してある。重回帰分析に際し、プラントの状態変化に対する応答が近い方が回帰分析したときの残差が小さいという知見による。このような装置構成とすることで、高周波信号を低周波信号に変換できるとともに、監視に不要な情報を低減できる。そして、ローパスフィルタ部310の出力信号が、相関抽出処理装置400に供給される。
【0041】図4は、成分分離処理装置200として、周波数帯域分離型処理装置であるバンクフィルタ部220を用いた例の構成図である。このバンクフィルタ部220は、多数の中心周波数の違うバンドパスフィルタから成る。また、平均化処理装置300は、回転に同期して同一角度毎のバンクフィルタ部220の出力信号を加算する平均応答処理部320と、バンクフィルタ部220の出力信号の実効値を演算する実効値演算部321と、予め定められたアルゴリズムに従って出力信号を選定して出力する出力選別部322とから成る。上記アルゴリズムは、例えば、平均応答処理部320の出力信号のうち、大きい方から所定の数だけの信号を出力するというようなアルゴリズムである。バンクフィルタ部220は、各種の中心周波数を有しており、監視信号で最もSN比の良好な帯域が不明な場合でも、出力選別アルゴリズムにより、SN比良好な帯域が選別できる。したがって、動的に最適なSN比の監視が可能となる。後述するように、平均応答法により回転同期成分を検出する場合、ある角度で音響レベルが他の角度より大きければ、回転同期成分の発生と判断でき、動的に最適な周波数帯域が選択できる。
【0042】図5は、成分分離処理装置200として、相関成分分離型処理装置を用いた場合の例の構成図である。この例においては、高速変化する多数の監視信号を2信号づつ組み合わせ、組み合わせた2信号間の相関の高い周波数領域と相関の低い周波数領域をコヒーレンス解析結果に基づいて決定する。そして、それぞれの帯域の実効値を出力する構成としてある。図5において、コヒーレンス解析部230で入力信号の2信号間の相関の強さを周波数毎に定量化し、相関帯域判別部231で予め定めた相関の強さの判定基準に従って、相関の強い周波数帯域と相関が無い周波数帯域を選定する。通過帯域選択部233は、バンドパスフィルタからなる。信号遅延部232は、コヒーレンス解析に要する時間だけ入力信号を遅延させる記憶手段からなり、コヒーレンス解析により通過帯域が決定した後、入力信号を通過帯域選択部233に供給する。通過帯域選択部233の出力信号は、相関のある周波数帯域を通過した2信号と、相関の無い周波数帯域を通過した2信号である。これらの信号は、平均化処理装置300としての実効値演算部331で実効値に変換される。相関のある信号どうしの回帰分析をすることで、精度の高い回帰係数が得られる。また、相関の無い成分は、相関の強い信号に支配的な事象の情報を除いているため、相関の強い事象以外の事象の監視に有効である。実効値演算部331の出力信号は、相関抽出処理装置400に供給される。
【0043】図6は、重回帰分析を用いた相関抽出処理装置400の動作フローチャートである。図6のステップ30において、予め定めた目的変数名と説明変数名のリストを読みとる。次に、ステップ31において、読みとったリストに従って予め定めた時間幅のそれぞれの変数の時系列データを読みとる。続いて、ステップ32において、すべての変数の組み合わせの共分散を演算し、ステップ33において、回帰係数を演算する。そして、ステップ34において、演算した共分散データに基づいて、偏相関係数を演算する。ステップ35において、すべての偏相関係数が予め定めた設定値を越えているか否かを判断し、設定値以下のものがあれば、ステップ36に進む。ステップ36において、設定値以下の偏相関係数に対応する説明変数を削除し、ステップ33に戻る。これらステップ35及び36によって算出された回帰係数の妥当性評価が実行される。ステップ35において、すべての偏相関係数が設定値以上の時には、ステップ37に進み、回帰係数、偏相関係数、残差を異常判別装置500に出力する。なお、ここで偏相関係数が設定値以上かどうかだけ判定し、偏相関係数が設定値以上に対応する回帰係数のみ出力することも可能である。この偏相関係数の評価により、要求精度に達している回帰係数のみを抽出できる。このほか、回帰係数の妥当性評価手法には、偏相関係数以外を用いる方法もあり、本発明は、妥当性評価を行う手法を偏相関係数を用いる方法に限定されない。例えば、F値(分散比)や、予測平方和、AIC(赤池の情報量基準)、自由度2乗調整済み寄与率等を用いることも可能である。
