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発明の名称 木質音響部材とその製法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−91609
公開日 平成6年(1994)4月5日
出願番号 特願平4−248262
出願日 平成4年(1992)9月17日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外2名)
発明者 友田 昭彦 / 金子 明 / 坪井 秀樹 / 平工 達也 / 山田 俊也
要約 目的
音響特性が優れ、かつその特性のバラツキが少ない木質音響部材を得る。

構成
木質音響部材が、平衡含水率を10〜20重量%に調湿された木材をホルマール化して得られたものである。調湿された木材のホルマール化が、二酸化イオウの存在下に行われる。
特許請求の範囲
【請求項1】 平衡含水率が10〜20重量%に調湿された木材をホルマール化して得られた木質音響部材。
【請求項2】 木材を平衡含水率10〜20重量%に調湿し、次いでこの調湿された木材をホルマール化することを特徴とする木質音響部材の製法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は楽器、音響機器用として使用される木質音響部材とその製法に関する。特に、楽器類やスピーカの響板などとして使用できる、音響特性の優れた木質音響部材とその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ピアノや弦楽器など木質部材を使用する楽器類やスピーカの響板などが大気中の湿度によってその音響特性や寸法を変化させる、という点が問題として指摘されている。一方、木材の吸湿性や寸法安定性を改善するためにホルマール化する方法は、木材の化学的処理法の一つとして古くから知られている。そこで、上記の問題を解決するために、ホルマール化した木質部材を楽器類の製造に使用する試みが提案されている。例えば実開昭63−20199号公報には、アセチル化処理またはホルマール化処理した木材板を使用する楽器用響板が提案されている。また、特開平4−125103号公報では、反応触媒として二酸化イオウを使用し、ホルムアルデヒド源と木材とを120〜150℃に24時間反応させてホルマール化し、バイオリン用の木材を得ている。このように木材をホルマール化すると、木材の組織間に架橋結合が生じ、このため音質を損なう原因である損失正接が減少し、また響きを改善する比動的ヤング率(動的ヤング率を密度で除した値)が増大するので音響特性が改善され、また吸湿性が減少するので寸法安定性が向上するとされている(例えば湊和也、矢野浩之「二酸化イオウ触媒ホルマール化による楽器用材の寸法安定性と音響特性の改良」木材学会誌Vol.36,No.5,p.362−367(1990)参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従来の方法によってホルマール化された楽器用木材について、実際に楽器等の響板を作製して評価すると、音響特性に明かな改善が認められない場合もあるし、改善が認められたとしても、処理ロットまたは木材個体内にもその特性にバラツキがあることが分かった。本発明はこのような問題を解決しようとしてなされたものである。従って本発明の目的は、音響特性が優れ、かつその特性のバラツキが少ない木質音響部材とその製法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような課題は、平衡含水率が10〜20重量%に調湿された木材をホルマール化して得られる木質音響部材を提供することによって解決できる。このような木質音響部材は、木材を平衡含水率10〜20重量%に調湿し、次いでこの調湿された木材をホルマール化する製法によって製造できる。この製法において、調湿された木材のホルマール化は、例えば、二酸化イオウの存在下に行うことが好ましい。特に、木材と、木材に対する重量比で1〜30%のホルムアルデヒド源と、反応容器容積に対する体積比で1〜40%の二酸化イオウとを含む密閉された反応容器中で80〜140℃に1〜72時間加熱反応させてホルマール化を行うことが好ましい。
【0005】本発明の製法に用いられる木材の種類や形状は何ら限定されるものではないが、楽器やスピーカ響板を含む各種音響機器に通常使用されているトウヒ(スプルース)類やカエデ類を使用すると、特に優れた音響特性を有する木質音響部材を得ることができる。
【0006】本発明の木質音響部材を製造するには、上記のような木材(以下、原料木材と称する)がホルマール化に先だって平衡含水率10〜20重量%に調湿されていることが必要である。ここで平衡含水率とは、一旦乾燥した木材を大気中に放置し、呼吸作用(吸放湿)によって大気湿度と平衡に達したときの木材の含水率である。このような調湿は、原料木材を天日または加熱、送風等によって一旦含水率が10〜20重量%またはその近傍になるまで乾燥し、次いで大気中または調湿された室内で平衡含水率が10〜20重量%となるまで放置することによって行うことができる。このようにして得られたものを以下、調湿木材と称する。
