発明の名称 |
歩行型田植え機 |
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発行国 |
日本国特許庁(JP) |
公報種別 |
公開特許公報(A) |
公開番号 |
特開平6−14626 |
公開日 |
平成6年(1994)1月25日 |
出願番号 |
特願平4−172523 |
出願日 |
平成4年(1992)6月30日 |
代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】北村 修
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発明者 |
蔵野 淳次 |
要約 |
目的 機体側面視で前後に並ぶ前接地フロートと後接地フロートを備える歩行型田植え機において、操縦ハンドルから手を放さないで、後接地フロートを対地浮上するように持ち上げ操作できるようにする。
構成 操縦ハンドル4の握り部4aを、走行機体に対して設定ストロークSだけ昇降するように構成するとともに連係ロッド18によって後接地フロート8の支持杆19に連係させてある。握り部4aを持ち上げ操作すると、握り部4aの上昇力が連係ロッド18によってフロート支持アーム19aに伝達して、このフロート支持アーム19aが軸芯Zまわりで上昇揺動し、後接地フロート8が作業用の下降取り付け状態から上昇取り付け状態に切り換わる。握り部4aを下げ操作すると、握り部4aの下降力が連係ロッド18によってフロート支持アーム19aに伝達して軸芯Zまわりで下降揺動し、後接地フロート8が上昇取り付け状態から作業用の下降取り付け状態に切り換わる。 |
特許請求の範囲
【請求項1】 機体側面視で走行機体の前後方向に並ぶ状態で前記走行機体に取り付けた前接地フロート(7)と後接地フロート(8)を備えてある歩行型田植え機であって、前記後接地フロート(8)を前記走行機体に作業用下降取り付け状態と非作業用上昇取り付け状態とに昇降自在に取り付けるとともに、操縦ハンドル(4)の握り部(4a)が前記走行機体に対して設定ストローク昇降することを許容する取り付け融通(15a)を前記操縦ハンドル(4)に備え、前記握り部(4a)の前記走行機体に対する上昇に伴って前記後接地フロート(8)を前記非作業用上昇取り付け状態に上昇操作し、かつ、前記握り部(4a)の走行機体に対する下降に伴って前記後接地フロート(8)を前記作業用下降取り付け状態に下降操作する状態に前記握り部(4a)と前記後接地フロート(8)を連係する連係機構(18)を備えてある歩行型田植え機。
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発明の詳細な説明
【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、機体側面視で走行機体の前後方向に並ぶ状態で前記走行機体に取り付けた前接地フロートと後接地フロートを備えてある歩行型田植え機に関する。 【0002】 【従来の技術】上記歩行型田植え機において、従来、圃場端部での機体旋回を行うに当たり、操縦ハンドルの持ち上げによって機体後端側を車軸芯まわりで持ち上げ操作し、これによって、後接地フロートを少なくとも後端側が圃場泥面から浮上するように持ち上げ操作することにより、後接地フロートに起因するトラブルの発生を回避しながら旋回操作されていた。すなわち、後接地フロートを作業時と同様に接地したままで機体旋回をすると、後接地フロートは走行機体の後端側に位置していて、後接地フロートの後端側が機体の旋回中心から遠く離れた箇所を旋回することから、後接地フロートが既植苗に干渉しやすくなる。ところが、後接地フロートを少なくとも後端側が泥面から浮上するように持ち上げ状態にすることにより、後接地フロートの後端側が既植苗の上方を旋回移動し、後接地フロートの既植苗に対する接触が回避しやすくなる。又、接触したとしても既植苗の葉先側であり、葉先側はフロートとの接触によって容易に屈曲することから苗は比較的倒伏しにくくなるのである。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】従来、機体旋回を行うに当たり、機体後端側の持ち上げ支持によって後接地フロートを持ち上げ状態にすることから、必要労力が大になっていた。本発明の目的は、操縦ハンドルから手を放すことなく、しかも、比較的楽に後接地フロートを持ち上げ状態にしながら機体旋回できる歩行型田植え機を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明による歩行型田植え機にあっては、目的達成のために、冒頭に記したものにおいて、前記後接地フロートを前記走行機体に作業用下降取り付け状態と非作業用上昇取り付け状態とに昇降自在に取り付けるとともに、操縦ハンドルの握り部が前記走行機体に対して設定ストローク昇降することを許容する取り付け融通を前記操縦ハンドルに備え、前記握り部の前記走行機体に対する上昇に伴って前記後接地フロートを前記非作業用上昇取り付け状態に上昇操作し、かつ、前記握り部の走行機体に対する下降に伴って前記後接地フロートを前記作業用下降取り付け状態に下降操作する状態に前記握り部と前記後接地フロートを連係する連係機構を備えてあることを特徴とする。 