【0044】図7は、異常判別装置500の動作フローチャートである。図7において、異常判別処理装置500の主要な機能は、2つあり、一つは、試運転時等の正常回帰係数の記憶であり、他の一つは、通常運転時の異常監視である。はじめに、ステップ40において、監視対象機器の現在の運転状態のデータつまり主要な監視信号の値を読みとり、それを運転状態とする。この主要な監視信号名はあらかじめ定めてある。例えば、再循環ポンプの回転数、流量分岐している系統への分岐流量等である。次に、ステップ41において、相関抽出処理装置400で演算した現在の回帰係数を読みとる。運転員は、正常値記憶モードか異常監視モードかを選択することができ、ステップ42において、設定されたモードが何であるかを判断する。正常値記憶モードが選択されていれば、ステップ43に進み、予め定めた主要運転状態毎に回帰係数の正常値を、適切な記憶手段に記憶し、ステップ40に戻る。一方、異常監視モードが選択されていれば、ステップ44に進み、運転状態に対応した回帰係数と回帰係数の変化率との正常値を読みだし、ステップ45に進む。ステップ45において、回帰係数の時間変化率が正常変化率を逸脱していないかどうかを判断する。逸脱していれば、ステップ48に進み、適切な表示手段により、その旨を警報表示する。また、ステップ45において、回帰係数の時間変化率が正常変化率を逸脱していなければ、ステップ46に進む。そして、回帰係数が、正常範囲内か否かを判断する。正常範囲内でなければ、ステップ48に進み、警報表示が行われる。一方、正常範囲内であれば、ステップ47に進み、正常である旨の表示がおこなわれる。このようにして、回帰係数の正常値の記憶と、その回帰係数を用いた異常検出が実行される。正常値の記憶においては、物理モデルに依存しない回帰式を用いているため、比較的簡単に複数の監視信号間の正常値の把握が可能である。なお、プラントの正常値の予測が容易なプラントへ上記実施例を適用する場合は、予測した正常値を記憶するように構成すればよい。
【0045】図8は、本発明の機器監視装置の一実施例により軸受け給油系の異常を検出した例である。ただし、上述の周波数成分分離型処理により異常を検出している。図8の(A)は、周波数分析による成分分離の状態を示す。図8の(B)は、平均化による時間的ばらつきの抑制の状態を示し、Af1 は周波数成分の変化であり、Tは軸受け温度の変化である。また、図8の(C)は,回帰係数aの変化を示している。回帰係数そのものの正常値は、プラントおよび機器の試運転時の値を正常値として取り扱っている。軸受け温度、振動それぞれは単独の監視では正常範囲にある。それを複合した回帰係数の監視の実施により従来検出できなかった異常が検出できるように成っている。振動から、特に軸曲がりに敏感な回転周波数成分を抽出し、それを平均することで、より定常揺らぎを抑制して回帰分析での残差の絶対値を低減し、より精度の高い回帰係数を得ている。また、周囲温度も相関分析の要素として加えることでさらに高精度な回帰係数が得られる。
【0046】図9は、本発明の機器監視装置の一実施例によりラビング振動を検出した例を示している。ただし、上述の周波数帯域分離型処理により異常を検出している。図9の(A)は、バンクフィルタによる成分分離状態を示す。図9の(B)は、平均応答法による突出度の抽出状態を示す。また、図9の(C)は,突出度と振動レベルとの回帰係数aの変化を示している。再循環ポンプに取り付けた音響センサ信号を、各周波数帯域毎に分離し、回転基準パルスに同期して平均化処理を行い、突出度Pと回転周波数成分Af1 を得る。そして、突出度の大きい周波数範囲のデータを抽出し、突出度の時間変化と振動振幅の回帰係数を求め、異常を検出している。この例は、軸受け近傍で、回転軸とケーシングとが、回転に同期して接触しているのを検出した例である。振動と、音響発生の相関から、より確実な異常検知が可能となった。つまり、突出度が大きいのは回転に同期して音響が発生していることを示しており、回転周波数成分の振動が変化するのは何らかのアンバランス発生や回転軸に曲がりが生じている等の情報となる。しかし、音響計測系の回転に同期した電気ノイズでも突出度は変化するし、振動も流体温度や軸受け支持系の特性変化で変化することがある。しかし、突出度と回転周波数の振動成分の同時変動は、回転軸がケーシングと接触し、回転軸の一部が局所的に加熱されて熱変形していることを示している。