【0007】本発明の木質音響部材を得るには、上記の調湿木材をホルマール化する。このホルマール化は一般には、密閉容器中に調湿木材とホルムアルデヒド源、例えばトリオキサン、テトラオキサン、パラホルムアルデヒド、またはホルムアルデヒドモノマとを仕込み、この密閉容器にホルマール化触媒を導入し、所定時間加熱して行うことができる。この際のホルマール化触媒としては酸性触媒、例えば塩化水素等も使用できるが、この場合は生成したホルマール化木質部材の強度が低下したり、反応容器を腐食するなどの問題がある。そこで、これらの問題がない二酸化イオウをホルマール化触媒として使用することが特に好ましい。
【0008】ホルマール化触媒として二酸化イオウを使用する本発明の製法は、次のような順序で行うことができる。まず上記のようにして原料木材を平衡含水率が10〜20重量%となるように調湿し、調湿木材を得る。次いでこの調湿木材を密閉反応容器に仕込み、またこの容器に、仕込んだ調湿木材の1〜30重量%に相当するホルムアルデヒド源を導入する。次いでこの容器を減圧排気し、この密閉反応容器の容積に対して1〜40%の二酸化イオウガスを導入し、80〜140℃の温度で1〜72時間加熱する。その後、排気して未反応ガス類を排除し、製品を取り出す。
【0009】音響特性の優れた木質部材を得るためには、ホルマール化に使用するホルムアルデヒド源の量は調湿木材に対して1〜30重量%であることが好ましい。1重量%未満ではホルマール化が不充分で顕著な音響特性の改善が得られず、30重量%を越えてもその過剰分は調湿木材のホルマール化に寄与しない。
【0010】ホルマール化触媒として使用する二酸化イオウの導入量は、反応容器の容積に対して1〜40%とすることが好ましい。これは、二酸化イオウが均一なホルマール化反応に寄与するためには調湿木材の組織内部に充分浸透する必要があり、この浸透のためには一定以上のガス圧が必要なことによる。1%未満では調湿木材内部に均一に浸透することが期待できず、40%を越えても過剰となって無駄に排出される。
【0011】
【作用】上記のように製造された本発明の木質音響部材は、バラツキのない、優れた音響特性を有する。この点について従来の方法でホルマール化された木質部材と比較しながら説明する。一般に木材の音響特性は比動的ヤング率(動的ヤング率を密度で除した値)と損失正接(tanδ)によって評価できるといわれている(Ono,T.;Norimoto,M.:Jpn.J.Appl.Phys.,22(4),611-614(1983)参照)。比動的ヤング率が大でかつ損失正接が小さい木材は聴覚的にも音質が良好である。木材をホルマール化すると一般的には比動的ヤング率が増大し、損失正接は減少する傾向が見られる。しかし実験によると、同一のホルマール化条件においても例えば損失正接の減少の程度は必ずしも一定せず、所期の目標値に達しない場合もあり、特異的に増加する場合もあり、品質管理上のバラツキが大きい。
【0012】本発明者らはこの問題について研究した結果、ホルマール化に使用する木材の含水率がホルマール化後の木材の音響特性とそのバラツキに影響を及ぼしていることを見いだし、本発明に至ったのである。従来の技術では、ホルマール化に使用する原料木材の含水率が調整されていなかったために品質上のバラツキが回避できなかった。即ち、ホルマール化に使用する木材の含水率が低い場合はホルマール化してもあまり音響特性が改善されず、含水率が高くなるほど顕著に改善される傾向が認められた。
【0013】これを実例で示すと、例えば原料木材としてエゾマツを用い、下記の実施例1に示すような方法でホルマール化を行ったとき、原料木材の含水率(%、横軸)と、ホルマール化前後の損失正接の変化率(%、縦軸)との関係は図1のようになる。図1は、原料木材の含水率が高くなるに従い、ホルマール化による損失正接(即ち、音響特性)の改善効果が加速的に大きくなることを示している。このことは、原料木材の含水率を高く管理することがホルマール化後の音響特性の改善に有効であることを示しているが、同時に、含水率を極端に低く設定すると、含水率の僅かな変化により音響特性が大きく変わり、バラツキが大きくなることをも示している。従って、安定した音響特性を得るためには、きわめて厳密な含水率の管理が必要となる。しかし、実際に工場において大量の木材の含水率を管理し得る幅には限界がある。従って、製品にバラツキの出ない範囲で可能な限り良好な音響特性を得るという観点から、実用的な平衡含水率の範囲が求められる。
【0014】実験の結果、平衡含水率が20重量%を越えると、その含水率変化に見合った音響特性の改善効果が得られず、10重量%未満では音響特性の改善効果のバラツキを低く管理することが実際上困難となる。従って本発明の木質音響部材を製造するに当たっては、平衡含水率が10〜20重量%となるように調湿された木材をホルマール化素材として使用する。