【0005】 【作用】連係機構を、握り部の上昇力によって後接地フロートが上昇するように機械式に構成する場合には、後接地フロートの上昇ストロークが所望ストロークになるようにするに必要な握り部昇降ストロークを前記設定ストロークとして設定し、連係機構を、握り部の上昇作動を検出し、この検出に基いて後接地フロートを上昇操作するように電気式に構成する場合には、握り部の上昇検出に必要な握り部昇降ストロークを前記設定ストロークとして設定する。さらには、握り部の持ち上げや押し下げ操作をするに際し、握り部が前記設定ストロークだけ単独で上昇したり、下降した後はストッパーの作用で握り部による持ち上げ力や押し下げ力を走行機体に伝達し、操縦ハンドルによる走行機体の持ち上げ操作や押し下げ操作が可能になるように、前記設定ストロークを設定する。すると、機体旋回を行うに当たり、前記握り部の走行機体に対する上昇操作をすると、連係機構の作用によって後接地フロートが作業用下降取り付け状態から非作業用上昇取り付け状態に切り換わる。これにより、従来のように機体後端側の持ち上げ操作をしなくとも、持ち上げ操作が必要であるとしても従来ほど高く持ち上げなくとも、後接地フロートを持ち上げ状態にしながら旋回操作できる。さらには、後接地フロートの走行機体に対する昇降を可能にするとともに、その昇降操作用の操作レバーを備えることによっても、機体旋回時の後接地フロートの持ち上げが可能になる。この場合には、レバー操作のために手を操縦ハンドルから放して後接地フロートを持ち上げ状態に切り換える必要があるが、本発明による場合には、握り部に手を作用させて操縦ハンドルを支持したままにしてできる。 【0006】 【発明の効果】圃場端部での機体旋回を行うに際し、後接地フロートを持ち上げ状態に切り換えて、後接地フロートによる既植苗倒伏などのトラブル発生を回避しながら、しかも、握り部から手を放さないで操縦ハンドル支持を行ったままにして、機体を旋回にかかわらず安定状態に維持しながら旋回操作できるようになった。 【0007】 【実施例】図2に示すように、左右一対の走行用車輪1,1を駆動可能に備え、かつ、エンジンE、エンジンボンネット2、予備苗のせ装置3、操縦ハンドル4などを備える自走可能な走行機体の後部に、走行機体の横方向に並ぶ二つの苗植え付けアーム5,5、いずれもの苗植え付けアーム5に苗供給する一つの苗のせ台6を付設するとともに、走行機体の前部に配置の一つの前接地フロート7と、走行機体の後端側に配置の左右一対の後接地フロート8,8とを、接地フロート7と8が機体側面視で前後方向に並ぶ状態で走行機体の底部に付設してある。そして、左右車輪1,1の間に位置する肥料タンク9、左右一対の作溝器10,10などを備える施肥装置を、苗植え付けアーム5の苗植え運動に連動して粉粒状肥料を肥料タンク9から作溝器10に供給することによって、いずれもの苗植え付けアーム5による苗植え付け箇所の付近に肥料供給するように構成して走行機体に付設し、もって、2条の苗植え作業ができるように、かつ、施肥作業が同時にできるように施肥装置付き歩行型田植え機を構成してある。 【0008】左右車輪1,1それぞれの伝動ケース11に連動ロッド12などでなる連動機構を介して油圧シリンダ(図示せず)を連動させるとともに、この油圧シリンダが伝動ケース11を軸芯Yまわりで走行機体に対して上下に揺動操作することによって、左右車輪1,1を走行機体に対して昇降操作するように構成してある。前接地フロート7を後端側に配置の軸芯Xまわりで走行機体に対して上下に揺動するように構成し、前接地フロート7の前端側を、連動ロッド13などでなる制御機構を介して前記油圧シリンダのコントロールバルブ(図示せず)に連動させるとともに、前接地フロート7の後端側の走行機体に対する高さが設定範囲になる状態に、前記制御機構がコントロールバルブを自動的に切り換え操作するように構成してある。つまり、苗植え付けアーム5による苗植え深さを前接地フロート7の走行機体に対する取り付け姿勢に基いて検出し、この検出深さが設定範囲になる状態に走行用車輪1を走行機体に対して昇降制御するように構成し、これにより、走行車輪1の耕盤凹部への入り込みや耕盤凸部への乗り上がりにかかわらず、苗植え深さをほぼ一定に維持しながら作業できるようにしてある。 【0009】操縦ハンドル4は、図1に示すように、走行機体のフレーム部分14の上端部に操縦ハンドル4などの取り付け用に備えてある連結部材15に貫設してある。この連結部材15に備えてあるハンドル挿通孔15aが操縦ハンドル4全体の軸芯Pまわりでの回動を許容するように構成し、操縦ハンドル4が連結部材15に対して回動するに伴い、操縦ハンドル4に取り付け部材16を介して取り付けてあるピン17が、連結部材15の長孔式ピン孔15bの内部を摺動してそのピン孔15bの上端側または下端側で連結部材15に接当するように構成することにより、操縦ハンドル4の左右の握り部4a,4aが軸芯Pまわりでの揺動により、ピン孔15bとピン17とによって決まる設定ストロークSだけ走行機体に対して昇降するように構成してある。