【0047】上記の2例からも予想できるように、通常運転状態では複数の監視信号間の関連性が少ないために、回帰係数が求められない場合もある。異常が生じることで始めて関連性がでてくることがある。例えば、ポンプの回転軸の一部がケーシングと接触して、振動が増加するとともに流体中に金属粉がとけ込んで電導度が低下する場合がそうである。このような場合、本発明の異常監視装置においては、回帰係数の変化として異常をとらえることができる。なお、本発明の一実施例の異常監視装置において、成分分離処理装置200等の各装置により実行する処理をマイクロコンピュータにより、実行するように構成してもよい。また、取り込む信号数が多く、実時間処理が困難な場合は、DSP(デジタル信号処理プロセッサ)の使用も可能である。
【0048】以上のように本発明の一実施例の異常監視装置によれば、正常値の把握が困難な機器から多数の監視信号を検出し、相関抽出処理装置400により、多数の監視信号を重回帰分析して回帰係数を算出し、算出した回帰係数が所定の範囲を逸脱しているか否かのみならず、回帰係数の変化率が所定の変化率を逸脱しているか否かを、異常判別装置500により判断して、異常を監視している。重回帰分析における目的変数と説明変数との組み合わせには、物理的なモデルの考慮が不要となるので、プラントの試運転時等において、回帰係数の正常値を容易に把握することができる。したがって、正常値の把握が困難な機器の異常初期徴候を、高精度に検出し得る異常監視装置を実現することができる。さらに、本発明の一実施例によれば、回帰係数の算出に際し、高速変化する監視信号のうちの有要な成分を分離し、平均化を行い、低速変化する監視信号と同一周波数帯域まで周波数帯域を低下させている。これにより、監視に不要な成分を演算することなく、しかも同一の周波数帯域にある、多数の監視信号の回帰係数を演算すればよいので、演算精度および演算速度を向上することができ、機器の異常初期徴候の検出精度をさらに向上することができる。また、監視に有要な成分のみを回帰係数の演算に使用し、演算処理すべきデータ量が必要最小限となっているので、大型のデータの記憶装置等を使用することなく異常監視装置を実現できる。
【0049】なお、適用するプラント等によっては、算出した回帰係数の妥当性評価を実行すると、高速変化監視信号のうちの不要な成分が除去される場合が考えられる。この場合には、成分分離処理装置200を省略することができる。さらに、異常判別装置500は、算出した回帰係数が、所定の正常範囲内にあるか否かのみ、または、所定の正常変化率を越えているか否かのみ、によって、異常か否かを判断するように構成してもよい。また、監視信号が高速変化監視信号のみの場合には、高速変化監視信号どうしのみから回帰係数が算出されることは、もちろんである。
【0050】図10は、本発明による機器の異常監視装置の他の実施例の概略構成図である。なお、この例は、原子力発電プラントのタービン・発電機系統の異常監視に、適用した場合の例である。図10において、主蒸気配管103を通して高温・高圧蒸気をタービン110に導き、タービン110を回して、タービン110に直結した発電機111により発電する。タービン110から出た蒸気は、復水器112を通って水になり、給水系におくられる。異常監視のための計測量としては、発電機出力、振動、回転数、軸受温度等の潤滑系計装、復水器112の真空度、主蒸気流量等である。これらの計測量は、回転数計測装置140、振動計測装置141、蒸気流量計測装置150、真空度計測装置151等を通して成分分離処理装置200に供給される。成分分離処理処理装置200、平均化処理装置300、相関抽出処理装置400は、図2の例と同等のものを使用している。この実施例で特徴的なものは、異常判別装置550である。この異常判別装置550は、回帰係数の値と、監視信号レベルと、成分分離され平均化処理された信号のレベルと、を用いることで、総合的な異常判別を実施する機能を有する。