【0015】上記のような音響特性のバラツキは部材間ばかりでなく一部材内でも起こり得るものである。ホルマール化反応に触媒として二酸化イオウを使用する場合、二酸化イオウは木材中の水分及びホルムアルデヒドと次式のように反応して、SO2+H2O+HCHO=HOCH2SO3Hのようにヒドロキシメチルスルホン酸を生成し、この酸が触媒として作用すると考えられている。即ち、二酸化イオウが触媒作用を発現するには水の存在が必須である。また、ホルマール化による音響特性の改善効果は、図2にその模式図を示すように、木材中のセルロース鎖のOH基をホルムアルデヒドのメチレン残基が相互に架橋することによって得られると考えられる。これらの点を併せて考慮すると、一木質部材内の音響特性の均質性は、木質部材内へのホルムアルデヒドガス及び二酸化イオウガスの均一な浸透と共に、木質部材の内部に適度な水分が均一に分布していることによって達成されることが分かる。
【0016】一方木材の水分分布は、含水率10重量%以上の領域では組織内の水分拡散が比較的一定しているため均一であるが、10重量%以下になると木材組織の密度の違いなどによって水分が偏在することになり、従ってホルマール化の程度にムラが生じる。このため木質部材内の音響特性にバラツキが生ずる。この観点からも、調湿木材の平衡含水率を10重量%以上とすることが重要である。また、音響特性の観点ばかりでなく、木材の平衡含水率を10重量%以下にまで乾燥すると、その過程で木材のひび割れや変形が起こり易い。この観点からも平衡含水率を10重量%以下にすることは好ましくない。
【0017】以上説明した製法によって製造された本発明の木質部材は改善された音響特性を有する。これを実例で示すと、例えば以下の実施例2で得られた木質部材について、振動周波数に対する損失正接(tanδ)を測定すると図3のようになる。図3から分かるように、本発明の木質音響部材は原料木材に比べ、低周波域の音響特性が改善されている。これは同じ木質部材をスピーカの響板として官能テストを行った結果とも一致している。また本発明の木質音響部材は物性的にも楽器や音響機器の部材として使用するのに充分な強度を有している。
【0018】本発明の木質音響部材は上記のような特性を有するので、ピアノ、弦楽器用の響板、打楽器用の胴、音板、木管楽器の管体、などのほかスピーカの響板、音楽室、ホールの響板などとして使用することができる。
【0019】
【実施例】次に本発明を実施例によって説明する。
(実施例1)原料木材として、平均的な平衡含水率が7重量%であるエゾマツの木片(約40g)を5片作製し、加熱乾燥炉と調湿器を用いて平衡含水率を12〜13重量%に調湿し、調湿木材を得た。内容積9lの密閉反応容器に上記調湿木材と30gのトリオキサン(ホルムアルデヒド源)を仕込み、容器内を減圧排気し、次いでこれに900mlの二酸化イオウガスを導入した。反応容器を恒温油槽に浸漬して100℃で24時間加熱し、その後に減圧排気を繰り返して未反応ガスを排除し、実施例1の木質部材を得た。これらの木質部材の損失正接を測定したところ最大511×10-5(634Hz)、最小482×10-5(606Hz)、平均499×10-5であった。
【0020】(比較例1)実施例1に用いたものと同じ原料木材を調湿せず実施例1と同様にホルマール化して比較例1の木質部材を得た。これらの木質部材の損失正接を測定したところ最大558×10-5(645Hz)、最小518×10-5(627Hz)、平均542×10-5であった。
【0021】(実施例2)原料木材として、平均的な平衡含水率が7重量%であるルーマニアスプルース材の木片(約40g)を5片作製し、加熱乾燥炉と調湿器を用いて平衡含水率を12〜13重量%に調湿し、調湿木材を得た。この調湿木材を用いて実施例1と同様にホルマール化して実施例2の木質部材を得た。これらの木質部材の損失正接を測定したところ最大506×10-5(623Hz)、最小461×10-5(660Hz)、平均476×10-5であった。これら木質部材及び比較のため原料木材について、周波数−損失正接特性を測定し、それぞれの測定値の平均値を求めた。結果を図3に示す。
【0022】(実施例3)実施例2と同様の方法によって150×250mm、厚み10mmの木質部材を得た。これを用いて平板スピーカを作製し、官能テストを試みたところ、未処理材に比較して音が明確であり、太く、かつ良好な残響感が得られた。
【0023】以上の実施例から、本発明の木質音響部材は未処理木材または調湿処理をせずにホルマール化した木材に比べて音響特性が優れているばかりでなく、そのバラツキが少ないことは明かである。
【0024】
【発明の効果】本発明の木質音響部材は平衡含水率が10〜20重量%に調湿された木材をホルマール化して得られたものであるので、音響特性が改善されており、かつその特性のバラツキが少ないという効果がある。




 

 


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