前記取り付け部材16に前記ピン17を介して一端側を連結した連係ロッド18の他端側を、左右いずれもの後接地フロート8の後端側を支持させてある屈曲パイプ製の支持杆19に腰折れリンク機構21を介して連動連結することにより、圃場端部での機体旋回を行う際、後接地フロート8が既植苗を押し倒すなどのトラブルを楽に回避しながら、かつ、走行機体の支持操作を確実に行いながら旋回操作できるように配慮してある。すなわち、前記フレーム部分14に対して機体横方向の軸芯Zまわりで回動可能なフロート支持アーム19aに、前記支持杆19を前後方向軸芯Qまわりでローリング自在に支持してあり、このフロート支持アーム19aが前記軸芯Zまわりで揺動昇降することと、フロート8の前端側は屈伸リンク20を介してフレーム部分14に連結してあることにより、左右の後接地フロート8,8が走行機体に対してほぼ平行に昇降し、図中の実線で示す如く泥面に接触する作業用の下降取り付け状態と、図中の2点鎖線で示す如く泥面から浮上する非作業用の上昇取り付け状態とに切り換わるように構成してある。連結部材15に支点Rを中心に前後揺動可能、かつ、前後に腰折れ可能に構成した腰折れリンク機構21に前記連係ロッド18を連動連結するとともに、この腰折れリンク機構21の下端と前記フロート支持アーム19aの遊端とを枢支連結し、又、前記腰折れリンク機構21をストッパー22に接当する伸長姿勢にバネ23によって付勢し、前記連係ロッド18を前後に押し引き操作することで前記腰折れリンク機構21が前後に屈伸されてフロート支持アーム19aが前記軸芯Zまわりで揺動昇降するようになっている。上記構成による作動を次に説明する。通常は図1に示すように、握り部4aを下降させた状態にあり、この状態では前記腰折れリンク機構21がストッパー22に接当する伸長姿勢にあって前記フロート支持アーム19aは下降位置にあり、左右の後接地フロート8,8が作業用の下降取り付け状態となる。この場合、前記腰折れリンク機構21は腰折れ揺動死点を前方に越えた姿勢にあってストッパー22で支持されているので、後接地フロート8,8からの上向きの接地荷重によって前記フロート支持アーム19aが上方に逃げることはない。つまり、後接地フロート8,8が所定の接地機能を発揮する。握り部4aをピン17がピン孔15bの上端側で連結部材15に接当するストロークエンドまで持ち上げ操作すると、図1中の2点鎖線で示すように、前記連係ロッド18を介して前記腰折れリンク機構21が腰折れ揺動死点を越えて後方に屈曲され、前記フロート支持アーム19aが上昇して後接地フロート8,8が握り部4aの上昇ストロークSより大きいストロークHで持ち上げられる。これにより、後接地フロート8の後端側が既植苗の上方を旋回移動して、後接地フロート8の既植苗に対する接触が回避できるように、接触しても既植苗の葉先側に接触するだけで、苗葉が容易に屈曲して苗倒伏が回避しやすいように後接地フロート8を持ち上げ状態にしながら機体旋回操作ができる。しかも、握り部4aから手を放さないで操縦ハンドル4の支持による機体支持を行ったままでできる。又、握り部4aの持ち上げ操作に伴ってピン17がピン孔15bの上端側で取り付け部材15に接当した後にもさらに持ち上げ操作したり、握り部4aを押し下げ操作に伴ってピン17がピン孔15bの下端側で取り付け部材15に接当した後にもさらに押し下げ操作すると、ピン17の取り付け部材15に対する当たりのために、握り部4aによる持ち上げ力や押し下げ力がフレーム部分14に伝達する。したがって、ピン17がピン孔17aの上端側や下端側で取り付け部材15に接当する状態で握り部4aの持ち上げや押し下げ操作をすることにより、操縦ハンドル4をしての走行機体の持ち上げ操作や押し下げ操作が可能になる。 【0010】〔別実施例〕操縦ハンドル4の全体が走行機体に対して昇降するように構成する他、操縦ハンドル4を握り部4aとその他のハンドル基端側部分とが別部品でなる分割型に形成し、ハンドル基端側部分を走行機体に固定し、握り部4aがハンドル基端側部分に対して昇降するように構成する手段を採用して実施してもよい。したがって、ハンドル挿通孔15aを、握り部4aが走行機体に対して昇降することを許容する取り付け融通15aと呼称する。前記連係ロッド18に替え、握り部の昇降を検出スイッチにより検出し、この検出結果に基いて後接地フロートを油圧式や電気式のアクチュエータによって昇降操作する連係構成を採用して実施してもよい。したがって、これらを連係機構18と総称する。 【0011】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
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