【0051】異常判別装置550による異常判別について以下に説明する。例えば、主蒸気配管103の蒸気流量を増加することにより、発電機の出力を増加させることができる。このため、回帰係数のみを用いた監視においては、蒸気流量と発電機出力との関係が一定ならば、蒸気流量が定格値を越えても異常とは判断されない可能性がある。そこで、蒸気流量そのものを監視する監視系を備えることで、蒸気流量が定格値以上となることを防止することができる。また、成分分離され平均化処理された信号の変化範囲は、そのオーバーオールレベルの変化範囲よりも狭いので、信号の正常値の範囲を狭くして、異常検出精度を向上することができる。つまり、例えば、蒸気タービンや発電機に生じるオイルホワールやオイルホイップにおいて、振動の固有周波数成分の正常値範囲を充分狭く設定することにより、振動の異常を早期に検出することができる。また、いわゆる自励振動の場合は、その加振力の影響が、他の監視信号に現れにくいため、その監視信号自体のレベル等を用いることにより、異常を精度良く検出する事ができる。このように、回帰係数の値と、監視信号レベルと、成分分離され平均化処理された信号のレベルと、の3種の信号を用いて異常検出を行うことにより、機器の異常初期徴候の検出精度を向上できる。この図10の例によれば、図2の例と同様な効果が得られる他に、上述のように3種の信号を用いて、異常検出を行うことにより、機器の異常初期徴候の検出精度をさらに向上できる。
【0052】図11は、本発明による機器の異常監視装置のさらに他の実施例の概略構成図である。なお、この例は、高速増殖炉の蒸気発生器の異常音監視に、適用した場合の例である。図11において、代表的な異常音として、ナトリウム中に水が漏れだし、結果として生じるナトリウム水反応に伴う音がある。高温のナトリウムは、ナトリウム入口配管701を通り、伝熱管707の周囲を通って、ナトリウム出口配管702からポンプ側に戻る。容器胴705内には、給水入口配管703から供給される給水が通る伝熱管707が配置されており、伝熱管707は、伝熱管支持構造体706で支えられている。容器胴705の外壁には音響センサ710が配置されている。その他に、ナトリウム出口温度計測装置161、蒸気出口配管704の蒸気温度を計測する蒸気温度計測装置162、音響計測装置163、給水流量計測装置164、ナトリウム流量計測装置165、ナトリウム中水素計測装置166が設置されている。音響計測装置163の出力信号は、成分分離処理装置240を通り、平均化処理装置350を通って、相関抽出処理装置410に供給される。その他の計測装置の出力信号は、直接相関抽出装置410に供給される。相関抽出処理装置410の出力信号は、異常判別装置510に供給され、この異常判別装置510により、回帰係数の値とその変化率から異常判別される。
【0053】相関抽出装置410では、下記の自己回帰式(9)により回帰係数を算出する。
Yi=A0 +A1 X1 +A2 X2 +A3 X3 +A4 X4 +A5 X5 −−−(9)
ただし、Yiは音響信号のi番目のバンクフィルタ出力の実効値、X1 はナトリウム出口温度、X2 は蒸気温度、X3 は給水流量、X4 はナトリウム流量、X5 はナトリウム中水素量、A0 、A1 、A2 、A3 、A4 、A5 は各監視信号に対応する回帰係数である。
【0054】音響信号は、ナトリウム水反応や蒸気やナトリウムの流動で変化する。また、ナトリウム中の水素量は、ナトリウム中のナトリウム水反応でも増加する。このため、音響レベルとナトリウム中の水素量との間に相関が生じた場合は、ナトリウム水反応が生じたと考えられる。そこで、異常判別装置510においては、回帰係数A5 の値および変化率、偏相関係数を監視することで音響監視だけでも、高感度異常検出が可能となる。なお、水素量の単独監視だけでは高感度異常検出は、不可能である。成分分離処理装置240内のバンクフィルタで、音響信号の周波数帯域を選択しており、異常判別は最も偏相関係数の大きいバンクフィルタ出力で実行して、さらに高感度化を図っている。
【0055】以上のように、図11の例によれば、図2に示した例と同等な効果が得られる他、以下のような効果を得ることができる。つまり、ナトリウム中の水素濃度と音響レベルの変化のみの関連を監視できることになり、ナトリウム水反応検出感度の検出精度向上化が図れ、機器異常監視装置の異常初期徴候検出精度を向上できる。また、音響信号の各成分のうちで最も相関係数の大きな成分の回帰係数を代表値として採用しているので、機器異常監視装置の異常初期徴候検出精度をさらに向上できる。
【0056】図12は、本発明による機器の異常監視装置のさらに他の実施例の概略構成図であり、図2の例と同等なものには同一の符号を付してある。そして、この図12の例においては、図2の例の異常判別装置500に代えて、学習型異常判別装置1000が備えられている。なお、この学習型異常判別装置1000以外の構成は、図2の例と同様となっている。
【0057】図12において、学習型判別装置1000は、信号分配器(信号分離器)1010と、監視パラメータパターン選択器1220と、監視パラメータ学習器1230と、監視モード設定器1250と、異常検出器1260と、警報表示器1280と、から構成されている。信号分配器1010は、相関抽出処理装置400、振動計測装置121、音響計測装置122、回転数計測装置123等から供給された信号のうち、主監視パラメータ(例えば回転数信号)と、従属監視パラメータ(回帰係数、振動信号、流量信号、軸受温度信号等)とを分配する。監視モード設定器1250は、操作パネル等により操作者の操作に従って、学習モード又は監視モードを示す信号を出力する。監視パラメータパターン選択器1220には、信号分配器1010からの主監視パラメータが供給され、この主監視パラメータ値が量子化される(例えば、1175rpmを1170rpmに丸める)。そして、量子化した値の番号が監視パラメータパターン選択器1220から出力される。
【0058】監視パラメータ学習器1230には、信号分配器1010から従属監視パラメータが供給される。そして、監視パラメータ学習器1230は、監視モード設定器1250から供給される信号が学習モードを示す場合には、パターン選択器1220から供給される量子化値番号に応じて、従属監視パラメータの正常変動幅に関するデータを学習する。また、監視パラメータ学習器1230は、監視モード設定器1250から供給される信号が監視モードを示す場合には、パターン選択器1220から供給される量子化値番号に応じて、学習済みの従属監視パラメータの代表値を異常検出器1260に供給する。
【0059】この異常検出器1260には、信号分配器1010から現時点の実際の従属監視パラメータも供給される。そして、異常検出器1260は、モード設定器1250からの信号が監視モードを示す場合に動作し、学習済み従属監視パラメータの代表値と現時点の実際の従属監視パラメータとを比較する。比較した結果、現時点の実際の従属監視パラメータが正常範囲外であれば、異常と判断し、判定結果を示す信号を警報表示器1280に供給する。警報表示器1280は、異常検出器1260の判定結果に従って、所定の警報表示を行う。
【0060】図13は、監視パラメータ学習器1230の構成図である。図13において、学習器1230は、学習データを記憶するための記憶器1231と、監視モードに応じて学習データの出力先を変更するデータ切り換え器1232と、従属監視パラメータの代表値を更新するための累積器1233とを有している。なお、ここにおいて学習とは、正常時における従属監視パラメータの変動範囲を決定するための動作である。監視モードにおける学習器1230内部のデータの流れを図14に示す。ただし、iは主監視パラメータ量子化値番号、jは従属監視パラメータ番号、N(i)はデータ数、S(i,j)は監視パラメータ単純和、S2 (i,j)は監視パラメータ2乗和である。また、XB (i,j)は監視パラメータ平均値、σ(i,j)は標準偏差、Xmax (i,j)は監視パラメータ最大値、Xmin (i,j)は監視パラメータ最小値、kは監視パラメータの入力順番、XjGは従属監視パラメータの現在値である。
【0061】図14において、記憶器1231には、量子化番号に従って、従属監視パラメータの代表値である学習済みのデータ数N(i)、監視パラメータ単純和S(i,j)、2乗和S2 (i,j)、平均値XB (i,j)、標準偏差σ(i,j)、最大値Xmax (i,j)、最小値Xmin (i,j)が記憶される。一定時間経過毎に、量子化値番号iに従って、記憶器1231の従属パラメータ代表値記憶領域を選択し、選択した記憶領域の記憶内容を累積器1233に供給する。累積器1233において、記憶器1231から供給される代表値とパラメータの現在値XjGとから新たな代表値が演算される。そして、量子化値番号iに対応する記憶領域の内容が更新される。学習モードにおいて、上述のような動作が繰り返されることにより、機器正常運転時における従属監視パラメータの範囲が、主監視パラメータの値毎に記憶器1231に記憶される。
【0062】図15は、学習型異常判別装置1000のデータ処理の動作フローチャートである。図15のステップ50において、学習または監視時刻か否かを判定し、学習または監視時刻であれば、ステップ51において、主監視パラメータを取り込み、AD変換を行う。続いて、ステップ52において、主監視パラメータを量子化し、ステップ53において、量子化値番号iに対応する記憶領域の内容を読み出す。そして、ステップ54において、現時刻の従属監視パラメータの値をAD変換する。次に、ステップ55において、現在設定されているモードが学習モードか、監視モードかを判定する。学習モードであれば、ステップ56に進み、代表値の更新演算を実行した後に、記憶領域の内容を更新し、ステップ50に戻る。
【0063】ステップ55において、監視モードが設定されていれば、ステップ57に進む。このステップ57において、予め定めた許容幅係数aを用いて、次式(10)及び(11)により、学習データから各従属監視パラメータ毎の許容最大値Max(j)と許容最小値Min(j)を算出する。
Max(j)= XB (i,j)+a・σ(i,j) −−− (10)
Min(j)= XB (i,j)−a・σ(i,j) −−− (11)
ただし、jは1から従属監視パラメータの数Jまでである。次に、ステップ58において、現時刻の従属パラメータ値が、許容幅、つまり、ステップ57にて算出された許容最大値Max(j)と許容最小値Min(j)との間にあるか否かを判定する。現時刻の従属監視パラメータのうちの一つでも許容範囲外であれば、ステップ60に進み、異常警報表示処理を行う。また、ステップ58において、全ての現時刻の従属監視パラメータが許容範囲内であれば,ステップ59に進み、機器が正常であることを表示する。そして、ステップ50に戻る。
【0064】図12に示した例においては、定期検査終了後の動作確認試験時に、学習モードで監視パラメータの正常範囲を学習させる。そして、通常運転時においては、監視モードで機器の異常を監視する。監視パラメータのうち、例えば、導電率等は、定期検査直後の値と正常運転時の値とが異なる場合がありうる。したがって、学習モード時において、正常範囲を一部修正可能なように構成してもよい。また、機器の運転途中において、監視パラメータを新たに、または追加させて学習可能なように構成してもよい。
【0065】図16は、図12の例における異常検出の例を示し、主監視パラメータは回転数であり、従属監視パラメータは回帰係数、振動、流量、軸受け温度、導電率等である。ここで、主監視パラメータを回転数としたのは、再循環ポンプループにおいて、回転数は各種の計測量の変動を支配する可能性が高いからである。また、図16において、αは、従来の監視方法で設定されていた正常範囲であり、βは、上記実施例により設定された正常範囲である。丸印γは現時刻の監視パラメータの値である。さらに、監視パラメータ値は、予め検出した各監視パラメータの最大値を基準として、百分率で示してある。図16から明かなように、従来の正常範囲に比較して、上記実施例による正常範囲は狭い範囲となっている。これにより、機器の異常を高精度に検出可能となる。振動と導電率の回帰係数は、機器の正常時には、有意な値とはならない。しかし、図16においては、振動と導電率の回帰係数は、有意な値となっており、この場合は、機器の異常と判断される。
【0066】図16において、監視パラメータγは、従来の正常範囲α内となっている。したがって、従来においては、上記のような僅かな機器の異常は、検出不可能であったことが理解できる。上記実施例においては、監視パラメータの値が一つでも正常範囲外の場合には、機器に異常が発生したと、判断するので、予想していなかった異常についても検出可能となる。
【0067】なお、上記学習に際して、主監視パラメータとして複数のもの、例えば、回転数と原子炉圧力を設定した場合、回転数や原子炉圧力に対して非線形に変化する回帰係数についても、主監視パラメータ毎に学習できることになり、特に非線形性が高いプラント機器の監視に有効である。
【0068】以上のように、図12の例によれば、図2の例と同等な効果が得られる他、以下のような効果を得ることができる。監視パラメータの代表値として、平均値等の時々刻々と更新可能なものを採用した学習方式としたので、代表値を記憶するための記憶器は小容量であり、ハードウエアも小規模なもので、検出感度が向上した機器異常監視装置を実現できる。
【0069】また、学習結果を監視パラメータの代表値、すなわち平均値や標準偏差等としたので、学習結果に対する評価が容易であり、修正が必要か否かの判断が行い易い。したがって、柔軟性があり、操作性能が向上した機器異常監視装置を実現できる。さらに、運転時の監視パラメータの正常範囲を自動的に学習する構成となっているので、正常範囲設定のための検討作業や試験運転に必要な作業が不要であり、経済性が向上した機器異常監視装置を実現できる。
【0070】また、監視パラメータどうしの関連性、つまり回帰係数も含めて正常範囲を把握するように構成したので、異常検出感度が更に向上した機器異常監視装置を実現できる。さらに、異常検出時において、正常範囲を決定する許容幅を監視パラメータの標準偏差に比例したものとしたので、通常変動の大きさに従って監視範囲の許容幅が自動的に設定される。したがって、異常検出感度の調整は、許容幅係数aを変更するのみで実行でき、操作性能がさらに向上された機器異常監視装置を実現できる。また、例えば、回転数や原子炉圧力に対して非線形に変化する回帰係数についても主監視パラメータ毎に学習でき、非線形性が高いプラントにも適用可能で、適用範囲が広い機器異常監視装置を実現できる。
【0071】上述した図12の例において、従属監視パラメータの代表値の一つに平均値を用いるようにしたが、平均値ではなく中央値や、最大値、最小値を用いるようにしてもよい。また、異常検出において、観測した監視パラメータのパターンと、学習パラメータのパターンとのパターン距離の差が設定範囲を越えたときに、異常と判断するように構成してもよい。
【0072】さらに、学習型異常判別装置1000を以下のような構成とすることもできる。つまり,異常判別装置1000は、学習モードと監視モードとを選択し設定するためのモード設定器と、変動幅データ学習器と、異常検出器とを備える。そして、変動幅データ学習器は、モード設定器により、学習モードが設定されているときには、算出された回帰係数と多数の監視信号とを取り込み、これら回帰係数と多数の監視信号の正常変動幅に関する変動幅データを算出して記憶する。さらに、変動幅データ学習器は、監視モードが設定されているときには、記憶された変動幅データを出力する。また、異常検出器は、監視モードが設定されているときには、変動幅データに基づいて、回帰係数と多数の監視信号の正常範囲を算出し、実際の回帰係数及び多数の監視信号が正常範囲内であるか否かを判断する。そして、正常範囲内にないときには、機器に異常が発生したと判断する。
【0073】なお、上述した例は、原子力プラントに適用した場合の例であるが、本発明は、原子力プラントに限らず他のプラント等の機器の異常監視方法および装置に適用することができる。
【0074】
【発明の効果】以上のように、本発明の機器の異常監視方法によれば、正常値の把握が困難な機器から多数の監視信号を検出し、これら多数の監視信号を重回帰分析して得られた回帰係数の妥当性を評価し、監視に有用な回帰係数を抽出する。そして、抽出した回帰係数が所定の範囲を逸脱しているか否か、もしくは、回帰係数の変化率が所定の変化率を逸脱しているか否かを判断することにより、異常を監視している。したがって、正常値の把握が困難な機器の異常初期徴候を、高精度に検出し得る異常監視方法を実現することができる。また、高速変化する監視信号のうち、監視に有要な成分のみを抽出し、抽出した成分と高速特性監視信号以外の監視信号とにより重回帰分析を実施している。したがって、機器の異常初期徴候の検出速度および検出精度をさらに向上することができる。
【0075】また、本発明の機器の異常監視装置によれば、正常値の把握が困難な機器から多数の監視信号を検出し、相関抽出手段により、多数の監視信号を重回帰分析して回帰係数を算出し、算出した回帰係数の妥当性を評価して、監視に有用な回帰係数を抽出する。そして、抽出した回帰係数が所定の範囲を逸脱しているか否か、もしくは、回帰係数の変化率が所定の変化率を逸脱しているか否かを、異常判別手段により判断して、異常を監視している。したがって、正常値の把握が困難な機器の異常初期徴候を、高精度に検出し得る異常監視装置を実現することができる。
【0076】さらに、本発明の異常監視装置によれば、成分分離手段により、高速変化する監視信号のうちの有要な成分を分離抽出している。これにより、回帰係数の算出に際し、監視に不要な成分を演算することがないので、演算速度および演算精度を向上することができ、機器の異常初期徴候の検出精度をさらに向上することができる。また、監視に有要な成分のみを回帰係数の演算に使用し、演算処理すべきデータ量が必要最小限となっているので、大型のデータの記憶装置等を使用することなく異常監視装置を実現できる。




 

 


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